猶予が無いのは処理汚染水の放出ではない
福島県漁連は、処理水の放出に反対する特別決議を4年連続で採択していました。そして、相馬双葉漁業協同組合は、先月、2023年7月に「断固反対」の考えを国に伝えました。
政府および東電は2015年、福島県漁業組合連合会(県漁連)に対して、処理汚染水に関して「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と文書で約束をしていたのです。地元の漁業関係者の理解が汚染水排出の条件だった筈です。政府と東電は約束を反故にして嘘をついたのです。そう、原発は常に嘘まみれです。
これは、福島県の漁業関係者だけの問題ではありません。日本、更には世界の問題です。「他のところも汚染水を流しているから日本も流してもいい」と言うような事を平気で言う連中はどうしようもありません。人類や生態系とって、非常に深刻な問題です。
政府や東電は、「アルプス処理水のタンクは既に貯蔵率は98%を超えている、原発内に空き地はもうない」・・などと発信しています。そして、岸田首相は、「先送り出来ない課題だ」などと言って世論をその方向に持っていこうとしていますが、何をか言わんやです。原発内にもまだまだ空き地はあります。福島第一原発の敷地内の7、8号機建設予定地などです。この土地はとっくの昔に増設計画は中止になっています。(・・というより元々増設計画も無かったとのことです。)更に廃炉が決まっている福島第2原発にも広大な敷地があります。そこに、これまでよりも遥かに大きい大型タンクを建設していけば、後何十年も持つでしょう。「先送り出来ない」と言っているのは、東電が単にお金を惜しんでいるだけでしょう。「資金を投入して先送りしたくない」だけでしょう。トリチウム汚染水の放出は、「先送り」がしっかりした解決策になるのです。85年ほど先送りすれば、99%以上(半減期の7倍)、123年では99.9パーセント以上(半減期の10倍)崩壊して無くなってしまうのですから。
ただ単に東電がお金をケチっているだけである事は自明でしょう。事故を起こした責任もまともに取ろうとしていません。(ただし、岸田首相は何のポリシーも無く、まともに理性で考える事も放棄しているようですので、東電や官僚の言うことを鵜呑みにしている可能性も無きにしも非ずです。)マスコミにはこの点をもっと突っ込んで欲しいものですが、大手のマスコミの多くが政府広報機関と化しています。戦前の「大本営発表」に似て来ました。
政府や東電など、原子力邑の組織では、「アルプス処理水は汚染水では無い」とか、(以下、「汚染処理水」と呼ぶことにします)。汚染処理水が及ぼすであろう被害は「風評被害だ」の一点張りです。そして大手マスコミもそれに倣った報道をしています。放射能被害を「風評被害」と言っている政府を糾弾するマスコミがあまり無いのが残念というか、「マスゴミ」過ぎます。それでいて、中国やロシア、その他多くの国を「報道の自由がない国」などと言っている日本の多くのマスコミには、脱力です。第二次世界大戦直前の日本のようです。
岸田さん、先送り出来ない問題は、汚染処理水放出ではありません。原発そのものです。福島第一原発事故だけで、こんなに大変な問題になっているのです。それなのに、また原発を推進するとは狂っています。アバウトに原発1基が稼働を始めてから廃炉までに作り出す放射性核種は、これまで世界で行われた核実験2000回分と同程度です。仮に、原発1基、何の事故もなく廃炉まで安全に稼働できたとしても、その後安全に、数万年に及ぶ管理などできるはずも無いでしょう。何重もの厚い壁で覆っても、数万年後などよりも遥かに近い将来に、放射能は必ず漏れ出すでしょう。(・・・と言うか、いつも漏れています。)
原発1基だけでも、子孫たちに重い負担を背負わすことになるのです。そして、東電も他の電力会社も、廃炉処理の後、安全になるのを見届ける遥か以前に、会社は無くなっている事でしょう。将来の子孫は、責任者がいなくなった危険な廃炉守りをさせられるのです。日本だけでも、もう既に54基も廃炉守りしなければならないのです。まともに出来るでしょうか?
アバウトに、原発1基が1日稼働すると、原爆1発分の放射性物質を作り出すのです。
汚染処理水ではなく、原発撤廃そが、「一刻の猶予もない、先送り出来ない」問題に他なりません。
汚染水処理の虚構性に関しては、先の記事【すり替えばかりの汚染水放出問題】2023/07/17
でも述べました。
FoE Japan の記事:【【Q&A】ALPS処理汚染水、押さえておきたい14のポイント】
も、処理汚染水の問題点をわかりやすく解説しています。この記事に対して、政府や東電、御用学者たちなど、原子力邑の人々は、まともな反論はできないでしょう。
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