「予算オーバーや納期遅れ、品質低下といった失敗プロジェクトをIT企業の視点で調べると、九つの共通点が見つかった。九つのうち三つを満たす案件については、特に注意が必要だ」。NTTデータの岩本敏男副社長パブリック&フィナンシャルカンパニー長は2010年1月15日、プロジェクトマネジメント(PM)の国際標準化について議論する「PM国際標準化フォーラム」に登壇し、こう述べた(写真)。
岩本副社長が挙げた九つの要因とは、次のものである。一つ目は、対象プロジェクトが新規顧客からの受注であること。二つ目は、新システムの要件が「現行どおり」とされていること。三つ目は、新技術や経験のない処理方式を採用していること。四つ目は、IT企業と顧客との間で一括請負契約を結んでいること。
五つ目は、IT企業のプロジェクト原価率が95%以上であること。六つ目は、開発期間が6カ月以内といった短期プロジェクトであること。七つ目は、プロジェクトマネジャが過去に似たようなシステムを開発した経験がないこと。八つ目は、受注したIT企業が下請け企業に仕事の90%以上を回していること。九つ目は、顧客の要件定義力に問題があることである。
講演のタイトルは「企業におけるPMの意義について」。岩本副社長は、これら九つの失敗要因を回避するためにも、「プロジェクトマネジメントについて真剣に取り組むことの重要性が高まっている」と強調した。
岩本副社長は、「システムの大規模化が進み、納期とコストを守り高品質なシステムを構築することがどんどん難しくなっている」と指摘、「大規模開発をコントロールできるプロジェクトマネジャの育成が急務だ」と続けた。
プロジェクトマネジャの責任はますます重大になり、その人気が低下しているとの声もあるが、岩本副社長は「大変な分だけ達成感も大きい。プロジェクトが成功すると、大げさではなく、人間として生きてきてよかったとさえ思う」と、プロジェクトマネジャの仕事の魅力を訴えた。
岩本副社長は、「IT企業はプロジェクトマネジャの社内資格を定めたり、表彰・育成制度を体系的に整備するなどして、プロジェクトマネジャを組織的に育成・支援する必要がある」と述べた。
PM国際標準化フォーラムは、情報処理推進機構(IPA)と、PMの国際化に向けて議論する組織「ISO/PC236国内対応委員会」が主催して開催した。