遅ればせながら報告をば。
ビルマ・タイ国境地帯の先住民であるカレン族のナショナル・デイ記念イベントに2月7日、参加してきました。
カレン族といえば私にはLさんという友人がいて、そのLさんと一緒に参加したお正月イベント ではちょっと滑ってしまいました。
今回はLさんが仕事を休めないため私は単独出席ということになり、どうしようかなーと前日まで色々悩んだのですが、悩むときは積極策で打って出るべしという信条に基づいて御茶の水の会場へと足を運びました。
結果から申し上げますと、参加して大正解。
前回は純粋にカレン暦での新年を祝う集まりだったのですが、今回は日本に3つあるカレン族の政治組織のひとつ、在日カレン民族同盟(KNL=KAREN NATIONAL LEAGUE)の主催であり、ナショナル・デイといえばカレン族にとっての建国記念日のようなもの。厳密には偶然ながら日本と同じ2月11日がそれに当たります。
ビルマ独立直後である1948年2月11日にカレン族が独立・自治を求めて大規模デモを行ったのが由来です。今年で61年目。そして翌1949年1月31日(革命記念日)にはビルマ政府の弾圧に対してカレン族がついに蹶起し、現在に至るまで内戦を展開中です。
さて記念イベント。最初に国旗掲揚が厳粛に行われ、そのあとカレン族のルーツ、ナショナル・デイの由来、その他カレン族に関する色々なことや他の政治組織からの来賓挨拶などがありました。
今回は新参者である私の他にも多少の日本人出席者がいたためか、日本滞在歴の長いカレン族の人がそれぞれのスピーチの後にその内容を流暢な日本語で要約してくれたので、退屈することがなかったのが有り難かったです。
……いや正直、カレン族といっても様々な部族がいて、スゴー・カレン語やポー・カレン語など、それぞれの言葉での演説なので私は大人しく座っていることしかできませんでした。部族ごとの言葉も北京語と広東語並かそれ以上の距離があり、スゴー・カレンであるLさんもポー・カレン語はわからないそうです。
さらにいうと、最近の若いカレン族にはいずれのカレン語も全く話せないか、話せてもカレン文字を読み書きできない人が増えているとか。
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イベントが始まる前に会場に入った私は目立たないように隅っこの方に座っていたのですが、目ざとく見つけられてしまいました。
前回、お招きにあずかった御礼に50個進呈した「FREE KAREN」の小さなカンバッジ(日本でも大使館の眼が光っていますから、わざと目立たぬよう小さなものにしました)を胸につけた人たちが開会前に挨拶に来て下さり、私はもう恐縮頓首。
その後で若いカレン族の人が寄ってきて、
「横の部屋で展示などもしています。よかったら観に行きませんか?」
と誘ってくれたので、是非是非とばかりに喜んでステージ横の部屋に入ったところ、思わず絶句してしまいました。こんな感じです。
ビルマ軍事政権によるカレン族迫害の……というか民族浄化の証拠写真や、地雷や化学兵器の被害者の写真、また海外の組織などによる救援活動の様子などが紹介されていました。
ただし、後日Lさんに聞いたところ、突如政府軍が来襲して故なく村を焼かれ殺戮されるカレン族の生存者は追撃を恐れて山岳地帯の奥深くに隠れてしまうため、医療活動や教育も受けられない、それこそ21世紀にあるまじき生活を余儀なくされているとのこと。
化学兵器は中国から供与されたものだそうです。それに限らず、中共政権による資金と兵器の援助によって軍事政権は近年急速に強化されており、カレン族の態勢が目立つようになっている、とLさんが教えてくれました。
政府軍の所業は手当り次第にカレン族の村々を襲撃し、家々を焼き打ちして男や子供はその場で殺され、女性はレイプされた上で殺されて家畜を奪う。……という、内戦継続中とはいえ、
「昔ビルマにカレン族という民族がいました」
というほどの勢いで、正に民族浄化としか言いようのない事態が進行しています。私はこうして弱小ブログで紹介することしかできないのですが、こうした状況をより多くの日本人に知ってほしいとの意を新たにしました。
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で、ここで楊枝削りではなく告知です。このビルマ軍事政権によるカレン族虐待をテーマにしたのが「ランボー 最後の戦場」という映画。
これは是非、レンタルで構いませんから一度は御覧になって下さい。カレン族に対する民族浄化の有様が随所に登場します。その内容たるや目を覆うほどの残虐なものですが、Lさんによると「これは日常茶飯の序の口」だそうです。
在シンガポールのカレン族をはじめ反軍事政権派は映画館をひとつ貸し切って上映会を開いたというエピソードもあります。
ちなみにWikipediaの「ランボー/最後の戦場」 によると、
「ジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン)はタイの北部のジャングルで、ボートによる運搬や毒ヘビ狩りを生業としながら、ひっそりと暮らしていた。人権弾圧が続く隣国のミャンマーでは、軍事政権が少数民族カレン族を虐待し、土地や天然資源を奪取していた」
「現地のガイドにカレン族の村へ案内された傭兵たちはそこで惨殺されたカレン族を目の当りにし、しり込みする。そしてミャンマー兵による残虐な殺人博打を目撃し、帰途につくことを計画する」(殺人博打=地雷を田んぼの中に投げ込み、捕虜を田んぼの中を走らせて彼らが爆死するかどうか競うゲーム)
「本作品の舞台がミャンマーになったのは、『現実に、残忍な暴力や虐殺が起こっている地域を舞台にしたい』というスタローン本人の強い希望で、ミャンマーが舞台となった」
「日本や、現在の米国においてはイラクの方が報道は多いが、世界の中で本当に人間の権利が踏みにじられていて、それが注目されていないか忘れ去られている事への警告として、スタローンの持つ本質的なメッセージ性が顕れていると言えよう」(ミャンマーの報道もたまにあるが、そのほとんどがアウンサンスーチーや民主化運動関係の報道である)
「本作にミャンマー人役として出演した役者たちの一部には弾圧されているカレン族や、出演したという理由のみで親族が逮捕された役者もいる」
「撮影地もミャンマーとの国境からそれほど離れていないタイ北部の地域であり、ミャンマーから脱出したカレン族も多く住む地域である」
……などと紹介されています。下は予告編です。
もしよろしければ、こちらの「Rambo 4 Real: The Karen Massacre」 も。カレン族が直面している現実です。
そして、ここにも中共政権の影が。
ビルマ軍事政権への強力なバックアップの狙いは、天然ガスなどの資源を買い叩くことと、インド洋に出る軍港の確保です。
アジアにおける軍事的バランスの不安定化とシーレーンを脅かされるという意味において、日本と日本人にとっても無縁な問題ではないことを強調しておきます。