逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

靖国公式参拝と慰霊の為の前提条件

2008年02月19日 | 宗教
日本の反動右翼の主張のなかに『中国韓国は無知だ、靖国に位牌や遺骨が有ると思っている』と言うのが有りましたが、なるほどそうかも知れない。
中国韓国に限らず、外国人達には、日本人が自分達の同胞の亡骸を山河に打ち捨てたままにしているとは、たぶん信じられないでしょう。

世界中で一番貧しい国民でも、一番未開な種族でも同胞の亡骸を、そのまま野辺に打ち捨て朽ちるに任せ、葬らないなどは考えられません。

日本軍将兵の遺骨が半分近く収集されていません。
フイリッピンやニューギニアのジャングルには膨大な野ざらしになった遺骨が苔むすままになっています。

撃沈された軍艦や貨物船は全く手付かず状態、海にも陸にも百万人以上の日本人の遺骨が、打ち捨てられて家族のもとへは届けられていません。

現在でも遺骨収集は生き残った元兵士が老体に鞭打って続けています。民間有志によって今も細々と行われています。
しかし戦後60年以上経って、厚生省は遺骨収集事業の打ち切りを策しています。戦後を終わらしたいのでしょう。
死者の亡骸を彼等の家族の下に返さねばなりません。
慰霊の前提条件です。

慰霊とか顕彰とか言う前に、しなければ為らない最低条件です。
其の最低条件が軽んじられ、亡骸は野辺に朽ち果てようとしています。

日本軍も、以前には遺骨を家族に返して、靖国に祭っていたのですが、世界大戦の中期以後は、ぼろ負けで遺骨収集どころでは無くなり、白木の箱に石ころでごまかした。
国外に打ち捨てられているだけでは有りません。
国内でも事情は同じです。

世界大戦が始まっても最初の頃は、亡骸を回収し遺族に返していました。
当時靖国には20万人程度が祭られていたのです。
今の十分の一以下の当時の英霊を祭った靖国神社と、現在の靖国では大きく性格が違ってきています。
あまりに多くの戦死者に遺体収容(遺骨収集)が間に合わず、にっちもさっちも行かなくなってしまったのでしょう。
日本は、恐ろしいことに今も営々と戦争を続けているアメリカの、一桁違いの膨大な戦死者が出てしまったのです。

地上戦が行われた沖縄では地元の民間人が遺骨収集した為に殆んどが回収されましたが、民間人がいない硫黄島では、戦死者の家族の下に帰れず、半数が地下壕に眠ったままです。

政府は此れからも靖国程度の話で誤魔化し通けるつもりでしょう。
科学技術が進歩し遺骨からでも身元が特定できます。
本当に政府に慰霊の気持ちが少しでも有るなら遺骨の収集はぜひやってもらいたい。

無念の犬死を、そのまま放っておいて、何が『英霊』の『慰霊』でしょう!
野ざらしになったまま靖国に還れるはずがありません.
偽善も偽善,魂が靖国に還ってきていない。
還って来れないのは百も承知しているくせに、知らぬ顔して英霊を顕彰するなんて大偽善です。

遺体を回収せずに、死者のむくろを道端に打ち捨てて置いて、英霊の顕彰などと言う自称愛国者や靖国などは日本の大恥、世界のものわらいです。





『打ち捨てられた英霊達を、全く知らない若者達』

ある一定の年齢以上の人達は、常識とか出典とか言わなくともみんな体験として知っていました。
いやはや、・・・驚きました。!
靖国公式参拝を支持する若者達が、日本国が、日本兵の遺骨を収集していない事実を、ほとんどが、何も知らなかったらしいのです。
いったい靖国を支持する若者達は、何から歴史を学んだんでしょうか。?

