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ウクライナによるベルゴロド爆撃が送った5つのメッセージ(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。多少補足した。2023/12/30にキエフがロシアのベルゴロドに対して行った国家テロ攻撃は、結果的には西洋にとって裏目に出た。
The Five Messages Sent By Ukraine’s Latest Bombing Of Belgorod



キエフがロシアのベルゴロドでまたしてもテロ

 新年間近の2023/12/30、ウクライナはロシア国境の都市ベルゴロドで、意図的に民間人を標的にした国連条約で禁止されているクラスター爆やその他の兵器を使ったテロ攻撃を開始した。
Ukraine launches deadly drone attack on Russian city of Belgorod

Ukrainian Shelling of Belgorod Leaves Casualties | VOA News


 この攻撃により少なくとも24人(4人の子供を含む)が死亡、131人が負傷した。スポーツ複合施設、スケートリンク、大学、幾つかの住宅街が被害を受けた。

 この攻撃は米英の顧問達の支援を受けていたとして、ロシアのネベンジア国連常任代表は彼等をこの残虐行為の計画に加担したと非難した。
The British and Americans were involved in organizing terrorist attack in Belgorod! Russia, Ukraine


 これはロシアにとってこれまでで最大規模の空からの集中砲火(12/29)の直後に行われた。

 これは専ら軍事施設を標的とした攻撃であって、民間の巻き添え被害も報告されているものの、ロシア側はこれは欠陥が有ることで悪名高いキエフの防空システムの所為だと主張した。



 1 )大規模攻撃にはテロで対応する。

 このタイミングは、キエフがベルゴロド攻撃によって送ろうとしたメッセージを明らかにしている。つまり、国家規模の軍事攻撃に対しては、国境を越えた国家テロ行為で対抗することにする、と云うことだ。

 従来の報復的な対応を行うことは、キエフにはそうした手段が無いので不可能だ。

 過去22ヵ月にこの点で達成出来た最大の成果は、2022/12/05、ロシア奥地の軍事施設に対する幾つかのドローン攻撃3人が死亡)に過ぎず、しかもこれは例外的な攻撃だった。

 従ってキエフは、12/26にクリミアで行った様に軍事目標を標的にするのではなく、意図的に民間標的を選んだのだ。



 2)民間標的は意図的に選ばれた。

 標的にされたのは多数の民間人が住む静的な(動かない)目標ばかりだった。従って攻撃された地域はかなり前から選出されていたことが判る。

 それらの全てが、キエフのプロパガンダが主張している様に、コースを外れたウクライナの弾薬や、「欠陥の有る」ロシアの防空システム(実際にはロシアの防空システムは世界一優秀であることで知られている)の所為で攻撃されたとは信じ難い。

 禁止されているクラスター弾が民間人の住む都市目標に対して使用されたと云う事実は、キエフの殺傷目的を証明している。

 従ってキエフとその西洋のパトロン達は、自分達が国境を越えたロシア国内の民間目標のリストを持っていることを、ロシア側に知って貰いたいと考えている。これによりロシアの大規模攻撃を阻止するのが目的だが、モスクワがこのテロ脅迫に屈するなどと云う可能性は考え難い。寧ろこれはウクライナの非軍事化・非ナチ化の決意を強めただけだろう。



 3)キエフは支持率を回復させたい。

 キエフ政権は文字通り血に飢えている。彼等は出来るだけ多くのロシア人を殺すことで、この紛争に於ける自国民からの支持を取り戻したいと考えている。

 ・夏の反攻は失敗に終わった。
 ・西洋からの援助は削減された。
 ・ウクライナ側は守勢に戻った
 ・キエフの政治的対立は悪化中
 ・新たな徴兵令は国民から非常に評判が悪い
 ・これらの所為でウクライナ人の士気は低下している。

