ヤマザキショップをこよなく愛する男がいる。
時間があればもっぱらヤマザキショップを巡るという彼。
近くに大手コンビニがあっても目もくれず、ヤマザキショップをひいきする。
何がそんなに彼を惹きつけるのだろうか。
デイリーヤマザキとは違う
ヤマザキショップ(Yショップ、ヤマザキYショップとも呼ばれる)。
ホームページによれば、山崎製パンがフランチャイズ方式で中小小売店の活性化を支援する小売店業態とある。
しかし大手コンビニに比べその評判はあまり芳しくない、というのが一般的な意見かもしれない。
そんなヤマザキショップを暇さえあれば巡ることを趣味としている男がいる。
ヤマザキショップの一体何がそんなに彼を惹きつけるのか。
「一緒に来てみればわかりますよ」
そんな言葉から、彼に密着することになった。
「あれ?デイリーヤマザキとは違うんですよね?」
そう尋ねると食い気味に
「全然違いますよ!」
と怒気を含んだ声が返ってきた。
何か地雷を踏んでしまったようだ。
ヤマザキショップファンの朝は早い
午前6時。
起きると顔も洗わずに道路地図を眺めるヤマザキショップファン。
見ると道路地図にはびっしりと付せんが貼られている。
これは一体…?
「各地のヤマザキショップを巡るため、所在地を道路地図に付せんでマークしてあります」
「ヤマザキショップは大手コンビニのように公式サイトに店舗一覧や店舗検索の機能はないんです。その点、このマップルさんの道路地図ならヤマザキショップの所在地が拾えるので重宝しています」
「とはいえ完全に網羅されているわけではないですし、新規出店もあったりするので、インターネットの情報や目撃情報などを追加でマーキングする感じですね」
なるほど、アナログな仕事である。
ヤマザキショップの訪問に密着
身支度を整えた彼のヤマザキショップ巡りに着いて行ってみよう。
この日訪れたのは新潟県内のとあるヤマザキショップ。
到着するなり外観を多方向から撮影する彼。
「言うまでもないですが、同じヤマザキショップでも外観に違いがあるんです。こちらの店舗は看板部分が白地ですが、ラインのものもありますし、幌(ほろ)で覆われているのもありますよね」
店内に入り、商品や店の構造をくまなくチェックするヤマザキショップファン。
「原則店内は撮影しません」
「撮りたいな、とは思うんですけど、ヤマザキショップって基本散らかってたりすることが多いんですよ。空の段ボールが置きっぱなしとか、レジの上がゴチャゴチャしてるなんて珍しくない。そんなところがヤマザキショップらしくていいな、撮りたいな、とは思うんですけど、お店の方がカメラを向けているのを見て『ネットに上げられるんじゃないか、叩かれるんじゃないか』って不安に思わせてしまうのでは、と」
お店への気遣いを見せる彼にファンとしてのヤマザキショップへの愛が伺い知れた。
車内に戻ると店内の特徴をメモするヤマザキショップファン。
「このお店はホットスナックが充実していましたね。ホットスナックが充実しているというのはヤマザキショップでは当たり前ではないので」
「たこ焼き串ってないじゃないですか、あんまり。そういう店舗ごとのオリジナリティが最高におもしろいですよね。同じヤマザキショップという括りなんだけど、扱う商品がまったく違うっていうのが」
「あるお店では山菜売ってたり、あるお店では店頭で焼きまんじゅう焼いてたり、ラーメン出前したり… そういうフリーダムさがヤマザキショップの魅力だし、ヤマザキショップを巡る理由の一つですね」
「あとは路面店だけじゃなくて大学とか市場とか、施設に入っている店舗とかも多岐に渡っていて、深入りするとキリがなくなります」
メモに残した訪問した店舗の特徴は自宅に帰った後、パソコンに転記するそうだ。
続いて訪れた店舗はロールカーテンが下りており、営業していない模様。
「こういうことも多々あります。しかも訪れた日がたまたま定休日なのか、お店を畳んだのかもわからない店舗っていうのもあったりして。行ってみてやってないっていうのも、それはそれでヤマザキショップ巡りの魅力を引き立てるスパイスなんですよね」
定休日や閉店さえも受け入れるとは、ファンの道は深い。
ヤマザキショップファンのアイデンティティ
好きになったきっかけを聞いてみた。
「幼い頃、親父と出かけたときに何度かヤマザキショップに寄ったことがあったんです。そのときはなんか、セブンイレブンとかのコンビニとは違うなーってぼんやり思ってて。たしかプロ野球チップスを買ってもらって、すごいうれしかった思い出があるんですけど」
「それから大学生になってから旅行先の宮城県の七ヶ浜でヤマザキショップを見かけたときに、幼い頃行った店舗とは別なんですけど、『あっ!』って思って。まさに恋みたいな感じでしたね」
「それから出かけた先でヤマザキショップがあったら寄るようにして、だんだんとヤマザキショップ自体が目的地になりましたね」
最後にこれからの目標とヤマザキショップへのメッセージを聞いてみた。
「目標?それはもちろんこれからもヤマザキショップを巡り続けることです。どこにどの店舗があるかはっきりしない分、それが宝探しみたいなんです。もしかしたら全店舗の0.01%も巡ってないかもしれない。だから、まだ見ぬ財宝を求めて、これからも楽しみは続きます」
「この時代、大企業の傘下とはいえヤマザキショップもどうなるかわからないじゃないですか。でも、ヤマザキショップには変に垢抜けたりしないで、このまま変わらないでいてほしいですね」
ヤマザキショップがヤマザキショップである限り、彼の旅は続く。
ヤマザキショップを愛する男、その正体は…
以上、インタビュー風にお届けしてきたが、ヤマザキショップファンとは筆者自身である(マッチポンプですいません)。
ヤマザキショップのブログもやっているのでぜひご覧あれ。
(→「ヤマザキショップの世界」)
このエントリでヤマザキショップの魅力が少しでも伝わればファン冥利に尽きるというものである。