「バンディング」って何?「マッハバンド」は誤用?調べてみました!
- 2024/06/30
皆さんは「バンディング」や「マッハバンド」ってご存じでしょうか?
画像を扱うときにグラデーションの中に縞模様の段差が見えてしまう問題の呼び名です。
CG業界やアニメ業界では、「マッハバンド」という呼び方に慣れている人も多いようです。
私も、CG業界で働きはじめてしばらく経ったたころ、たぶん2006年前後だったんじゃないかと思いますが、先輩から「マッハバンド」という言葉を教わりました。
しかしその後「マッハバンドと呼ぶのは誤用だ」という話を聞き、本などを読んで勉強するうちに、確かにこれは「マッハバンド」ではなく「バンディング」と呼ぶのが正しいらしい、と思うようになりました。
同じように「最初はマッハバンドと習ったけど、バンディングと呼ぶように改めた」という人を何人も見かけました。
でも、「マッハバンド」と呼び続けている人は、CG業界やアニメ業界には今もたくさんいるようです。
そこで今回は「バンディング」や「マッハバンド」について自分なりに調べてみました!
意外に知られていない別名などについても調べてみましたので、是非ご覧下さい!
それではどうぞ!
忙しい人のために結論を先に書きます!
自分なりに出した結論はこちらです。
■バンディング
バンディング(banding)とは、グラデーションが滑らかにならず縞模様のような段差が現れてしまう、画像のアーティファクトのことです。
多くの場合、画像データの階調、つまりデータ値のステップの不足が原因で発生します。8ビットカラーのような低いビット深度の画像データや合成システムで非常に発生しやすいアーティファクトです。
また、画像データ自体には問題がなくても、ディスプレイの性能が原因で発生する場合もあります。
なお、印刷業界でも印刷物に現れる濃淡の縞をバンディングと呼ぶようです。
【補足】アーティファクト(artifact)…
アーティファクトとは、画像処理の過程で生成される好ましくない副産物を指す総称です。たとえば、Compression artifact(圧縮アーティファクト)とかRinging artifacts(リンギングアーティファクト)と言ったりします。日本ではあまり聞かない単語ですが、専門書では普通にバンバン出てくるポピュラーな用語です。日本ではアーティファクトの代わりに「ノイズ」という言葉が使われることが多いように思いますが、ノイズだとちょっとニュアンスが違うというか、別の意味になりかねないので、アーティファクトという用語を積極的に使っていった方が良いのかな?と思います。
▼空のグラデーション部分で「バンディング」が発生しています。
(Wikipedia英語版. "Colour banding" より画像を借用)
バンディングの別名:
一般的には単にバンディング(banding)と呼ばれますが、より丁寧にカラーバンディング(color banding)と呼ばれることもあるようです。たとえばWikipedia英語版の記事名は "Colour banding" となっています("Colour" の綴りが英国式ですね)。
英語圏でのバンディングの別名としては、コンタリング(contouring)あるいはフォルスコンタリング(false contouring)というものがあります。これらは「疑似輪郭」と訳されるようです。
ポスタリゼーション(posterization)と呼ばれることもあります。色数を減らしてポスターのような見た目にするからだと思います。
クォンティゼーション(quantization)やクォンタイジング(quantizing)などの用語が使われることもあります。これは「量子化」と訳されます。
日本では「バンディングノイズ」と呼ばれることもありますが、これはおそらく和製英語的な呼び方で、ちゃんとした英語だと「バンディングアーティファクト」になります。また、日本では「トーンジャンプ」と呼ぶことが一般的な一方で、英語の文献では見つけられません。和製英語なのかもしれません。「階調割れ」や「階調飛び」といった表現がされることもあります。
■マッハバンド
まず最初に、マッハバンド(mach bands)は、バンディングとは別のものの名前です。
ややこしいことに、マッハバンドと呼ばれるものが2つあります。ここでは便宜的に「狭義のマッハバンド」と「広義のマッハバンド」と言い分けることにします。
■狭義のマッハバンド
「狭義のマッハバンド」について説明します。これは本来のマッハバンドです。元祖です。グラデーション領域が平たんな領域と接したとき、その境界に見える明るい/または暗い帯です。実際には存在しない帯が見えるというヒトの知覚の効果であり、いわゆる錯視(optical illusion)と表現されます。
重要なポイントは、単にグラデーションがあれば良いというわけではなく、まずグラデーションという勾配(斜面、坂道)があり、それに接する「平たんな台地」があることです。マッハバンドは、その境い目に現れます。あるいは、傾斜角度の異なるグラデーションが接する部分にも見られるようです。
1865年にオーストリアの物理学者、エルンスト・マッハ(1838–1916)が報告し、そのメカニズムを側抑制(lateral inhibitation)という神経のプロセスではないかと推測したり、数式で表すなどしたようです。その後、多くの研究者が実験で詳しく調べたり、数式を改善したりしてきました。最近の研究では、側抑制ではうまく説明できない実験結果が出ており、側抑制の働きではないのではないか、という説が主流になっているというような話も聞きましたが、よく分かりません。それは今回の主題ではないので置いておきます。
■広義のマッハバンド
「広義のマッハバンド」は、明るさの異なる色どうしが接している境界付近で、色が明るく/または暗く見える効果のことです。これもやはりヒトの知覚の効果です。明るさの違うグレーを段階的に並べたとき、境界のところで明るさの対比が起こり、ヒトは実際の輝度差より大きな輝度差を感じます。また、実際には同じ色であるはずの面の中に明るさの変化があるように感ぜられます。
これは、エルンスト・マッハが報告したマッハバンドとは違う図形です。そのため「マッハバンドと呼ぶのは誤りである」と指摘する人もいます。その指摘は正しいと思いますが、実際には日本でも、英語圏でも、これをマッハバンドとか、マッハバンド効果と呼ぶ人が相当数おり、どうやら世界規模で完全に混同されている状況です。しかも、混同されるようになってからすでに40年以上が経過しているという結論に至りました。そのため、本当は不適切かもしれませんが、ここでは「広義のマッハバンド」と呼ぶことにしました。
では、これがマッハバンドではないならば、何と呼ぶのが正しいのか、という話になります。縁辺対比(えんぺんたいひ、edge contrast)と呼ぶのが良いと思います。より正確に、明度の縁辺対比と呼んでも良いかもしれません。そして、明度の縁辺対比に類似した現象が、狭義のマッハバンドであると考えられるようです。
辺縁(へんえん)対比と呼ぶこともあるようですが、縁辺(えんぺん)対比の方がより広く使われているように思います。また、境界対比(border contrast)という別の呼び方もあります。あるいは、シュブルール錯視(chevreul illusion)と呼ばれることもあります。いろいろと別名がありますが、ここでは便宜的に「広義のマッハバンド」あるいは「縁辺対比」「明度の縁辺対比」などと呼ぶことにします。
■「バンディング」と「マッハバンド」の関係
さて、「バンディング」と「マッハバンド」の関係を整理したいと思います。
バンディングアーティファクトが発生している状況では、「広義のマッハバンド」=明度の縁辺対比が生じる条件が揃っていると考えて良いと思います。バンディングの結果として、「広義のマッハバンド」が起きている可能性があります。あるいは、「広義のマッハバンド」によって、バンディングがより強調されて知覚される、とも考えられます。そう考えてみると、バンディングを指して「マッハバンド」と呼ぶことは、あながち100%間違い、というわけではないかもしれません。
今回調べた書籍の中では『ノードベースのデジタルコンポジット』という書籍にのみ、バンディングの別の呼ばれ方として「マッハバンド」を紹介する記述を見つけることができました。しかし一方で同書の巻末の用語集ではバンディングとマッハバンドは別物として扱われており、「視覚的な錯覚であるマッハバンドが、バンディングというアーティファクトを強調する」という説明がされています。ですから、やはりこの「バンディング」と「マッハバンド」という2つのものは根本的に別のものだと思われます。
デジタル画像/映像のバンディングの原因はあくまでデータ値のステップの不足(またはディスプレイの性能不足)です。「広義のマッハバンド」は主犯ではなく、アーティファクトを少し後押しする共犯といったところです。ですから、このアーティファクト自体の名前はあくまでバンディングであり、マッハバンドと呼ぶのは適切ではなさそうです。
以上。
では、お時間のある方、よかったら続きをどうぞ!
