軍備管理を巡る状況は米国の身勝手な振舞いにより悪化している———ラヴロフ(抄訳)
2023/12/18にTASS通信に掲載されたラヴロフ外相のインタビューより、軍備管理に関する部分を抜き出してみた。ロシア側が米国の身勝手な主張に振り回されるのはもううんざりだと云う本音が伝わって来る。
Сергей Лавров: у Зеленского отсутствует воля к миру
Situation with arms control deteriorating — Lavrov
Russia’s further adherence to INF Treaty-related moratorium remains acute issue — Lavrov
Russia for arms control, but dialogue possible after policy change in US — Lavrov
軍備管理分野の状況は、米国の不安定化政策と具体的な破壊行為により悪化しています。同時に、米国は国際安全保障の分野で意図的に緊張を高めています。これらのプロセスは互いに密接に関連していて、一方が他方に供給し、またその逆も同様です。
方法論的な観点から見ると、ABM条約、中距離ミサイル禁止条約、オープンスカイの場合の様に、アメリカ人は条約から離脱することで条約体制を直接破壊します。或いは、相手側がそれを履行するに際して受け入れ難い条件を作り出す———これが正にCFE条約(ヨーロッパ通常戦力条約)と新STARTで起こったことです。
ワシントンの論理は単純です。 米国の優位性を確保していた柱が足元から消えつつある。その主な原因は、自分達の「例外主義」、無謬性、不処罰を信じていたアメリカ人自身の間違いによるものです。覇権の地位が失われることを遅らせようとして、彼等は武力に頼りました。従って、軍事的優位性の追求、フリーハンドの武力行使を確保したいと云う願望が有るのです。これは正に、軍備管理の分野に於ける制限や、国際プロセスの参加者達の利害の戦略的バランスを確保する為に設計されたその他の手段が拒否される理由を説明するものです。
ほんの一例ですが、米国は、こじつけの口実を掲げて、INF全廃条約を破棄しました。実のところ、条約で禁止されているミサイルが、対中国を含めて米国にとって単に必要になっただけです。それらに対する制限が邪魔になり始めたので、彼等は躊躇うこと無くそれらを取り除きました。この措置が地域と世界の安全保障に及ぼす悪影響は明らかです。米国の地上配備型INFミサイルの欧州とアジア太平洋地域への配備計画が実施される中、同様の兵器に対してロシアが課した配備一時停止措置を更に延期することが妥当かどうかが問題となっています。同型の米国製兵器が関連地域に出現したことが背景に在ります。
新STARTに関する米国との対話と、それに代わるものに関する合意の見通しに関して、我々は、ワシントンが反ロシア路線を放棄しない限り対話は不可能であることを明確にしました。我々にとって、核軍備管理に関する交渉を開始し、ネガティヴな軍事政治的文脈やロシアと西洋との関係の憂鬱な情勢から交渉を切り離すと云う米国の考えが不十分であることは明らかです。ワシントンの関心ははっきりしています。他国の軍事能力に対する優位性を確保することで、自らの核リスクを軽減することです。アメリカ人が「区分整理(compartmentalization)」と云う不愉快な名前を付けているこのアプローチ、つまり「ロシアは敵だが、我々にはロシアから何かが必要だ」と云うアプローチは、我々にとっては絶対に受け入れられません。特に、米国とその同盟諸国が「ロシアに戦略的敗北を与える」と云う意図を隠さず、ウクライナ周辺の危機のエスカレートさせ続けているのですから尚更です。
我々は軍備管理の考え方自体を放棄しません。しかし、紛争の可能性を最小限に抑える方法や、西洋諸国との更なる共存に向けたパラメータに関する将来の仮説的な対話は、平等と、ロシアの基本的な安全保障上の利益と、根本的に新しい地政学的現実の強制的尊重に基付いてのみ可能となるでしょう。米国とその同盟諸国の側にこれに対する用意が整っていない場合、このテーマに関する如何なる議論も見通しが立たないでしょう。
Сергей Лавров: у Зеленского отсутствует воля к миру
Situation with arms control deteriorating — Lavrov
Russia’s further adherence to INF Treaty-related moratorium remains acute issue — Lavrov
Russia for arms control, but dialogue possible after policy change in US — Lavrov
軍備管理分野の状況は、米国の不安定化政策と具体的な破壊行為により悪化しています。同時に、米国は国際安全保障の分野で意図的に緊張を高めています。これらのプロセスは互いに密接に関連していて、一方が他方に供給し、またその逆も同様です。
方法論的な観点から見ると、ABM条約、中距離ミサイル禁止条約、オープンスカイの場合の様に、アメリカ人は条約から離脱することで条約体制を直接破壊します。或いは、相手側がそれを履行するに際して受け入れ難い条件を作り出す———これが正にCFE条約(ヨーロッパ通常戦力条約)と新STARTで起こったことです。
ワシントンの論理は単純です。 米国の優位性を確保していた柱が足元から消えつつある。その主な原因は、自分達の「例外主義」、無謬性、不処罰を信じていたアメリカ人自身の間違いによるものです。覇権の地位が失われることを遅らせようとして、彼等は武力に頼りました。従って、軍事的優位性の追求、フリーハンドの武力行使を確保したいと云う願望が有るのです。これは正に、軍備管理の分野に於ける制限や、国際プロセスの参加者達の利害の戦略的バランスを確保する為に設計されたその他の手段が拒否される理由を説明するものです。
ほんの一例ですが、米国は、こじつけの口実を掲げて、INF全廃条約を破棄しました。実のところ、条約で禁止されているミサイルが、対中国を含めて米国にとって単に必要になっただけです。それらに対する制限が邪魔になり始めたので、彼等は躊躇うこと無くそれらを取り除きました。この措置が地域と世界の安全保障に及ぼす悪影響は明らかです。米国の地上配備型INFミサイルの欧州とアジア太平洋地域への配備計画が実施される中、同様の兵器に対してロシアが課した配備一時停止措置を更に延期することが妥当かどうかが問題となっています。同型の米国製兵器が関連地域に出現したことが背景に在ります。
新STARTに関する米国との対話と、それに代わるものに関する合意の見通しに関して、我々は、ワシントンが反ロシア路線を放棄しない限り対話は不可能であることを明確にしました。我々にとって、核軍備管理に関する交渉を開始し、ネガティヴな軍事政治的文脈やロシアと西洋との関係の憂鬱な情勢から交渉を切り離すと云う米国の考えが不十分であることは明らかです。ワシントンの関心ははっきりしています。他国の軍事能力に対する優位性を確保することで、自らの核リスクを軽減することです。アメリカ人が「区分整理(compartmentalization)」と云う不愉快な名前を付けているこのアプローチ、つまり「ロシアは敵だが、我々にはロシアから何かが必要だ」と云うアプローチは、我々にとっては絶対に受け入れられません。特に、米国とその同盟諸国が「ロシアに戦略的敗北を与える」と云う意図を隠さず、ウクライナ周辺の危機のエスカレートさせ続けているのですから尚更です。
我々は軍備管理の考え方自体を放棄しません。しかし、紛争の可能性を最小限に抑える方法や、西洋諸国との更なる共存に向けたパラメータに関する将来の仮説的な対話は、平等と、ロシアの基本的な安全保障上の利益と、根本的に新しい地政学的現実の強制的尊重に基付いてのみ可能となるでしょう。米国とその同盟諸国の側にこれに対する用意が整っていない場合、このテーマに関する如何なる議論も見通しが立たないでしょう。
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