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ロイターがワシントンのグローバルな偽情報キャンペーンを暴露:その後の話(抄訳)

2024/06/18のブライアン・バーレティック氏の記事の抄訳。2024/06/14のロイター通信の記事の解説。米国防総省はCOVID-19パンデミックの際に中国を中傷する大規模なキャンペーンを展開していたが、これは氷山の一角だ。
 
 COVID-19パンデミックはこれまで繰り返して来た様に史上最大のパンデミック詐欺事件であって、様々な問題を巡って膨大な嘘や偏見や誤解が幾重にも折り重なっているので、100人居れば100の解釈が出て来る様な複雑極まり無い事象だ(だから「この解釈こそが決定版だ!」と現時点で自信満々に最終解答を断言する人は私は信用出来ない)。ワシントンの対中国偽情報キャンペーンが暴かれたからと言って、中国のCOVID-19「対策」と称するものが科学的に正しいとは私には思えないし、これは中国に限らず全世界に関して同じことが言える。だからこの記事で指摘されている嘘は、入り組んだタマネギの皮のほんの一枚に過ぎないだろうと思う。何もかも一遍に考えると混乱するだけなので、個々の層の問題を分けて考えることを心掛けるべきだろうと私は思う。
Reuters Exposes Washington’s Global Disinformation Campaign: The Rest of the Story



 2024/06/14のロイター通信の記事は、多くの人々が長年既に知っていたこと、つまり米国政府やその様々な省庁や機関が、弱体化させたい国やレジーム・チェンジを狙っている国々を標的として、グローバルな偽情報キャンペーンを展開していることを認めた。



 米国は自分達の「同盟国」に意図的に害を与えていた

 「ペンタンゴンはパンデミック中に中国を弱体化させる為に秘密裏に反ワクチン・キャンペーンを行った」と云うタイトルのこの記事に拠ると、米国がCOVID-19パンデミックの真っ最中に、特に大きな被害を受けたフィリピンで中国の影響力が増していると見てこれに対抗する為、秘密作戦を開始した。

 この秘密作戦が報道されたのは今回が初めてだ。

 この作戦の目的は、中国が供給しているワクチンやその他の救命援助品の安全性と有効性について疑問を植え付けることだった。フィリピン人になりすました偽のインターネット・アカウントを通じて、軍のプロパガンダ活動は反ワクチン・キャンペーンに変わった。これらのアカウント投稿はフェイスマスク、検査キット、そしてフィリピンで利用可能になる最初のワクチンである中国のシノヴァクのワクチンの品質を非難した。

 このキャンペーンはフィリピンだけではなく、東南アジアの他の地域、更にそれ以上に広く実施された。

 これは米国が中国製のワクチンや中国が製造した防護具等に欠陥が有ると本気で信じていたからではなく、純粋に中国を弱体化させる目的で行われた。

 偽情報キャンペーンに関与した或る軍高官はこう語っている:「我々はこれを公衆衛生の観点から見ていませんでした。我々はどうすれば中国を泥沼に引き摺り込めるかを検討していました。」

 またロイターがインタビューした医師達は、「潜在的な地政学的利益の為に民間人を危険に曝した」ことを認めた。



 米軍だけが犯人ではなかった

 ロイターの記事が暴露したのは氷山の一角だ。東南アジア諸国では軍が展開したソーシャル・メディアによる大規模キャンペーンに加え、米国務省は全米民主主義基金(NED)を通じて、米国政府が設立した様々な反政府勢力や政党に呼び掛けて、同じ偽情報をメディア全体や街頭にまで広げた。

 タイでは、億万長者から政治家に転身したタナトーン・ジュンルンアンキット率いる米国の支援を受けた「未来前進党」と、NEDが資金提供する彼の反政府運動が、、一連の抗議活動を通じて嘘と偽情報を拡散した。そしてタイ政府に対し、中国との協力を止め、代わりに米国、具体的には米国のビッグファーマであるファイザーとモデルナからワクチンを調達するよう要求した。

 サウスチャイナ・モーニングポストは「中国のシノヴァク・ワクチンがタイの反政府抗議活動の集中砲火に巻き込まれた経緯」と云う2021年の記事で、タイの反政府運動の要求が政治や君主制の改革を超えて、政府のパンデミックへの対応とシノヴァク・ワクチンに頼っていることへ焦点を当てていると解説している。この記事はこの「反対派」が具体的に誰であって、何故彼等が国防総省の主張と同じことを言っているのかには触れていないが、ロイターの記事が明らかにした様に、これは明らかに偶然の一致ではない。