 こうした訳で、キエフ政権に対する信頼は大きく落ち込んでいる。この為西洋の有力シンクタンク、大西洋評議会は、「当局に対する(ウクライナ)国民の正当な怒り」を抑える為に、「国民を団結させる政府」の樹立を提案した程だ。現状が放置されたり、更に厳しい取り締まりによって逆に事態が悪化した場合、大統領府に対して大規模な抗議行動が起こることも有り得るし、最悪の場合、軍事クーデターが起こるかも知れない。

 ゼレンスキーが権力をライヴァル達と分け合うか、和平交渉を再開させれば、高まり続ける「国民の正当な怒り」も管理し易くなるかも知れないのだが、彼はそのどちらにも関心が無い。その代わり彼は、出来るだけ多くのロシア人を殺すことこそが自国民が自分に期待していることだと考えている。

 ロシアの治安関係の情報筋が、ベルゴロド攻撃はゼレンスキーが個人的に命令を下したものだと証言しているが、この様な背景を考えれば尤もな話だ。


 4)テロ攻撃はまだ続く。

 12/31、ロシア国防省は、ベルゴロド攻撃を計画した者達を排除する為に、ウクライナの軍事施設や当局者達を標的とした高精度ミサイル攻撃を相次いで実施したと発表した。

 この攻撃当時、再度国境を越えたロシア領土へのテロ攻撃を準備中だった最大200人の外国人傭兵達も敷地内に居た。

 再度のテロ攻撃が起こっていた場合、国内の士気を高めるのに必死になったキエフ政権はその機を捉えて一時的にロシア領土の一部を占領しようとしたかも知れない。

 またその場合、12/30の攻撃に関与した英米の顧問達も、この計画を知っているか、計画立案に関与している可能性が有る。彼等が「休暇」を終えてそれぞれの自国に戻った時には、西洋はウクライナに対するより多くの援助を認可する法律策定に前向きになるかも知れない。

 再度のテロ攻撃はロシアの報復攻撃が行った所為で実現しなかったが、同様にテロ攻撃の準備をしている外国人傭兵部隊が他の場所にも居る可能性は排除出来ない。従ってこれに関連する事件が今後発生する可能性が非常に高い(但しそれがウクライナ人の士気を高めるかどうかはまた別問題だ)。



 5)西洋の言うことは嘘っぱち。

 西洋のメディアや当局者は、誰もベルゴロド攻撃を批判しなかった。それどころかEUの外交担当報道官は「ウクライナには………侵略から、身を守る法的権利が有る」と擁護すらした。つまり西洋はウクライナが犯す国家テロ行為に対して、白紙委任状を発行したに等しい。

 この観察は、新冷戦ブロックが主張する「ルールに基付く秩序」なるものが、彼等が自らの利益追求を推進する上で恣意的に二重基準を適用することを偽装する為のレトリックである事実を(またしても)暴いている。

 キエフは意図的に民間人を標的にしたのに、西洋は一切関心を払わない。西洋が本当に「人権」を重視しているなら、決してこの様な態度は取らない筈だ。

 これはソフトパワー上、新冷戦ブロックにとっては逆効果だ。従って今回のテロ攻撃は意図されたものではなかった可能性が有るが、結果は世界中の目に明らかになってしまった。

 従ってロシアはこの件に関して国際社会(特にグローバル・サウス)の注目を最大限に引き出すことが望ましい。これは世界の大多数の目から見た西洋の偽善を暴くのに役立つ。西洋は「ルールに基付く秩序」とやらの体裁を取り繕う為に、形ばかり涙すら流そうとしていないからだ。

 ウクライナ紛争は、ウクライナを使ったNATOの対ロシア代理戦争であり、西洋も最早その事実を隠そうとしなくなった。

 ウクライナが西洋から何の批判も受けずに、ロシアの民間人に対して国家テロを繰り返せば繰り返す程、ウクライナの非軍事化・非ナチ化・中立化と云うロシアの特別軍事作戦の3目標に対してグローバル・サウスは共感を深めることだろう。

 これらを考慮すると、年末のベルゴロド攻撃は西洋にとっては裏目に出た。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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