総務省 グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォースは2010年7月13日、電気通信市場の環境変化への対応検討部会「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ(WG)」の第5回会合を開催した。今回は、WGとしての700/900MHz帯の割り当て方針を決める上での論点整理に向けて、構成員と事務局である総務省との間で質疑応答や議論を行った。
会合の冒頭、内藤正光総務副大臣は論点整理に向けて、構成員に重視してほしいポイントを三つ挙げた。周波数割り当て時期をいつにするかという「時間軸」、他システムとの干渉が回避できるのかという「技術的問題」、現行システムの周波数移行を伴う場合の「実現可能性」である。質疑や議論もこのポイントに沿って進んだ。
時間軸について質問したのは、野村総合研究所 上席研究員の横澤誠氏である。横澤氏は「時間軸を意識して段階的に周波数を割り当てるのであれば、2012年を第1のターゲットにして次は2015年、次は2020年という年度や、第3.9世代移動体通信からLTEへの移行期などというイメージでいるが、これでいいのか」と総務省へ質問した。総務省 総合通信基盤局 移動通信課長の竹内芳明氏は「影響の少ない現実的なものを構成員で検討してほしい」と述べた。
技術的問題では韓国との電波干渉に関して、韓国の周波数割り当ておよび用途に関する質問が出た。これに対して総務省 総合通信基盤局 電波部長の吉田靖氏は、「韓国は700MHz帯の割り当てでは、698M~806MHzを割り当てる方針を示しているが、韓国へ訪問して意見交換したところ、上り下りの割り当て案など詳細はまだ決まっていないとのことだった。大半が携帯電話向けと聞いているが、一部を放送向けや他の省庁の通信に使うという話もあった」と状況を説明した。
実現可能性については、東京理科大学理工学部 教授の伊東晋氏は他システムの周波数移行を伴う国際協調に懐疑的な見方を示した。伊東氏は、「周波数割り当ては2015年でもいいという意見があるが、2015年ならばテレビ放送のデジタル移行はもっとゆっくりでもよかったのではないか。移動の議論の際の切迫感はどこへ行ったのか。切迫していないのなら、国際協調もほどほどでいいのでは」と意見を述べた。
一方、上智大学理工学部 教授の服部武氏は、「日本の携帯電話メーカーが海外市場に乗り遅れたのは、世界の進展がマルチバンドだと読めなかったことであり、日本は反省すべき部分である。海外の市場を狙うなら、周波数割り当ては世界展開を考慮すべきだ」として、国際協調すべきという立場を取った。
次回以降の会合は、関係事業者へのヒアリングや700/900MHz帯の再編案についての意見募集結果、および意見募集結果に対する再意見募集の結果、欧米での周波数割り当て状況、AWFの検討状況を踏まえ論点をまとめるという。