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「ノーモア・ヒロシマ」の偽善にはいい加減うんざりしている

毎年繰り返される思考停止した茶番

 今年もまた広島で、「平和記念式典」なる茶番が演じられた。私は広島の原爆死没者慰霊碑に刻まれた「過ちは繰返しませぬ」と云う文句が子供の頃から大嫌いで、何故ならそこには「何時、誰が、何処で、何故、どんな過ちを、どうやって犯したのか」と云う5W1Hの詳細が一切欠落しているからだ。「過ち」が行われたと言っても、具体的にどんな過ちなのかと云う説明は一切無い。そこには「とにかく何だ、原爆とか核兵器とか戦争とかって悲惨なものだ、嫌なものだ」と云うフワフワしたイメージが漂っているだけで、現実を直視しようと云う姿勢が感じられない。これでは歴史から何等かの教訓を学ぼうと思っても学び様が無いではないか。伝えられているのは否定的な情緒だけ。道理も論理も無い。だから責めを追うべきなのが誰なのかも一切不明。責任の所在を明らかにした上でそれを許すことと、最初から一切をなぁなぁにして曖昧な儘に留めておくこととは、天と地程も違う。


 第一義的に言えば、責められるべきは米軍とホワイトハウスに決まっている。広島と長崎に対する原爆投下は東京大空襲等と同じくジュネーヴ条約で禁止された民間人の殺害に該当するので、戦争犯罪だ。これは戦略上は全く不必要な作戦だったので、「当時の戦況から止むを得なかった」と正当化することも不可能だ。東京裁判が戦勝国の占有物でなかったら、後に被害国日本から紫綬褒章を貰ったカーチス・ルメイ将軍やトルーマン大統領もまた被告席に着いていなければならなかっただろう。中学生にでも解る理屈だ。

 だが日本には今に至るまで、アメリカ帝国の戦争犯罪の責任を追及しようと云う真剣で組織的な試みは皆無に等しい。それどころかオバマ大統領が広島を訪れて一言も謝罪せず、わざとらしく空涙を流してみせただけで、「ああ、オバマさんは平和主義者だ。アメリカは良い国だ」と感激する単細胞が大勢居る始末。ついでに言うとオバマは広島を訪れたその足でヴェトナムにも向かっているが、ここでも過去の侵略戦争に対する謝罪は一言も無く、武器取引の約束をしただけ。彼は正に死の商人だが、日本では何故か今だに彼を平和主義者だと信じる人が多い、

 核に関して言えば、「核の近代化」を含む30年で1兆ドルの核開発計画を始めたのもオバマ政権だ(日本のマスコミはトランプ政権が始めたかの様に報道したが、これは記憶力の有る人間なら直ぐ解る真っ赤な嘘で、トランプはオバマ路線を変更した訳ではなく、オバマ路線を継承し拡大しただけだ)。この「核の近代化」は核兵器と通常兵器の垣根を低くして「使い易い核」の開発を目指すもので、これまで使い難いからこそ成り立っていたMAD(相互確証破壊)の前提を根底から覆しかねない、全世界にとって極めて危険なものだ。ところが広島に集まった皆さんは、過去に広島で戦争犯罪を行い、その後も繰り返し世界各地で戦争犯罪を行い、全世界を核の脅威で脅かしている国に対して何の抗議もしないどころか、この世界最悪の軍事帝国に核によって脅迫されているロシア(とベラルーシ)の方を招待しないことに決めたそうだ。

 日本人の99%以上は、2022年2月の時点で、人類が今まで最も核戦争勃発の可能性に近付いたと言われる1962年のトルコ=キューバ危機よりも更に深刻な危機が進行中だったことに、気が付いてすらいないのだろう。NATOと、2014年にウクライナを乗っ取ってそれ以降実効支配しているクーデター政権の軍事冒険主義が、人類をこれまで以上に核戦争の瀬戸際に追い遣っていたことは、彼等飲目には映っていない。ウクライナ紛争は2022/02/24から始まったことになっていて、それまで8年間略休むこと無く続いて来たドンバス戦争や、ナチによる民族浄化や反対勢力の粛清や数々の人権侵害は、綺麗さっぱり存在しないことになっているのだ。「NATOに加盟するかしないかはウクライナの勝手でしょ」と平然と主張出来る人は、その場合懸かっているのは核戦争、即ち極めて高い確率で全人類の存亡であって、西側ナチ勢力の暴走を許した場合に引き起こされるであろう惨事が全く想像出来ていない。だから今でも残虐極まり無い戦争犯罪を繰り返しているナチ勢力に対して大量の武器を送ることに何の疑問も抱いていないし、その多くが恐らく前線になど届いておらず、闇ネットで売買されてジハード主義者や白人史上主義のテロリスト達の手に渡っている現状について、何の危機感も抱いていない。

