検討会議で「この結論でよろしいですか?」と全員に聞いて、特に異論が出なかったとしても、それで合意形成ができているとは限らない。野村総合研究所の荒生氏は「往々にして納得していない参加者がいる」という。検討会議では、そういう参加者を見つけて議論を深め、利用部門のキーパーソン全員の納得を得ることが重要だ。「1人でも納得しないまま検討会議が終わると、後で大きな手戻りにつながりかねない」(荒生氏)。
では、納得していない参加者をどのようにして見つければよいのか。
荒生氏は、合意に至るまでの議論の段階で、黙っている参加者に注目する(図4)。「他の参加者の意見に違和感や不満を持ったとき、何も言わなくなるタイプの参加者がいる」(荒生氏)。そこで荒生氏は、黙っている参加者がいると、「○○さん、先ほどの意見についてどう思いますか?」というように話を振る。
さらにその際、「会社としては、その方向性でいいと思います」「プロジェクトとして、それを問題として取り上げるのは正しいでしょう」のように「会社として…、プロジェクトとして…」といった前置きに気を付ける。そういう前置きは、自分の意見は違うことを暗に示しているからだ。
荒生氏は「この人は納得していないな」と感じたら、休憩時間を利用して個別に話し、違和感や不満を覚えている点を聞き出す。
決めるプロセスを示す
「全員の納得を得る上では、どうやって要件を決めていくのかという全体プロセスを示すことが重要だ」。こう話すのは、オージス総研の正木威寛氏(アドバンストモデリングソリューション部 ビジネスモデリングチーム シニアコンサルタント)である。反対意見をいつ言おうかと思っていたらいつの間にか決まっていた、というようでは結論に納得できるはずもない。「結論を出すまでにどれだけ議論のチャンスがあるのかを示しておくことが納得感を得る上で欠かせない」(正木氏)。
そこで正木氏は、初回の検討会議において、要件決めまでのロードマップを示す。1回目の検討会議で解決すべき問題についてすり合わせを行う、2回目で解決策(業務要件、システム要件)のたたき台を作る、3回目はたたき台を修正する、4回目で最終確認を行う―という具合である。
こうすることで、何も言わないと自分の意見が反映されないという適度なプレッシャーが生まれて議論が活性化し、納得感が深まるという。