この結論に至る根拠とした参考文献を具体的にひとつずつ紹介していきたいと思います!
なお、ここから多数の引用を含みますが、著作権法によって認められる範囲内と(勝手ながら)判断して引用しております。画像の引用については特にどうしても説明のために必要なものに留めます。
Panasonicのテレビ、『ビエラ』の製品ページより引用します。
・「バンディングノイズ」という言葉で説明されています。
・「マッハバンド」という言葉は使われていません。
引用元:高画質 共通 | 共通特長 4K有機EL/4K液晶テレビ Z95A/Z90A/Z85A/W95A/W90A/W80A | 4K液晶・有機ELテレビ ビエラ | Panasonic
(太字引用者)
ネット動画に多いバンディングノイズも精細感を維持しながら抑制
ネット動画などの高圧縮により失われた階調データを、従来より広い範囲で素材解像度に応じて映像を解析することで圧縮によるノイズを除去し、ディティールを保ちながらなめらかな階調表現を実現します。
ネット動画ノイズリダクションなし
バンディングノイズが残存
ネット動画ノイズリダクションあり
バンディングノイズを除去
TVS REGZA株式会社(旧・東芝映像ソリューション)のテレビ、『レグザ
・「バンディング」または「バンディングノイズ」という言葉で説明されています。
・「マッハバンド」という言葉は使われていません。
引用元:高画質:Z670Nシリーズ|REGZA<レグザ>TOSHIBA(東芝)
(太字引用者)
ネット動画の映像も高画質に再現
(中略)
さらに、YouTubeなどネット動画で発生する圧縮ノイズやバンディングを抑制することで、大画面で視聴してもなめらかで自然な高画質を実現します。
バンディングノイズの抑制
ネット動画に発生するバンディングノイズ
高画質処理でバンディングノイズを抑制
ソニーのテレビ製品のサポートページより引用します。
・「バンディング」という言葉で説明されています。
・「マッハバンド」という言葉は使われていません。
引用元:映像・画質を調整したい | Sony JP
(太字引用者)
バンディングと呼ばれる映像内の段々状に見えるノイズを除去し、なめらかにする機能である
(中略)
映像内のグラデーション部分で段々状・縞状に見えるノイズ(バンディングと呼ばれる)を除去し、なめらかにする機能
Netflixによる『Netflix パートナーヘルプセンター』というウェブサイトの、品質管理(Quality Control)ページから引用します。
・ここでは、バンディング/ポスタリゼーション(Banding/Posterization)と呼ばれています。
・「マッハバンド」は登場しません。
日本語ページでは以下の記述です。
引用元:バンディング/ポスタリゼーション – Netflix | パートナーヘルプセンター
エラーコード:
バンディング/ポスタリゼーション
説明:
「バンディング/ポスタリゼーション」は色ビット深度が低いことが原因で、色の階調が滑らかに連続するグラデーションにならず、階調の境目に段差が発生している状態を指します。
日本語ページの元になっていると思われる英語ページでは、以下の記述です。
引用元:Banding/ Posterization – Netflix | Partner Help Center
Error Code:
Banding/Posterization
Description:
"Banding/Posterization" is when low color bit depth results in defined “stepping” from one color gradation to another versus a smooth, continuous gradation.
ソニーPCL株式会社によるニュースリリースを引用します。2009年もので、映像用階調補完技術“Super Bit Mapping for Video(SBMV)”を利用したブルーレイディスク制作サービスを開始したとの内容です。
・「カラーバンディング」という用語を使っています。
・「マッハバンド」は登場しません。
引用元:ソニーグループポータル | ソニー独自の映像用階調補完技術“Super Bit Mapping for Video”を採用し よりなめらかで高品位なBDソフトの制作を実現するBDエンコード環境を構築
(太字引用者)
BDソフトでは映像信号を8ビットで記録しているため、10ビットで制作されたオリジナルコンテンツはBDソフト用にエンコードする時に8ビットに変換する処理が行われます。そのため、映像に広いグラデーション領域がある場面などでは、エンコード処理後の映像に階調の変化点が等高線のようになって見えるカラーバンディングが発生することがあり(上図「従来方式によるエンコード映像」参照)、カラーバンディングの軽減はより高品位なソフト制作を行う上での重要な要素のひとつとなっています。
今回ソニーPCLは、“Super Bit Mapping for Video”を採用したBDエンコード環境を構築し、より高品位なBD制作に向けたサービスを開始しました。これにより、エンコード処理の前に “SBMV”処理を行うことで、オリジナルコンテンツのグラデーション感を保ちながらカラーバンディングを軽減することが可能となり、より多くの機器で高品位な映像再生を楽しむことができるようになります。
ブラックマジックデザインが開発している『DaVinci Resolve』という動画編集ソフトがあります。『DaVinci Resolve 17 カラリストガイド』から引用します。
・「バンディング」という用語が使われています。
・「マッハバンド」は登場しません。
まず、87-88ページで「バンディング」が登場します。
引用元:DaVinci-Resolve-17-Colorist-Guide-JP.pdf
(太字引用者)
ビューアで空のグラデーションの各所に微調整を行い、アーチファクトが生じている箇所をスムーズにします。
コントロールポイントを調整し過ぎた結果、空にバンディングが生じた場合は、ポイントを選択し、サイドバーの「クロマ」と「輝度」の下にある「クロマをスムース」または「輝度をスムース」ボタンをクリックします。
これにより、ポイントが元の位置に少しずつ移動し、グレードをソフトにし、アーチファクトを低減します。「クロマをスムース」または「輝度をスムース」ボタンは、必要なだけクリックして調整できます。移動する範囲は、クリックの回数に応じて徐々に少なくなります。
284-285ページでも「バンディング」が登場します。
引用元:DaVinci-Resolve-17-Colorist-Guide-JP.pdf
(太字引用者)
低品質のフォーマットでRAWビデオをキャッシュすると、イメージが歪み、空に顕著なバンディングが生じます。
スムースな青のグラデーションの代わりに、青、紫、緑、ピンクの縞模様に空が見えます。これは、限られた量の輝度およびカラーの値のみを表現できるレンダーキャッシュのフォーマットを使用したことにより生じています。これは、イメージに極めて大きな影響を与えており、波形でも確認できるほどです。
このように、グレーディングが低レベルに見えるだけでなく、低品質のレンダーキャッシュのフォーマットは、クオリファイアーの選択や、ノイズ除去やMagic Maskなどの分析ツールの結果を確認する際に悪影響を与える可能性があります。少し高い品質のレンダーキャッシュのフォーマットを使用すると、ビューアでのアーチファクトが減りますが、グレーディングで可能なことは引き続き限られています。
アドビ社の販売するデジタル合成ソフトウェア、『Adobe After Effects』のヘルプから引用します。
・バンディング(banding)という用語が使われています。
・マッハバンド(mach bands)は、出てきません。
先に英語版から引用します。
引用元:https://helpx.adobe.com/after-effects/using/generate-effects.html
(太字引用者)
4-Color Gradient effect
(中略)
Jitter The amount of jitter (noise) in the gradient. The jitter, which reduces banding, affects only those areas where banding could occur.
