カテゴリ:投資や投機や貯蓄について の記事一覧

預金だけで資産は守れないと言って投資をすすめる記事に思うこと

将来の不安を掻き立てて、投資に仕向けるのは筋がよくないなーと常々思っています。

将来の不安っていくつかあります。

老後に○千万円ないと老後破綻するとか、下流老人になるとか。毎月取り崩していくと○年で破綻するとか。

で、○千万円用意するために投資しましょうとか、取り崩しの期間を長引かせるために運用しながら取り崩しましょうとか。そういうストーリになります。

この他のパターンでは、ゼロ金利の預金に積み立てても長期的には購買力を維持できない。だからインフレ(物価上昇)に負けないように投資しましょう。こういうストーリーもあります。

今回は、インフレを煽る記事について


預金だけで資産は守れない?


「預金だけで資産は守れない。若者は年金減・インフレを覚悟すべき」という記事を読みました。[外部記事]

んー

なんだかスッキリしない内容です。

まず納得する点は、将来の年金事情は厳しくなるという点。所得代替率が悪化するのは見えています。

一方、納得しにくい点は、預金に置いておくと購買力を維持できないと結論付けるところです。


物価上昇率


気になったところを引用します。

物価がある程度上昇する場合、「リスクがある投資などしなくても、銀行に預金しておけば良い」という考えは否定される。

たとえば、年率1%の物価上昇が続いた場合、現在1万円の物は30年後に約1万3500円になる。一方、銀行など(金利0.01%)に1万円を預け続けても30年後に受け取る利息(税引き後)は20円程度だ。将来に備えたつもりでも実質的な購買力は下がってしまう。


計算上は合ってます。

ただ

そんなに物価上昇を恐れる必要があるかな・・・というのが率直な思いです。

元記事にあるのは、エネルギーや食料の世界的な奪い合いによって、日本の輸入物価が上がり、それによって国内物価が上昇するという話しです。

しかし物価上昇率は、モノやサービスに対する需要と供給のほか、国内総生産、財政政策、通貨供給量、金利、為替、将来に対する期待などが影響します。

また景気の動向にも左右されます。ちなみに物価上昇率は景気に遅行するとみられています。(消費者物価指数の前年同月比は、景気動向指数の遅行系列)

つまり、エネルギーや食料の世界的な奪い合いがあるにしても、それだけで日本の物価は語れないということです。


資産の前提が極端


他にも気になる点があります。

年率1%の物価上昇が30年続いたとして、いまの1万円が30年後には約1万3500円になると計算しています。その一方、預金の金利は30年間0.01%です。

んー

物価が毎年毎年、上がっているのに金利はそのまま?

いやー、さすがに預金金利も多少は上昇するでしょう。そういう経済環境なら。

30年間の長期で一方は毎年1%の上昇で複利計算して、もう一方はまったく変わらないとして計算すれば、そりゃ差は大きく出ますね。


思うこと


元記事にはこうもあります。

日本だけではない。アメリカや欧州、中国に至るまで経済の成熟化と高齢化で成長の鈍化が確実視される。


そうなんですよね。

超長期で考えると世界経済は成熟、成長鈍化が見込まれます。そうだとすると物価に対してはどういう影響があるのでしょう。

どちらかというとディスインフレ、デフレの方向だと思うんです。

私の考えはこうです。

インフレは気にしておいたほうがいいけど、日本でインフレが高まるリスクは小さいだろう。成熟、成長鈍化社会だから。

インフレを気にするのと同じように、ディスインフレやデフレも想定できそう。

「預金だけで資産は守れない」かもしれないけれど、「投資すれば元本を毀損する可能性もある」

つまり

両面を考えて比較考量したほうがいい、ってことですね。

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インデックスファンドの実質コストと隠れたコストについて

三菱UFJ国際投信のブロガーミーティングがありました。

私にもお誘いは来てました。いやー、私も投信ブロガーとして三菱UFJ国際投信さんに認められたってことですね。うれしいことです。

ただ残念ながら都合が合いませんでした。

で、ミーティングの様子がQUICK資産運用研究所のサイトに載っていました。[外部記事]

そこで気になったのがインデックスファンドのコストの話しです。


重要なポイント


重要なポイントを引用します。

運用報告書に開示されている売買委託手数料には証券会社と相対売買(バスケット取引)する際のコストは含まれない。このコストは約定価格に上乗せされる。バスケット取引はインデックス運用で多用されているため、運用報告書には「隠れコスト」のすべてが開示されるとは限らない。運用報告書に開示されたデータだけで実質コストの大小を比較すると、ミスリーディングになることが少なくない。


これ、どういう意味か分かりますか?

分かる人には分かるけど、馴染みのない人にはピンと来ないと思います。おせっかいですがちょっと補足説明します。

投信コストで分かりやすいのは
1. 販売手数料
2. 信託報酬

ですね。

それ以外に見えにくいストとして、ファンドが株式などを売買するときの売買コストがあります。ファンドの運用報告書には「売買委託手数料」として載ります。

ただし、すべての取引が対象となるわけではありません。

ん?


