新日鉄ソリューションズ(NS-SOL)は2008年10月23日、同社のクラウドコンピューティング基盤「absonne」上で医療・福祉向けASPサービスの運用を受注したと発表した。最大8000クライアントが同時接続するシステムで、これまで同社データセンターで個別に運用を受託していたシステムを刷新。従来比でシステム構築費用を20%削減できたという。
受注したのはワイズマンが介護・福祉事業者向けにASP形式で提供する業務システム。Visual Basicで開発したパッケージソフトを2005年にASP化したもので、NS-SOLが運用を受託してきた。今回、ワイズマンがシステムを刷新するのに合わせて、運用形態をワイズマン個別のシステム基盤を確保する方式から、クラウド基盤であるabsonneを利用する方式へ変更した。
新システムの初期費用を削減できた理由は、absonneが複数顧客でハード資源を共有するシステム基盤であるからだ。顧客ごとに物理的なハードを用意するのではなく、仮想化技術を使ってハード資源を複数のユーザー・アプリケーションで共有できるようにする。あるユーザーの処理能力が不足したら、仮想化したサーバーなどを割り当てる。このため、1社当たりの基盤構築費用や運用費用を抑えることができる。
absonneの設計を主導するNS-SOLの大城卓 業務役員は、「従来に比べ、処理能力をより柔軟に増強できる」とみる。ワイズマン専用のシステム環境を用意していたこれまでの形態では、処理能力を増強するために物理的なサーバーを追加する必要があった。これが期間や費用の増加を招いていたという。
クラウド基盤を使えば、仮想化技術により仮想マシン単位で処理能力を増強したり、グリッド技術で処理負荷を分散させたりできる。同じ処理能力を増強する場合、期間も従来の半分程度で済むという。「短期的な能力増強と長期の運用の両面で、顧客企業はメリットを享受できる」(大城業務役員)。
これまでクラウド基盤サービスはグーグルやアマゾン、セールスフォースといった海外が先行していた。だが国内でもNS-SOLをはじめ、大手ITベンダーがこの10月から相次いでサービスを開始している。NTTデータや三菱商事系のアイ・ティ・フロンティアなどだ。伊藤忠テクノソリューションズは10月に東京都文京区に開設した新データセンターをクラウド基盤サービスの拠点として活用する。これに先立ち、NECは今年3月、日本ユニシスは6月に、それぞれクラウド基盤サービスを発表済みだ。