やすだ 😺びょうたろうのブログ(仮)

安田鋲太郎(ツイッターアカウント@visco110)のブログです。ブログ名考案中。

2019-01-01から1年間の記事一覧

気楽に行こうぜ、のすすめ

むかしむかし、あるところに和泉元彌というたいそう人気の狂言師がおったそうじゃ。ある冬のことじゃった。元彌は大和国の公演に一刻(2時間)以上も遅れてやってきた。聞けば同じ日にテレビに出演しておったからだそうで、村人たちはそうなることがわかって…

薀蓄はつらいよ

ツイッターでもブログでも薀蓄を売りにしているので、いちおう頑張って他人の知らなさそうなことを云うのだが、なんでも言えばいいというものでもない。ただ単に、 「ツチノコみたいに見えるネコの写真を投稿する“ツチネコ”というネットミームがあるんだよ」…

一杯のしなそば

物書きが行きつけの大衆食堂の話を書いていると残念な気分になる。 なんというか、誰でも行く場所だし、ネタ元としてその人の専門性や個性がなにも発揮されていないというか、またそこで拾える話というのも「庶民の一風景」みたいな、ちょっと笑えたりほっこ…

あの頃、書くことが「居場所」だった

その昔、書くことが居場所だったことがある。 大学一年生の頃だ。パソコンの講義に使うとやらで半ば強制的に買わされたノートパソコンを持ち歩き、講義と講義の合間に、あと家に持ち帰っても延々と、取り憑かれたように「何か」を書きつづけた。 その「何か…

ウヨクに勝ちたいサヨクとサヨクに勝ちたいウヨクのために

選挙時のツイッターほど憂鬱なものはない。質の低い与党支持者と質の低い野党支持者がポリシーもなにもないきわめて下品かつ煽情的なプロパガンダツイートを濫発するからだ。最もお手軽で脳味噌からっぽのネット運動家にも出来るのは、プロパガンダ用の画像…

友達のつくりかた

友達が欲しい、出会いはあるけれど友達にまで発展しない、友達になったとしても続かない、孤独だ、というのは普遍的な悩みだと思います。そこで、どうすれば少しでも友達が出来やすくなるのか、より強固で持続的な友情を育めるのか、ということを今回は書き…

職業・教養・いかに生きるか

自分って物事を知らないよなあ、とこの頃ひしひしと感じる。というのも、ふつう人は仕事を通じて世間を知り、読書を通じて直接体験できないことを知り、それらが両眼のようになって物事を立体的に把握できる……とするならば、僕は仕事でも本、家でも本なので…

”X”世代のスラングたち

ダグラス・クープランド『ジェネレーションX』といえば、90年代アメリカを代表するカルトノベルの雄だ。 これは同国における”X”世代(日本でいう「しらけ世代」「新人類」に該当する)の青春小説であると同時に、リキテンシュタイン風のイラストやアフォリ…

オナニーもできやしない

※注意! このブログは中年男性のオナニーについて触れています。苦手な方はブラウザの「戻る」ボタンを押してください。 ところで、これまでの諸研究は、一番重要なことを不当に無視してしまっているのではないだろうか。それらが言及する人間の性、そして、…

「出会いそこない」だけが人生だ

繰り返し観る夢は、その人の人生における過去の「出会いそこない」であるというラカン派の考えを読んで、「ああ、やはりな」と思った。 だがそれだけではない。そうやって繰り返し観る夢こそが、起きているときの「現実」以上に真の現実の感触を与える、いわ…

「あいまい力」について(『出世の道』を題材に)

ベロアルド・ド・ヴェルヴィル『出世の道』(1610。執筆は1590頃)はとても奇妙な本だ。どのくらい奇妙かというと、そのとぼけぶりは手前の蔵書中ではヨハネ・パウリ『冗談とまじめ』を凌いで堂々首位の栄冠を勝ち取るほどで、けれど面白いかどうかというと微…

「逃げてもいい」「弱音を吐いてもいい」って本当ですか?

逃げてもいいんだよ、弱音を吐いてもいいんだよ(でもその責任はとらないよ) カッコ内は幻聴ですが、「逃げてもいいんだよ」「弱音を吐いてもいいんだよ」みたいなことは毎日のように耳にする。けれども、ちょっと紋切型っぽくもある。そこで検討を加えてみ…

哲学者の新しい服(或いはサンタグムの闘争)

『現代思想 特集=<消費社会>の解読』 (1982)に掲載されている上野千鶴子の論考「商品 差別化の悪夢」を読んだ時は、「衝撃」というのは云い過ぎだがかなり興味深いことを書いているなと思った。上野はそこで、言語学における「サンタグム」と「パラディグム…

羞恥心文明の衝突

僕の好きなフランスの小噺に、次のようなものがある。 年よりの司祭が、警察官をたずねて、もっときびしく風紀をとりしまってくれとたのむ。わけを聞いてみると、 「牛飼いの娘たちが、所もあろうに司祭館の前の川で、すっぱだかになって水あびをしているの…

