夢のその後で
- 2020/07/28
- 08:47
福岡市に中洲という歓楽街がある。
今はコロナの影響で危機的な状況にあるのだが
バブルの頃には数軒のスナックをはしごしていた私である。
月並みだがあの時の支払いって総額いくらだろうと
どうにもならない事を考えてみたりもする。
中洲(中州)というくらいで
幾つもの橋が中洲と市街地とを結んでいるのだが
新旧道路の関係で二つの橋が並列して存在する場所もある。
その中の一つのポイントはいつの頃からか
若者が腕試し弾き語りをするポイントとして定着している。
この話の若者も高校生の頃そこに座り込んで
レパートリーの二曲(「青空」と「トゥルーラブ」)をヘビーローテーションで繰り返していた。
夏の深夜である
向かいの橋から自分を見つめる大きな影がある
暫く歌っていると彼は筆記具と紙を取り出して何か書き始めた。
やがて若者の橋に歩いてきて紙を差し出す。
これを歌ってくれないだろうかと名刺と共に渡された。
若者は二曲のコード進行以外知らないのでテンポだけを変えて
その歌詞を歌った。
「ありがとう」と1000円くれた。
あとで見た名刺で彼が考古学で地位のある人と知った。
10年の月日は流れ若者はプロギタリストになった。
ある日テレビで吉野ケ里遺跡の放送を何気に見ていると
彼がインタビューを受けていた。
「あの人だ」
ちなみにどんな歌詞だったの?と若者に聞いた
歌っている若者も自分もこの川も何処まで流れて行くのだろうかという歌詞でしたと答えてくれた。
人は今大きなうねりの中にいる。