Google検索エンジンのホームページであるwww.google.comは,Web検索以外の機能は見あたらないほど,とてもシンプルなユーザー・インタフェースになっています。一方,Yahoo!やMSNをはじめとする多くのポータル・サイトのページを見ると,検索のインタフェースだけでなくニュースや広告など盛りだくさんのコンテンツを表示しています。

 Yahoo!やMSNがポータル・サイトとして一定の地位を占め,広告収入を上げはじめると,Googleもポータル化するのではないかといううわさが広がっていきました。実際,Googleも検索結果連動広告を扱ったり,ニュース・サイトを持つようになり,ポータル的機能を用意し始めましたが,Googleのホームページは一貫してシンプルなままでした。

 2005年5月,Googleは米国で「Personalized Home」(パーソナライズド ホーム)という新しい機能を提供しはじめました。自分の好みのポータル・サイトを作るサービスです。例えば,最新ニュースのRSSフィード(Webページの更新情報)や電子メール(GMail)の着信状況などを表示する部品をWebページにレイアウトして,自分だけのページを作ることができます。現在では日本でもパーソナライズド ホームを使えるようになっています。

 パーソナライズド ホームのカスタマイズの幅を広げてくれるのが「Google Homepage API」です。Googleのパーソナライズド ホームから呼び出されるモジュールを独自に開発するためのプログラミング・インタフェースです。Homepage APIを使うには特別なツールやSDKは必要ありません。テキスト・エディタとWebページを表示するためのWebブラウザがあれば十分です。コードを書き,それをインターネット上で公開されている場所に置き,パーソナライズド ホームからコードを指定すれば使えるようになります。また,開発したモジュールをGoogleに投稿すると,運がよければGoogleのディレクトリで広く公開されるかもしれません。

HTMLとXMLが書ければ
最低限のモジュールを作れる

 Google Homepage APIを利用してモジュールを開発するのはそれほど難しくありません。とりあえずHTMLとXMLを書ければ簡単なモジュールを作れます。また,他のサイトからデータを取得したり,取得したデータを操作したりといった高度なモジュールを開発するには,JavaScriptを使います。つまり,ちょっと複雑なWebページを作成するための知識があれば,パーソナライズド ホームのモジュールを開発できるというわけです。

 早速,簡単なサンプルを作りながら,モジュールを表示させる方法を説明していきます。まずはモジュールのファイルを作りましょう。モジュールはModule要素からなるXML文書として記述します。リスト1を見てください。単純に文字を表示させるモジュールです。XML宣言のあと,ルート要素として「Module」という要素を配置しています。Module要素には二つの子要素があります。最初の「ModulePrefs」要素はモジュールの初期設定を記述する場所で,モジュールのタイトルを指定しています。次に「Content」要素があります。ここではContentのtypeとして「HTML」を指定しており,内容がHTMLであることを示しています。Content要素の内容としてHTMLを記述すれば,その内容を表示させることができます。HTMLは「CDATA」セクションに含めるようにします。ここではパラグラフと文字だけを含む内容になっています。HTMLとはいっても,<HTML>や<BODY>などの要素を指定する必要はありません。

リスト1●単純な文字列を表示させるサンプル
リスト1●単純な文字列を表示させるサンプル

 モジュールのファイルができあがったら,ファイルをインターネット上でアクセス可能な場所に配置します。とはいっても,インターネット上に自分のフォルダを持っていない人もたくさんいると思います。そのような方はGoogle Base図1)を利用しましょう。これは,いろいろなデータを簡単にインターネット上に公開するためのサービスで,無料で使えます。パーソナライズド ホームのモジュールも公開できます。

図1●Google Baseのページ。いろいろなデータを無料で公開できる
図1●Google Baseのページ。いろいろなデータを無料で公開できる

 Google Baseを使う場合でも,自分のフォルダを使う場合でも,モジュールを公開するときは注意してください。インターネット上に公開したモジュールは,誰でもアクセスできるようになります。特に,個人情報のたぐいをモジュールに入れてしまうことがないようにしましょう。

 パーソナライズド ホームやGoogle Baseを利用するにはGoogleのアカウントが必要です。まだGoogleのアカウントを持っていない場合は,パーソナライズド ホームのページを開いて画面左側にある「ログイン」をクリックし,Googleアカウントを取得してください。クッキーを許可していれば,今後Googleにアクセスするたびにパーソナライズド ホームの画面が表示されるようになります。これが,自分だけのポータル・サイトになるわけです。

 アカウントを取得できたら,Google Baseにログインしてください。ログインすると,図2のような画面が現れます。ここではまず,「Post your item」欄の「Create your own item type」のラジオボタンを有効にします。そして,その下のテキストボックスに「Module」と入力して「Next」ボタンを押しましょう。すると,図3のような登録用の画面が現れます。一番上の「Title」欄に適当なタイトルを付け,「Description」欄にリスト1のソースコードをコピー&ペーストしてください。ペーストできたら,ほかの欄には触れずに「Publish」ボタンを押します。このボタンは画面の一番下にあります。

図2●Google Baseにモジュールを登録する方法。「Create your own item type」のラジオボタンを有効にして,テキストボックスには「Module」と入力する
図2●Google Baseにモジュールを登録する方法。「Create your own item type」のラジオボタンを有効にして,テキストボックスには「Module」と入力する
図3●Titleの欄に適当なタイトルを指定して,Descriptionの欄にソースコードをペーストする
図3●Titleの欄に適当なタイトルを指定して,Descriptionの欄にソースコードをペーストする

 ここまで済むと,図4のような画面が現れます。公開したモジュールが並んでいるのを確認できますね。モジュールの「item URL」というリンクをクリックして,開いた画面のURLがモジュールのURLです。

図4●モジュールの登録が済んだところ。「item URL」のリンクをクリックして,開いたページのURLがモジュールのURL
図4●モジュールの登録が済んだところ。「item URL」のリンクをクリックして,開いたページのURLがモジュールのURL

 公開したモジュールを自分のポータル・サイトにインストールするには,パーソナライズド ホーム画面左上の「コンテンツを追加」というリンクをクリックします。現れたメニューの一番下にある「トピックまたはフィードURLで検索」のテキストボックスにモジュールのURLを入力し,「実行」ボタンを押してください(図5)。すると図6のようなダイアログが現れます。ここでは「OK」ボタンを押しましょう。モジュールの出所が怪しいときは,ここでキャンセルを押してください。OKボタンを押すとインストールは完了です。画面が切り替わり,新たにモジュールを追加した形でパーソナライズド ホームが開きます(図7)。

図5●登録したモジュールをパーソナライズド ホームにインストールするには,「トピックまたはフィードURLで検索」のテキストボックスにモジュールのURLを入力して「実行」ボタンを押す
図5●登録したモジュールをパーソナライズド ホームにインストールするには,「トピックまたはフィードURLで検索」のテキストボックスにモジュールのURLを入力して「実行」ボタンを押す

図6●モジュールをインストールするときに現れるダイアログ。普通は「OK」を押せばよい
図6●モジュールをインストールするときに現れるダイアログ。普通は「OK」を押せばよい

図7●リスト1のモジュールをインストールした結果
図7●リスト1のモジュールをインストールした結果

 これで,自分自身のモジュールを利用できるようになりました。モジュールへのURLを友人に教えたり,自分のブログで公開すれば,Googleのパーソナライズド ホームを利用している他のユーザーも開発したモジュールを利用しやすくなるでしょう。