日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 今年も終わりますね。2004年、日中関係、とりわけ日本にとっては歴史的な変化をもたらした年として記憶されることになるでしょう。

 つまるところ、日中関係は両国の内政事情を反映しつつ紆余曲折を繰り返してきました。中国はともかく、民主主義の国である日本は、「内政事情」を「世論」と言い換えてもいいかも知れません。日本の対中姿勢が画期的に革まった2004年は、とりもなおさず、日本人の対中認識がある段階に達したことを示している、といっていいのではないでしょうか。

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 さて、今回の主題は「李登輝氏訪日」の上にあります。共同通信の報道によると、李登輝氏は今日(31日)、京都に入りし、氏にとって念願のひとつだった学生時代の教官、当時助教授だった柏祐賢・京大名誉教授(97)と61年ぶりに再会を果たしました。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041231-00000078-kyodo-int

 この報道の末尾にさりげなく書かれている内容に注目です。

「名古屋から京都に到着後、かつて通った京大農学部のキャンパスを見学。『みんな変わった』と感想を述べた。当初、京大本部にも訪れたいとしていたが、警備上の問題で断念した。」

 共同はわざとサラリと流すように書いたように思います。日本側の報道が揃っておらず、また私自身京大の地理について全く通じていないので事実関係はまだよくわからないのですが、台湾の各メディアではすでに大きく報じられていることです。

 メルマガ「台湾の声」から引用しましょう。

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【速報】京都大学が李登輝氏を門前払い

 台湾のテレビ局TVBSの報道によると、李登輝氏は本31日、予定通り母校である京都大学を訪問しようとしたところ、同大学は中国の圧力に屈し、門前払いを行なった。そのため李登輝氏は、校門から10メートル離れた場所から母校を眺めただけで、引き返さざるを得なかった。今日になっての突然の門前払いについて大学側は、自治法によって警察官は構内に入れず、李氏の安全確保に問題があるため、などと説明した。
(『台湾の声』)

http://www.emaga.com/info/3407.html

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 他の台湾メディアの報道もそうですが、京都大学は李登輝氏によるキャンパスへの立ち入りを「大学自治法」を盾に拒んだと伝えています。警備の警官を学内に入れることはできない、というものです。李登輝氏はともかく、その周囲の人たちは警備なしの丸腰で李登輝氏を学内に入れることは受け入れられないことでしょう。

 共同の報道には、

「京大農学部のキャンパスを見学」
「京大本部にも訪れたいとしていたが、警備上の問題で断念した」

 とありますが、台湾側の報道を総合すれば、李登輝氏は京大本部はおろか、農学部キャンパスにも立ち入ることが出来ず、青春時代を過ごした懐かしい場所を外から眺めることしか許されなかった、ということになります。

 言うまでもないことですが、台湾の各メディアはこれを「中国側からの圧力」と捉えています。中共が直接京大に圧力をかけたのか、外務省あたりを通したのかは知りませんが、過去に慶應大や一橋大において、似たような経緯で李登輝氏の講演が妨害されていますね。

 京都大学留学生会長(台湾人の留学生会でしょうか)の張博文氏は、

「中国から学校側への圧力は最初からあった。でも大学は基本的に自主独立した存在だから、学校側はこれに応じなかった。たぶんそのあと学校側は、より高いところ(訳者:日本政府という意味かと思われる)からの圧力に屈したんだと思う」

 と語っています。キャンパス入りを禁じる、との連絡は、訪問12時間前になってようやくもたらされたものです。

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 とりあえず、現時点で出ている台湾メディアの関連記事URLを以下に示しておきます。

 ●中広新聞網
 http://tw.news.yahoo.com/041231/4/1c0ks.html
 http://tw.news.yahoo.com/041231/4/1c0qe.html

 ●民視
 http://tw.news.yahoo.com/041231/44/1c1q3.html
 http://tw.news.yahoo.com/041231/44/1c346.html

 ●TVBS
 http://tw.news.yahoo.com/041231/39/1c0y5.html

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 李登輝氏は農学部の近くまで車を寄せて、家族を残し独りだけ車外に出て、入ることを許されないキャンパスを眺めていたそうです。

「改變了好多,一切都不一樣了」(ずいぶん変わった。何もかもがみな(以前とは)すっかり変わってしまった」

 そう呟いていたと、報道にはあります。

 この一件が李登輝氏にとって快いものでないことは言うまでもありません。そして李登輝氏は、もちろん一介の好々爺に過ぎない存在ではありません。「政治活動はしない」という条件での来日許可について台湾では、

「沈黙の旅」

 という報道がなされました。これに対し李登輝氏は反駁して、

「いま話をしないのは、沈黙を貫くということではない。物事の多くはしっかり理解し見極めてから発言しなければならないものだ」

 と語っています。

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 そして、これはまだ日本では報じられていないのかも知れませんが、、李登輝氏は京大のあと訪れた銀閣寺でついに沈黙を破るのです。TVBSなどの報道によると、

「新しい一年に、台湾は台湾アイデンティティをより強化しなくてはならない。台湾はいままさに転換点の時期を迎えており、思想、文化の面でも新たなスタートが必要だ」(TVBS)
 http://tw.news.yahoo.com/041231/39/1c2vo.html

「今回の旅行は日本をより深く理解する上で大きな助けになった。日本は非常にいい国で、また秩序の整った国家でもある。台湾が新国家を建立する上いいお手本となることだろう」(中央社)
 http://tw.news.yahoo.com/041231/43/1c323.html

「李前総統は、新年を迎えるにあたっての新たな希望は、台湾が新しい国家を建立できるようになることに他ならないと語った」(中広新聞網)
 http://tw.news.yahoo.com/041231/4/1c36j.html

 ええ、政治家・李登輝の活動がついに始まったということです。

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 私は京大の李登輝氏受け入れ阻止にかなり腹を立てているのですが、事実関係も十分に確認されていないことですし、おめでたい新年も目前に迫っている訳ですから、このぐらいにしておきます。

 自分にとっての「備忘録」のつもりで始めた、この拙いブログを皆さんに読んで頂いていることに驚くとともに、心から感謝しています。

 皆さんをはじめ、心ある日本人の方々、そして日本と日本に親近感を寄せてくれている国や人々にとって、新しい一年が幸あふれるものになることを祈っています。

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 一方で、チナヲチをしているときの私にとっては、中共と支那人(漢族)は実験室のマウスにすぎません。それを踏まえた上で言いますが、中共と支那人、そして中共を応援する連中にとって、新しい一年が「惨」「禍」「死」「滅」で彩られる悪夢の日々となることを、誠心誠意、念入りに希求しておきます。

 私も微力ながら、そのお手伝いを今年以上にたっぷりとしてあげます。期待していて下さい(笑)。

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 それでは皆さん、よいお年を。私もこれから年越し蕎麦です。



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 えー速報ばかりなんですが、今度は北京でデモです。デモ速報……ていうほど速くもないですか。

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 厳密には「なんちゃってデモ」ですね。例によって糞青集団、「愛国者同盟網」(愛盟)の残党が、今月20日に続いて昨日(30日)、李登輝氏(及びダライラマ)の訪日に対する抗議デモを実施しました。場所はもちろん日本大使館前です。「糞青」とは当ブログによく出て来る単語ですが、改めて説明しますと自称愛国者の反日信者です。

 再高気温零下4度という寒空の下、みんな頑張ったようです。写真はこちら。

 http://bbs.54man.org/dispbbs.asp?boardID=2180&ID=160545&page=1

 プラカードが知的水準を反映している?そんなこと言っちゃあいけません。それよりも韓流なるものを反映してか、主要メンバーらしき連中の中に短髪にして太らせたヨン様がいることに注目です。ええ抗議文のようなものをポストに投函している彼です。

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 大使館員に直接手渡せなかったのは、たぶん大使館が仕事納めを終えて正月休みに入っているからでしょう(12/29-01/03)。もう二日早ければ手渡しができてマスコミの絵にもなったのに(※1)。敵を知り己を知れば百戦危うからず。糞青どもはまず孫子を読むべきです。

 それからイメージ戦略も。不細工なオッサンばかりじゃないですか(人の事言えるか>自分)。「喜び組」のような……て無理ですか。でも華が欠けると、往々にして写真なしの記事にされてしまうんですよねぇ。

 ああそれから日本語の勉強も忘れずに。「ならず国家」って何?(笑)

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 さてこの「愛盟」、反日サイトの総本山としてブイブイ言わせていたのですが、在来線高速化計画への日本企業参加反対のネット署名をやったため、HPを8月29日に強制閉鎖させられました(※2)。で、一時大人しくしていたのですが、秋口に今度は「青年先鋒網」という名前で別ドメインによるサイトを開設、現在に至っています。

 江沢民は連中を暴れさせることで反日キャンペーンの尖兵というか、反日紅衛兵として使っていた観がありました。昨年夏の毒ガスなんたらでネット世論を盛り上げる柱になったり、新幹線導入反対のネット署名をしたり、集団売春事件で騒いだのもこの連中です。それから8月のサッカーアジアカップにおける「反日」の音頭取りも「愛盟」主導によるもの。反日の総本山たるだけの実績があります。

 一方で「愛盟」は以前から尖閣諸島奪回を呼号する組織「民間保釣聯合会」(これも江沢民の反日紅衛兵でしょう)と緊密な連携を保っており、この組織が尖閣上陸を企図するたびに情報発信役を務めたりしています。今年魚釣島に上陸して逮捕されたメンバーにも、「民間保釣聯合会」とともに「愛盟」あるいは「愛盟」に近い者がいた筈です。

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 ところが、江沢民が9月の四中全会で引退したことで風向きが変わりました。腹心を要職に送り込むことすら出来ない甲斐性なしの江沢民に、トウ小平のような院政を敷ける訳などありません。

 糞青たちにとって不幸だったのは、再三ここで指摘していますが、後を継いだ胡錦涛政権が「強権政治・準戦時態勢」を志向し、民間の先走りを嫌う方針を打ち出したことです(※3)。

 対日外交もそれまでの「反日」「歴史問題」一辺倒から、「歴史を鑑に、前向きに」の現実路線へと大きく舵が切られました。要するに「反日度」がレベルダウンしたのです。

 これでは「愛盟」も逼塞するしかありません。逮捕されたりはしないものの、ネット上での署名活動はもちろん、「反日」言論にも統制が加えられ、街に出ての反日活動などはもってのほか、という強いお達しがあったのだろうと思います。

 傍証として、尖閣再上陸を狙った「民間保釣聯合会」のメンバーが、浙江省・南通市で船を出そうとしていたところを地元の武装警察に急襲され、故なく拘束されたという事実があります。

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 しかし、2度にわたる日中首脳会談を経て、胡錦涛政権の「反日度」がやや強まり、外交部報道官がそれまでタブーだった「靖国神社」を晴れて口にすることができるようになりました。糞青にとっても「やってはいけないこと」が少し減ったのでしょう。