上野千鶴子さんにジジェクのことを質問してみたこと、あるいは性被害を語るときの問題(読書日録より)

某月某日 呉智英『知の収穫』に収録されている「読書日録」のなかに、石光真清『城下の人』について述べた次のようなくだりがあった。 「この本には、著者の年齢を始めいくつかの不自然な点が散見する。だが、このことは証言につきものの錯誤や主観性の表れ…

「詳しさのようなもの」について

なにかニュースを見て「こんな不正は許せない」とか「こんな良い活動をしている人がいるんだ」などと思っても、念のためネットで検索すると――ある種のホットな話題ではとくに顕著だが――さまざまなディティールや背景、「同業者のみが知る事情」、真偽の不確…

夢の意味について

夢分析には学生の頃から興味を抱いてきたが、じつに数多くの流派が存在する世界であり、また本質的に非アカデミックなところがあるように思う。手元のいくつかの本から著者の経歴を抜き出しても、学位を持ち、何らかの大学との繋がりを持っているものの、基…

六道、獣人、相模原 あるいは人間の「無」条件について

以前、どこかのお坊さんの説法集を眺めていたら、次のようなことが書いてあった。記憶を頼りに書く。 「悪いことをしたら報いを受けるなんて嘘じゃないか。先日そこのお地蔵さんに立小便したけれど、それから何も悪いことは起きていない」 こう云う者がいる…

ある錯誤のパターン 必要条件と十分条件

たとえば「ロシア人は背が高い」ことを証明するためにはどうすればいいだろうか。背の高いロシア人を連れてきても無駄である。背の高いロシア人を100人連れてきても同じことだ。 「ロシア人は背が高い」という命題にたいし「背の高いロシア人」は必要条件…

うるさがり屋のクラシック

偏見だ。当然のことながら。 モーツァルトはうるさい。 もちろん、西洋音楽史のなかでモーツァルトが比類なき天才とされていることを知らないわけではないし、西洋音楽史の基準に疑問をさしはさむものでもない。だがそれはそれとして、僕にはモーツァルトの…

「人間関係のリセマラ社会」について

【リセマラ】 リセットマラソンの略語。スマホゲームにおいてインストールとアンインストールを繰り返す行為のこと。 ほとんどのスマホゲームは、最初のチュートリアルを終了すると何回かレアガチャを回すことができる。そこで高レアリティの強キャラを当て…

休日を迎えるあなたへの手紙

いま、ひとつの休日の終わりにこれを書いている。新しい休日を迎える自分に充てて。今度こそしっくりくる一日を過ごして欲しいからだ。 けれど、具体的にどうしろということは云えない。もしうまい方法がわかっていれば、今日だって素敵な休日になったはずだ…

この記事もモテるためである(『すべてはモテるためである』書評)

すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂) 作者: 二村ヒトシ,青木光恵 出版社/メーカー: イースト・プレス 発売日: 2012/12/02 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 125回 この商品を含むブログ (36件) を見る 0.はじめに 1.二村ヒトシはフロイト派であ…

世界を「読む」という欲望について

高山宏『殺す・集める・読む』は文庫本ながら*1 彼らしい稀有壮大な仮説に満ちた文化史的ミステリー論だ。冒頭を飾る三つの論文はシャーロック・ホームズについてのものだが、そのなかで高山は、十九世紀末にピークとなった推理小説ブームの土壌である当時の…

雑誌、この猥雑なもの

1.余剰としての雑誌 「週刊誌の鬼」の仇名で知られ、池島信平や花森安治と並び称された雑誌編集者の扇谷正造は、『週刊朝日』の編集長時代、大阪を訪れたさい地元の有力販売店の店主に「あなた、人を訪問される時、どこからお入りになりますか」と尋ねられ…

新聞は必要か?

僕はここ何年も、新聞を取ったりやめたりを繰り返している。 取るときはずっと購読するつもりで取るのだが、しばらくたつとあまり読まなくなり配達所に取りやめの電話をかける。でもまたちょっとすると再開する。毎度のことで気恥ずかしいので、電話の態度は…

商品として見た『欲望会議』(シバエリ増量中)

欲望会議 「超」ポリコレ宣言 作者: 千葉雅也,二村ヒトシ,柴田英里 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/12/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る こんにちは、安田鋲太郎です。 『欲望会議』、話題になってますね。僕も読みました。ツイッタ…

正月に一人ぼっちで伊勢エビを食べた話

妹が伊勢エビを送ってきた。 昨年結婚した妹は、年末年始を先方の実家で過ごす。そこから家ぐるみの年賀で伊勢エビを送ってきたわけだが、前日にメールで「父と三人で食べてね」という連絡があった。我が家は母がすでに亡くなっており、僕は実家を出ている。…