 米国は世界中の反体制派や政党に資金を提供しているが、ワシントンは対中国偽情報キャンペーンにこれらの勢力を利用しており、これらはあらゆる面で中国を非難し、米国の肩を持っている(例えば南シナ海の領土問題にはタイは関係無いのだが、タイの反政府勢力はこの問題でも中国を非難している)。



 米国の偽情報キャンペーンはこれが最初ではないし、最後でもない

 ロイターの記事はここで取り上げたもの以外にも、同様のキャンペーンがもっと沢山行われていることを示唆している。

 「秘密の心理作戦は、政府の最も機密性の高いプログラムのひとつである。それらの存在を知るのは、米国の諜報機関と軍事機関内の少数の人々に限られている。こうしたプログラムは、公開されると外国との同盟に損害を与えたり、ライヴァルとの紛争を激化させたりする可能性が有る為、特別な注意を払って扱われる。」

 「2019年、トランプ大統領は中央情報局に対し、中国の世論を自国政府に敵対させることを目的として中国のソーシャル・メディア上での秘密キャンペーンを開始する権限を与えた。その取り組みの一環として、少数の工作員グループが偽のオンラインIDを使用して、習近平政府を中傷する話を広めた。」


 これらのキャンペーンは現在も続いており、ファーウェイの通信機器から主要なインフラ・プロジェクトまで、他の中国製品やプロジェクトの品質と安全性に疑問を投げ掛けている。と云っても米国は中国が取引している発展途上諸国に、代わりに自分達の代替品を供給・販売したい訳ではない、発展途上諸国が発展する機会を完全に潰したいだけだ。

 タイの場合、タナトーン・ジュンルンアンキットはタイと中国をラオス経由(既に中国が建設した高速鉄道が機能している)で結ぶ政府の高速鉄道建設計画を非難している。2018年の記事では彼は「タイに必要なのは中国が建設する高速鉄道ではなく、ハイパーループ(真空チューブ鉄道)だ」と主張している。2019年のイヴェントでは、彼は「過去5年間、我々は中国を重視し過ぎた。我々はヨーロッパ、日本、そして米国との関係のバランスを調整すべきだ」と主張している。

 米国務省は定期的に中国の一帯一路構想を非難し、各国を「債務の罠」に陥れ、中国に依存させる為の手段として非難している。

 タイは地理的に近く、文化的・歴史的に共通の繋がりを持っているからこそ中国を重視している。それにまた中国はタイにとって最大の貿易相手、投資家、観光源、インフラ・パートナーであり、防衛分野での協力も強まっている。米国やその代理勢力である欧州や日本には中国の代わりを果たすことは出来ない。中国から距離を置いてそれらに軸足を移すのは、タイにとっては不合理な選択肢だ。

 それが「合理的」だと言えるのは、そうした提案をする人々がタイではなく米国の国益を重視している場合だけだ。タナトーン・ジュンルンアンキットの様にワシントンと密接な関係を結び、その反政府運動がワシントンから資金提供を受けている人物であれば、タイを犠牲にして米国の国益に適う政策を提案するのは驚くことではない。

 これは米国が世界中を操ろうとしていることのほんの一例に過ぎない。米国は各国政府を政治的に掌握し、属国政権を権力の座に就かせ、標的となった国(この場合はタイ)を犠牲として米国の国益に奉仕する方向に政策を不合理に転換させることによって、各国を中国との協力から強制的に遠ざけようとしている。

 これを行っているのは米軍だけではなく、米国務省や、ワシントンが構築/資金提供/司令する組織や政党の広大な世界的ネットワークも含まれる。

 従って世界中の国々にとって、それぞれの情報空間内で米国が行っている中傷キャンペーンと、それらに利用されるソーシャル・メディア・ネットワークを管理して国民をそうした中傷から守る必要性を理解することが重要となる。

 外国のソーシャル・メディア企業に自国内に事務所を開設するよう強制し、それらが偽情報キャンペーンを行った場合は放置せずに現地法に違反した責任を追及し、米国が支援するプラットフォームではなく現地の代替手段を開発することで、米国の標的とされた国は自国の情報空間を誰がどの様な目的で利用出来るのか———そしてロイターが報じた様な心理操作と強制を容認するかどうかを、自ら決定することが出来る様になる。

 中国とロシアはそれぞれ自国の情報空間の主権確保の取り組みを進めている。両国が世界中に輸出している防衛用品の品目の中に、情報空間を守る手段を追加することも出来るだろう。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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