 日中関係が好転する兆しを見せないまま、靖国だ靖国だと言いつのる胡錦涛や温家宝も、糞青を利用しようという考えになったのかも知れません。もちろん先走りは断固許さないけれども、「何ちゃってデモ」ぐらいならよかろうと。それで12月20日、そして今回(12月30日)のデモが許可されたのだと思います。

 私が連中のデモを「何ちゃって」呼ばわりするのは、政府の思惑に基づいたものではあるものの、政府の「本気度」はかなり低く、一方で糞青の動員力など数十人規模ですので、示威活動といっても多寡が知れているからです。

 所詮はオママゴトなのです。もし胡錦涛が本気で官製デモを打つなら、北京の大学生を動員しバス数十台に乗せて現場へと運び、大使館を取り囲ませ、大騒ぎさせたことでしょう。米軍によるユーゴの中国大使館誤爆事件のときのように、です。

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 それをせずに糞青でお茶を濁したのは、胡錦涛政権の手に有効な対日カードがないため(あってもいまは使わないとか)、「反日度」をいまなお抑制せざるを得ないからでしょう。外交部報道官が多分「A日」か「K同」所属の日本人と思われる記者の誘い水をスルーした(※4)のも同じ理由からでしょう。

 ●靖国解決なしに決定せず 新幹線で中国全人代副委長
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2004122801003526

「日本の新幹線を買いたくて買いたくて仕方ないのに、靖国問題があるから買えないじゃないか。お願い、何とかして」

 と政府要人が言わなければいけないくらい、手詰まりのようです(この件、中国国内では報じられていません)。で、こういう状況ですから、糞青の「何ちゃってデモ」にも制約がかかるのです。……長過ぎる前フリですみません。

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●日本大使館前で抗議行動(産経新聞)
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 台湾の李登輝前総統の訪日とチベット仏教の精神的指導者、ダライ・ラマ十四世の訪日計画をめぐり、北京の日本大使館前で三十日、約五十人の中国人グループが日本語で「日本はならず国家」と非難する横断幕を掲げて、日本政府と小泉純一郎首相に対する抗議文を読み上げたほか、李前総統を皮肉ったポスターを焼くなどの抗議活動を行った。(北京 野口東秀)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041231-00000008-san-int

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 単に「日本を非難する横断幕を掲げて」とせず、
「日本はならず国家」をそのまま記事にした記者、なかなかツボを心得ています(笑)。で、この報道を見ただけで「おやっ?」と思った人に私は賛辞を惜しみません。

 ロイター電(中国語)も、「横断幕を掲げた」「李登輝氏の写真を焼いた」と報じています。

 http://hk.news.yahoo.com/041230/3/1826h.html

 ちなみにデモ写真スレに行ってみた方はおわかりのように、糞青が焼いた李登輝氏の写真は例のコスプレバージョンです。……って、連中が焼いたのはそれだけ?

 ということで、台湾TVBSの報道を全訳します。テレビのニュースですから「ですます」調でやってみますか。

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大陸の反日団体 李前総統の写真を焼く
2004/12/30(TVBSニュース)
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 日本政府による李登輝前総統へのビザ発給に抗議するため、大陸(中共)の反日団体が今日(30日)の午後、再び北京の日本大使館前へと足を運びました。参加者は日本大使館に抗議文を手渡し(訳者注:してないしてない)、さらにその場で李前総統の写真を焼いたりしましたが、当時現場を固めていた大陸の公安(警官)たちは、これに冷めた視線を送るばかりで、反応を示しませんでした。
 今回の活動に参加したのは、10日前、日本政府による李前総統へのビザ発給に対して抗議活動を行った大陸の反日団体です。前回の参加者約50人(訳者注:多すぎ。これだとプレスと野次馬の人数も入っている)が、今日の午後再び日本大使館前に集まり、立法委員選挙で使われた武士のコスプレをした李前総統のポスターにその場で火をつけました。
 ところが、零下5度の寒さのせいか、参加者が李前総統の写真に火をつけても、なかなか燃え上がらずにすぐ消えてしまいます。このため参加者たちはやむを得ず、写真を踏みつけることで怒りを表現していました。
「これは分裂分子李登輝の和服姿の写真だ。誰であろうと、祖国分裂を企てる奴らは絶対にまともな終わり方をしない」(参加者の一人)
 今回の抗議活動を主催したのは、大陸で有名な反日団体「愛国者同盟網」です。その北京支部のメンバーである林漢京さんによれば、
「李登輝とその取り巻きが27日に訪日したけど、李登輝は日本で自分が日本人だと触れ回っている。それから台湾独立に関するコメントや売国奴的な談話も発表している」
 この抗議活動の参加者たちは李前総統のポスターのほか日本の国旗も持参しており、これも燃やそうとしましたが、現場にいた公安にそれを見つけられ、日本国旗は没収されていました。
 李前総統に対する日本政府のビザ発給については、大陸の外交部が抗議を行ったほか、こうした政府公認の抗議活動も、大陸の民衆の間で「反・李登輝」の声を高める上で一役買っています。

http://tw.news.yahoo.com/041230/39/1bx5s.html

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 という訳で、寒さに嫌気したかのようなロイターの紋切り型報道は失格。産経は短文ながら、某巨大掲示板でいかにも好まれそうな「ならず国家」をそのまま記事にしたことで評点が高いです(「抗議しる!」の線を狙った?)。しかし、MVPはやはり公安による「日の丸没収」の瞬間を見逃さなかったTVBSでしょう。

 たぶん現場で警備にあたる警官たちには「ここまでは手を出さなくていい。こういうのはNG」というデモ参加者に対する規制ガイドラインのようなものが伝達されていて、日本の国旗を燃やすことはNGだったのでしょう。この行為、以前は平然と行われていたものですから、今回それを政府が許さなかったことは非常に重要です。これも先に述べた「手詰まり」あるいは「反日」抑制を反映したものか、とにかく大事な目安だと思います。

 ……ここまでダラダラと書いてきて言いたいことはそれだけ?と言われそうですが、それだけなんです。日の丸を焼かせなかったのは、そのくらい注目すべき重大事だと、私は思うんですけどねえ。


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 【※1】中国ではデモは申請して認可されなければいけません。日本大使館が正月休みに入ったタイミングにわざわざ合わせて中国当局が許可を出した、というのは……やっぱり考えすぎでしょうね。糞青も「打倒小日本!」「支持!」「頂!」「頂!」「狂頂!」なんてことばかりやっていないで、地道に情報集めたり日本語勉強すればいいのにと思います。

 【※2】当ブログ「反日サイトの総本山を中国当局が閉鎖!」(2004/09/01)。「愛国者同盟網」HPの強制閉鎖、私はいまでも江沢民の敗北を示す出来事のひとつと考えていますが……牽強付会ですか、そうですか。でも「民間保釣聯合会」とかいくつかの行動的な反日サイトも、そのときに足並みを揃えて一定期間の論壇封鎖を喰らってるんですよ。知識人への言論統制に先立って大物の劉暁波氏を一時拘束したように、当局から糞青に対する「絶縁宣言」(これからは容赦しない)だと私は思うんですが……まあいいです。

 【※3】当ブログ「新華網の『新防衛大綱特集』が示すもの」(2004/12/13)。そうですこれを書いてからまだ20日も経っていないんです。李登輝氏の来日で王毅の「戦争メーカー」発言、それに新華社が署名論評を出したりして盛り上がった観はありますけど、基調は「抗議&事態の推移を見守る」ですから、胡錦涛政権の「反日度」は多少ブレながらもまだ一線は超えていように思います。江沢民時代に比べればヌルいヌルい。という訳で李登輝氏の再来日、ダライラマ来日、そして李登輝・ダライラマ会談をやった上で李登輝氏の靖国参拝。……と「桜の季節」にイベントを重ねて胡錦涛をマジギレさせて、そのあと武士の情けということで、小泉首相の靖国参拝、これでトドメを刺して欲しいところです。

 【※4】当ブログ「御注進の実例――邪推ですよね?」(2004/12/29)。



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 労働争議速報です。

 今回は深センの印刷工場、外資系企業(香港資本)です。目新しさは「ハンスト」という新しい抗議様式が用いられたことでしょうか。

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 香港紙『明報』を引用する形で報じた台湾・中央社電によると、深セン市布吉鎮にある印刷工場の工員15名が先ごろ、会社が従業員に対し全く休日を与えないことに反発。全員揃って関係部門に出かけ陳情したところ、それを知った会社側が工員たちを解雇したそうです。

 このため15名の工員が12月24日から抗議のハンストを敢行、3日目に3人が昏倒し、2人が病院へとかつぎ込まれる騒ぎとなりました。これには地元政府も捨ててはおけず、労働部門が調停に乗り出したとのこと。

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 工員の話によれば、この印刷工場は休日なしの週7日勤務で、休みなしの状態がそのまま1カ月続いた時点で工員たちが会社側と協議したものの、交渉は決裂。そこで関係部門へ陳情に行ったところ、突然解雇されたのだそうです。

 対する工場責任者は、工員たちの要求を香港にいる経営者に伝えたところ、返事が来ない間に工員15名が3日間のストに踏み切ったため、会社に損失をもたらしたということで解雇した、との言い分。

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 ハンスト騒ぎにまで発展したこの事件、結局どうなったかというと、地元政府労働部門の調停により、工員たちの言い分が認められ、会社側は1カ月半分の給与を解雇された工員たちに支給。絶食3日目で昏倒し入院していた工員も無事退院したそうです。

 http://tw.news.yahoo.com/041229/43/1bmhg.html

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 「月月火水木金金」(知ってる人います?)とは旧日本海軍並ですが、オーナーが香港人ならこのくらいのことは普通にやりそうです。何たって香港は資本家の天下ですから。大企業や外資系企業はともかく、福利厚生なんてまるでない会社が山ほどあります。

 最近の事情を知らないのでよくわかりませんが、中国の中でも先進地区である広東省、その中でも最も開けた深センになると、工員も自分の権利を主張するし、そのための闘争手段にも考えが及ぶ、そのくらい擦れている、ということでしょうか。最近も製靴工場でストライキがありましたよね。

 そのまま馬鹿のままでいろ。安い賃金で死ぬまで働け。

 という破天荒な搾取が可能なことが外資にとって中国の最大の魅力、中国にとっては経済成長の柱だった訳ですから、各地の「民工」(主に農村からの出稼ぎ労働者)が深セン並みに知恵をつけると、成長が止まるばかりか経済は崩壊しますね。失血死といったところでしょうか。


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 前回の最後の方でもちょっと触れましたが、28日の外交部報道官による記者会見で、