(中略)
Gradient Ramp effect | CC
The Gradient Ramp effect creates a color gradient. You can create linear or radial ramps, and vary the position and colors of the ramp over time. Use the Start Of Ramp and End Of Ramp properties to specify the start and end positions. Use the Ramp Scatter control to disperse the ramp colors and eliminate banding.
(中略)
Note: Ramps often don’t broadcast well; severe banding occurs because the broadcast chrominance signal doesn’t contain sufficient resolution to reproduce the ramp smoothly. The Ramp Scatter control dithers the ramp colors, eliminating the banding apparent to the human eye.
日本語版では、bandingはそのまま「バンディング」になっている箇所と、「縞模様」に翻訳されている部分があります。
引用元:https://helpx.adobe.com/jp/after-effects/using/generate-effects.html
(太字引用者)
4 色グラデーションエフェクト
(中略)
ジッター グラデーションの変位(ノイズ)の量。 「変位」ではバンディングを除去しますが、バンディングが発生する部分だけに影響します。
(中略)
グラデーションエフェクト | CC
カラーのグラデーションを作成します。直線カーブや放射カーブを作成し、カーブの位置とカラーを時間とともに変化させます。「カーブの開始」と「カーブの終了」プロパティで、カーブの開始位置と終了位置を指定します。「カーブ拡散」コントロールを使用すると、グラデーションの色を分散して、バンディングを防止することができます。
(中略)
注意:カーブを放送すると、グラデーションがきれいに見えず、 縞模様になることがよくあります。これは、放送のクロミナンス信号にはカーブを滑らかに再現するのに必要な解像度がないからです。「カーブ拡散」を使用すると、 グラデーションの各色が分散され、縞模様が目立たなくなります。
映像業界では有名な『Neat Video』という画像のノイズ除去ツールがあります。Neat Videoのウェブサイトのサポートページから引用します。
・”banding”(バンディング)という用語が使われています。
・”mach bands”(マッハバンド)という用語は使われていません。
引用元:https://www.neatvideo.com/support/how-to-use/banding
[引用者訳](太字引用者)
ノイズ除去されたビデオクリップのバンディング:考えられる原因と利用可能な解決策
ビデオクリップには、非常に細かいグラデーションを持つ均一な色の大きな領域(空、壁などの領域)が含まれている場合があります。これらの領域は、多くの場合、バンディング問題の影響を受けます。この問題は、ノイズフィルターによってクリップから元のノイズが除去され、その後、非可逆ビデオコーデックによって圧縮された後に発生します。
Banding in denoised video clips: possible causes and available solutions
Some video clips contain large areas of uniform color with very fine gradients (like areas of the sky, walls, etc.). These areas are often affected by the banding problem, which shows up after the original noise is removed from the clip by a noise filter and then compressed by a lossy video codec.
Appleが販売するビデオ変換アプリケーション『Compressor 4.8』のユーザガイドから引用します。
・「バンディング」という用語が使われています。
・「マッハバンド」という用語は使われていません。
引用元:Compressorでの広色域とHDRの概要 - Apple サポート (日本)
Wide Gamutカラーを10ビットのHDR機能と組み合わせて使用できる装置では、繊細なシェーディングを伴う鮮やかなヒューを生成できるため、イメージのリアリティと臨場感を高め、細部を表現し、グラデーションの「バンディング」などのアーチファクト(空のイメージが明るい領域から暗い領域に遷移するときによく見られます)を減らすことができます。
(中略)
ただし、Wide Gamutビデオを標準色域の色空間にトランスコードすると、Wide Gamutのカラーが破棄されるため、やや色あせてくすんだ感じのイメージになる可能性があります。10ビットビデオを8ビットカラーにトランスコードすると、解像度が下がり、カラーのグラデーションがあるイメージ内の領域にバンディングが発生する可能性があります。
「国立映画アーカイブ」のウェブページで公開されている技術セミナー用のテキスト『映画・映像データの取り扱い、仕組みと実際』から引用します。この文書は平成28年(2016年)の日付で、”IMAGICA”ロゴ入り。「東京国立近代美術館フィルムセンター デジタル映画保存・活用調査研究事業の『映像データの取り扱いに関する技術セミナーに向けた, 教材作成および講師派遣委託事業』における『映画・映像データの取り扱い、仕組みと実際』の講義用に書かれたもの」と説明されています。
・ビット深度の説明の中で、「バンディング」が登場します。
・「量子化誤差」という言葉も紹介されます。
・「マッハバンド」という言葉は出てきません。
引用元:BDC技術セミナー その1「映画・映像データの取り扱い、仕組みと実際」 | BDCブログ
(太字引用者)
3.1.3.ビット深度
カラー画像をデジタル値で表すときは、RGB など一般的に 3 つの色に分けて表現する。各色の階調表現の細かさを示す値をビット深度という。例えば、8bit であれば、RGB それぞれを 8bit(0~255 までの 256 段階)の階調で表現することを示す。ビット深度と同じ意味で使われる言葉には、ビットデプス、ビット数、色深度などがある。
大きなビット深度のメリットとしては、高画質の画像を扱うことができ、バンディングのリスクが減る、より広いダイナミックレンジを扱えることがあげられる。 [2, p. 143]
バンディングが発生する根本の原因は、ビット深度が足りないことに依存する。画像処理を 8bit で行うと、原理的に避けられない計算誤差(量子化誤差と呼ばれる)が発生し、輝度*7の差や色の差が生まれ、バンディングとして目に見えるようになる。
バンディングを防止できる方法は、10bit, 12bit, 16bit など、8bit 以上のビット深度を持つ多ビットの制作環境で画質処理を行い、その品質を維持したまま映像を伝送・表示することである。ビット処理であれば 8bit の場合より計算誤差(量子化誤差)が非常に小さくなるためバンディングは見えにくくなる。最終表示形式が 8bit であってもその直前までできる限り高いビット数で処理できればバンディングのリスクを抑えることができる。バンディング軽減の手法としてディザリングが良く使われる。画像に意図的にノイズ成分を足すことでディザー(少ない階調で疑似的な多階調に見せること)の効果を発生させ、バンディングを視覚上目立たなくさせる。また、フィルム映像に含まれるグレインと呼ばれる粒状性のノイズがあるが、グレインをあえて加えることでバンディングの予防効果が期待される。 [2, pp. 201-202,207]
2005年発行の『カラーマネジメント 理論と実践』という書籍の巻末用語集から引用します。著者はブルース・フレイザー (Bruce Fraser) 、クリス・マーフィー (Chris Murphy) 、フレッド・バンティング (Fred Bunting)。コニカミノルタ グラフィックイメージング株式会社による監修入りです。
・バンディングという用語で説明されています。