 「戦争反対!」と口先では言いつつも、彼等が関心を持つのはTVや新聞の様な大政翼賛化したプロパガンダ・メディアが騒ぐ時だけ。しかもそれらが与えた認知的枠組みの中でしか物事を考えようとしない。戦争の実態を知る為の努力、厳しい検閲や言論統制を掻い潜って正しい情報にアクセスする為の努力が圧倒的に足りていないのだ。これで一体どの戦争をどうやって止めようと云うのだろうか? 彼等は恥知らずな帝国主義者共から吹き込まれた妄想戦記の中で、妄想の平和を実現しようと懸命になっている。だがそれは現実の戦争や現実の平和とは何の関係も無い。



「核の脅威」の意味

 広島・長崎への原爆投下には色々な意味が有るが、ひとつにはこれはソ連に対する宣戦布告だった。両都市の市民達は、第二次世界大戦が終わる前から第三次世界大戦を起こすことを考えていたアングロサクソンの帝国主義者共によって、捨て駒として利用された訳だ。だから「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ」と言うなら、どの国よりも先ずロシアを始めとする旧ソ連諸国を招かないとおかしいと思うのだが、広島の自称平和主義者達はロシアとベラルーシを拒んだ。西洋の自称自由民主主義ナチ陣営(私が言っているのはナチ「みたいな」連中のことではなく、文字通りナチであったか、その協力者、或いは支援者であった勢力のことだ)は、核を含むあらゆる兵器によって「ソ連を地図から消し去る」ことを夢見ていたので、1949年にソ連が核開発に成功して反撃能力を持つことが無ければ、ヒロシマ・ナガサキなど歴史の小さな一エピソードとして忘れ去られてしまう様な、比較にならぬ程超巨大な核の大惨事が起こっていたかも知れない。NATOが冷戦を「熱い戦争」に変え、それに勝利していたら。今頃ユーラシアの広範囲が放射能の海に沈んでいたかも知れないのだ。そしてNATOナチ勢力は今に至るまで、世界的な軍事覇権の野望を諦めていない。


 冷戦中、人類が最も核戦争の瀬戸際に近付いたのは1962年のトルコ=キューバ危機(西側では「キューバ危機」と呼ばれ、恰もこの危機を作り出したのはソ連側であるかの様な印象操作が行われている)だと言われているが、実際には表に出なかっただけで、それに近い危機的状況は何十、何百回も起こっていたことが今では知られている。各国が核兵器を保持するのは「核兵器は抑止力になる」と云う前提に基付いていた訳だが、実際には抑止どころか絶えず人類を滅亡の危機に追い遣っていた訳で、こんな綱渡りの上に成り立つMAD(相互確証破壊)による平和など、それこそMADでしかない。「核抑止力」は何れ歴史のゴミ箱に捨て去られるべき忌まわしい幻想だ。だから「一刻も早く全ての核のボタンを無用のものにしなくてはなりません」と云う広島の自称平和主義者の言い分は、その限りに於ては正しいと私も思う(まぁ例えば、「巨大隕石を破壊する」とか、核兵器の平和利用の可能性も将来的には考えられない訳ではないだろうが)。

 だが現実問題として核を無くすには、現実に核による威嚇を行なっている国々の脅威を先ず取り除かねばならない。ホールドアップの最中に、ホールドアップされている人に向かって「武器を捨てろ!」とか言うのはフェアではない。ホールドアップしている方にこそ先ず「武器を捨てろ!」と言わねばならないのだが、ウクライナ紛争にしろ他の状況(例えば「北朝鮮の核開発問題」)にしろ、日本人の圧倒的大多数はメディアによる知覚管理、認知操作によって、完全に主客が逆転した構図を受け入れている。これを私はよく「悪いインディアンが善良な開拓民の村を襲っている!」と云う西部劇に喩えているのだが、目の前の状況から一歩退いて相対的に見てみれば、相手の土地や財産を奪ってジェノサイドを強行しているのは無論「善良な開拓民」の方だ。襲われた方のリアクションをアクションとして描くのは、侵略者の常套手段だが、これを何度もやられると、騙された観客の中では当然「相手は対話も理屈も通用しない、訳の分からない悪魔だ」と云うイメージが形作られて行き、それはやがて根深い差別感情となって、歪んだ現実理解を自動的に拡大再生産する様になる。私は今の日本の至るところにこれを見て取っている。