「提灯持ちのような質問をしている阿呆な記者、日本人だと思うのですが誰だか知りたいものです。早くもチナブタと阿吽の呼吸じゃないですか。」

 と書きました。チナブタとは劉建超外交部報道官のことで、どうも私は彼のルックスを生理的に受け付けられないようです。別に彼が何をしたという訳ではないんですけど、やっぱり少しダイエットした方がよろしいかと。

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 前任者の章啓月女史は悪くなかったです。いや熟女がいいとかそういうことではなくて(笑)、彼女が報道官を務めていた時期の大半は胡錦涛政権が現実的かつ慎重な対日路線を維持していた時期で、外交部報道官が「靖国神社」を口にすることがタブーとされていたようなんです。

 そういう状況下で、記者が真正面から繰り出してくる靖国に関する質問を上手に回避しつつ、ときには「同じことを二度言いたくありません」と逆襲に転じたりしたので読んでいて面白かったです(※1)。

 でも、報道官としての最後の時期に日中首脳会談が行われ、そのおかげで彼女も記者会見で「靖国神社」と堂々と言えるようになりました。ストレスを散じたことでしょう。そしてベルギー大使へと転出。お疲れ様でした。

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 で、日本人記者とみられる提灯持ちのような質問に関してです。日本人と特定できた訳ではありませんが、チナブタが「中国史をよく研究されている」と褒めていることから記者が中国人や台湾人でないことはわかります。

 あとは質問の内容などからすれば日本人以外にいないのではないかと判断した次第です。ええ、これはあくまでも邪推であって、本当のところは、わかりません。

 ただ、よく言われる「御注進メディア」がその本領を発揮している実例だと私は思うのです……ではなくて私は邪推しているのです。こういうはっきりしたケースも珍しいので、一応和訳しておこうと思いました。質問だけでチナブタの回答は省きます。

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 ●日本政府はいかなる政治活動も行わないとの条件でダライラマが来年4月に訪日することを許可したとの報道がありますが、これに対するコメントをお願いします。

 ●李登輝氏の訪日について、きのう報道官は中国側が「より踏み込んだ反応を行う権利を留保する」とコメントされていますが、中国側はどういう条件下でどのような踏み込んだ反応をするつもりなのか教えて下さい。

 以上はごく当たり前の質問です。媚中記者、あるいは御注進記者がしゃしゃり出てくるのはこの後です。折角ですからアカい字にしてあげましょう。

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 ●来年は第二次世界大戦の戦勝60周年で、中国も抗日戦争あるいは反ファシスト戦争の戦勝60周年だとしていますね。戦争が終わってもう60年になろうというのに、戦争が残した問題、例えば強制労働や慰安婦、七三一部隊の細菌戦などの問題については未だ未解決です。第二次世界大戦の戦勝60周年に際して、日本がどのような措置によってこれら残された問題を解決することを中国側は望みますか?

 はい、来ました。これが日本人記者のものであるという邪推を前提にいえば、この記者は「第二次世界大戦の戦勝60周年」と口にした時点で日本人であることを捨てています。「終結60周年」でいいのではないでしょうか。加えて強制労働や慰安婦、七三一部隊ですか(笑)。これらの件に関しチナブタに大いに語ってほしい、どうか語って下さいと半ば腰を浮かせて(空気椅子状態)、期待の眼差しで報道官を見つめる記者の姿が目に浮かびます。

 もう一丁。これも日本人記者のものであるという邪推を前提にいえば、まさに御注進発言です。


 ●来年は日中1894-1895年戦争(日清戦争)の110周年、まさにこの戦争で中国は台湾を日本に割譲しなければならなくなりましたね。かつまた1915年の対華21カ条の要求受け入れからは90周年になります。1940年、すなわち65年前には、日本が偽満州国を建国しています。そして半世紀の長きにわたる日本の対中侵略から、すでに60年になります。来年中国側はこの記念日を利用することはあるでしょうか。今年の日中関係は経済こそ順調そのものでしたが、政治面では摩擦が繰り返されました。中国側は来年どのような必要な措置で日中関係を改善しようと考えていますか?

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/28/content_2389032.htm

 この発言に記者は「中国史をよく研究されていることに感謝します」とチナブタからお褒めの言葉を頂戴しています。この質問、どういう回答が返って来るか分かっていてやっていますね。しかも日清戦争だの台湾割譲だの対華21カ条だの満州国成立だの……中国がこれまで触れていない件をわざわざ「御注進」することによって話題を広げて、中国側により広い場でより過激にパフォーマンスをしてもらおうという意図がミエミエです。実に見事な予定調和、阿吽の呼吸です。

 ま、全て私の邪推なんですけどね。

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 この種の記者会見でいつも思い出すのですが、あれは確か1993年の全人代のときです。『明報』の小さな囲み記事になった実話ですが、記者会見で日本人記者(新聞名は伏せておきます)が下手糞な北京語で一生懸命質問したのです。ところが国務院報道官は困惑した表情で一言。

「申し訳ありませんが、私は広東語はわかりませんので……」

 おあとがよろしいようで……。


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 【※1】当ブログ「日中首脳会談――章啓月女史の奮闘」(2004/11/20)


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 李登輝氏のニュース、日本では自粛されてるのかどうか知りませんが、台湾のヤフーに飛べばいくらでも拾えます。一応紹介しておきます。

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 ●到着当日は名古屋駅の上にあるホテルに投宿したようですが、早くも葛西敬之・JR東海会長がお忍びで訪ねてきて密談。台湾の新幹線に関する件のようです。
 http://tw.news.yahoo.com/041228/39/1bhmc.html

 ●2日目の午前はホテルがリクエストに応えて特に用意した和風の朝食。
 http://tw.news.yahoo.com/041228/43/1bgkg.html

 ●そのあと、李登輝氏は午前中いっぱいを訪客との応接に追われたようです。訪問者として評論家の桜井よし子氏の名前が上がっていましたが、政府関係者はいなかったとのこと。
 http://tw.news.yahoo.com/041228/43/1bgkg.html

 ●その間、李登輝氏夫人と孫娘は近くの高島屋でショッピング。真っ先に11階の新星堂へ行き、CDやDVDを購入。念願だったようで、買いたいもの一覧をメモで準備してきていて、店員さんに揃えてもらったそうです。そのあとはインテリアコーナーを興味深く見物。
 http://tw.news.yahoo.com/041228/43/1bgkg.html

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 ●午後は一同揃って名古屋城や徳川家康美術館を見学。李登輝氏は京都大学在学中に学徒出陣で出征して配属されたのがこの名古屋(高射砲部隊/陸軍第10軍司令部の見習士官)ということで、天守閣に登って「この辺も変わったなあ。兵舎はどのあたりだったか」と感慨深げの様子。「この城のそばに(高射砲が)あったんだが」と探してみたりしたものの、結局はわからなかったようです。
 http://tw.news.yahoo.com/041229/15/1bkvz.html

 ●天守閣では遠くを指差して「関ヶ原はあっちだよ」と孫娘に教えて、その由来を色々説明してあげたとのこと。
 http://tw.news.yahoo.com/041229/15/1bkvz.html

 ●そのあとは徳川美術館を見学。
 http://tw.news.yahoo.com/041229/15/1bkvz.html

 なんだか自分がパパラッチになった気分になってきましたのでこの位にしておきます。でも台湾のメディアはこんな感じです。氏の日本到着前から宿泊先を突き止めて電話取材をしたり、多くのメディアが取材班を出すなどして精力的に取材しています。

 でも扱いは好意的に、何と言うか好々爺の「センチメンタル・ジャーニー」(回憶之旅)といったテイストの報道で、エピソードも微笑ましいものが多いです。

 いまヤフー台湾のニュースサイト(新聞)をのぞいたらいきなりトップページに名古屋城の写真が出ていましたし(笑)。
 http://tw.news.yahoo.com/

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 ところで、来日する際の機内では日本の記者団に日本語で応えていた李登輝氏、

「将来どういう名目で行けるか分からないが、もっとおもしろい状態になるでしょう。おもしろいビザをもらってもう少し、深く日本を見る」
 http://www.sankei.co.jp/news/041227/sha090.htm

 と、到着前から次回訪問に思いを馳せていたようですが、さすがに言うことが意味深長で凄みもありますね。

 次回といえば、香港や台湾では、李登輝氏が来年に再来日するという報道がここ数日流れています。香港は『明報』、台湾は「中広新聞網」によるものですが、どちらも元ネタは『東京新聞』です。李登輝氏に近い筋の話として、来年の春、桜の季節に東北の奥の細道などを訪ねてみたいと李登輝氏が語っていたそうです。

 ●『明報』
 http://hk.news.yahoo.com/041227/12/17yzu.html

 ●「中広新聞網」
 http://tw.news.yahoo.com/041228/4/1bf7c.html

 中国語に翻訳されていますので詳細は不明ですが、もし元ネタである『東京新聞』の記事を読まれた方は御一報頂ければ幸いです(※1)。

 それにしても「来年の桜の季節」というのは、常識的に判断してやはり2005年春、ということですよね。ダライラマとのニアミス、あるいは接触があれば面白いですね。再来日だけでも胡錦涛の顔は引きつるでしょうが、ニアミスとなればマジ切れするかも知れませんね(笑)。

 しかも桜の季節、東北巡りとなれば成田から入ってまず東京で一泊。靖国参拝があっても不思議ではないですね。そのあと奥の細道ですからまずは芭蕉庵跡とか芭蕉博物館に来るのでしょうか。おお謝天謝地、そこは拙宅からだと川を渡ってすぐなんで、これは楽しみです。名古屋には行けませんでしたが、芭蕉庵なり靖国神社での歓迎OFF会、やることになれば絶対参加したいところです。

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 さて一方の中共ですが、とうとう焼きが回ってきたようですね。反応がだんだん率直になってきました(笑)。

 ●靖国解決なしに決定せず 新幹線で中国全人代副委長
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2004122801003526

 素直が一番。そうあるべきです。よせばいいのに他国の内政に首なんか突っ込むからジバク状態になるんです。ジバクは自爆でも自縛でもお好みでどうぞ。

 例のチナブタ(劉建超外交部報道官)もぐだぐだ言ってましたけど、恫喝めいた言辞を弄する割にODAには未練たっぷりのようです(笑)。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/28/content_2388685.htm

 チナブタの記者会見はこちら。提灯持ちのような質問をしている阿呆な記者、日本人だと思うのですが誰だか知りたいものです。早くもチナブタと阿吽の呼吸じゃないですか。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/28/content_2389032.htm

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 日本のことは構ってくれなくて結構。そんなことよりまず自国民をケアしなさいよ。でないと見限られちゃいますよ。

 ●中国の水質汚濁、深刻 3億人の飲料水が不適
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041228-00000014-kyodo-soci