・マッハバンドという言葉は使われていません。
引用元:『カラーマネジメント 理論と実践』巻末用語集
バンディング
ある階調レベルから別の階調レベルへ移る際に、 階調が急に変化するアーティファクトのこと。トーンジャンプ。
Alexis Van Hurkman著『カラーコレクションハンドブック第2版 -映像の魅力を100%引き出すテクニック-』という書籍から引用します。2014年、ボーンデジタル発行です。
・この本では、サラっと「バンディング」という言葉が出てきます。この著者にとって「バンディング」は説明不要な一般的な言葉のようです。
・「マッハバンド」に関する記述は無いと思います。
たとえば、32ページで「バンディング」が出てきます。データに問題がなくても、ディスプレイの性能でバンディングが現れることがある、と説明しています。
引用元:Alexis Van Hurkman著『カラーコレクションハンドブック第2版 -映像の魅力を100%引き出すテクニック-』
(太字引用者)
厳密には、カラー重視の評価用ディスプレイに10ビット/チャンネルのサポートが必要とは限りませんが、あっても害にはなりません。カラーは8ビットのパネルでも10ビットのパネルでも同じに見えるはずです。ただし、10ビット/チャンネルディスプレイは、10ビット信号におけるグラ デーションの滑らかさを正確にモニターして評価できます。想定される問題の1つとして、8ビット/チャンネルディスプレイでは、ライトブルーの空や暗いシャドウのような滑らかな階調をした画像に、調整の対象となっている信号には存在しないバンディングが見られ、不必要な追加の補正を行ってしまうことがあります。
144ページでも「バンディング」が出てきます。元データの少ない階調を引き延ばす色調整を行うとバンディングというアーティファクトが発生すると説明しています。
引用元:Alexis Van Hurkman著『カラーコレクションハンドブック第2版 -映像の魅力を100%引き出すテクニック-』
(太字引用者)
波形が櫛状になっているのは、 画像が元の画像データの情報を超えて拡張されていることを示しており、結果として画像内のノイズがより目立つようになっています。図3.106の右の画像は、左の画像に比べてバンディングが目立ちます。これは、少ない画像データが大きく引き伸ばされたためで、それがアーティファクトの原因となっています。
Jeremy Birn著『[digital] ライティング & レンダリング 第3版』という書籍から引用します。2014年、ボーンデジタル発行です。
・「バンディング」を紹介しています。
・「マッハバンド」に関する記述は無いと思います。
引用元:Jeremy Birn著『[digital] ライティング & レンダリング 第3版』
(太字引用者)
バンディングと呼ばれる問題は、暗い画像をペイントソフトまたは合成ソフトで明るくしすぎた場合に発生することがあります。 図8.28はこの例を示しています。画像内に、連続したトーンの代わりに明るさの縞模様(段差)が見られます。また、ヒストグラムには隙間があり、 異なる明るさのレベル間に中間のトーンが欠如していることを示しています。
バンディングの問題が目につく可能性は、16ビットカラーを使用するよりも、8ビットカラーを使用する方が256倍高くなります。16ビットカラーを使用すると、より多くの中間トーンを画像に保存できるため、合成時に画像の明るさを調整しても、バンディングが起こる確率は低くなります。
Mark Christiansen著『After Effects CS4 スタジオテクニック ―プロが教える効果的なビジュアルエフェクトとコンポジット―』という書籍から引用します。2009年、ボーンデジタル発行です。
・「バンディング」の説明があります。
・「量子化」という言葉も登場します。英語の原書は未確認ですが、元の言葉は"quantizing"ではないかと推測されます。
・「マッハバンド」に関する記述は無いと思います。
引用元:Mark Christiansen著『After Effects CS4 スタジオテクニック ―プロが教える効果的なビジュアルエフェクトとコンポジット―』
(太字引用者)
図5.13 必要以上に調整しすぎると、イメージに量子化またはバンディングが表示されます。ヒストグラムでは、これらの大きなギャップは、グラデーション上に帯として表れます。ほとんどの場合、8bpcから16bpcに切り替えると、この問題は簡単に解決できます。
スパイクとスパイクの間にデータが存在しないような極端なケースでは、過度の調整の主な兆候であるバンディングが発生する場合があります (図5.13)。
バンディングは主に8ビットカラーの制限が原因で発生するため、After Effects 5.0では、特にこの問題を解決するために16ビットカラーモードが追加されました。
Ron Brinkmann著『The Art and Science of Digital Compositing』という書籍から引用します。2008年、Morgan Kaufmann発行で、第2版となります。とても有名な映像のデジタル合成の教科書です。ちなみに第1版は2005年にボーンデジタルから『デジタル合成基礎講座』というタイトルで日本語翻訳された本が発行されていました。
・「ビット深度」を説明する項の中で、バンディングの説明があります。
・コンタリング(contouring)、ポスタリゼーション(posterization)の別名も紹介しています。
・また、量子化(quantizing)や量子化アーティファクト(quantization artifact)という言葉も登場します。
・この書籍には「マッハバンド」に関する記述は無いと思います。
引用元:Ron Brinkmann著『The Art and Science of Digital Compositing』
[引用者訳](太字引用者)
図3.4 8ビット/チャネルでキャプチャされた画像
ここで起きている量子化、特に空と雲のさまざまな色の帯の間の顕著な区分に注目してください。この現象は、「バンディング」、「コンタリング」、または「ポスタリゼーション」とも呼ばれ、異なる陰影間のスムーズな遷移に十分な一意の色値を指定できない場合に発生します。厳密に言えば、この顕著なバンディングは「量子化アーティファクト」と呼ぶべきです。量子化自体は、連続(つまりアナログ)信号から取得したサンプルに離散値を割り当てるプロセスにすぎません。この手順は画像をデジタルで保存するために必要であり、十分な精度で実行すればデジタルコピーとオリジナルを区別することはできません。ただし、サンプル情報を保存するのに十分なデータを割り当てないと、アーティファクトが発生します。
Figure 3.4 An image captured at 8 bits per channel.
Notice the quantizing that arises-the noticeable delineations between various bands of colors, particularly in the sky and clouds. This phenomenon, also referred to as "banding," "contouring," or "posterization," arises when we do not have the ability to specify enough unique color values for smooth transitions between different shadings. Strictly speaking, this noticeable banding should really be called a "quantization artifact." Quantizing itself is merely the process of assigning discrete values to samples taken from a continuous (i.e., analog) signal. This step is necessary in order to store an image digitally, and if it is done with enough precision, you shouldn't be able to distinguish the digital copy from the original. However, if you do not allocate enough data to store the sampled information, artifacts will result.