 核による先制攻撃を言い出したのはロシアではない、アメリカ帝国の方だ。「使い易い核」を開発しているペンタゴン界隈の連中は「核兵器は安全で民間人に優しい」とか、一寸正気を疑う様なことを堂々と議論している(西側大手メディアによって報道されることは無いが)。そしてアメリカ帝国は自らを国際法を超越した存在と位置付け、自国民が国際司法に裁きを受けることは無いと堂々と宣言している。国際司法が完全に機能していれば、歴代の米帝大統領なんか全員死刑に値するが、誰一人その戦争犯罪や人道犯罪の責任を問われたことは無い(バイデンがイラク戦争を熱烈に支持していたことを皆さんお忘れだろうか? あれで一体何人死んだ? 一説では15年間で240万人だ)。

 連中は、ロシアや中国の様に国際法を遵守しろとは言わない、「ルールに基付く秩序」なるものを唱導する。つまり「俺様がその時々で言うことがルールだ」と云う訳だ。歪んだ認知構造の形成された日本人はこの「ルール」を自動的に国際法とか国連憲章とかに翻訳してしまう様だが、客観的に言って国際違法違反の世界一の常習犯は一体何処の国なのか、冷静に考えてみれば良い。他のどの国も到底敵わない世界最大の軍事予算を組み、世界中に何百もの(ひょっとしたら千以上)軍事基地を造って剰え他国に貢がせ、世界の反対側まで行って他国に違法に「人道的」に爆弾を落としたり違法にテロを支援したり違法に資源や資産を強奪したり違法にレジームチェンンジ工作を行なって傀儡政権を据え付けたり違法に「制裁」と称する経済的攻撃を繰り返したりしているのはどの国だろうか。この世界最悪のならず者国家をどうにかしない限り、武装解除したくないと思う国は多い。例えば核開発を放棄したリビアのカダフィがどうなったか、世界一のならず者国家にならず者国家呼ばわりされたイランやDPRKはよく見ている。彼らに軍備を増強するなと抗議をするのは完全に筋違いで、先に抗議すべき相手が居る(マッカーサーが朝鮮半島に30発以上の原爆を落としたがっていたことをDPRKが忘れているとでも?)。因みにロシアの国外の軍事基地は今はたったの18だ。中国に至っては日本と同じでジブチに一箇所だけで、国連活動に従事しているだけだ。



日本の非核化?

 核兵器禁止条約を日本も批准すべきだと云う声をよく聞く。だが日本政府にはその権限は無い。先に指揮権密約や核持ち込み密約をどうにかしない限り、非核三原則の内、日本政府は核を「作らず」はまぁいいとしても、「持たず」は状況に依っては守れるかどうか怪しいものだし、「持ち込ませず」に至っては自分達の裁量ではどうにもならない。日本が核を禁止したいなら、先ず自国の主権を手に入れなければならない。

 最近ロシアのプーチン大統領は、多極化へ向かう世界に於ては主権が重要な意味を持って来ることを再三強調しているが、日本には少なくとも安全保障面に於ては主権は無い。完全に属国だ。ROKも日本と同じく米帝の属国だが、日本人は韓国人よりも更に状況が解っていないだろう。例えば北方領土(クリル諸島)問題が典型的だが、北方領土が仮に日本に「返還」された後、そこに米軍基地が造られないことを、日本政府は保証出来ない。日米地位協定によって、日本の国土の何処であっても、米軍は好きに使うことが出来ると定められているからだ。だから日本政府の方で「北方領土に米軍は造らせません」と勝手に約束することは出来ない。北方領土問題を本気で「解決」したいのなら、日本国首相が先ず足を運ぶべきはモスクワではなくワシントンの方なのだ(ワシントンの方でそれを許すとは到底思えないが)。なのでポツダム宣言を読んだことが無いと堂々と国会で発言してしまう様なバカ丸出しの安倍晋三が何度プーチン大統領に尻尾を振ろうとも、この方面での交渉がまともに進む筈も無く、そうした茶番のカラクリを恐らく重々承知した上で、歴史改竄主義者の無礼な部分には敢えて目を瞑り(日本帝国がソ連を侵略しようとしていたことを、侵略されようとしていた方が忘れる筈は無い)、実利を取ることを選択してくれたロシア側の対応は実に大人だったと言えるだろう(中国についてもこの点は似た様なもので、日本は精神的に成熟した隣人達に恵まれている)。