 ざっと3人に1人の農民が人間の飲料水としての基準に達していない「水めいたもの」を毎日飲んでいるということですね。さらに人口百万人以上の全国32都市のうち、実に30都市が慢性的な水不足で頭を痛めているというのですから、これは深刻ですよ。まさに水飢饉(※2)。

 胡錦涛、温家宝、お前ら民のために働くって偉そうなこと言ってたよな。なら御得意の科学的発展観で早いところ何とかしろ。厳命。

 ま、本当は何もしない方がいいんでしょうけどね。お楽しみはこれからです(紋切り型)。


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 【※1】メルマガ「台湾の声」あたりに出ていたのでしょうか。私はあれをうっかり見逃して削除してしまうことが多いので。

 【※2】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/27/content_2386319.htm


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 例の広東省・東莞市で発生した暴動(※1)の続報です。

 この事件については事件を即座に報じた香港紙に『蘋果日報』『太陽報』そして日本のマスコミが元ネタにした親中紙『香港文淮報』(いずれも2004/12/26)の3紙があります。当ブログではそのうち『蘋果日報』『太陽報』の記事を翻訳し、『香港文淮報』については日本語のニュースで目にした方も多いかと思います。流言が飛び交う現場の混乱を反映するかのように、それぞれ多少違う内容になっており、いわば3つのバージョンがあった訳ですが、このほど東莞市当局が「真相」に関する記者会見を行いました。いわば第4のバージョン、当局公認版の公開です。

 本日(28日)正午過ぎ(2004/12/28/12:13)に「南方網」(※2)にその内容が掲載されたのですが、3バージョンそれぞれと重なる部分が少しずつあり、しかし規模は大幅に縮小されて、わずか100人前後の騒乱事件ということになっています。

 さてこの当局公認バージョン、事件には「12・25大朗集団事件」と名前がついています。とりあえず一問一答をどうぞ。ちなみに、下にある「当局」とは東莞市公安局報道官のことです。

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 ■記者:事件の発端は?

 ■当局:
12月22日の午後6時ごろ、河源ナンバーのバイクタクシー運転手・広東省連平籍の江某(26)が東坑鎮路の交差点で曽建華さん(19歳・無職)ら湖南省藍山籍の3人を載せて大朗鎮蔡辺村へ向かっていたが、曽さんがバイクから落ちて負傷したため、運転手の江某に賠償金を出すよう求めた。話し合いの結果、江某は800元を曽さんに支払うことを承諾、ただ持ち合わせがないため、オートバイをそのままにして知人のところへ借りに行った。曽さんともう一人の乗客がこれに同行し、残った乗客一人がオートバイのところで待っていた。江某ら3人が別のバイクタクシーで大朗鎮求富路村を通り過ぎる際、江某は道ばたに治安員(実際は戸籍管理員)がいるのを見て「バイク泥棒だ」とわめき散らした。戸籍管理員はそれを耳にするなり、即座に曽さんを捕え(曽さんの同伴者は脱出に成功)、一方で近くを巡回していた同村治安聯防隊員(同村住民)の陳某、呉某に連絡し、事件処理を頼んだ。このとき、近くには事情のわからぬ村民10名ばかりがいたが、バイク泥棒と聞くなり一斉に曽さんに殴りかかった。陳某、呉某もこれに加わった。後に曽さんは病院に運ばれたが、手当ての甲斐なく同日夜9時に死亡。挫傷性ショック死と法医鑑定で診断された。

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 これは3つのバージョンとも微妙に違います。事故が発端であることは『香港文淮報』と同じですが、被害者の年齢や事故の経過が異なっています。『香港文淮報』では事故が23日に発生し、その翌日、補償の話し合いに赴いた事故被害者の親戚が殺されたことになっています。『太陽報』『蘋果日報』では当局公認バージョン同様、23日に殺人が行われたとなっています。

 ただ「バイク泥棒」疑惑から騒ぎが広がったのは3バージョンとも同じです。ただ、『太陽報』『蘋果日報』では「バイクを盗もうとしたところを捕まり暴行され死亡」となっています。事件の前に交通事故があったのが事実だとすれば、たぶん両紙は求富路村の村民に取材したのでいきなり「泥棒事件」となり、事故が出てこないのだと思います。これに対し、『香港文淮報』は親中紙だけに警察への取材を許されたのではないでしょうか(『太陽報』は警察の取材拒否にあったと記事にありました。反中姿勢の強い『蘋果日報』なら尚更、かも知れません)。死者の年齢は4つのバージョンとも異なっています。

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 ■記者:集団事件はどのようにして起きたのか?

 ■当局:
12月25日の午前11時ごろ、遺族が親戚や同郷者を伴って150人余りで求富路村に赴き、治安聯防隊に対し賠償と犯人を厳罰に処すよう求めた。しかし午後3時ごろになるとその場の空気が険悪なものとなり、遺族側は付近の道路を封鎖した。これが多くの野次馬を呼び、その中に紛れ込んでいた不法分子がこの機に乗じて騒ぎ出した。大朗公安局(警察署)は報告に接して事態を処理すべく直ちに警官隊を現場へと向かわせたが、このときには現場の人数は増える一方で、警官隊との間に小競り合いが発生、少数の不法分子が警官を取り囲んで暴力行為に及び、石やレンガなどで警官8名が相前後して負傷し、警察車両2台がひっくり返されたうえ放火された。この混乱の中、群衆にも4人の負傷者が出て、負傷した警官とともに病院へと送られた。

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 このあたりの過程は他のバージョンと似たり寄ったりです。ただ『蘋果日報』にあった「武警の制服姿の20人がトラックで現場に到着、遺族方に加勢した」という読者の目を見張らせるシーンは残念ながら出てきません(笑)。

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 ■記者:現場には5万人が集まったとネット上では伝えられているが、事実なのか?

 ■当局:
それは絶対に出鱈目だ!実際には少数の不法分子が煽るなか、事に及んだのは100名ちょっとだった。ちょうど週末でもあり、また近くにはショッピングセンターもあったので、騒乱に参加した者が付近の道路を封鎖することで野次馬がいよいよ増えた。現場の状況からみて、野次馬と道路封鎖で行き場を失った人が1000人近くいた。

 ■記者:事件の中で警官が発砲したというのは?

 ■当局:
そんなことは断じてない!現場の状況を知った市の公安局は事態を重くみて、公安局のトップが地元の党・政府の指導者とともに直ぐ現場に赴き指揮にあたった。増援の警官隊は午後4時半には現場に到着していた。現場の指揮官はハンドマイクで騒ぎをやめ現場を離れるよう呼びかけたが、これに従わない少数の不法分子が警察に石やレンガを投げてきた。事態を迅速に収拾して現場の秩序を回復し、人民大衆の生命及び財産の安全を守るため、特警がやむを得ず催涙弾を使い、すぐに騒ぎを鎮静させた。これによる死傷者はいない。これとともに警官隊は不法分子の拘束に入り、合計10名(湖南籍4名、広西籍3名、広東籍・重慶籍・四川籍が各1名)を逮捕、うち一人は刃物を所持していた。警察側はこの10名を公安局へと連行し取り調べを行った。事件が概ね終息したのは、午後5時半だった。

 ■記者:逮捕者にはどのような処置がなされるのか?

 ■当局:
今回の事件は2つの局面から構成されている。暴動に関わった10人と、曽さんを撲殺した陳某、呉某、江某の3人だ。それぞれ別々に取り調べが行われ、この13人は全て刑事拘留されている。
http://www.southcn.com/news/dishi/dongguan/ttxw/200412280531.htm

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 5万人と報じたのは『香港文淮報』ですが、この情報がネットを通じて中国国内に流れたことがうかがわれます。この人数と警官側の威嚇発砲を当局は断固否定しており、催涙弾発射さえやむを得ずの処置だったことをしつこく強調しています。警官はふだん威張ったりなどして住民に恨まれているのでしょうか。

 略奪や店鋪の損壊などには一切触れられていませんが、実際はどうだったのでしょう。私がいま香港在住なら、性分ですので現場を観に行っていると思います(笑)。なお、「防暴警察」(機動隊)が出動したことにはなっていませんね。「特警」が何なのか私には未だにわかりません。御存知の方は御一報下さい。

 ところでこの記者会見は、

「今回の事件は、公安機関の処理がタイムリーかつ果断であり、処置もまた適切だった」

 という当局による自画自賛で締めくくられています。騒いだのは「100人ちょっと」、警察側の対応が「タイムリーで果断で適切」、つまり「大した事件じゃなかったし、警察がすぐに平定したよ」としているのは、お上ならではというより、胡錦涛・国家主席が目下広東省内を視察中なのでわざわざ強調したのだと思います。

 私が読んでいて異様に感じたのは、逮捕された不法分子10名の後ろに原籍地が付記されていることです。当局発表でもこうやって原籍地をわざわざ書くというのは、この暴動が少なからず「民族紛争」の色彩を帯びているからかも知れません。


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 【※1】当ブログ「速報:広東省東莞市で暴動発生!」(2004/12/26)。
 【※2】広東省党委員会の機関紙『南方日報』とその系列紙などによる広東情報中心のニュースサイトです。


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 12月26日ってのは毛沢東の誕生日なんですね。

 北京の記念堂に横たわるこの人が突然蘇生してムックリと起き上がり、現在の中国を見たらどういう反応を示すか……という噺を地で行った話題です。

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 ●毛思想に基づき現在の政治を批判 2人が懲役3年に(明報)
 http://hk.news.yahoo.com/041225/12/17xzb.html

 河南省・鄭州市での出来事なんですが、地元の定年退職者2名が9月9日(毛沢東の命日)、毛沢東像のある同市の二七広場で開かれた記念活動に参加し、その場で毛沢東を記念するビラをまいたんだそうです。

 いまの中国でビラをまくというのは度胸のいる行為ですが、その内容というのがこれまた大胆。

「いまの中国社会は資本主義化、社会分化そして所得格差が深刻」

 だとし、毛沢東が生前著した資本主義の復活に関する論述を引き合いに出して、中共の「第二代」及び「第三代」の「核心」(つまりトウ小平と江沢民)を批判したものなのです。

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 要するに「毛沢東思想で現代中国を斬る!」ということになる訳ですが、果たせるかなビラをまいた2名はその場で御用。文章を書いた退役将校(空軍)もほどなく逮捕されたとのこと。

 そして裁判(鄭州市金水区法院)となる訳ですが、今月21日に第一審がスタート。検察側は当初「煽動転覆罪」で起訴したものの、判決は「誹謗罪」で、タイトルにもあるように被告の両人には懲役3年が言い渡されました。

 この裁判は中国の法曹界でも話題になったようです。というのも、毛沢東思想はいまの中国においてもマルクス・レーニン主義などと並ぶ指導思想ですから、その理論、観点に基づいて現代の中国社会を考え、観察し、認識して、中国社会に出現した諸問題に批評を加えるのは、本来問題にならない筈です。具体的な中味は明らかにされていませんが、ビラに書かれた文章はそれなりに頷かせる内容だったようです。

