背景
背景
背景は、絵画などにおいて主題の後方に位置している景色、景観、光景のこと。または、主題となる物事の奥に潜む事情や経緯。裏事情。
背景の「背」の字は、人の胴体の背中、および、前方(正面)とは反対側の後方を意味する。背景の「景」の字は、目に見えている・目の前に広がっている様子、眺め、といった意味で用いられる。すなわち「背景」とは「(主題の)背後にある景色・情景」という意味合いと解釈できる。
絵画などの創作においては背景は情景や世界観を表現し、主題が特定の世界の中にいることを表現する要素として機能する。人物画の背景に森を描けば、人物が森の中に佇んでいる場面となる。
事件や問題などの話題においては、話題の中心となる事柄に直接的または間接的に関連する事情を指して「背景」と呼ぶ。「背景」と「理由」の違いは、特にない(意識されない)場合も多いが、「理由」の語には明確な因果関係や直接的な要因となっているニュアンスが付随しがちであるのに対し、「背景」は時代的な趨勢や機運の高まりといった漠然とした要素や、些細な事象の積み重なりなどを指して用いられやすい。
はい‐けい【背景】
背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/12 15:44 UTC 版)
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特に絵画、中でも静物画や人物画の場合は主題の状況や位置を示し、印象をいっそう増す効果があるので非常に重要視される。
舞台芸術における背景
舞台芸術において背景とは周囲の風景や空を表す書割などの舞台装置のことで、西洋ではルネサンス期から、日本でも歌舞伎の盛況により江戸時代以降徐々に発達した。
背景画
人物等の背景にある絵。演劇、映画、テレビドラマなどのセットの一部として用いられたり、アニメのセル画でよく使われる。
風景を描いた板を背景にスタジオ撮影する場合があり、この場合の背景画は書き割りと呼ぶ。背景をスクリーンにし、別に撮影した動画を映写する場合はリアプロジェクションである。比喩的に予め役割が決められた駒のような人間像をも書き割りと呼ぶことがある。
背景美術
背景美術とは、アニメーションの映像を構成する基本的なふたつの大きな要素のうちのひとつである。ひとつはキャラクターや道具などの作画(動画)の部分であり、もうひとつがそのキャラクターが演技する生活舞台を表現する背景美術である。作品の雰囲気を左右し、クオリティーにも大きな影響を与える。スタッフクレジットでは単に「背景」と表記される。また、「バックグラウンド」とも呼ぶ。
背景美術にかかわる仕事は大きく分けてふたつ存在する。ひとつは、監督との打ち合わせから作品のイメージを汲み取り緻密な設定を行う「美術設定」「美術ボード」。もうひとつは、美術監督のもとで実際に背景画の制作を行う「背景」である。「美術設定」や「美術ボード」を手がけるのは主に美術監督となる。作品のイメージを形にするとともに、建造物の構造や室内インテリアなど画面上で矛盾が生じないように細かい部分まで綿密に設定する。また、最終的にキャラクターと合わせて画面に表示されるため、キャラクターとしっくりなじむタッチ・色調にすることも大切である。監督や色彩設計担当との打ち合わせを重ね、方向性を固めていく。
「背景」スタッフは、設定や画面レイアウトに基づき背景画を制作する。基本的に完成度の高い「絵」であることが求められるが、個性を主張しすぎてもいけない。全体のテイストを崩さない微妙なバランスが求められる。30分のアニメで使用される背景画は、およそ200 - 300枚となり、膨大な背景画があってこそそこで動くキャラクターが生きてくる。
主な技法
- グラデーション
- グラデーションとは、ふたつの色を掛け合わせ色の境目が目立たないように着彩する(2色間の色味を徐々に変化させる)ことであり、主に空気遠近法や材質感を表現するための技法である。
- はがし
- 自然な石・岩・崖・地面・ブロック・レンガなど、表面のザラザラ感・ゴツゴツ感・起伏感の様な質感を付けた背景画を描写する場合にはこのはがしという効果を使って表現する。
- 地塗りの際、画用紙が濡れている間に、凸凹のある画用紙などを押し付け、絵の具を剥がし取り質感を表現する。絵の具の濡れ方や押し付け方によって、大小様々な質感を作り出すことが出来る。
主な背景
- 城壁・レンガの壁
- 同じような形が連続する城壁の石やレンガの壁などは、単調にならないように強弱をつけ、リズム感を持たせて描くようにする。石やレンガは、茶色と決めつけず黄色っぽさ・赤味・影の紫系から青味と、幅広く表現することがポイントである。
- また、石の表現や石組みの隙間(目地)の変化のある描き方を心掛けなくてはならない。縦横・単調な区切りではなく、凸凹のある石と石によって出来上がっている隙間に、十分気をつけて表現することが大切である。
- メカニック背景
- アニメーション背景におけるメカニック的・SF的描写の基盤は「光沢感のある金属質」の表現となる。この表現をグラデーション・刷毛・メカ線を巧みに使用して背景画を仕上げていく。
- 光や室内灯が、金属製の壁に反射している様子を「グラデーション」の効果を使用して金属の質感と光沢感を強調、表現していく。また、描き込み作業ではパースに添ってメカ線を描きこむことになるが、その際メカ線が単調にならないようにすることが大切である。単調なメカ線だと変化が弱い平面的な背景になってしまうので、メカ線の創意工夫が必要となる。
背景の種類
- イメージ背景
- イメージ背景とは、キャラクターがいる場所の背景ではなく心象を表現する背景画である(回想シーンなどでも使用される)。
- 色には誰もが共通するイメージがあり、メッセージが込められている。該当カットの状況を把握し、色味が持つ心理的・視覚的効果を踏まえてイメージ背景画を描写することになる。
- ハイコン背景
- ハイコン背景とは、「ハイコントラスト背景」の略称であり、雷や稲妻や爆発などの一瞬にして強い光を感じさせるようなコントラストのある場面を表現する背景画である。
