失敗が確定的になった汚染水放出
東電を守り、日本の原子力回帰を促進する為に、国内外の多くの反対を押し切り、岸田内閣は(原子力ムラからの要請を受けて)放射能汚染水の放出を断行しました。
経済産業省の【多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 取りまとめ】には、アルプス処理水に関して、海洋放出以外に様々な方法が検討されています。2019年に作成された資料ですので、この時点で既に「海洋放出」ありきで、他の処理方法は費用もかかって制約も大きいと言う不利な結論を導きたかったデータなのかも知れません。しかしその目論見も失敗に終わるでしょう。この資料のp3の表2によりますと、80万立方メートルあたり(2020年末までにタンクに貯められた汚染水134万立方メートルの半分以上の量になります。)のコストは、海洋放出が34億円で、抜群に安い試算になっています。次いで安いのは水蒸気放出の349億円です。(「地層注入」のコストはもっと安いようですが曖昧なので省きます。)
たったこれだけの費用をケチって、日本は大きな代償を支払うのです。放出を始めた途端、中国が日本産水産物の輸入を全面禁止し、水産加工品の購入や使用なども禁止しました。これを「想定外」と言った岸田内閣はお馬鹿過ぎでしょう。まともな政治家だったら、その可能性を当然考えなければなりません。情報だってあった筈です。反中国のような右翼を除けば政財界も慌てた事でしょう。それに対して岸田内閣は、風評被害対策費など、支援金を併せて約1000億円を公金から支出することを決めました。この金額は件の小委員会の「水蒸気放出」の試算費用をも既に上回っています。来年以降さらに追加費用がどんどん膨らむ可能性は大きいでしょう。(漁業関係者を見捨ててストップするやも知れません。)この資料で落としているのは「タンクを増設して放射能の危険性が無くなるまでタンクに保存する」という「放出しない」方法です。トリチウムの半減期は12年ほどですから、その7倍の84年ほどで、99%以上は崩壊してしまうのです(1/2の7乗)。放射能が十分に減るまで保存する方法の方が遥かに有効な方法です。汚染水放出ほど甚大な代償は支払わなくて済むのですから。この方法を意図的に落としている小委員会は、初めから「放出ありき」だったのでしょう。半減期がトリチウムよりも遥かに長い放射性核種もかなり含まれているから、「安全になるまで保存」の選択肢は意図的に排除したのやも知れません。
つまり、海洋放出の費用は、放出しないで他国から非難され無かった方法と比べても高くつく事になるのです。既に失敗は決まったようなものです。東電がケチってそれを国がバックアップして海洋放出した為に、かえって大きな代償を支払う事になったのです。放出後に政府は失敗したと思っていても、それを認めずに突き進むしか無いのしょう。彼らにとって、国民の税金の投入は痛くも痒くも無いのかも知れません。それよりもここで「失敗だった」と認めて、支持率が下がる事の方が怖いのでしょう。そう、まともなイデオロギーを持ち合わせていない岸田さんは、自分の政権維持、自分の総理の座だけ守ることしか頭に無いのでしょう。
「暮らしを守る」では無く
「ご自分と東電を守る」ための「決断と実行」では?
しかし、支払う費用は最も重要な問題ではないでしょう。
この汚染水は、溶融した炉心と直接接触した「炉心溶融汚染水」です。トリチウム以外の放射性核種もアルプスは完全に取り除いてはいません(取り除けません)。この「炉心溶融汚染水」の安全性は公正な第三者によってまともに確認されてもいません。国や東電が「安全だ」を連呼しているだけです。そんなものを放出して、日本は金銭以外の大きな「コスト」を支払う事になるのです。そう、「炉心溶融汚染水」を何十年も放出し続けたら、どんな影響が出るかなんて未知なのです。現在のアルプス処理水の核種別の絶対量も全然わかっていないのですから。(分かっていて東電は隠蔽しているのかも知れません。)将来的に日本政府の愚行として評価・非難されるのでは無いでしょうか?
自民党の岸田内閣は、日本をどんどん劣化させて貶めるだけではなく、世界の環境も劣化させているのです。こんな内閣はさっさと潰さないと日本は存続の危機に立たされる事でしょう。
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