Steve Wright著『ノードベースのデジタルコンポジット -コンポジターのための理論と手法-』という書籍から引用します。2012年、ボーンデジタル発行です。なお原著タイトルは『Digital Compositing for Film and Video』で、こちらも映像のデジタル合成の教科書として非常に有名な本です。
・約2ページに渡って「バンディング」の詳細な説明があります。それとは別に約4ページに渡ってバンディングへの対処方法の説明があります。
・バンディングの別の呼ばれ方としてコンタリング、疑似輪郭、マッハバンドを挙げています。英語の原書は未読のため、「疑似輪郭」の翻訳前の英語は定かではありませんが、 "false contouring" かもしれません。
・巻末の用語集ではバンディングとマッハバンドを別々に説明しています。この著者の言うマッハバンドは、「広義のマッハバンド」と思われます。
引用元:Steve Wright著『ノードベースのデジタルコンポジット -コンポジターのための理論と手法-』 巻末用語集より
(太字引用者)
バンディング
等高線図のような同一カラーのフラットな領域として現れる画像アーティファクト。ディスプレイ機器に対するデータ値のステップが少なすぎることが原因で発生します。滑らかなグラデーションではなく、わずかに異なるカラーが縞模様となって現れます。コンタリングとも呼ばれます。マッハバンドも参照してください。
(中略)
マッハバンド
輝度がわずかに異なる領域間の境界が強調されて帯状に見える視覚的錯覚。これにより、バンディングのアーティファクトを眼が非常に敏感に感じ取るようになります。
本文では、バンディングの発生原理について非常に詳しく説明しています。
引用元:Steve Wright著『ノードベースのデジタルコンポジット -コンポジターのための理論と手法-』
(太字引用者)
フィルムをデジタル化する際の重要な条件の1つは、デジタル化によるステップをバンディング(コンタリング、疑似輪郭、マッハバンドなどとも呼ばれます)が生じないぐらい小さくすることです。これに対する限界を設定するのは人間の知覚システムです。ある研究によると、 2つのグレーパッチを並べた場合、その輝度の相対差が1%未満であれば、目はその2つの違いを認識できないそうです。ここで重要なのは、差が相対的であるということです。これは、2つの隣接するグレーパッチの輝度の違いが相対的に1%未満でなくてはならないことを意味します。1%以上では目が2つのパッチを認識し、それらを区切る線、つまりバンディングを知覚できるようになってしまいます。この「1%ルール」は暗い部分から明るい部分まで全体に当てはまります。相対的な違いということは、暗いパッチで1%の相対差がある場合、輝度の違いはわずかなものですが、明るいパッチでは輝度の違いが大きくなることを意味します。
(中略)
実世界では、ある程度ではありますが、デジタル化されたフィルムのバンディングが、フィルムグレインによっていくらか除去されます。このことについては、コンピュータで生成した画像のバンディングを除去するためにはグレイン(ノイズ)を追加するという経験から皆さんもすでにご存知かと思います。
Charles Poynton著『Digital Video and HD: Algorithms and Interfaces』という書籍から引用します。2012年、Morgan Kaufmann発行の第2版です。
・バンディング(banding)、コンタリング(contouring)という用語が登場します。
・量子化アーティファクト(the quantization artifacts)という表現も出てきます。
・マッハバンド(Mach bands)という用語も登場します。マッハバンドと呼ばれる知覚の効果が、コンタリングを強化するという記述があります。この著者の言うマッハバンドは、「広義のマッハバンド」と思われます。
引用元:Charles Poynton著『Digital Video and HD: Algorithms and Interfaces』
[引用者訳] (太字引用者)
「コード100」問題と非線形での画像のコーディング
輝度に比例する8ビットのピクセル値を考えてみましょう。コード0は黒を表し、最大コード値255は白を表します (下図3.3を参照)。コード100は、隣接する輝度値の比率が1%になるスケール上の点にあります。視覚のコントラストしきい値が約1%であるため、コード100サンプルの領域とコード101サンプルの領域間の境界が見える可能性が高くなります。
ピクセル値が100未満に下がると、隣接するコード間の輝度の差が顕著になります。コード20では、隣接する輝度値の比率は5%です。グレーの色合いが滑らかに変化する広い領域では、これらの輝度の差が目に見えるか、不快に感じる場合があります。輝度の急激な変化が目に見えると、コンタリングやバンディングのアーティファクトが発生します。
100を超える線形光コード群では、バンディングアーティファクトは発生しません。ただし、コード値が白に近づくにつれて、コードの知覚への有用性は低下します。コード200では、隣接するコード間の輝度比はわずか0.5%で、可視性のしきい値を下回ります。コード200と201は視覚的に区別がつきません; コード201は存在しなくても気付かれないため、なくてもかまいません。
The "code 100" problem and nonlinear image coding
Consider 8-bit pixel values proportional to luminance, where code zero represents black, and the maximum code value of 255 represents white, as in Figure 3.3 below. Code 100 lies at the point on the scale where the ratio between adjacent luminance values is 1%: Owing to the approximate 1% contrast threshold of vision, the boundary between a region of code-100 samples and a region of code-101 samples is liable to be visible.
As pixel value decreases below 100, the difference in luminance between adjacent codes becomes increasingly perceptible: At code 20, the ratio between adjacent luminance values is 5%. In a large area of smoothly varying shades of grey, these luminance differences are likely to be visible or even objectionable. Visible jumps in luminance produce contouring or banding artifacts.
Linear-light codes above 100 suffer no banding artifacts. However, as code value increases toward white, the codes have decreasing perceptual utility: At code 200, the luminance ratio between adjacent codes is just 0.5%, below the threshold of visibility. Codes 200 and 201 are visually indistinguishable; code 201 could be discarded without its absence being noticed.
また、以下は「マッハバンド」についても触れている箇所になります。
引用元:Charles Poynton著『Digital Video and HD: Algorithms and Interfaces』
[引用者訳] (太字引用者)
8ビット線形コーディングの制限
332ページの「コンピュータグラフィックスにおけるガンマ」で述べたように、合成画像をレンダリングするコンピュータグラフィックスシステムは通常、線形光 (または大まかに言えば「強度」) 領域で計算を実行します。ローエンドのグラフィックスアクセラレータは、従来、線形光領域でグーローシェーディングを実行し、8ビットのコンポーネントをフレームバッファに格納していました。31ページの「コード100」問題と非線形画像コーディングでは、線形光表現ではコンポーネントあたり8ビットだけでは高品質の画像を実現できないことを説明しました。このような画像では、通常、コンタリングが見られます。コンタリングの可視性は、マッハバンドと呼ばれる知覚の効果によって強化されます。そして、このコンタリングのアーティファクトはバンディングと呼ばれることがあります。
Limitations of 8-bit linear coding
As mentioned in Gamma in computer graphics, on page 332, computer graphics systems that render synthetic imagery usually perform computations in the linear-light - or loosely, "intensity" - domain. Low-end graphics accelerators historically performed Gouraud shading in the linear-light domain, and stored 8-bit components in the framebuffer. In The "code 100" problem and nonlinear image coding, on page 31, I explained that linear-light representation cannot achieve high-quality images with just 8 bits per component; such images typically exhibit contouring. The visibility of contouring is enhanced by a perceptual effect called Mach bands; consequently, the contouring artifact is sometimes called banding.
