気になる情報を随時保存し、様々なデバイスで活用できるクラウドサービスの「Evernote」。米国で2年前に始まったばかりの新しいサービスだが、今年に入って日本で急速にユーザーを増やしている。日本のユーザーは全世界におけるEvernoteユーザーの18%に達し、米国に次ぐ第2位のユーザー数を誇る。来日した同社CEO(Chief Executive Officer)のPhil Libin氏に、Evernoteがなぜ日本のユーザーに広く受け入れられるのか、その理由を聞いた。
Phil Libin氏
(写真は小林伸)
Evernoteは、どういう人がどのように使っているのですか?
Evernoteユーザーの80%は、ビジネスとパーソナルの両方の用途に使っている、というアンケート結果が出ています。実際、大部分のユーザーは仕事をしている人で、Evernoteを仕事だけでなく、家庭でも使っています。つまり、Evernoteのターゲットは、仕事と家庭をはっきりとは区別していない、常にいろいろなことを考えている現代の知的労働者と言えるでしょう。
知的労働者が多い業種では、会社の生産性を左右する最も重要な要素の一つが人々の頭脳です。Evernoteは、そのためのすばらしいツールです。仕事と家庭の両方の生産性を高めるために必要なものをすべて組み合わせているからです。
Evernoteを試してみたい人は、仕事に限らず何でも自分が興味を持っていることに使ってみるといいと思います。例えばワインのコレクターなら、ワイン・コレクションの管理に使うといいでしょう。そうして使い方を覚えて慣れてきてから、ほかにどんなことに使えるか考えればいいのです。
ビジネスでEvernoteを使う便利な例を教えてください。
よく使われるのが調査・研究の分野です。報告書を書いたり、問題に取り組んだりするときに、結果をまとめる手段としてEvernoteは非常に便利です。コンピュータでWebを見ていて何か興味のある情報が見つかったら、すぐにEvernoteでクリッピングできます。図書館にいて何か見つけたら写真を撮るだけでいいし、画面を見てわいたアイディアを覚えておきたいと思ったら、写真を撮るか音声メモを録音しておけば、すべて同じところに保存され、どこにいても携帯電話やスマートフォン、コンピュータなどからアクセスできます。2~3カ月かけて大きなプロジェクトに取り組んだり、論文や報告書を書くときに、その過程すべてをEvernoteで記録しておいて、どこからでもアクセスできるのです。
Evernoteは仕事と家庭の境界線に位置づけられる製品ということでしょうか?
その通りです。従来は仕事と家庭との間にとてもはっきりした壁がありましたが、その壁がいろいろな部分で低くなってきています。
ほとんどの企業が製造業を営み、工場や農場を運営していた時代には、従業員の頭の中にあるものはそれほど重要ではなく、彼らがどんな仕事をするかが重要でした。ですがクリエーティブな知識労働者が増えてくると、生産性を決定するのはどれだけ頭の中にあるものを相互に結びつけられるか、どれだけのアイディアを生み出せるかということです。
これは、プライベートな生活で意識していることと全く同じです。つまり、知識労働者の生産性を高めるには、彼らが気分よく快適に過ごせるようにしなければなりません。そのためには、彼らが気に入って使っているツールをビジネスの中で使えるようにする必要があります。
Twitterがいい例で、みんながTwitterを個人的に使い始めたときに、多くの企業はTwitterを禁止しました。ですが、今は多くの会社、特に頭がいい会社が「みんなに勧めて有効に利用しよう」と変わっています。なぜなら従業員にとって、非常に効果的に使えることが分かっているからです。Evernoteも、これと非常によく似ています。