そしたら、鼻くそほじり終わったら解説はじめますね。
東京大学2012年度理系第6問の解説
[問題]
2×2行列P=(p q r s)に対して
Tr=(P)=p+s
と定める。
a,b,cはa≧b>0,0≦c≦1を満たす実数とする。行列A,B,C,Dを次で定める
A=(a 0 0 b),B=(b 0 0 a),C=(a^c 0 0 b^c),D=(b^(1-c) 0 0 a^(1-c))
また実数xに対し,U(x)=(cos -sinx sinx cosx)とする。
このとき以下の問に答えよ。
(1)各実数tに対して,xの関数
f(x)=Tr((U(t)AU(-t)-B)U(x)(1 0 0 -1)U(-x))
の最大値m(t)を求めよ。
(ただし,最大値をとるxを求める必要はない)
(2)すべての実数tに対し
2Tr((U(t)CU(-t)D)≧Tr(U(t)AU(-t)+B)-m(t))
が成り立つことを示せ。
(行列(a b c d)は
a b
c d
をあらわしてる)
[解答と解説]
(1)
さあて計算するか。
ややこしい計算で処理能力を求めてるんや東大や。
Tr((U(t)AU(-t)-B)U(x)(1 0 0 -1)U(-x))
=Tr(((cost -sint sint cost)(a 0 0 b)(cost sint -sint cost)-(b 0 0 a))×(cosx -sinx sinx cosx)(1 0 0 -1)(cosx sinx -sinx cosx))
…
ってやってると
強制ブランコの刑みたいなことになります。
処理能力って言うてもそういうことを言うてるんじゃないねんな。
と言うことで、どんな感じでやればいいのかと言うと一つの方法としては
U(x)(□ 0 0 △)U(-x)の形が多いやろ。
この塊のパターンに注目するねん。
例えば
U(t)AU(-t)=(acost^2+bsint^2 (a-b)sintcost (a-b)sintcost asint^2+bcost^2)
って計算したら、
U(x)(1 0 0 -1)U(-x)はさっきの計算において
tをx
aを1
bを-1
したらええわけやから
U(x)(1 0 0 -1)U(-x)=(cosx^2-sinx^2 2sinxcosx 2sinxcosx sinx^2-cosx^2)
=(cos2x sin2x sin2x -cos2x)
って計算結果を流用できます。
同じ構造の計算を何度もやってたら、死ぬからな。
こういうのを覚えてください。
U(t)AU(-t)-Bはsint^2=1-cost^2に注意して
U(t)AU(-t)-B=(a-b)(cost^2 sintcost sintcost -cost^2)
これでTrはトレースと言って、大学の線型代数で使う記号やけどこれも対角の成分だけ計算すればええわけやな。
全部計算するんじゃなくて、関係ある計算だけするねん。
f(x)=(a-b)(cost^2cos2x+sintcostsin2x+sintcostsin2x+cost^2cos2x)
=2(a-b)(sintcostsin2x+cost^2cos2x)
これはxの式としてはAsinx+Bcosx型やから、合成して
√(A^2+B^2)sin(x+α)
でx+αは余裕で一周してまうから
最大値√(A^2+B^2)
最小値-√(A^2+B^2)
って言うやつですね。
だから
f(x)=2(a-b)(√((sintcost)^2+(cost^2)^2))sint(2x+α)
=2(a-b)|cost|sin(2x+α)
αは実数って書くだけでもいいと思います。
√の中は
√cost^2になるので|cost|に注意してください。
(2)
同じように計算していきましょう
U(t)CU(-t)はtをtに、aをa^c、bをb^cにすればいいから
(a^ccost^2+b^csint^2 (a^c-b^c)sintcost (a^c-b^c)sintcost a^csint^2+b^ccost^2)D
Trも関係ある計算だけ考えて
Tr(U(t)CU(-t)D)=a^cb^(1-c)cost^2+bsint^2+asint^2+b^ca^(1-c)cost^2
またTrを計算するから関係あるとこだけ計算して
U(t)AU(-t)+B=(acost^2+bsint^+b * * asint^2+bcost^2+a)
*は大学ではよく使う表現の仕方ではあるとこやな。
Tr(U(t)AU(-t)+B)=2a+2b
これで与式を整理して
2(a^cb^(1-c)cost^2+bsint^2+asint^2+b^ca^(1-c)cost^2)-2(a+b)+2(a-b)|cost|≧0
とりあえずcosだけの式にして
(a^cb^(1-c)-b-a+b^ca^(1-c))cost^2+(a-b)|cost|≧0
これでcostの式になりましたが、cost^2=|cost|^2なので
(a^cb^(1-c)-b-a+b^ca^(1-c))|cost|^2+(a-b)|cost|≧0
で|cost|の式です。
これが全てのtについて成立すればいいから、構造としてはただの二次式で
T=|cost|とおいて
(a^cb^(1-c)-b-a+b^ca^(1-c))T^2+(a-b)t≧0
⇔
T((a^cb^(1-c)-b-a+b^ca^(1-c))T+(a-b))≧0
でT≧0やから
(a^cb^(1-c)-b-a+b^ca^(1-c))T+(a-b)≧0
が0≦T≦1の任意のTで成立したらええねん。
もうここまで来たら一次式ですね。
つまり最小値が0以上であればええねんけど、これはただの一次関数です。
と言うことは、最小値はT=0またはT=1でとります。
だから
min(0≦T≦1){(a^cb^(1-c)-b-a+b^ca^(1-c))T+(a-b)}
=min{a-b,a^cb^(1-c)+b^ca^(1-c)-2b)}
つまりT=0を入れたa-bと
T=1を代入したa^cb^(1-c)+b^ca^(1-c)-2b
の小さい方が0以上であればいいねん。
要するに両方0以上やったらええねん。
これは東大でよくある処理ですね。
a≧bよりa-b≧0はすぐにわかります。
a^cb^(1-c)+b^ca^(1-c)-2b
の方も相加相乗平均の関係使えばすぐにでます。
aもbも正やから
a^cb^(1-c)+b^ca^(1-c)-2b≧2√{a^cb^(1-c)+b^ca^(1-c)}-2b
=2(√(ab)-b)
=2√b(√a-√b)≧0
と簡単にできます。
東大は相加相乗平均の関係は何故か多いです。
考えてみれば、計算だけのしょうもない問題やけど東大らしいと思います。
工夫の仕方とか、見やすい書き方、整理の仕方、処理の仕方まで覚えるって言うのを意識したってください。
東京大学の入試の数学の過去問の解説
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