売買委託手数料


売買委託手数料が発生するのは「委託取引」の場合です。一般的な株式売買はこちらです。

一方、「委託取引でない」取引もあります。それが「相対取引」です。大口の取引にはこちらがよく使われります。日経インデックスファンドが、225銘柄を丸ごと証券会社から買うような場合です。

相対取引の場合、「売買委託手数料」は発生しません。なのでファンドの運用報告書にも載りません。

で、売買委託手数料が発生しないということは、コストがかからないってこと?

と思うかもしれませんが、コストはしっかりと発生します。

コストは「約定価格に上乗せされる」形です。


どういうことか?


たとえば100万円の株式を買います。

1. 委託取引で購入のケース

100万円+委託手数料1万円、合計101万円で購入

簿価:100万円
コスト:1万円

2. 相対取引で購入のケース

101万円で購入

簿価:101万円
コスト:0万円

こうなります。

これが元記事にある、「相対売買(バスケット取引)する際のコストは含まれない。このコストは約定価格に上乗せされる」の意味です。

なお、債券の取引も相対取引です。なので債券ファンドには「売買委託手数料」は(まず)ありません。ちなみにトルコ債券ファンドを例にすると、売買委託手数料は運用報告書に登場しません。[参考]

でも実際には、実質的なコストが価格に上乗せされているんですよね。


思うこと


投資にコストは大事。

よく言われることです。

とはいえ、見えるコストは一部でしかありません。バスケット取引(相対取引)を含めたコストは把握できません。しかも債券や為替のような相対取引の場合、価格とコストを分離するのも難しいです。

なので運用報告書の委託手数料はあくまで目安に過ぎません。

ファンド間の比較には使わないほうがいいですね。

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高金利外債に潜むリスク 日経の記事に思うこと

外国債券の投資について、為替リスクをどう考えるかは古くからのテーマです。

よく言われるのは「為替はハイリスク・ノーリターン」という説です。

外国債券への投資は、(為替)リスクを増やすだけなのでやる必要はない。為替は資産ではなく、通貨の交換比率に過ぎない。資産配分で債券への投資は国内債券だけで十分。

こんな流れで語られます。

私はこの説にちょっと違和感を持ってます。

で、今回は外債投資について考えてみました。


購買力平価


日経の「高金利外債に潜むリスク 長期で為替差損の傾向」を読みました。[外部記事]

この記事の内容自体に大きな違和感はありません。為替は長期で見たとき購買力平価が働く。基本的にはその通りでしょう。

とはいえ、購買力平価は「長期で見たとき」の「大まかな目安」と考えたほうがいいです。

実際の為替相場は購買力平価から乖離して動きますから。

インフレ格差以外に、経常収支の動向やカントリーリスクの変動なども影響します。経済成長の期待が高まる時期は経常収支や政治リスクには目をつぶってマネーが流入します。逆に、地政学リスクが高まったり経済の舵取りに不安が高まると、マネーは流出します。

購買力平価はあくまで目安ですね。


個別と一般


日経の記事はトルコリラの債券ファンドの話しでした。

「為替差損が生じた結果、これまで受け取った分配金を考慮してもなお4割元本割れしている」という悲しい状況です。

で、大事なのは・・・

これって、あくまで「特定の通貨」の「特定の時期の話」としてとらえるべきです。「すべての通貨」で「どんな期間でも成り立つ話」と思うのは早計です。

為替差損で大きく損をすることもある。

でも、常にそうなるわけではない。

そう考えるのがいいでしょう。


一般化しない理由


新興国通貨の債券ファンドを3つ紹介します。

新光ブラジル債券ファンド [参照]

設定来の騰落率:71.1%
過去5年:7.1%
過去3年:29.3%

JPMインドネシア債券ファンド [参照]

設定来の騰落率:16.7%
過去5年:-%
過去3年:9.3%

トルコ債券オープン [参照]

設定来の騰落率:-51.1%
過去5年:-%
過去3年:-46.1%

3つのファンドの過去3年の騰落率を比較すると、トルコリラ債券ファンドが突出して悪いです。

ブラジル債券ファンドやインドネシア債券ファンドはプラスのリターンです。この間、為替は外国通貨安・円高です。


思うこと


元記事には「高金利外債を買って金利収入を得られたとしても、結果的に為替差損の拡大で帳消しになることがある」とあります。

んー

「帳消しになることがある」のはその通りですが、その他の可能性も大事ですね。

1. 帳消しになることがある
2. 金利収入よりも為替差損が大きくて、マイナスリターンになることもある
3. 金利収入よりも為替差損が小さくて、プラスリターンになることもある

過去3年で見るとトルコ債券は2のケース、ブラジル債券とインドネシア債券は3のケースでした。過去5年など観測期間を変えれば別の結果になるでしょう。

つまり、何がいいたいかと言うと

「そういう可能性がある」と、「常にそうなる」「次もそうなる」「いつかはそうなる」は違うということです。

トルコ債券の事象をどこまで一般化できるか。

そこは慎重に考えたいですね。

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投資は狂気、資産形成は理性 その違いが理解できないです

「投資は狂気だ、資産形成は理性だ」という記事を読みました。[外部記事]