知覚心理学を専門とし、錯視の研究で有名な立命館大学の北岡明佳教授によるウェブページ『錯視のカタログ』から引用します。"Renewal April 2008"の記載があり、その後更新された部分には別途年月日が記載されていることから、今回引用する部分は2008年の時点で書かれていたものではないかと推測します。
当記事内で「広義のマッハバンド」と呼んでいる明度の縁辺対比は、『錯視のカタログ』の中では「シュブルール錯視」と呼ばれています。そして、マッハバンドとは別のものとして扱われています。これをマッハの帯(マッハバンド)と呼ぶのは誤りである、としています。
引用元:錯視のカタログ
(太字引用者)
マッハの帯(Mach band)
マッハバンドともいう。輝度が均一な領域が、その輝度から輝度が一定割合で変化する輝度勾配領域と接している時に、それらの境界部分に発生する錯視的な線のことである。輝度勾配領域が暗い均一領域と接しているところでは暗い線が知覚され(図ではD)、明るい均一領域と接しているところでは明るい線が知覚される(図ではL)。
(中略)
シュブルール錯視(Chevreul illusion)
相対的に暗い面と相対的に明るい面を並べると、暗い面の境界付近が暗く見え、明るい面の境界付近が明るく見える。マッハの帯と呼ばれることも多いが、誤りである。
武蔵野美術大学造形学部名誉教授の千々岩英彰氏によって書かれた『色彩学概説』という書籍から引用します。東京大学出版会による出版です。初版は2001年ですが、ここで引用するのは2016年の第14刷です。
明るさ対比の効果として「マッハの帯」の詳しい説明が出てきます。しかし、「明るさが段階的に変わる灰色の配列」としており、これはシュブルール錯視図形です。前述の立命館大学の北岡明佳教授が「マッハの帯と呼ぶのは誤り」としたものが、ここではマッハの帯と呼ばれています。説明を読んでも、「狭義のマッハバンド」と「広義のマッハバンド」がごちゃまぜになっている感じもします。図は1981年のHurvich, L.M.からの引用となっています。
引用元:千々岩英彰著『色彩学概説』
(太字引用者)
明るさ対比は,色同士が隣接したときにもっとも顕著に現れる.しかし,その現れ方は決して尋常ではない (図4.19).この明るさが段階的に変わる灰色の配列は,マッハの帯(Mach's band)と呼ばれている.隣り合った灰色は,単に強度と明るさが異なるだけでなく, 隣接部の左側はより暗く,右側はより明るく見える.また灰色のストライプは,平板でなく,いくらか湾曲しているように見える.
これについて,マッハは「刺激のわずかな違いは無視され, 大きな違いは不相応なまでに強調される」と述べている.その辺りのことは,図4.19の下にハービィッヒ (Hurvich, L.M.) が記した,マッハの帯の刺激の強度と見かけの明るさのグラフからもうかがえる.もっとも,マッハの考え方は非常に示唆的ではあるが,これだけではことがらが証明されたことにはならない.しかし今では,その神経過程が解明されている. それは,側抑制(lateral inhibitation theory)と呼ばれる理論である.その側抑制の神経過程は,アメリカの生理学者ラトリフらにより明らかにされた.図4.20は,ラトリフ自身が描いたこの理論の模式図である.
これによると,カブトガニの目 (単眼が集まった複眼である) の一つに光があたるとその興奮が周囲の他の目の興奮を抑制し,明暗の差が増幅される様子がわかりやすく示されている.図4.19で見たマッハの“帯”とそれらの境界にできる“エッジ”は,この抑制効果の産物というわけである.なるほど,われわれの目は非常に精巧にできている.それでも,光は角膜と水晶体と硝子体を通る過程で歪み,ぼやける.網膜に届いた像には,くっきりとした線や輪郭はない.口絵1もそうだし,スーラー (Seurat, G.) やシニヤック(Signac, P.) の点描画もそう描かれているにもかかわらず,そこにあたかも線があるように見えるのは,この側抑制効果による一種の錯覚 (illusion)である.
色彩心理学を専門とする神奈川大学の三星宗雄教授による論文『色の力・明るさの力』から引用します。
ここでも、シュブルール錯視図形が提示され、「マッハの帯」とされています。ここで説明されているのは「広義のマッハバンド」です。エルンスト・マッハが報告したものではないはずです。しかし、マッハが報告したと書かれており、「狭義のマッハバンド」と「広義のマッハバンド」がごちゃまぜになっているように思います。
引用元:『色の力・明るさの力』
(太字引用者)
図 3 はマッハの帯と呼ばれる現象である(Sekuler et al., 1985)。輝度の変化がある部位で、その境界線の高輝度部側で明るさ感覚の増大(他の部位と比べてより明るく見える)が、低輝度部側で明るさ感覚の低下(他の部位と比べてより暗く見える)が見られる。結果的に境界線をはさんで見た目の明と暗の縞が生じる。これを報告者にちなんでマッハの帯(Mach bands)と呼ぶ。このマッハの帯によって明と暗の見た目のコントラストが増大し、境界線がよりくっきりと見える。輪郭線強調効果とも呼ばれ、網膜の on- 中心、off- 周辺型の受容野(receptive field)の表れと考えられている(Thomas, 1975; Sekuler et al., 1985)(図 4)。この現象は境界線の物理的な輝度差を感覚によって拡大したと考えられ、感覚の持つ機能の 1 つである。
1997年、日本色彩学会副会長、また大阪芸術大学で色彩学を担当した山中俊夫氏によって書かれた『色彩学の基礎』という書籍から引用します。文化書房博文社による出版です。
・マッハバンドという用語は登場しませんが、「マッハ効果」「マッハの輪の回転」として、おそらくマッハバンドと実質的に同じと思われる説明があります。
・この記述を見ると、この著者は「広義のマッハバンド」=明度の縁辺対比と「狭義のマッハバンド」を区別していると思います。最初に明度の縁辺対比を説明し、その後「狭義のマッハバンド」、つまり本来のマッハバンドを紹介しています。明度の縁辺対比の一種(具体例)が「狭義のマッハバンド」であるという考え方ではないか思います。
引用元:山中俊夫著『色彩学の基礎』
(太字引用者)
もう一つは,グレイスケールの色票系列のような, ステップ状に明度が変化する無彩色色票の境界部分を見ると,その境界線に沿った狭い範囲で明るい方の色票では暗く,暗い方では明るく見える。これは色票の隣接部分の相互の明るさの対比効果であり,これを境界対比(border contrast)あるいは縁辺対比という。またこの現象はマッハ効果としてマッハの輪の回転によって見ることができる。
2009年、清野恒介 編著『色彩用語事典』より引用します。
マッハバンドは、縁辺対比の事例の1つ、という立場のようです。「狭義のマッハバンド」と「広義のマッハバンド」を切り分けている記述です。
引用元:清野恒介 編著『色彩用語事典』
縁辺対比 明度対比と同類の現象で、無彩色を明、中、暗の3色組み合わせた場合、中明度に接している左側と右側部分に明るさの変化が見られることです。左側では暗く、右側では明るく感じられます。事例は無彩色ですが、有彩色の明度関係でもこの対比現象が現れます。マッハバンドといわれる事例も、縁辺対比と同じ対比現象です。
日本色彩学会 編集の『色彩用語事典』から引用します。2003年、東京大学出版会による発行です。引用箇所は心理物理学、色彩工学の専門家である立命館大学の篠田博之教授による執筆のようです。
ここで説明されるマッハ効果、マッハバンドは「狭義のマッハバンド」です。
引用元:日本色彩学会 編集『色彩用語事典』
マッハ効果 [Mach effect] (感知)
図 (a) のような白黒の図形を高速で回転させるとき,輝度分布は図 (b) のようになるが,見えの明るさは図 (c) のようになる.とくに輝度勾配が変化する βとγに明るい帯が観察され,βとγとの間は、ほぼ一様な灰色に見えるか,あるいは実際の輝度勾配に比べて明るさの変化が小さく感じられる.この現象はマッハにより発見され,マッハ効果あるいはマッハの帯 (Mach band) とよばれる.マッハ効果は周辺に抑制性の領域をもつ受容野によってよく説明され,側抑制という網膜上の神経生理機構が、実際の視覚体験をよく説明する例として紹介されている (Ratliff, 1965).(篠田博之)
日本色彩学会による『新編 色彩科学ハンドブック 【第3版】』という書籍から、マッハバンドに関する記述を引用します。2011年の第3版、東京大学出版会による発行です。
マッハバンドとして説明しているのは、明らかに「狭義のマッハバンド」です。
引用元:日本色彩学会 『新編 色彩科学ハンドブック 【第3版】』
(太字引用者)
ある領域の色・明るさの見えが,その領域を囲む輪郭部分の局所的な輝度の変化によって影響をうけることが知られている.この例にクレイク・オブライエン・コーンスイート (Craik-Obrien-Cornsweet) 錯視やマッハバンドがある.一般に,ある領域と輝度の等しい周囲領域とが,緩やかな輝度勾配と急激な輝度変化からなる輝度輪郭で区切られたとき,2つの領域は実際には輝度が等しいにもかかわらず,明るさが異なるそれぞれ一様な領域として知覚される.明るさだけでなく、色相・彩度においても類似した効果が報告されている. 輪郭から遠く離れた領域の輝度が輪郭近傍の輝度と等しいように一様化されるため, 明るさの充填 (filling-in) 現象の例としてもよく紹介される.