- 強い光を表現することが重要で、光源の状況を把握し、明るい部分と暗い部分の差を大きくし、ハイコン背景画を描写することになる。
- 例として、光が当たっている部分を白っぽく、暗い部分(影を含む)を暗くし(場合によっては黒)、明度差をつけて表現する。
- ハーモニー
- ハーモニーとは、演出的に臨場感や期待感や画面に深みを与えたいときなどに表現する背景画である。そのため、キャラクターや画面を強調する効果が得られる。
- キャラクターの部分も背景の方で着彩するので、「背景」と「線のみトレスされたセル」を重ねて1枚の止め絵的な背景画となる。
- また、キャラクターも背景と同じような質感で表現されるため、絵画的なタッチまたは劇画調の雰囲気でハーモニーを描写することになる。
- ハーモニーの完成度は背景画を描写する担当者の個性に委ねられ、印象派の油絵のようなハーモニーもある。
制作
アニメ制作における背景美術制作は複数の工程からなる。
美術設定
アニメ制作における
実在する世界をカメラで撮影できる実写作品と異なり、アニメは作品世界を1から構築し視覚化する必要がある。そのために地形・建物・部屋・小物といった作品世界内の空間をデザインする工程・役職が美術設定である[1]。空間を1から設計しそれを美術設定画としておこすため、知識・構想力・画力を要する[4]。美術設定の産物は各背景セクションおよび絵コンテ・レイアウトで利用される[5]。
美術設定画
背景ボード
写真撮影をする際に使用するボードのこと。撮影する作品や商品をより良く見せるための効果として背景ボードを使用する。
脚注
注釈
出典
- ^ a b "美術設定は ... アニメの舞台の設計図としての役割があります。... どういう世界観でキャラクターはどういう家に住んでいるか ... キャラクターが演技することを想定し、机の高さは何センチにするかとか、ドアは内開きか外開きかなど細かい設定なども考えながら描き出していきます。" 村治 2021 より引用。
- ^ "アニメの制作工程概観図 ... プロダクション ... 美術設定" 日本動画協会 2024, p. 6 より引用。
- ^ "【美術設定】 世界観構築のためにキャラクターたちが生活して演技を行う場所や空間の設定を起こすスタッフです。" 日本動画協会 2020, p. 24 より引用。
- ^ "美術設定を描く際には画力だけではなく知識が必要 ... 作品ごとに舞台が江戸だったり、中世ヨーロッパだったり違うことがあるので、建築資料を読んだり知識を深めています。" 村治 2021 より引用。
- ^ "美術設定は監督やコンテマンがコンテを描く時に参考にしたり、原画マンが美術設定を元にレイアウトを描いたりするため、アニメの舞台の設計図としての役割があります。" 村治 2021 より引用。
- ^ "「美術設定画」とは ... キャラクターが普段暮らしている世界はどんな世界か?郵便社はどんな建物なのか?などを監督や演出家と協議しながら線画" 以下より引用。えむえむ (2020年9月3日). “映画公開もうすぐです!”. 京都アニメーション. 2025年1月13日閲覧。
- ^ a b "美術設定さんが設定画と呼ばれる設計図(色のついていない線画)を起こします。" かまた, あつし (2016-08-04). “P.A.WORKSの背景はなぜ美しいのか? アニメ美術監督 東地和生インタビュー”. KAI-YOU . より引用。
参考文献
- 日本動画協会 (2020). TVアニメシリーズ制作における制作進行のマニュアル. 一般社団法人日本動画協会 人材育成委員会
- 日本動画協会 (2024), アニメビジネスと製作委員会, 文化審議会著作権分科会政策小委員会
- 村治, けい (2021-07-29). “細部に至るまで、まだ見ぬ世界を構築する 背景美術(アニメーター)・はちさん”. デザインノート (誠文堂新光社) .
関連項目
背景(MV)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 08:21 UTC 版)
MV集を単独で発売するのは、本作が初めてとなる。アルバム『SEE YA』収録曲のMVは、「太陽と埃の中で」を除きレコーディングで滞在していたロンドンで主に撮影された。また、CHAGEのバンド"MULTI MAX"のMVや徳永英明に提供した「心のボール」をセルフカバーしたMVも収録している。
※この「背景(MV)」の解説は、「SEE YA」の解説の一部です。
「背景(MV)」を含む「SEE YA」の記事については、「SEE YA」の概要を参照ください。
背景
「背景」の例文・使い方・用例・文例
- 青空を背景にした富士山
- その絵は白い壁を背景にすると見映えがよい
- 私はその山を背景にして彼女の写真を撮った
- 事件の社会的および政治的背景
- 背景にある詳しい事情
- 背景説明
- 木々は空を背景に黒く浮かび上がっていた。
- 彼は紺色の背景に銀泥の月を描いた。
- 宗教や人種的背景は、いくつかの国に存在するが他の国には存在しないデモグラフィック変数の例である。
- 採用背景をよく理解してからA社の仕事に応募しなさい。
- 募集背景には高齢の従業員数の増加が含まれている。
- 退職給付会計導入の背景には日本の年金制度の様々な問題がある。
- 予想を上回る非農業部門就業者数増加を背景として市場の地合いは改善した。
- どうしてこの計画を立てた理由の背景を教えて下さい。
- この研究の背景
- なぜそのような考えになったのか、私はその背景を知りたい。
- 私はこの背景を鉛筆で描きました。
- この記事の背景にはナショナリズムがあると思われる。
- この記事の背景にはナショナリズムが見え隠れする。
- あなたはあなたの研究の背景となる理論を示す必要がある。
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