 ある弁護士は北京の同業者の集まりでこの話を聞いて、自分がタダで弁護してやろうと思い立ったのですが、裁判が開廷したと思ったら早々に判決が下され、手の出しようがなかったと語っています。この弁護士の指摘するところでは、「煽動転覆罪」はもとより「誹謗罪」についても法的根拠に乏しく、中国の憲法にマルクス・レーニン主義と毛沢東思想を指導思想にすると書かれている以上、この判決は違憲だということです。

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 まだ中国政治に「改革派」「保守派」という色分けがあった時代に、バリバリの社会主義理論家たちの拠り所に『求是』という雑誌がありました。現存するかどうかはわかりませんが、ビラをまいた2人はこの種の雑誌を愛読するような、うるさ型の親爺だったに違いありません(笑)。



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 李登輝・前台湾総統が来日されたようですね。

 気もそぞろと言いますか、仕事も手につかない状態で某巨大掲示板の関連スレを眺めていました。NHKでも報道されました。ダンディーな装いでしたね。思いのほか歓声が高かったのでしょう、ちょっと足を止め、わざわざ帽子を脱いで手を振っていました。

 李登輝さん、ようこそいらっしゃいました。

 華人社会において初めて民主主義を実現したという意味において、李登輝氏は歴史に残る哲人政治家でしょう。

 親日かどうかに関係なく、私の尊敬する人物です。その李登輝氏が、念願久しかった再来日を果たされたことは、私にとっても無上の喜びです。

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 私は21世紀の初日である2001年の元旦を台北で迎えたのですが、マンションの下から流れてくる大音量の音楽に叩き起こされました。

 急いで窓に駆け寄ると、なんと五星紅旗を左右に立てた街宣車が遠ざかっていくのが見えました。

 けたたましい音楽は、中国の国歌だったのです。

 そのときに、ああ台湾というのは自由の国なんだ、と改めて思いました。

 以前、香港の友人たちはしばしば香港がいかに自由かを私の前で力説しました。報道の自由、言論の自由、思想の自由、宗教の自由……しかし香港には肝心な、自分たちの代表を選ぶ権限がありません。

「だからお前らは所詮は如来の掌の上で飛び回る孫悟空なんだよ」

 と私はその都度、意地悪い言葉を返していたのですが、昨年7月に50万人規模のデモ行われ、香港人の中で急速に政治意識が高まりました。よほど身に沁みたのか、昨年からは一転して「香港には民主がない。普通選挙もない」と私にこぼすようになっています。

 香港に自由なんかありません。街宣車でなくても青天白日旗なり緑色の台湾の旗なりを掲げれば、それだけで逮捕されます。

 台湾に比べて、なんと器の小さな、上っ面だけの自由であることか。

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 私人とはいえ、一身を以て中共を極度の神経過敏にさせる人物というのは、李登輝氏しかいないのではないかと思います。

 どうかのんびりと日本を楽しんで下さい。

 旅の途上では、例えば私が綺麗な御辞儀をやろうとしてもできないように、日本人の変化を残念に思われることがあるかも知れません。でも空港でのあの高い歓声が示すように、ゆっくりとではありますが、日本人は本来の姿へと戻りつつあるように思います。

 台湾のマスコミはパパラッチ(ただし好意的な)同然に李登輝氏一行を追いかけるのでしょうが、その一方で日本人の声を是非たくさん拾って、多くの日本人が李登輝氏の来日を心から歓迎していること、多くの日本人が台湾の行く末を気にかけていることを、しっかりと台湾社会へ伝えてほしいと思います。


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 広東省東莞市で暴動が起きました。深セン市の隣で駐在している日本人も多いでしょうから一応報告しておきます。

 このニュースを伝えたのは本日付(2004/12/26)の香港紙、『太陽報』と『蘋果日報』(Apple Daily)なのですが、内容がかなり違います。何とかまとめようと思ったのですが、やはり手っ取り早いので訳してしまいました。

 香港人にすれば東莞は隣の隣といった感覚ですから記者が現場に張り付いていると思われますが、流言が飛び交って地元民も事件の概要を把握できない様子がうかがえます。

 それでは『太陽報』からいきます。

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■太陽報(2004/12/26)バージョン

湖南出身者のグループが東莞の派出所を襲撃――バイク泥棒の少年撲殺で民衆が二派に分かれ一触即発
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 【本紙東莞電】広東省東莞市で今月二十三日、治安員(公安局管轄下の編制外の警官)がオートバイを盗もうとした湖南省籍の少年を拘束して殴打し、少年を死に至らしめたことを発端に警察と民衆が衝突する事件が発生した。死者の家族や同郷者数十名が治安員を殴打するとともに警察車両を破壊、このため当局は実弾装備の防暴警察(機動隊)を事件の起きた村へと緊急出動させ、催涙弾を放つなどして暴徒を追い払った。

 事件は昨日(二十五日)夜になっても終息せず、多数の逮捕者を出している。

●警察は催涙弾を発射

 事件が起きたのは今月二十三日の午後、湖南省籍の少年(十六歳)が東莞市大朗鎮求富路村でオートバイを盗もうとしていたところを見つかり、地元の農民や治安員の袋叩きにあって死亡した。少年の父親は昨日正午ごろ友人や同郷者など数十名を引き連れて棍棒などを手に求富路村へと赴き、治安弁公室にいた治安員を殴打。この治安員はその場で撲殺されたとの噂もある。これに対し、現場一帯を管轄する公安(警察)派出所(警察署)は報告に接して多数の警官を出動させた。警察車両で現場に入った警官隊は騒ぎを鎮静させるために威嚇発砲した。

 しかし「湖南組」はそれで大人しくはならず、逆に警官へと殴りかかり、また警察車両を破壊するなどの繁劇に転じたため現場は大混乱。そこに「湖南組」に奇襲された求富路村の村民が包丁や棍棒を手に現場へと駆け付け、「湖南組」とにらみ合う事態となった。出身地を別とするグループ同士がそれぞれ武器を手に衝突に及ぼうかという一触即発の状況に、警官は軽挙妄動を避けて上司に連絡、増援を求めた。

 当局は直ちに実弾装備の防暴警察数十名を緊急出動させ、事件現場の村を封鎖。続いて催涙弾を放って屯集していた両派の群衆を追い散らした。この際に多数の逮捕者が出た模様だ。

 警官隊による求富路村の封鎖は昨日深夜に及んでも未だ解除されていない。本紙記者の取材に対し、警察当局は事件については一貫してノーコメントで通している。

http://the-sun.com.hk/channels/news/20041226/20041226014352_0001.html

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■蘋果日報(2004/12/26)バージョン

警察車両炎上、死傷者百名――東莞市で1万人規模の暴乱、警察が発砲
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 広東省東莞市で昨日(二十五日)、大騒乱が勃発した。事件の発端はありふれた盗難事件にすぎなかったが、事態はエスカレート、最後には一万人を超える村民と民工(出稼ぎ労働者)による暴動にまで発展。当局は東莞市から防暴警察(機動隊)及び特警(詳細不明)数百名を緊急出動させた。現場に到着した警官隊は催涙弾を放って群衆を解散させたが、この騒ぎで少なくとも数名の村民が死亡、百人近くが負傷した。一方、警察車両もひっくり返されたり焼き打ちにあうなどして数台の損害を出している。

 そもそもの発端は湖南省籍の少年(十五歳)が一昨日(二十四日)、大朗鎮求富路村で村民のオートバイを盗もうとしたところを同村の治安員にその場で逮捕され、撲殺されたこと。昨日(二十五日)の午後二時ごろ、少年の家族や同郷者など数十名が同村に赴き賠償を求めたところ、同村の治安員と激しい衝突となり、治安員は現場への増援を要請した。ところがこのとき、軍用トラック一台に乗った武警(武装警察=軍と警察に両属する準正規軍)の制服に身を包んだ二十名が現場に到着、これは遺族側への援軍で衝突に加わり、治安員十数名が殴打されるなどして負傷した。

●飛び交う流言 ドサクサに略奪される商店も

 これに対し、治安員から増援要請を受けた派出所(警察署)が警官多数を現場に出して事態を把握しようとしたものの、やはり殴られて負傷者を出す始末。このころから流言が一帯に飛び交い、公安(警察)と武警が利益を巡って戦闘に入ったと通行人に話して回る者がいたかと思えば、誰彼構わずに暴力を振るい、商店があれば略奪を行う一団が大朗鎮に現れたとの噂も流れた。またこれは村民が汚職役人を摘発するために集団で陳情行動に出たものだと言う者もあり、とにかく三十分と経たぬうちに、大朗鎮中心部の店という店は全てシャッターを下ろしていた。農民はそれぞれ出歩いては情報を交換するなどしたが、実際に混乱に乗じて略奪を行った不法分子もいた模様だ。

 大朗鎮政府は上級部門である東莞市政府に事態鎮静化に向けた救援を乞い、これを受けて完全装備の防暴警察及び特警数百名余りが出動したが、現場に集まっていた村民たちの中に不法分子が紛れ込んでおり、また村民は村民で自分たちを鎮圧するために警察が出てきたと勘違いしたため、その場で小競り合いが生じた。そこへ騒ぎを聞き付けた一万人以上にのぼる出稼ぎ労働者が衝突に加わり、事態はエスカレート。警察車両数台をひっくり返したり炎上させたりしたほか、防暴警察に対して石やレンガを投げる者も出た。このため防暴警察は直ちに催涙弾を発射、村民と出稼ぎ労働者は逃げ惑ってパニック状態となり、現場は混乱の極に達した。村民の張氏は次のように語っている。

「これははっきりと断言できることだが、村民が何人か死んで、負傷者も百人くらい出た。あと警察の車二台が放火されて炎上していたよ」

●大通りを埋め尽くす数万人、深夜に至っても解散せず

 防暴警察は三時間近くを要してやっと混乱を鎮めると、多数のグループに分かれて不法分子の捜索・逮捕にあたった。午後八時ごろまでに十数人が拘束されたという。大まかな統計では、今回の事件で商店十数軒が騒ぎに乗じた不法分子の略奪にあい、また店鋪数十軒が店鋪や物を破壊されるなどした。現場封鎖のために設けられた検問は午後九時ごろにようやく解除された。

 しかし、深夜に至っても大朗鎮の目抜き通りである富華大道には、依然として出稼ぎ労働者数万名が解散せずに残っている。地面には割れたガラスや石、レンガなどが散乱しており、警察及び軍の車両多数が警戒を続けていた。出稼ぎ労働者によれば、事件は大朗鎮の治安隊長がこれまで長期間にわたって出稼ぎ労働者に威圧や圧迫を加えてきたことが原因で、日を追って恨みが蓄積され、いつもなら治安員に苛められてもぐっと堪えるところを、積もり積もった恨みや怒りが爆発して、今回のような恐るべき騒乱になったのだという。

