Androidタブレットの市場は、多様性に満ちた原始の海中のような世界だ。通信事業者が販売するスマートフォンと異なり、大手から小企業まで様々なメーカーがAndroidタブレットを作っている。製品のバリエーションは幅広い。
数あるAndroidタブレットの中でも要注目なのは、NTTドコモがこの2010年11月に発売する韓国Samsung Electronics(以下Samsung)製「GALAXY Tab」だ(写真1)。先行するiPadと比べても、独自の魅力を持つ端末に仕上がっている。
一方、電子書籍などのサービス向け専用端末として企画されたシャープの「GALAPAGOS」も興味深い製品である(写真2)。他にも多種多様なタブレット端末がある。これら大手メーカーが開発した端末とは別に、業務用を狙う特定用途向け端末も多数登場している。
タブレット端末の基準を変えたiPad
多くのAndroidタブレット端末の商品企画に、米Appleが2010年4月に米国で発売開始した「iPad」が影響を与えていると見られる。iPadは米国で発売後28日間に100万台を売り上げ、「タブレット型端末」という新ジャンルを製品発売と同時に作り上げた。日本では5月28日から発売し、すでに多数のユーザーがいる。業務用途での導入も始まっている。
実際、iPadにはそれだけの魅力があった。鮮明で広視野角の大きな(9.7インチ、1024×768画素)液晶パネル、精度が高いマルチタッチのタッチパネル、さくさくと動く操作感、洗練された外装デザイン、そして先行するiPhoneと共通する「iOS」の操作性とアプリ群。これらの魅力を武器に、iPadは新しい製品ジャンルを作った。
iPad登場以前にも、Androidを搭載するタブレット型端末はあった。MID(モバイル・インターネット・デバイス)と呼ばれる製品などである。ただ、iPadの登場によりタブレット端末の基準は一挙に上がった。iPhoneの技術を使ったiPadが、Androidタブレットの進化を促した。言い換えると、スマートフォンの進化のスピードがタブレットにも影響を与えている。
今、Androidタブレットは2系統に分かれる。iPadが作り上げた新たな基準に対抗し、汎用タブレットとしての魅力を追求する製品と、より安価であったり特定用途に特化したりとiPadとは異なるニッチ(すき間)を狙う製品とである。前者の代表がGALAXY Tabだ。後者には大手メーカー製のGALAPAGOSから、小規模メーカーの特色ある製品まで、多数の製品がひしめきあっている。