2017年も残すところあとわずか。今年の大型IT投資として注目されるのが、コンビニエンスストア大手3社のPOS(販売時点情報管理)レジ刷新である。
ファミリーマートが2017年7月から、セブン-イレブン・ジャパンが10月から、ローソンが11月から順次レジの置き換えを進めている。店頭で変化に気づいた人もいるかもしれない。
レジの置き換えは3社ともに約10年ぶり。全国約2万店、4万5000台のレジを置き換える最大手のセブン-イレブンの投資額は約520億円(周辺システムを含む)に及ぶ。
この3社を取材して回ると、共通するキーワードが見えてくる。「省スペース」と「人手不足への対応」である。
さらに、異なる点があることも分かった。「例のボタン」を巡る対応である。
カウンタースペースをできるだけ空けたい
共通する2つのキーワードへのアプローチが鮮明なのが、ローソンの新型POSレジだ。15.6インチの縦長ディスプレーを2枚、顧客側とスタッフ側に配置した独特のデザインのレジを採用した。NECと共同開発した機種で、大手小売業での全面採用は初めてとみられる。
省スペース化について、ローソンの秦野芳宏経営戦略本部次世代CVS統括部長は「『からあげクン』などのファーストフードの販売を含めたスタッフの作業をしやすくするために、カウンタースペースをできるだけ空けたいと考えた」と言う。
従来機に比べて幅を3分の2に抑えた。決済端末やレシートプリンターはディスプレー下に、自動釣銭機はさらにその下のカウンター内に収容することで、スペースを節約している。従来のレジのようなキーボードはなく、ディスプレーをタッチして操作する。
スタッフが迷わない画面設計に
人手不足への対応も課題だ。アベノミクスや少子高齢化のために、都市部を中心に人手不足が深刻化している。特に深夜勤務で煩雑な業務をこなすことを求められるコンビニのアルバイトは敬遠されがちだ。ローソンは将来的には無人レジの拡大を模索しており、2018年春にも店舗での実証実験を始める。
無人レジ拡大以前の現実的な対策として、ローソンの新型POSレジには様々な工夫を盛り込んでいる。自動釣銭機の導入で現金の扱いを簡素にしたのもその1つだ。
スタッフ側のディスプレーでは、画面上に宅配便やチケット・金券販売など多様なサービスの受け付け方をきめ細かく表示し、スタッフが迷わないように工夫した。ユーザーインタフェース設計のために開発チームにデザイナーを入れて、複数のデザイン候補から操作しやすいほうを選ぶためのA/Bテストを重ねたという。
2018年6月以降にはスタッフの操作画面の多言語対応も予定している。日本語の他に、英語、繁体中国語、簡体中国語にも対応。日本語が得意ではない外国人スタッフでも操作しやすくする狙いがある。
レジの形こそ違えど、この省スペースと人手不足への対応は、セブン-イレブンやファミマの新型POSレジでも共通したコンセプトとして掲げられている。
では異なる点であると指摘した、「例のボタン」を巡る対応はどうか。コンビニでアルバイトをしたことがある人なら、ピンと来るかもしれない。働いたことがなくても、どこかで聞いたことがあるのではないだろうか。