 折しも胡錦涛・国家主席が広東省を視察中であるため、東莞当局はこの事件が悪影響を呼ぶことを恐れ、騒乱事件に関する情報一切を封鎖している。

 ――――

 何だかどちらのバージョンもそれぞれに魅力的なのですが(笑)、重要なのはどちらのバージョンにせよ、「暴動が終息した」とは書いていないことです。想像ですが、記者は他紙より少しでも情報を詰め込もうと、ギリギリまで粘って記事を送稿したのだと思います。

 香港は狭い上に、新聞がスタンドに並ぶのは午前7時よりちょっと前くらいですから、締め切りもかなり引き延ばせている筈です。香港記者の面目躍如と言ったところでしょう。たぶんまだ現地にいるのだろうと思います。

 それにしても東莞のあたり、治安が悪そうですね。詳しい方の情報提供を待ちたいところです。

 以上、取急ぎ報告まで。


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 速報です。新華社の署名論評が出ました。

 内容は標題そのまんま。要するに中共の李登輝氏訪日に対する抗議のトーンが上がった、ということなんですが、注目すべきは、以前は知らず、近年であれば他に例のない激しい表現が使われているということです。

 前回の「A級戦犯の息子」にもひっくり返りましたが、こちらの方が激烈です。
 とりあえず全文訳しました。御一読下さい。

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短評:「台独」を容認する狙いはどこに(新華社・呉谷豊記者)

2004/12/24/10:55:29(新華網)
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 【新華網東京12月24日電】日本政府は中国政府による近日来の厳重な抗議を顧みず、李登輝の来日に「観光」ビザを発給した。日本政府のこの誤った決定は、「台独」勢力に誤ったサインを送ることになり、中日関係に深刻な障害をもたらす。これは、日本政府が「台独」を容認し、中国の平和的統一という大業を目にしたくないことを示すもの、としか言いようがない。これに対し、中国人民は警戒を強めない訳にはいかない。

 日本政府は、李登輝が「普通の市民」であり、ビザ発給を拒否する「理由がない」という。周知の通り、李登輝は台湾島内では急進的な「台独」勢力の総代表であり、中台関係とこの地域の安定を破壊する人物である。国際的にも徹頭徹尾のトラブルメーカーだ。日本政府がこの悪名高き政治的人物を普通の市民とする論法は、もとより成り立たないものだ。

 日本政府はこれまでずっと、口では一つの中国政策を堅持する、「台湾独立」を支持しないと言いながら、陰では「台独」を容認しており、あろうことか現在、李登輝が来日して中国分裂を目指す活動に従事することを容認した。言うまでもなく、日本政府が李登輝の日本での活動を認めたことは、
「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則に背いたものであり、中国の平和的統一という大業に対する挑戦だ。また同時に、中日関係に深刻な損失ををもたらした。

 日本の小泉純一郎首相は就任以来、国内世論とアジア各国の強い反対を顧みることなく、4年連続で靖国神社に参拝し、中日関係を「政冷経熱」という不正常な状況に変化させた。中日両国は一衣帯水の隣国同士であり、中国政府はこれまでずっと中日友好の外交方針を貫いてきた。日本の指導者も日中関係の発展は大変重要なことだ、中国の発展は日本に対する脅威ではなくチャンスなのだ、と発言してきた。しかしその一方で中国人民の感情を傷つける行為を絶えず行い、両国の関係発展における障害を生み出し続けた。日本政府がトラブルメーカーである李登輝の訪日を許可することは、必ずや中日関係に新たな面倒をもたらすことだろう。

 中日関係を発展させれば「双方いずれにも有益」な共同発展を実現できる。中国経済の急速な発展が日本企業に巨大市場をもたらし、日本経済の回復にも利するものであることは事実が証明しているところだ。中日両国が展開している経済的協力は相互補完というメリットが大きく、それは両国の根本的利益にも合致する。だが日本側による一連の誤った振る舞いは中日関係の政治的基盤を動揺させ、両国の経済協力の面においてもマイナスの影響を及ぼしている。

 中日関係の改善には双方の共同しての努力が必要である。日本が絶えず中日関係に面倒をもたらしていることは、必ずや自業自得という結果を招くことだろう。

 http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/24/content_2375635.htm

 ――――

 恫喝的な物言いに腹を立ててはいけません。ポイントはそこではなく、

「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則に背いたもの」

 という部分です。以前も含めて、私はチナヲチしている間にこの表現を目にしたことはありません。

 例えば昨年のちょうど今頃、森喜朗前首相が台湾を訪問し、李登輝氏らと会ったりしています。このことに対する中国政府の抗議声明(※1)では、

「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう要求する」

 であり、「違反した」「背いた」とは言っていません。今年の元旦に小泉首相が靖国神社を参拝したときに中国外交部が出した抗議声明(※2)では、「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書」という文言すら登場しません(※3)。

 ――――

 これはランク付けがあるんだと思いますが、とりあえず私が目にした範囲で位置付けすると(本当はもっと強い表現がある筈です)、

 (一)「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則に背いた
 (二)「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書の精神に背いた
 (三)「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう要求する
 (四)上の文言自体が出てこない。

 つまり元旦の小泉首相による靖国参拝よりも、森前首相の訪台を大事だと中共が判断したことになります。

 そして、今回はそれを遥かに上回る重大事件とみていることになります。胡錦涛政権の対日政策の変化が俄然現実味を帯びてきたようです。あるいは内部で何か起きている可能性もあるかも知れません。

 現時点でこんなにトーンを上げてしまうということは、次回はもっとびっくりさせてくれるネタを用意している、と期待してもいいのでしょうか(笑)。まあ今回は新華社の論評であって政府見解にはあたりません。あるいは、外交部の声明として今回のような内容のものが出るのかも知れませんが、それじゃあつまらないですね。

 それにしても、中共がそんなに嫌がるのなら、やはり李登輝氏にはガンガン政治活動をしてもらいたいところです。

 だって(一)より激しい措辞を見てみたいじゃないですか(笑)。


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 【※1】http://big5.xinhuanet.com/gate/big5/news.xinhuanet.com/newscenter/2003-12/25/content_1248416.htm

 【※2】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-01/01/content_1256873.htm

 【※3】「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書云々が靖国参拝に対する抗議声明に出てこないのは、首相の靖国参拝がそれらに全く違反していないからです。要は法的根拠(条約や共同声明など)のない抗議ということになります。



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 クリスマスイブですね。私のところでも家内がケーキを買ってきたようなので今日も小ネタで勘弁して下さい。

 でも小ネタとはいえインパクトはありますよ。まずは日本側の報道から。

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 ●<傷害容疑>平沼前経産相の私設秘書を逮捕 飲食店で暴行(毎日新聞2004/12/16/12:32)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041216-00000034-mai-soci

「平沼赳夫・前経済産業相の私設秘書が13日深夜、東京都内の中華料理店で店員に暴行したうえ、駆けつけた警察官を突き飛ばすなどしたとして、警視庁赤坂署に傷害、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕されていたことが分かった」

「逮捕されたのは、文京区に住む大垣進保容疑者(41)。調べでは、大垣容疑者は13日午後11時55分ごろ、港区赤坂3の中華料理店で、中国人の女性店員の顔などを殴りけがを負わせ、110番で駆けつけた同署地域課の警察官を突き飛ばすなどした疑い」

「大垣容疑者は午後11時半ごろ、1人で入店し酒などを注文したが、泥酔状態で寝込んでしまった。女性店員が『起きてください。終電の時間ですよ』と声をかけると『何を言っているんだ』などと言いながら暴行したという」

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 これが「人民網」に転載された時点にはニュースの質が一変してしまって、非常に政治的な色彩を帯びてくるのです。

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 ●A級戦犯の息子の秘書、中国人女性店員を殴り重傷負わせる
 http://www.people.com.cn/GB/guoji/14553/3075877.html

 日本の報道でなかった部分は、

「犯人は飲食の代金も払わなかったという」

「平沼赳夫は日本の政治家・平沼騏一郎の息子。平沼騏一郎は1939年に首相となり、第二次世界大戦後、A級戦犯として無期懲役の判決を受けた(そのあと平沼赳夫氏の経歴が続く)」

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 といったところなんですが……タイトルでいきなり
「A級戦犯の息子」ですか。ものすごい力技です。昨日から今朝にかけて、このニュースは「人民網」のトップページのニュース一覧に並んでいました。

 やっぱりあれですか、「血統論」はいまなお健在ということですか。右派の子供は右派の血をひいているから批判の対象。地主の息子も地主の血をひいているから階級闘争のターゲット……全く、文化大革命当時にタイムスリップした観があります。

 この記事において、平沼氏は「血統論」によって非難されてはいません。でも事件には全く無関係なのに、

「A級戦犯の息子」

 という形でタイトルにされてしまうとは、呆れて物が言えません(いかに民度が民度とはいえ、憤りを感じています)。

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 いろいろ検索をかけてみると、この記事は結構あちこちに掲載されているようです。元ネタが日本で発行されている『中文導報』、それを北京の『法制晩報』が転載し、そこから各メディアに伝播したようですが、「A級戦犯の息子」云々を書いたのはどこなのか、肝心の『中文導報』の記事が見つからないので判断できません。転載した国内メディアにはその部分が欠落していて、単に日本の国会議員の秘書が中国人女性店員に怪我を負わせた、という形になっているものもあります。

 品格のない記事ですが、これが党中央の機関紙をはじめあちこちで掲載されたというのは、胡錦涛政権の対日路線が変更されたことを示しています。……というには、まだ材料が足りないですね。

 もう少し様子をみる必要がありそうです。マスコミにしても、ネット世論の反応にしても。



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 今日は李登輝氏訪日問題については大きな動きがなかったようですね。武大偉外務次官が昨日、阿南日本大使を呼んで改めて抗議したようですが、内容は以前と変わりありません。

「(李登輝氏訪日許可は)日中関係に深刻な障害をもたらした。日本側はこれによって生じる結果の一切について責任を持たなければならない」

 という常套句が使われていいますが、王毅から「戦争メーカー」発言が出た後ですからヌルいヌルい。

 あと李登輝氏とは無縁ですが、

 ●日本は大挙侵略の扉をすでに開いている
 http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/21/content_2363136.htm

 なんて記事が最近出ておやっと思ったら、

「朝鮮中央労働党中央の機関紙「労働新聞」が21日に社説を発表……」

 ……って、これ北朝鮮発のニュースじゃないですか(笑)。いくら日本叩きのネタが足りないからってこんなものまで引っぱり出すとは。それとも六カ国協議に関する何らかの意思表示なんでしょうか。

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 という訳で今日は小ネタになりますが、決して見逃してはいけない記事を。