2008年発行の『カラーコーディネーター用語辞典』という書籍から引用します。編著者は尾上孝一、金谷喜子、田中美智、柳澤元子。
マッハバンドは、縁辺対比の一種であると説明しています。しかし、単純に「明度の違う色を隣接させる」と書かれていることから、「広義のマッハバンド」を意味しているように読めます。
引用元:『カラーコーディネーター用語辞典』
マッハバンド [Mach Band] 明度の違う色を隣接させると,色同士の境界線付近に狭い明るい線と,狭い暗い線が見える。この線のことをいい,縁辺 (えんぺん) 対比の一種でもある。「マッハ効果」ともいう。
小町谷朝生 監修、内田洋子 宇田川千英子 共著『よくわかる色彩用語ハンドブック 色彩検定 カラーコーディネーター検定色 彩教育に役立つ』より引用します。2002年、早稲田教育出版による発行です。
マッハバンドは縁辺対比の一種としています。
しかし、単純に「異なる色を隣接させる」と書かれていることから、これは「広義のマッハバンド」を説明しているように読めます。にもかかわらずマッハが発見したとも書かれており、「広義のマッハバンド」と「狭義のマッハバンド」がごちゃごちゃになっている感じがします。
引用元:『よくわかる色彩用語ハンドブック 色彩検定 カラーコーディネーター検定 色彩教育に役立つ』
マッハの環 (Mach ring)
白黒による不連続なパターンの円板を急速に回転させると、パターンの不連続点部に明暗による円環が見える現象。
マッハ・バンド (Mach band)
色相や明度の異なる色を隣接させるとき、その境界線付近にできる明るい線と暗い線。縁辺対比の一種で、網膜の側抑制作用によると考えられている。マッハが発見したが、 画家シニャックがその効果を明確に示す絵を描いている。
ウェブサイト、日経クロステック の『Tech-On!用語辞典』における「マッハバンド」の説明を引用します。
後半の説明を読むと、「狭義のマッハバンド」、つまりエルンスト・マッハが報告した本来のマッハバンドを説明していると思われます。グラデーションという勾配(斜面、坂道)の左右に「平たんな台地」がある状況を、しっかりと説明しています。しかし最初の一文だけを読むと、「バンディング」の説明にも当てはまる記述です。このような文章から、バンディングとマッハバンドを混同する人が出てきたのかもしれません。
引用元:マッハ・バンド | 日経クロステック(xTECH)
マッハ・バンド
Mach band
グラデーションなど階調をなだらかに変化させる表現を行ったときに,階調の境界線が目だって見える現象のこと。マッハの帯ともいう。
人間の視覚は,階調の境界を強調する特性を備える。たとえば,黒画面→グレースケールの画面(段階的に明るくする)→白画面を接する形で配置した場合,白画面の領域でもグレースケール画面と接する場所が,帯状により白が強調されて見える(図参照)。この錯視が,マッハの帯を生む原因である。
ウェブサイト、CGWORLD.jp の『CG用語辞典』における「マッハバンド」の説明を引用します。
こちらは「広義のマッハバンド」、つまり明度の縁辺対比を説明していると思われます。
引用元:マッハバンド | CG・映像の専門情報サイト | CGWORLD.jp
マッハバンド
人間の目は暗い部分に接する場所をより明るく、明るい部分に接する場所をより暗く認識する。そのため、隣接する色同士の明度差が大きいと、意図しない境界線が見えてしまう場合がある。この境界線をマッハバンドとよぶ。CGでは、フラットシェーディングされた隣接ポリゴン間などで発生する。
コンピュータグラフィックス編集委員会監修による『コンピュータグラフィックス』という書籍から引用します。画像情報教育振興協会(CG-ARTS協会)発行です。2008年の第二版三刷です。
マッハバンド(Mach band)の説明があります。この本の説明するマッハバンドは、明らかに「広義のマッハバンド」、明度の縁辺対比です。
引用元: コンピュータグラフィックス編集委員会監修 『コンピュータグラフィックス』 Appendixより
(※リンク先は[改訂新版])
ある対象の明るさがほかの対象の明るさの見えに影響を及ぼす場合もある。たとえば,図a.8は,背景の灰色は同じ濃度であるが,細い線分が明るいと背景も明るく見え,線分が暗いと背景も暗く見える。これを明るさの同化とよぶ。逆に図a.9は背景の明るさによって,中の円の明るさが影響を受けている。暗い背景は対象を明るく見せ,明るい背景は対象を暗く見せる。これを明るさの対比 (明度対比: lightness contrast)とよぶ。図a.10は,明るさの異なる部分との接触により,明るさの対比が起こる例である。同じ明るさの領域内でも,より暗い領域に接する部分は明るく見え,より明るい領域に接する部分は暗く見えるため,領域間の明るさの違いが強調されて見える現象である。これをマッハバンド (Mach band) とよぶ。
そして、この書籍には「バンディング」という用語は登場しませんが、バンディングのことと思われる記述が少しだけあります。それはマッハバンドとは全然別のところ、色調整の話の中で出てきます。「疑似輪郭」と「量子化」という言葉が出てきます。
引用元:コンピュータグラフィックス編集委員会監修 『コンピュータグラフィックス』
(※リンク先は[改訂新版])
(太字引用者)
図6.34や図6.35のヒストグラムを見ると,棒グラフの間にすきまが空き,くし状になっている。これは傾きが1より大きいトーンカーブにより濃淡範囲が広げられたためである。この部分では,疑似輪郭が現れることがある。これを未然に防ぐためには,入力画像の量子化レベル数を増やしておく必要がある。
神経科学者のルイス・ペソア(Luiz Pessoa)による1996年の論文『Mach Bands: How Many Models are Possible? Recent Experimental Findings and Modeling Attempts』(マッハバンド: いくつのモデルが可能か? 最近の実験結果とモデル化の試み)から引用します。
マッハの帯(Mach bands)とシュブルール錯視(Chevreul illusion)は混同されることもあるが、区別すべきである、と説明しています。
引用元:Pessoa L. (1996). Mach bands: how many models are possible? Recent experimental findings and modeling attempts.