んー

論理構成に飛躍があって、注意深く読んでも理解できなかったです。

今回は投資と資産形成について


投資は狂気だ


まず、投資は狂気だという表現に違和感はありません。

投資には不確実性があります。いくら理論的に語っても、突き詰めると「賭け」です。

自分の力量に賭けてもいいですし、資本主義の成長に賭けるのでもいいです。ともかく何かに賭けるわけで、そこにはいくらかの狂気(非合理性)はあるでしょう。

さて、元記事の筆者、森本紀行氏はこう言っています。

資産形成は、家計規律のもとで、長期的で合理的な計画に従ってなされるべきものですが、資産形成を実現する方法である投資は、必ずしも理性的なものではなく、その根底に資本主義の動因である情動を秘めています。


投資は必ずしも理性的でない。情動を秘めている。

この点は同感です。


理解できない部分


論理の飛躍がある部分を引用します。

森本氏は、金融行政の課題として、資産形成の名のもとに、「投資を合理化して賭けとしての性格を払拭する必要がある」と言います。

で、実質的に「賭けを合理化する」方法論として長期分散投資があるとして、こう続けます。

個々の企業が賭けでも、総体としての賭けは賭けではなく、合理的な資本利潤が期待できる、この総体としての賭けに資金を投じる技法が資産形成と呼ばれるものであって、普通のいい方では長期分散投資となるのです。


んー

理解できない。


考え方の整理


「個々の企業が賭けでも、総体としての賭けは賭けではなく、合理的な資本利潤が期待できる」

いや、これって合理的な結論ではなく、森本氏の「意見」ですね。

個々の企業が賭けなら、全体としての賭けも賭けじゃないの?

これは私の「疑問」です。

もっと言うと

個々の企業が狂気を含んだ賭けなら、それをいくら集めても狂気は排除できないでしょ。合理的になるわけがないよね。「一人ひとりは狂人だけど、1000人集めた全体は合理的に振舞う」なんて言い分は信じられない。

これは私の意見です。


思うこと


元記事の内容は、理論的な正解や事実ではなく、筆者の意見です。

これが理論的な帰結や事実なら、認めて受け入れるしかないです。でも意見ですからね。自分の考え方に近いか遠いかで判断すればいいと思います。

ともかく「投資は狂気、資産形成は理性」は森本氏の意見に過ぎないです。

理性だけでは語れない情動を、狂気と称するなら、

私は、「投資は狂気、資産形成も狂気」という意見です。穏やかに表現するなら「投資は情動、資産形成も情動」ですね。

まあ、生きていること自体が狂気で、情動から逃れられないです。

合理性を追求したいという欲求自体が情動だと思いますし。

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投信の運用成績 常識を疑え 日経記事が興味深い

投資信託の運用成績でアクティブファンドはインデックスファンドに負ける。それが「常識」。そのように喧伝する人がいます。

実際どうなんでしょうね。

常識とは多くの人の共通認識で、あまり議論の余地のないことを指すはず。ところがアクティブvsインデックスは永遠のテーマです。議論の余地は大いにあります。

そういう論争に「常識」を持ち出すのは詭弁的。そう思ってました。

なので、常識を疑えとの日経記事は興味深い内容でした。


常識を疑え


日経の「投信の運用成績 『インデックス型優位』の常識は疑え」を読みました。[外部記事]

引用します。

投資家にとって「アクティブ型は選ぶのが面倒だから日経平均連動型」というのは現実的な選択法だ。しかし、インデックス型を上回る好成績を上げているファンドが数多くあり、その中から特色のある投信を選べるという事実は、きちんと押さえておきたい。


常識もいいのですが、事実も大事ですね。

元記事の基本的なメッセージは「インデックス以外の選択肢は広い」という点です。

多くの場合、アクティブとインデックスを「優劣の点で」語りがちです。そうすると、どうしても不毛な議論になりやすいです。いわゆる神学論争です。

元記事は優劣ではなく、選択肢の広さを指摘する点がいいなと思いました。


まったく同感


もう少し引用します。

「インデックスか、アクティブか」という区分けだけの投信選びでは、様々な投資機会を見逃してしまう面がある。単純な二元論はそろそろやめて、どんな分析・情報が投資家にとって有用なのか、議論を一歩先に進めるべきだろう。


まったく同感です。

単純な二元論からは卒業すべきですね。


思うこと


インデックスか、アクティブか。

悩ましいのは二元論の枠組みで自分の投資法を最善と思っている場合です。そういうケースでは二元論を捨て去るのは大変です。

いったん二元論で思考の枠組みができると、そこから抜け出すのは一苦労です。

AかBかで選択肢を狭めるより

AもBもの中から選択した方がいい。

改めてそう思いました。

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