Q: 個人事業主でSEをしていますが,契約を切られることが増え自信をなくしています。個人事業主で続けていくには限界があるのでしょうか?
スキルアップのため,個人事業主でSEをしていますが,ここ数年,二重派遣などの契約問題で,現場を切られることが増えました。
現場にアサインされたら,チームリーダーや時にはプロジェクト・マネジャーの補佐役として管理系の仕事を任されるので,スキルが原因ではないことは明らかですが,こう立て続けに契約を切られると自信をなくしてしまいます。
また,収入面での安定性も得られないため,社員や契約社員への転向も考えています。個人事業主で続けていくには限界があるのでしょうか?何か良い対策方法があれば,アドバイスをお願いします。
(SE/男性・37歳)
A: 自分への自信を失うな。営業が不安なら,営業力のある仲間を集めよ
今回の金融恐慌が始まる以前から,IT業界では金融業界を中心に人余り状態が目立つようになってきました。あなたのおっしゃるように,派遣法の関係で,個人事業主が切られるケースも出てきました。派遣法に関しては,法的な問題ですので,どこかの会社からの派遣という契約形態ではなく,個人事業主として直接契約ができれば解決なのですが,これは相手の会社がそのような契約を認めるかという問題があります。
この不況で仕事自体が少なくなってきていること,オフショア開発が進んで単価下落の圧力が増していることなど,個人事業主にとっては,厳しい環境がしばらく続くことが予想されます。
実は私自身,ベリングポイントの代表取締役を退任してからは,ほとんど個人事業主状態から今の会社を立ち上げていった経緯がありますので,お気持ちはよくわかります。ここで,個人事業主の原点に帰って考えてみましょう(図1)。
個人事業主は,仕事を自己責任で行います。だからこそ,経費処理などでサラリーマンにはない特典があるのです。ということは,まず自分自身の市場価値を常に高くキープする必要があります。しかし市場価値は移ろうものです。過去に価値が高かったからといって将来も高いとは限りません。
従って,個人事業主は自己責任で,技術進化に合わせて価値の高いスキルを身につけて,自分の市場価値を高める努力が必要です。
これは「言うは易し」で実際には大変な苦痛を伴います。まず何をターゲットにするか,そして稼げるようになるまでの生活はどうするのか---。私も散々苦労しました。こうなるともはや「覚悟」の問題になってきます。ここでのサジェスチョンは,「自分が好きで選んだ道」だということを忘れないことと,「自分に対する自信」を失わないことです。
また,いくらスキルがあっても仕事を取れなければ事業主ではありません。一般的に技術者には営業力が不足しがちなので,首都圏コンピュータ技術者のような,個人事業主を支援する組織の助力を頼むのも一考でしょう。
もうひとつ,仲間を集めるという手があります。営業力のある仲間を集めて小さな会社を作るのもよいでしょう。私の場合は,今の会社を作りました。自分1人の営業力では不安だったから,営業力のありそうな仲間を集めたのです。自己責任の仲間同士が集まって少しずつ頼り合えるようになり,同時に経理などの事務処理負担も軽減して,今の形になりました。
IT業界の現場はまだまだ職人の世界ですので,あなたのような腕に覚えのある技術者が個人事業主として活躍するのは,業界の発展のためにも良いことだと思います。あきらめる前に,覚悟を決めて行動してみましょう。