 私は断じて安倍支持者などではないが、この点については、今や「安倍政権の方がまだ遙かにマシだった」と言える様な状況に、この国は落ち込んでいるのではないかと思う。この件については今回は深入りはしないが、恐らく今後岸田政権下、或いはその次の政権下で、日本の主権は安全保障分野でも経済分野でも、確実に後退する。核兵器禁止条約など夢のまた夢だ。先程から繰り返している様に、何より国民の大多数がこの問題の所在をまるで理解していない。先行きに期待は全く持てない(ふと思い出したので多少脱線するが、最近の参院選挙期間中に、或る地方新聞の記事で各候補に「最近読んだ本は何ですか?」と云うどうでもいいような質問をしていたのだが、候補者の皆さんは政治には余り関係無い様な本ばかり挙げていたのだが、名前は伏せておくが自民党の候補だけが「特になし」と回答していたのが印象的だった。当選したのはその自民党候補だった)。

 日本人の国際情勢のガラパゴス化は深刻だ。典型的な例を挙げれば「日本国憲法9条を世界遺産に!」とか云うトンチンカンな運動だ。彼等は国連憲章を読んだことが無いのだろうか。9条1項に該当する様なことなら国連憲章にも書いてある。


 9条のユニークさは2項にこそ在る。だが2項は守られてはいない。曾ての自民党は「自衛の為の戦力は戦力ではない」などと云う強弁で自衛隊の存在を正当化していたが、そんな言い分が通用するのなら世界中に軍隊など存在しないことになってしまう。日本国憲法9条2項と自衛隊の存在は論理的に整合しない。ストレートに読めば中学生だって理解出来ることだ(誤解の無いように言っておくが、私は「自衛隊はいけん!」とか言っている訳ではない)。日本国憲法の原文を書いたGHQ民政局の法務エリート達は国連憲章と整合性を持たせる積もりでそれを書いた。彼等の当初の予定では、文字通り日本には戦力を持たせず、日本の安全保障は国連軍が担うことになる筈だった。だがFDRが死亡してスターリンが孤立し、国連中心主義が頓挫したことで、帝国主義勢力による所謂「逆コース」が9条と、それと同時に国連憲章の集団安全保障構想を有名無実化した。冷戦以降NATOギャングが白昼堂々東半球を荒らし回っているのも、遠因はそれだ。9条をどうしたいかと云う問題は必然的に国連をどうしたいかと云う問題と切り離せない筈なのだが、9条護持を掲げる人々がそうした視点を持っている様には全く見えない。

 ロシア(軍事)と中国(経済)を中心とする反帝国主義勢力は国連憲章を再活性化し、国際法に基付く平等な主権国家同士の国際秩序を志向しているが、日本人の大多数はそうした流れに気が付きもしない。寧ろロシアは中国こそが邪悪で無法な帝国だと信じている。彼等はマスコミが伝える「国際社会」、即ちファシズムをブランド変更しただけの西側自由民主主義ナチ陣営こそが世界の全てだと思い込んでいて、それ以外の国々で起きている世界史的な大変革が理解出来ない。だから彼等の叫ぶ平和を求める声は空疎で空回りしている。帝国主義や新植民地主義、ファシズムや新自由主義を批判出来ない反戦主義は、中身の無い空っぽのポエムだが、彼等は基本的に自分達の生活にしか関心が無いので、自分達の耳に心地良い情報だけを選んで後は無視することに何の躊躇いも持たない。セカイに平和をと言いながら、彼等は認知的な檻の中から出て来ようとしない。そして平然と帝国主義の犠牲者達を差別する。そしてそのことに気が付いていない。

 そんなことはない? なら、2022年8月現在、西側大手メディアはウクライナ紛争ばかりを取り上げているが、世界中を見渡せば、戦争や紛争やジェノサイドや制裁やテロや重大な人権侵害等は至る所で起こっている。それらの内、幾つ位まで具体的に挙げられるだろうか? 「世界から核を無くそう」と訴えている日本人達は、現状では自国が被害者ではなく加害者サイドに居る事実に、何処まで気が付いているだろうか?
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
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