小林よしのりや西部や藤原等の靖国論者達の言い分は、重箱の隅をホジクル事は得意でも戦争の本質は語りません。

彼等靖国文化人達は決して、都合の悪い事柄は書きません。
彼らから歴史を学んだつもりになっていたら、大きな間違いで、とんだ紛い物を掴まされた事に気が付くはずです。
本当に若者達には、日本に何が起こっていたのか。いい加減に戦争の本質に気が付いて欲しい。
遺骨収集に、日本は殆んど何もしていない事実を、今の若者達が知らされていない事実。
重要な事は何も知らせず、つまらない細々した知識を若者に教える右翼知識人たち。
歴史修正主義者は自分に都合の悪い事は、無かったことにします。

失敗や敗北、政府がついた嘘、軍がやった悪事などを教える事は自虐史観として退け、良い事だけを虫食いの様に教える。
それで、今のように大事な事実を知らない若者達が大勢出て来るのです。




『見捨てられた硫黄島の戦死者』

現在、硫黄島には自衛隊基地が有り民間人は立ち入り禁止です。
此処には一万人以上の同胞が家族の下に帰れず、骸は朽ちるにまかされています。

ほとんどの遺骨が収集された沖縄よりも、4年も早く日本に返還されている小笠原は40年前の1968年に返還されている。
日本国内で唯一地上戦が戦われた沖縄と小笠原(硫黄島)。しかし戦後の遺骨蒐集では大きく明暗を別けてしまった。
違いは民間人の居住の有無で此れが大きい。
自分の生活圏に大量の遺体(遺骨)が有れば・・・誰が考えてもこの状態は尋常では有りません。
それで沖縄では殆んどの遺骨が収集されました。
返還されて30年以上たち、硫黄島は人家がない分、収集作業はかえって容易でしょう。
日本国内での、一万人以上の未収集など論外です。政府、厚生省の怠慢以外に何が考えれるでしょう。

正に目に付くところだけ始末した。其のほかは放って置いたのです。
日本より多くの戦死者を出したドイツでは遺骨の殆んどを回収しています。
この事実を外国人に知られたら、・・・正に『国辱』そのものです。

一方では、徒に当人の死体を野辺に晒したままにして放置し、朽ちるに任せる。
一方では、盛大に金や時間や人手をかけて、葬式や供養に手間暇かけるものが、何処の世界に、いるでしょうか。?
世界中探しても、そんな愚かな行為をしているものは、一人もいません。

戦争の後始末が済んでいません。
戦死者を家族の下に返すのが、慰霊の前提条件です。
慰霊とか顕彰とか言う前に、しなければ為らない、『最低条件』なのです。

年寄りでも死は悲しいのに、若い肉親を失った家族の悲しみは計り知れません。
遺品に付着していた髪の毛を欲しがった遺族の声を今でも思い出します。
数本の髪の毛でも、残された彼等遺族にとっては意味が有るのです。
自分達の仲間を、どんな事をしても家族の下に返す義務が有るのです。

東京都小笠原村の硫黄島を、06年9月に民主党の小沢一郎と管直人が視察しています。
1945年2月から3月にかけて日本軍22000人が玉砕したが、遺骨は4割にも満たない8510柱しか収集されていない。(9月19日の毎日新聞)
硫黄島の問題はNHKで以前スペッシャル特集が有りましたから再放送があるかも知れません。






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7 コメント

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不明に恥じ入る (愚樵)
2008-02-19 18:09:11
記事、拝見しました。拝見して、自らに情けない気持ちになっています。なんとも恥ずかしい。

>日本軍将兵の遺骨が半分近く収集されていません。
>フイリッピンやニューギニアのジャングルには膨大な野ざらしになった遺骨が苔むすままになっています。

このことは、私も知識としては知っていました。太平洋戦争に関するTV番組等で、繰り返しそうした事実があると放映されていたように思います。知識としては知っていても、それは他人事。

また、地元で戦争体験を聞いて回ったときにも、そうした話は聞いています。墓はあるが遺骨はないという方もたくさんおられる。そのことを具体的に知っていました。けれど、知っていただけでした。

“ふ~ん、そうなのか、戦争は酷いな、してはならないな、9条は守らなければならないな”

そうは思っても、打ち捨てられて遺骨の収集を国家の責任で行わなければならないなんて、考えもしませんでした。

これは靖国に参拝するしないなんて問題以前のことでしょう。“私は9条を守らなければならないと考えているから、そんなの関係ない”で済まされる問題ではない。戦争で散って行った者たちを英霊として奉るなら尚更のこと。
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戦争の後始末をしていない日本国 (ブログ主)
2008-02-20 14:04:17
靖国神社公式参拝は中国韓国などの抗議で、外交問題化していますが、それ以前に『靖国』が日本人の問題であることは論を待たない。