 ●中国の汚職、3万6000件 容疑者は4万2000人(産経web)
 http://www.sankei.co.jp/news/041222/kok082.htm

 と、日本でも報じられているニュースです。原文を抄訳します。

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今年判明した汚職は3.6万件に、容疑者は4万人を超える
2004/12/22/03:09:29(新華網)
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 【新華網海口12月21日電】今年1月から11月末までの時点で、全国の検察機関が調査し立件に至った贈収賄などの汚職事件が合計3万6509件、容疑者は4万2225人に達することがわかった。このうち県・処クラス以上の幹部によるものは2856人にのぼる。
 本紙が21日、現在開催されている全国検察長会議において取材したところによると、これによって国家に及ぼした経済的損失は合計38億2800万元。(後略)
http://news.xinhuanet.com/legal/2004-12/22/content_2365149.htm

関連ニュース:国有企業関連の汚職が台頭、全体の4割に
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 最高人民検察院の最新調査によると、2003年から今年8月にかけて、全国の検察機関が偵知し立件された汚職事件において、容疑者となった国有企業関係者は合計2万5322人に達した。国有企業制度改革の過程での汚職事件は国有資産の大量流失をもたらしている。(後略)
http://news.xinhuanet.com/legal/2004-12/22/content_2365149.htm

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 上記産経webの報道は「立件数、容疑者数とも昨年とほぼ同じ規模で、腐敗の深刻化に歯止めがかからない現状が浮き彫りになった。」と解説しています。前年同期比というのは経済成長に関するニュースでは大威張りで使われるのですが、こういうところで使うのは都合が悪いのでしょうね。前回(※1)紹介したケースは関連ニュースにある国有企業関連汚職の典型例といえるでしょう。

 今年は張国光・湖北省長(当時)が逮捕されるなど高級幹部の汚職が摘発されたりもしていますが、トータルしてみると件数は昨年並み、というのでは、

「逆転サヨナラホームランを1本打ったけど、打率や打点や本塁打数やらは全て昨シーズンを上回れず」

 というようなものです。国民による「査定」も低いでしょう。汚職自体が大幅に減ったとは考えられませんからねえ。ともかく、この結果では党・政府に対する信頼回復の呼び水とはならないでしょう。

 実際に今年の汚職摘発に関し、湖北省長が逮捕されたことを引き合いに出す記事も多いのですが、結局のところ、これは地方政府のトップが自分の業績を高く見せるために大型プロジェクトを立ち上げるのと変わりないですね。ちなみにこの種のプロジェクト、中国語では「面子工程」「形象工程」と呼ばれています。「形象」とはイメージ、「クリーンなイメージに傷がついた」という使われ方の「イメージ」です。

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「県・処クラス以上の幹部によるものは2856人」

 ということですが、むしろ民衆の生活に直接影響する末端レベルでの汚職が及ぼす影響こそより深刻でしょう。ごく日常的に目の前で汚職が行われているからこそ、重慶暴動のようなケースや各種の農民暴動が起こるのだと思います。町中で起きた他愛のない喧嘩の中で「俺は幹部だ」云々と言ったことを発端に、政府庁舎前に群衆が集まって警官隊と衝突するぐらいですから、庶民の恨みつらみは相当なものでしょう。

 それから、職を涜するという意味では、法に引っかからない汚職もあるでしょう。以前紹介した、高級幹部が家族や親戚をいいポストを回してやるというのがそれです。あるいは違法なのかも知れませんが、一向に摘発されませんよね。その一覧表(※2)がtom.comの「強国在線」に出たときは、中国人による怒りのレスが殺到してそりゃもう大変な勢いでした。昔話ですが、1989年の民主化運動でも似たようなものが街のあちこちに貼り出されて、その内容が庶民の怒りを買っていました。

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 昔話ついでにいえば、かくいう私も、留学中に内陸部を旅行したときにはケントやマルボロ1箱を握らせて外国人の泊れない招待所(激安)に泊めてもらったり、絶対とれないと言われていた長江下りのいちばんいい船室を中国人料金でゲットしたりしていたのですが。「六四」(天安門事件)から半年と経っていないころでしたから、民主化運動に関わった容疑者摘発がまだ厳しく行われていて、ホテルにいると1日に何度か公安(警察)による「査房」(家捜し)がありました。

 そういえばあれは重慶だったか、洋モクが効いて招待所にチェックインするため名前を書き入れたとき、横からのぞき込んだ若い服務員が、
「お前の名前、長いなあ。少数民族か?何族だ?」
 と言っていたのが懐かしく思い出されます。


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 【※1】当ブログ「あれからどうなったのか……」(2004/12/23)。
 【※2】http://www.bloghk.com/blog.php?id=178706。「棲息地その3」ですから手前味噌ですが。


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 陜西省の咸陽、といえば確か秦王朝の都が置かれた場所だったかと思いますが、この咸陽市にある大型紡織工場で9月中旬に労働争議が発生しました。デモ&ストです。それが23日間継続したことまでは報道により判明しているのですが、その後続報がぱったりと途絶えまして。

 あれからどうなったのかと、最近なぜか気になっています。

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 先に経緯を簡単に言ってしまうと、

 ●大型国有企業が外資に買収され、売却後に大規模なリストラ計画が打ち出された。
 ●リストラ対象の従業員に対する補償は薄く、残留する従業員にも待遇低下に等しい雇用契約への切り換えが迫られた。
 ●一方で外資へと最大株主が移った際に発生した売却益がどこへ行ったのか不透明。どうやら地元幹部が懐に入れてしまったらしい。

 ……と、先日ふれた給与未払いによる暴動と並ぶ、労働争議の典型例が凝縮されているかのようなケースです。

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 最初にこの件をすっぱ抜いたのは、香港紙『蘋果日報』(2004/09/16)です。反政府系ニュースサイト「大紀元」がそれを同日に転載し、その5日後(9月21日)に続報としてより詳細な経緯を報じました。

 報道を総合すると、件の紡織工場は咸陽市にある天王グループという大型国有企業。その前身は1958年に誕生した西北第七綿紡織廠で、一時は84000人もの従業員を擁する咸陽市の誇る大企業でした。これを香港資本の華潤グループ(香港とはいえ中国系企業)が買収、同社株の51%を保有する最大株主となり、天王グループは外資系企業へと生まれ変わったのですが、新経営陣はすぐに大規模なリストラを含む合理化計画を発表。残留する従業員も福利などを大幅に削られ、待遇低下となる新規雇用契約へのサインが迫られました。

 これに反発した工員が大挙して決起、ストライキに入ったのは9月14日のことです。持ち場へと行かずに工場の正門前での座り込みを行い、夜も交代制でそれを続けました。6000名から1万名がこの行動に参加したようです。座り込みだけでなくデモも行われ、一時は3000名の工員が市内の幹線道路を封鎖する騒ぎにもなりました。

 咸陽市当局はこれに対し、17日深夜に警官1000名、警察車両80~90台、それにバス5台(拘束者収容用)を投入してその場にいた工員を拘束。工員がこれに屈することなく翌18日にもデモと座り込みを続けたところ、同日夜には警察車両約100台、消防車6~7台が現われ、警察側が「君たちの行為を違法騒乱とみなす」とスピーカーで宣言して拘束行動の準備にかかりました。

 ところが、この「違法騒乱認定」を耳にして憤激した工員が続々と現場に集結、その数は退職労働者を含めて2~3万人にも達したのです。この人数で団結した工員側はその後も24時間態勢で工場の正門前を占拠、市当局も匙を投げたのか、現場の工員を拘束することはなくなりました。

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 「大紀元」が9月21日にこの事件を報じたページに飛んでみて下さい。
 http://www.epochtimes.com/gb/4/9/21/n667304.htm

 タイトルの下に現場写真が2枚、そのちょっと下にリンクが張られていて、現場の様子を録音したものを聞くことができます。下の行(2004年9月21日上午,工人……)の録音では、会社側に対する質問を読み上げたあと、

「打倒腐敗!」
「打倒貪官!」

 とシュプレヒコールが録音されていて血が騒ぎます(笑)。学生を大動員した米大使館への官製デモ(大使館誤爆事件)や糞青(反日信者の自称愛国者)数十人による「なんちゃってデモ」を別とすれば、私にとっては89年の民主化運動以来初めて耳にするものでした。

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 この間、何度か労資代表による交渉の場が持たれますが、妥結点を見出せぬまま日が過ぎていきます。問題はリストラや待遇悪化だけではありません。2003年2月に華潤グループが買収した際、その代価である1億6300万元が外資側から支払われたのですが、その行方がはっきりしないのです。工員たちの話によると、トップクラスが各5万3000元、主任一級クラスが3万8000元など、あるレベルより上のポストにいた者には分配金が出たということですが、それだけでは計算が合わない(そこで市当局の党幹部の懐に入ったという疑惑が浮上した訳です)。

 それどころか、従業員の積立金もいつの間にかなくなっている。分配金がない、福利施設が撤去される、各種の福利を帳消しにされる、積立金が消えている、しかも職まで奪われる……とあっては、工員たちが立ち上がるのも無理からぬところです。

 さらにいえば、これは単なる労働争議ではなく、「国有企業は一体誰のものか」という根本的な問題が絡んでくる訳ですが、話が複雑になるのでひとまず措きます。

 ――――

 この天王グループにおけるストライキは、「大紀元」が10月7日に、
 「23日目に入った」
 http://www.epochtimes.com/gb/4/10/7/n682870.htm
 と報じたあと、続報が絶えています。

 話が前後しますが、リストラについては買収当時の協議で行わないこととし、従業員は従来の待遇を保証されることになっていました。ところが上記のようにその約束が破られ、残留者にも過酷な雇用契約の受け入れが迫られたのです。

 一体どういう契約かといえば、「勤続年数に関わらず、工員はみな研修を受けること」とされ、一定の金額が応募費、研修費の名目で賃金から天引きされます。研修といっても、要するに勤続年数を問わず、半年間の試用期間を改めてクリアしなくてはならないということで、この間は賃金の60%しか受け取ることができません。4割引で働かされる訳です。残業代もつかず、年功に応じた手当ても出ない。養老保険(厚生年金のようなもの)は自己負担へと改められ、毎月300元の保険料を支払わなければならなくなります。

 それまで工員たちの月給も600~800元程度でしたから、研修期間の「4割引」はもちろん大打撃です。さらに福利カットによる収入の目減り、養老保険の保険料自己負担で収入は大幅ダウンとなり、生活していくこと自体が難題ということになります。

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 市内大手企業での正門を封鎖しての労働争議ですから、地元メディアは報道規制で沈黙を守っても、ネットから情報が外に流れます。中国国内の大手掲示板のひとつ「百度」の「咸陽板」では一時期この件が熱く語られていました。地元民の声あり、他の地域からの声援あり、官に対する怨嗟もあり……それらは管理者によって発言の一切が削除されるまで続きました。