[引用者訳] (太字引用者)
マッハの帯の文脈でよく議論される効果に、フランスの化学者ミシェル・ウジェーヌ・シュブルール(1839)にちなんで名付けられたシュブルール錯視がある。図11は、輝度分布と、その「波打った」または「溝付き」の見た目を持つ知覚される明るさの概略図である。研究者の中には、シュブルール錯視は本質的にマッハの帯と同じであると説明する者もいる(例: Hurvich, 1981, p. 164)。これは知覚の入門書でも一般的である(Goldstein, 1989など)。この2つの錯視は表面的には類似しているが、特に、輝度の段差の場合はほとんどの条件下でマッハの帯を生じないことを示す多くの証拠があることを考えると、両者を区別することは重要である。Rossら(1981)は、シュブルール錯視とマッハバンドの両方を調査し、シュブルール錯視は(a)暗順応の影響を受けないこと、(b)低空間周波数でも高空間周波数でも存在すること(少なくとも15パネル/度まで)、(c)波形模様が実際の外観と交互に現れること(すなわち、図11の知覚と歪みのない階段の知覚とが交互に現れること)から、これらの知覚には異なる生理学的メカニズムが働いている可能性を示唆している。シュブルール錯視を引き起こす刺激の重要な性質は、少なくとも3つのパネルがあることである(Bekesy, 1968b)。シュブルール錯視を起こすには1つの段差では十分ではなく、少なくとも2つの段差が必要である(「外側の境界エッジ」は別として)。この忘れられがちな要件は、マッハの帯とシュブルール錯視の関連については慎重に調査する必要があることを示している。
An effect that is often discussed in the context of Mach bands is the Chevreul illusion, named after the French chemist Michel-Eugène Chevreul (1839). Fig. 11 illustrates both the luminance distribution and a schematic representation of the perceived brightness with its “scallopy” or “fluted” appearance. Several researchers have described the Chevreul illusion as essentially the same as Mach bands (e.g. Hurvich, 1981, p. 164); this is also common in introductory perception textbooks (e.g. Goldstein, 1989). While the two illusions are superficially similar, it is important to distinguish between them, especially given the large body of evidence showing that luminance steps do not produce Mach bands under most conditions, if at all. Ross et al. (1981) investigated both the Chevreul illusion and Mach bands and suggest that different physiological mechanisms may underlie their perception since the Chevreul illusion is (a) unaffected by dark adaptation; (b) is present both at low and high spatial frequencies (up to at least 15 panels/deg); and (c) the scalloping alternates with the veridical appearance (i.e. the percept in Fig. 11 alternates with the percept of an undistorted staircase). An important property of stimuli that produce the Chevreul illusion is that they have at least three panels (Bekesy, 1968b). One step is not sufficient to generate the effect, but at least two are necessary (aside from the “outer border edges”). This often forgotten requirement demonstrates that any links between Mach bands and the Chevreul illusion require careful investigation.
さて、この記述によると、どうやら1981年のL. M. Hurvichによる著書『Color Vision』が「狭義のマッハバンド」と「広義のマッハバンド」の混同を広めた可能性があります。かなり有名な本のようで、いろいろなところで参考・引用文献として挙げられるのを見かけます。前述の三星宗雄教授による論文『色の力・明るさの力』でもHurvichの『Color Vision』(1981)は引用文献としてあげられています。また、この本は2002年に日本語に翻訳され、『カラー・ヴィジョン 色の知覚と反対色説』のタイトルで出版されています。千々岩英彰著『色彩学概説』(第14刷, 2016)は、全体にわたる参考文献として誠信書房『カラー・ヴィジョン』(2002)を記載しています。
レオ M.ハーヴィッチ著『カラー・ヴィジョン 色の知覚と反対色説』より引用します。2002年、誠信書房による出版です。原著は1981年の『Color Vision』です。
境界対比(border contrast)、辺縁対比(edge contrast)という言葉が出てきます。近年、それは「マッハ・バンド効果」または「マッハ対比」とも呼ばれるようになってきた、と書かれています。つまり1981年の時点で、すでに「狭義のマッハバンド」と「広義のマッハバンド」は英語圏で混同が始まっており、広がっていたことになります。
引用元: レオ M.ハーヴィッチ著『カラー・ヴィジョン 色の知覚と反対色説』
Ernst Mach は,エネルギーが異なる二つの領域間の辺縁に生じる強い,思いがけない,劇的なともいうべき対比効果にはじめて着目した。いま,エネルギーが異なる,一様に照明された二つの領域が,互いに辺を接して置かれると,その面は明らかに異なった明るさに見える。次いで,二つの領域間の境界または辺縁を注意深く,しっかりと観察してみると,より明るい領域はその境界のところに強調された明るい線をもち,より暗い領域はその境界のところに強調された黒い線をもつことが分かる。この効果は,図12のような白灰黒のステップ状の面を用いれば,一層明瞭になる。各ステップ内の光エネルギーが一様に分布していても,各辺縁では対比が高められた状態になる。
エネルギーが異なり,したがって明るさが異なる二つの領域が接しているときに見られる,強い対比効果は,見れば分かるとおりの理由で,境界対比(border contrast)あるいは辺縁対比(edge contrast)と呼ばれる。近年ではまた,「マッハ・バンド効果」または「マッハ対比」とも呼ばれるようになってきた。これらの効果は,二つの領域の間が急峻に変化する場合よりも,むしろ徐々に変化する場合にとりわけ強い。
ところで、印刷業界でも「バンディング」と言うようです。2024年発行、日本画像学会 編、松木眞 監修『【シリーズ デジタルプリンタ技術】画像処理の基礎 視覚認知からデジタルプリンティングまで』より引用します。
引用元:日本画像学会 編『【シリーズ デジタルプリンタ技術】画像処理の基礎 視覚認知からデジタルプリンティングまで』
バンディングとは,主に用紙送り量の誤差や,ノズルごとの飛翔方向のばらつきなどが原因で生じる着弾位置ばらつきによって発生する筋状のむらであり,元画像にはない境界線として視認される。
いかがだったでしょうか!
今回は「バンディング」と「マッハバンド」についてまとめてみました!
グラデーションに段差が現れるアーティファクト、という意味で「マッハバンド」という言葉を使うのは誤用と言って良さそうです。
今後は「バンディング」という正しい用語で統一されることに期待したいですね!
この記事が参考になったら嬉しいです!
最後までお読みいただきありがとうございました!
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