靖国公式参拝がいかに不道徳で、恥ずかしい行為であるか、若者達に理解して欲しいものです。

戦後直ぐには、石橋湛山のように靖国解体を主張するような保守政治家もいたが、今では想像すら出来ない有様。情けないかぎりです。

文部省で義務教育での宗教的情操教育の必要性が言われているが、宗教以前の礼儀や慣習さへ理解していないらしい自民党政府に『宗教』を政治に利用して欲しくないものです。
歴史上一貫して、日本では宗教は政治の道具として利用されていたが『靖国神社』はその典型例ですね。
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石ころ (ましま)
2008-02-20 21:33:15
私の叔父は石ころ組です。
このエントリー、兄の心情ご高見は了とします。
叔母は90をこえてまだ健在です。遺骨?野ざらし?犬死に?・・・。そう、そのとおり。
もう、うっちゃっててほしい。半世紀かけてようやく心の整理をつけたのに。さきゆき短い余生をこれ以上乱されたくない。
そんな気持ちじゃないかと思います。
戦争、過酷なものです。
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ましまさん (ブログ主)
2008-02-21 09:35:01
コメントありがとうございます。
うちの親戚筋は漁師や船乗りが多く、海軍の徴兵か、軍属としての徴用ぐみです。
船足の遅い貨物船に乗っていた徴用された連中は悲惨で、軍艦と違い撃たれると簡単に沈む。
其れで死亡率は正規の軍人より高くなる。しかも遺体を回収して家族に届けるなんてことは最初から考えてもいない。
死んだら、そこら辺の砂漠に捨てられる今の、イラクの民間軍事会社の社員(戦闘員)みたいなものです。



しかし戦死者個人の尊厳を省みない日本でも、欧米並みに、シベリア抑留中の死亡者の内で身元がはっきり判明している遺骨をDNA鑑定して遺族に返している試みもあるようです。
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素晴らしいお考えだと敬服 (時代のウェブログ)
2008-04-11 21:35:33
いつもお世話様です。そこらへんの『愛国――』なんてタイトルの右翼自称ブログよりも遥かに正論です。
イージス艦あたごに撃沈された清徳丸の乗組員親子の捜索が打ち切られた。国が沈めたのだから発見するまでは、たとえ何億・何兆という予算を使っても捜索する義務がある。
英霊達の遺骨捜索も「簡単に行ける場所は大方捜索した」といい、「予算を掛けて行っても骨一片すら持ち帰れないかもしれない」との言い訳。国が密林深く送り込み殺したのだから国が連れて帰れ。そして、そんな真の愛国的予算案に「故人の遺骨よりも現在の福祉に税金を回せ!」なんて言う野党は潰してしまうといい。こういうブログを読んで心ある愛国者が目覚めれば大いに結構。(行間読めない反論シカト故ご承諾のこと)
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なんか偉そう (時代のウェブログ)
2008-04-12 07:09:14
>行間読めない反論シカト故ご承諾のこと
なんか偉そうですね。失敗した。もちろんこちらのブログ主様に対する物ではなく、逆説に対する横レスがもし入ったら、他人様のブログで水掛け論の応酬するのはご迷惑かなと思った物で。
まっとうな人間ならば色々と突っ込み所満載のコメントと自覚してますから。
リンク付いてますんで、横レス入れたくてたまらない御仁がいましたら、こちらではなく当方へとうぞ。まあそれほどの意見でもありませんが――。コメ欄汚し陳謝。
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時代のウェブログさん。 (ブログ主)
2008-04-12 10:25:34
コメント有難う御座います。
この記事を書いた動機は、靖国参拝を賛成している若者達が、靖国の成立の意味や、実態を全く知らなかった驚き。
なかんずく国が遺骨収集を怠っている現実を全く知らないことに大きな驚きを感じたからです。
戦争の実態を全く知らない若者達を、我々は育ててしまった。
彼らは現実ではなく虚構(物語)としての戦争しか知りません。真実を知らない(知らされていない)子供達、恐ろしい事です。
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