 最後にいくつか拾っておきましょう。

「労働者階級を主人とする国家がどうして労働者を鎮圧にかかる?これはきっと『よからぬことを考えている連中』(政府の常套句)の引き起こした動乱だろう(笑)」(労働者による皮肉)

「いつもあそこ(現場近く)を通るとき同情したり頑張れって思ったりする。私だけじゃくて、あそこの前を通る人たちはみんな応援している。何かしてあげたいんだけど、何をしたらいいのかわからなくて、(徹夜の座り込みで)顔色の悪いみんなをじっと見つめることしかできない」(地元民)

「こんな大きな事件になると、どう処理するか、なかなか面倒だな。政府は『執政能力の向上を』と言うけど、言うは易しとはこのことだよ。例えばこのニュースにしても、報道させるか、させないか。報道させたとして、国民からどういう反応が返ってくるか。もし連鎖反応が起きたときにどう処理するか。でも国民に重大事件の真相をはっきりと理解させないというのは、とにかくいいことじゃないな」

「問題はいまの政府の中に人民を代表しているのが何人いるかということだよ。役人は人民の為に働くものじゃないか!いまの政府の中で一体どれだけの役人がそれを実践している?人民は国家の主人なのに、いまは主人が公僕に圧迫される一方だ!」

「政府がこういう問題を片付けるときの方法はさ、第一に問題解決を引き延ばす、第二にペテンにかける、第三は脅す、これだよ。ちょっと譲歩したかと思えば後で報復される。そもそも奴ら(共産党)が労働争議で身を立てた連中なんだから」

「この種の事件はここ数年あちこちで耳にするね。どれもみな『違法騒乱』認定で鎮圧される。じゃなけりゃリストラされた人間がこんなに多い訳がない。もし詳しく調べれば、絶対汚職役人を暴くことができるのに。労働者を鎮圧するのに出動する当局の中にもいるだろうよ」

「どうしてこのことで怒りの声を上げないんだ?」

「もう声も枯れちゃったよ。叫べば叫ぶほどムカついてくるし、汚職してる奴らから報復も受けるし」

「連中(共産党)は騒乱なんて怖がっちゃいないよ。だいたい連中は騒乱を起こして天下を取ったんだから。奴らは騒乱のエリートであり、専門家であり、業界人ってことだ」

「物事は必ず変化する。圧迫が我慢できないところまできたとき、火山は爆発するんだ」



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 内容が乏しいので今回はごく簡単に。

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 今日(22日)の「新華網」は盛り沢山ですね。李登輝特集があったかと思えば、トップページの見出し一覧に、

「中韓の抗議の声の中で小泉首相は靖国参拝の時期を探る」

 というのもありました。ああ、抗議しているのはやっぱり中国と韓国だけだったんですね(笑)。

 さてそのページに飛んでみると、親記事はなくて、関連記事へのリンク集となっています。タイトルには「靖国」とありますが、「日本の新防衛大綱」とか、「EUの対中武器禁輸解除は目の前だ」とか、靖国以外のネタも扱っています。

 ちなみに「中韓の抗議の声の中で小泉首相は靖国参拝の時期を探る」は共同通信の報道を基にしています。相変わらず頑張っていますね(笑)

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 そういう中で目を引いたものといえば、靖国とは無関係なんですが、

 ●日本紙:手を携えて「アジアの脅威」に臨もうとする日米
 http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/22/content_2367483.htm

 これ、元ネタは日経の記事ですね。

 ●日米、2月にも新安保宣言・アジアの脅威に共同で対処
 http://www.nikkei.co.jp/news/main/20041222AT1E2101421122004.html

 それにしても間髪入れずに転載したものです。興味津々なんでしょう。

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 他にこういうニュースも。

 ●日本が核廃棄物からのプルトニウム抽出に関する実験を開始
 http://news3.xinhuanet.com:80/world/2004-12/22/content_2367500.htm

 これは例えば下記の記事で伝えている内容を指していると思われます。

 ●原燃、ウラン試験を開始 使用済み核燃料再処理 六ケ所村(産経新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041221-00000024-san-soci

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 いや、こういうネタに敏感に反応するあたり、やっぱりピリピリしているなあ、と思っただけです。

 「新華網」トップページのニュース一覧には、「靖国」と並んで、

 ●2004年の中国の反腐敗(汚職撲滅)運動に君は満足しているか?
 http://news3.xinhuanet.com:80/forum/2004-12/22/content_2361672.htm

 という特集記事があったりします。中共も色々と大変だなあ、と思うのです(笑)。


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 「新華網」のトップニュース(トップページで大見出しになっているもの)は一日に何度か変更されるものですが、さっきのぞいたら、

「李登輝の訪日は分裂狙い/日本政府は台独を野放しにするな」

 となっていました。来ましたねえ。特集です(厳密にいえば、関連記事をまとめてこの見出しでくくっているだけですが)。

 大見出しに直結する親記事はこれです。
 http://news.xinhuanet.com/taiwan/2004-12/22/content_2367123.htm

 内容は、まず李登輝氏へのビザ発給をめぐる経緯を中共視点で示し、外交部の声明へのリンクを張るなどして中国の立場を改めて強調しています。そのあと李登輝氏がいかに台湾独立に向けて熱心かということを紹介する一方で、例のコスプレ写真を引き合いに出して、

「台湾を愛せといいながら自分は日本文化を抱き締めて放そうとしない。『台湾皮日本骨』(原文)だ」

 と悪罵、いやこれは悪罵ではなく中共なりの分析ということなんでしょう。しかし無聊な文章です。

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 また、

 ●海外メディアの反応:日本の放埒な李登輝入国許可は中日関係を害する
 http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/22/content_2366445.htm

 という記事もあります。外電の論評を都合のいいところだけ引き抜いてまとめたものがあり、AP、ロイター、AFPが名を連ねていますが、朝日と共同もこの中に入っています。たぶんこの2社に関しては編集せずにそのまま掲載しても中共の意に沿っているのではないでしょうか(笑)。

 李登輝氏訪日の件では共同の働きが特に目覚ましく、「新華網」にもどんどん引用されていて、御注進メディアのMVPといった観があります。

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 ●タイの華字紙、李登輝の来日を許した日本政府を批判
 http://news.xinhuanet.com/taiwan/2004-12/22/content_2364919.htm

 という記事もありました。でも華僑に読ませる新聞じゃあねえ。少なくともタイには中共寄りの華字紙が2つある、ということは勉強になりました(笑)。

 他に香港の親中紙のひとつ『香港商報』の論評、
 http://news.xinhuanet.com/taiwan/2004-12/22/content_2366444.htm

 これも李登輝と日本政府を非難する内容で新鮮味に欠けます。みんな一本調子なので読んでいて面白くありません。中共の指示というより、叩くネタがないため、みんな似たような内容になっているという印象です。

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 他に書くことないの?と思っていたら、ひとつだけ興味を引いた記事がありました。

 ●李登輝へのビザ発給に在日華僑団体が抗議声明
 http://news.xinhuanet.com/taiwan/2004-12/22/content_2366360.htm

 というもので、日本華僑華人聯合総会、東京華僑総会、留日台湾省民会がそれぞれ抗議声明を出したようです。「台湾省」ですか(笑)。中国人犯罪が激増して、昨年末に中国大使館でこの問題などに関する座談会を設けたときに集まってきた連中でしょう。そのときの結論は「犯罪者はごく少数、日本のメディアは騒ぎすぎ」でしたね。

 さてこの記事の注目すべきところはそこではなく、なぜか広東省での民意調査結果なるものが唐突にこの記事に出てくるのです。かいつまんで訳しますと、

「日本政府が李登輝へのビザ発給を認めた事件は内外で広く注目されている」

 という中共の認識(妄想)に基づいた当然の前フリがあってから、

「内地(中国本土)における経済では筆頭格の広東省の公衆がこの事件をどうみているかを掴むべく、広州社情民意研究センターか緊急電話調査を行った」

 と続きます。単に広東省で電話による緊急アンケートを実施した、では駄目なんでしょうか。まあそれはいいとして、調査結果はというと、

「7割の広東民衆が今回の件に憤慨している」

 ポイントはここからです。

「注目すべきは、『相当一部分』(翻訳不能。どっちかはっきりせい!)の広東民衆の日本製品購入について、この事件が影響していることだ。32%が日本製品の購入に対し今回の事件が『やや影響する』『影響が大きい』と回答。また32%が日貨排斥に『賛成』あるいは『割と賛成』と、強硬的な姿勢をみせていることだ」

 この記事のこの部分だけが一連の記事の中で際立った印象を受けます。足並みが揃っていない、ともいえるでしょう。あるいは跳ねっ返りの糞青(反日信者で自称愛国者)まがいの記者が、目立たぬよう「在日華僑」云々という無関係なテーマにこれを滑り込ませたのでしょうか。

 日貨排斥を前向きに扱った記事が国営通信社のサイトである「新華網」に掲載されるとは驚きです。だって日貨排斥をやったら困るのは中共の方じゃないですか。ただでさえ失業者対策が悩みのタネのひとつなのに。

 ――――

 まあ第一報以来、初めて「新華網」にまとまった李登輝特集のようなものが出たということになるのですが、上に紹介した「日貨排斥」を別とすれば、中共が最初に発した抗議声明の線より踏み込んだものはない、という印象です。

 「日貨排斥」が主流になったら面白いんですけど。

 ちなみにどのページに飛んでも、李登輝氏の写真は例のコスプレバージョンだけでした。中共もいたく気に入っているようです(笑)。


 ――――


 【追記1】このブログを投稿してから改めて「新華網」のトップに飛んでみたら、もう大見出しが変わっていましたね。渾身の李登輝特集はトップページの見出し一覧からも消えています。台湾が独立宣言をした訳でもなし、一般市民の関心は所詮その程度ということでしょうか。


 ――――

 【追記2】読者の方からの御指摘で、上記本文にある在日華僑団体が抗議声明を出した部分について、東京華僑総会については新華社の捏造であることが判明しました(コメント欄参照)。下に同総会による声明を掲げておきます。


件名:「台湾の声」【声明】東京華僑総会 歓迎李登輝先生

声明文 李登輝先生の訪日を歓迎する


私たち東京華僑総会は李登輝前総統が日本を観光で訪問されることに心からの歓迎の意を表します。

そして李前総統に入国ビザを発給した日本政府に対しても感謝いたします。

しかし中国政府のスピーカーである新華社通信が、李前総統の訪日に反対する本会名義の「声明」なるものをでっち上げました。本会は新華社が報じたこの声明が真実のものではないことを明確に表明ます。そしてこの声明を本会の真意といたします。

東京華僑総会 
会長 黄宗敏

2004年12月22日

http://www.emaga.com/bn/?2004120071346735001105.3407


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