2013年4月25日、ガートナー ジャパン主催の「ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2013」の基調講演に、ガートナー リサーチ バイスプレジデント 兼 ガートナー フェローのスティーブ・プレンティス氏が登壇。「今後5年間でITに影響を与える最重要トレンド」を解説し、ITの未来を予想した。
「2014年までに、SaaS運用管理ツールを使用する組織の30%がサービスレベルの低さを理由にオンプレミスに転換する」---。
プレンティス氏の予想では、これまで先進企業が積極的にけん引してきたクラウド化の流れが、近い将来に止まるという。重要なシステムは社内に置きなおすべきだと考える企業が増え、2014年までに、ITサービスベンダーのトップ100社中20%が市場から姿を消すと予測する。
「企業の90%はWindows 8の大規模展開を回避する」というのもプレンティス氏の予想だ。タブレット用途に最適化したWindows 8は、デスクトップワーカーの業務に適合しないため、組織全体に配布する企業は少ない。ここで課題となるのは、一部の社員が使うタブレット端末の管理、アプリケーションの配布などだ。
ネットワークエンジニアはスキルのアップデートを
また、「ハイブリッドデータセンター」「ビッグデータ」「SDN(Software Defined Networking)」も重要なキーワードだとする。
プレンティス氏はクラウドの未来像について、複数のデータセンターにまたがってシステムを運用するハイブリッドデータセンターが当たり前のものになると説明した。オンプレミスとクラウドのハイブリッド、または、クラウド基盤として複数のデータセンターをまたがるハイブリッドが一般的になるという。
ビッグデータについては、「商機であると同時に脅威でもある」とプレンティス氏は指摘する。ビッグデータを分析して活用するためには、エクサバイト級のデータを保管しなくてはならない。これらのデータは、個人情報保護法などの法規制に抵触するデータが含まれる可能性もある。
さらには、ビッグデータを分析できる人材の不足も深刻だ。「ビッグデータ分析に必要なのは、技術ではなく“解釈力”だ。例えば、SNSのデータを解釈するには、社会的、心理的、行動分析のスキルが必要になる」(プレンティス氏)。
SDNも、未来のITに大きなインパクトを与えるトレンドだ。「SDNは、ネットワーク管理機能を個々のハードウエアから切り離し、ソフトウエアで中央管理する。数時間から数分でネットワーク構成を変更することができる」(プレンティス氏)。数年前にシスコから認定されたきりのネットワークエンジニアは今後、SDNに職を奪われるとして、今すぐスキルのアップデートを開始すべきだとプレンティス氏はアドバイスした。
当初、第2段落で「SaaSを利用する企業の30%」としていましたが,より正確に講演者の意図に沿うよう「SaaS運用管理ツールを使用する組織の30%」に表現を改めました。 [2013/05/08 14:40]