財団法人 国際情報化協力センター(CICC)は2月26日から3月9日にかけ,アジア各国の技術者を対象に,日本発のオープンソース・プログラミング言語Rubyのトレーニング講習を行った。経済産業省からの委託によるアジアOSS基盤整備事業の一環として実施している人材育成プログラムの一つで,インドなど5カ国8名の技術者に対し,Ruby on RailsによるWebアプリケーション開発実習などを行った。
経済産業省では,アジア各国でオープンソース・ソフトウエアの普及を促進する施策を行っている。アジア各国が,欧米ベンダーの製品が占拠する市場ではなく,自由な競争が行えるオープンソースが標準となる市場となることで,日本のIT企業がハンデなく市場を開拓できる土壌を作ることが狙いだ。具体的にはアジア各国でのOSSシンポジウム(関連記事)開催や,標準化の推進,調査,人材育成などを実施している。
人材育成は,シンガポールのCICC現地事務所などアジア各国での講習と,技術者を日本に招いての講習を行っている。アジア各国では,OSS Trainers Workshopと称し,オープンソース・ソフトウエアの教育を行うことができる講師の育成を行っている。2005年から中国,マレーシア,シンガポール,インドネシアなどで開催しており,2006年末までに約500名が講習を受講。2007年末には2500名が受講する予定。CICCでは,受講者が自国で講師として活動することで,将来的には数万,数十万人のオープンソース技術者が育成されることを期待している。
これまではアプリケーション開発言語としてはPHPを採用していたが,今回はRubyを取り上げた。日本発の技術であることから,日本企業の市場開拓に役立つと判断した。
今回のプログラムはインドから3名,タイから2名,ベトナム,フィリピン,インドネシアからそれぞれ1名の技術者を日本に招待し行った。受講者の一人,KARANGULA Indraveni氏はインド政府の研究機関C-DAC(先進コンピュータ開発センター)から参加した。「オープンソースに興味があって参加した。Rubyについては全く知らなかったが,非常に優れた技術だ。帰国したら,Rubyとオープンソースを活用していきたい」(KARANGULA氏)
講師のオープンドリーム 主任トレーナー 三宅泰裕氏は「参加者はいずれも技術力は高く,貪欲」と話す。Rubyについての予備知識はない参加者が多かったが,講習中にRuby on Railsを使ったスペルチェッカーやマルチバイト・データ検出アプリケーションなどを作り上げた。
CICCでは参加者が帰国後,Rubyとともにオープンソースを広めることを期待しており,Rubyの作者であるまつもとゆきひろ氏が所属するネットワーク応用通信研究所からも講師が参加し,技術だけでなくオープンソース・ソフトウエアの考え方などについても講義した。
◎関連資料
◆アジアOSSトレーニング・プログラム・ホームページ(CICC)
◆アジアOSSトレーニング・プログラム テキスト/資料(CICC)