人事戦略コンサルティング会社の米タワーズペリンは、「仕事に対して『非常に意欲的』と感じる日本人は世界16カ国中で最低となるわずか2%しかいない」という調査・分析結果を明らかにした。仕事に「意欲的でない」と答えた日本人も41%おり、インドの56%に次いで2番目に低い (表1)

図1

 タワーズペリンは、米国に本社を置き、世界24カ国に9000人のスタッフを抱える人事戦略コンサルティング会社の大手。今回の調査活動では、日本、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、アイルランド、イタリア、スペイン、メキシコ、ブラジル、韓国、中国、インドの16カ国でWebアンケートを実施。2005年8月に、日本人千数百人を含む計8万6000人が回答した。

グラフ1

 アンケートの設問数は約200で、いずれも意識レベルを5段階で回答。この調査結果を基に、仕事に対する意欲、その意欲を高める要因、離職しない理由、就職・転職先選びで求める条件、一般社員から見た管理職への評価などを2005年末までに分析。今春から順次、調査結果を公表している。今後も継続的に調査を実施する予定である。

 タワーズペリンは、仕事に対する意欲を「非常に意欲的」「普通に意欲的」「意欲的でない」の3段階に分類。日本人は順に2%、57%、41%という結果になった (図1)。これに対し、米国人は21%、63%、16%、ドイツ人は15%、70%、15%、イギリス人は12%、65%、23%、韓国人は9%、71%、20%となっており、日本人の思考のネガティブさが目立つ。16カ国の平均値は14%、62%、24%だった。

 また、日本人の特有の傾向として、「仕事に対して意欲的でないにもかかわらず、転職を考えてない人の比率が高い」ということも明らかになった。仕事に意欲的でない人を「退職の予定なし」「退職の予定はないが、オファーがあれば検討」「積極的に転職活動を実施中」「退職を決断済み」「数年内に退職」の5つに分類したところ、16カ国平均では「退職の予定なし」あるいは「退職の予定はないが、オファーがあれば検討」と回答した人が63%。日本人はそれが73%もいた (図2)

グラフ2

 日本はさらに、管理職のリーダーシップに対する評価も16カ国中で一番低かった。「管理職の質が非常に悪い」または「悪い」と回答した人が、日本では40%もいた。16カ国の平均は26%。最も低かったドイツは14%だった。

 日本のビジネスパーソンはかつて、仕事への意欲や会社への忠誠心が高いと言われていた。だが、今回の調査結果は違っていた。タワーズペリン東京支店の中村健太郎コンサルタントは、「これは、過去10年以上にわたって景気が悪く、人員削減をはじめとした急激な組織改革が行われたためだ。会社に忠誠を誓って仕事をしてきたのに、突然、終身雇用は辞めますと一方的に言われ、仕事への意欲がなくなったのだろう」と分析する。

 ただし、「日本人は意欲が減退しても、勤勉さに変わりはない」と同社の岡田恵子コンサルタントが補足する。だから、世界中のビジネスのベストプラクティスと自身の差を徹底的に分析し、昼夜をいとわずに修正していくことが勝ちパターンだった時代は、日本企業は強さを維持できた。しかし、「今後のグローバル競争での勝ちパターンは、いかにイノベーションを起こすかにかかっている。そのためには仕事への意欲を高めないと厳しい」と岡田コンサルタントは警告する。