iPhone OS向けアプリケーションの開発企業である米Small Society社は,2008年ごろにBarack Obama氏の大統領選挙戦を支援するアプリを開発した経験をベースに設立された。同社を率いる,元業界アナリストのRaven Zachary氏は, iPhoneのアプリ開発者向けイベント「iPhoneDevCamp」の設立者でもある。同氏は,2010年5月3日~5月6日に米サンフランシスコ市で開催された「Web 2.0 Expo San Francisco 2010」で講演し,iPadなどについて語った。
1991年にApple社が発売したノート・パソコン「PowerBook 100」は,初めてトラックボールやパームレストなどを装備,ユーザー・インタフェース(UI)の面で革新をもたらした。2007年に発売したiPhoneも,スマートフォンの世界にPowerBook 100と同じインパクトを与えた。
タブレット端末のiPadにおけるApple社の戦略も,こうしたかつての製品と変わっていない。タブレット型コンピューターは従来から存在しているが,他社とは異なる戦略を採っている。iPadは,クラウド・コンピューティングのサービスを組み合わせた,「モバイル・コンピューティング時代」を切り拓くだろう。
米ChangeWave Research社のデータによると,iPadに対するユーザーの期待感はiPhoneのときより高かったという。iPhoneが発売された時とは異なり,既に多くのユーザーがタッチ操作に親しみを持っていたからと思われる。驚いたのは,iPadは電子書籍端末としても,他社の電子書籍端末よりユーザーの期待が大きかったことだ。
iPadは発売当日,30万台以上が出荷された。これに加えて,25万個以上の電子書籍と100万以上のアプリが販売された。TechCrunchは,iPadから同サイトへのページ・ビュー数はAndroid携帯電話機より高いことを公開した。iPhoneやiPadのブラウザー体験が携帯電話機より優れていることが,この結果につながったと思う。
Apple社は2010年5月3日に,発売から累計で100万台以上のiPadが出荷され,1200万個の専用アプリ,150万の電子書籍がダウンロードされたことを発表した。これは1台のiPadに対して,平均12個のアプリケーションがダウンロードされたことになる。この数字はかなり高く,iPadのユーザーの多くが既にiPhoneを持っていて,アプリに馴染んでいることが推測される。
ただし,100万台という数字は確かに大きいが,我々の予測では2010年第1四半期までに,iPhone OS搭載機器は9000万台を越える。こう見ると,100万台という数字はまだ小さい。
iPadはアプリ開発者からも大きな注目を集めている。米Flurry社によると,モバイル・アプリ開発者の22%は,iPadが発売される前からiPad向けアプリの開発を開始していたという。iPadの登場によって,革新的なアプリが開発されており,この流れは今後も続くだろう。私はiPad向けアプリについて最近,医療関係や運送関係の企業と話をした。iPadは企業または教育市場でも多くの市場機会を生むと思う。
私は1998年以来,出張などすべての旅行時にノート・パソコンを携帯している。そこでこの一カ月,iPadがノート・パソコンの代わりになるかを確認するために,5回の旅行はiPadのみを携帯してみた。その結果分かったのは,iPadは重さの点でノート・パソコンに対して大きな優位性をもっていることだ。iPadなら周辺備品をバッグに詰めても合計で1.8kgにしかならないが,ノート・パソコンの場合は7.7kgにもなる。ここまで軽くなったので,自分が新しくなったような気分になった。(オンラインでファイルを保存するWebサービス)Dropboxと(オンライン・オフィス・アプリのWebサービス)Google Appsは特に役に立った。こうしたサービスを利用すれば,すべてのファイルを持ち歩く必要はなくなる。
かといって,iPad一台で全ての作業を済むわけではないが,外出時はiPadさえあれば,ノート・パソコンはもう不要になった。