米Google 業務開発兼国際営業担当上級副社長のOmid Kordestani氏は2006年9月8日,東京都内で開催された「2006東京国際デジタル会議」で,「Googleの考える『グローバル企業』の意味」と題した基調講演を行った。Google社のビジネスの現状や今後の方向性などを語った。
Google社は2005年に前年比1.9倍に当たる約61億米ドルの売上を記録した。同氏は急成長の理由を,「ユーザーのニーズを最も重視し,ビジネス・モデルやお金のことは二の次に考えるというサービス開発に対する姿勢や,短期間に数多くの革新的なサービスを出していく体制にある。そして,広告主に対して新たな価値を提供している点も重要だ」と分析した。
同氏は講演のテーマにもなっている「グローバル企業」という点について,Google社が海外事業を非常に重視していることを強調した。「インターネット・ユーザーのうち79%は米国外に居住する。当社の設立当初は海外事業担当の社員がいなかったが,それでも海外のユーザーがたくさん使ってくれた。だからサービスのローカライズは非常に重要なのだ」と話す。
実際,売上全体に占める海外比率は年々高まっているようだ。「2001年の段階では海外の売上はゼロだったが,2004年には全体の31%を占めるまでに成長している」(同氏)とした。2006年第2四半期には,米国内の売上は前年度同期比で67%増だったのに対し,海外の売上は同93%増だったという。
ビジネスの今後については,「モバイル機器向けのWebサービスの開発に力を入れる。特に膨大な数の人口を抱える新興市場ではモバイル機器の成長機会が大きい。こうした市場では,モバイル機器がパソコンの代わりに主要なコンピュータとして使われているからだ。現在,インターネット・ユーザーは約10億人いるが,我々にとっては(新興市場にいる)次の10億人のユーザーに対して,どのようなサービスや技術を提供していくかが重要である」と話した。
さらにKordestani氏は,インターネットの環境変化について米Microsoft社を引き合いに出し,「10年前は,ソフトウエアの大企業が重い(=容量が大きい)ソフトウエアを何年もかけて開発し,リリースしていた。しかし,最近では開発者からユーザーにパワー・シフトが起きている。ユーザーがソフトウエアの開発に参加するだけでなく,技術革新などもコントロールするという現象が起きている。その最たる例がソーシャル・ネットワーキングだ。こうした新たなトレンドは,インターネットの既存の枠組みに大きな変化をもたらすことになるかも知れない」と,ユーザーのコミュニティが大きな力を持つことを強調した。