tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

2018-01-01から1年間の記事一覧

ガロア表現とChebotarevの密度定理の使い方

好きな証明 Advent Calendar 2018 の13日目の記事です。 好きな証明 Advent Calendarということで,私が今年になってから勉強し始めた「ガロア表現」という分野の定理の中で,特に面白いと思った証明を紹介したいと思います。

パスカルの三角形にたくさん出てくる数: 3003

この記事は 日曜数学 Advent Calendar 2018 の 1日目の記事です。 今日から12月、今年も アドベントカレンダー の季節がやってきましたね!毎年12月になると、さまざまなテーマで持ち回りでブログ記事を書き合うお祭りがはじまります。それがアドベントカレ…

「月を入力すると日を返す多項式」と中国剰余定理

「月を入力すると日を返す多項式」の話が、Twitterのタイムライン上で話題になりました。 togetter.comどんな話題かというと、多項式 を以下のように定義したとき この に を代入すると、となり、月を入力すると日を返す多項式になっています!すごい! こん…

「インテジャーズ イン 仮面ライダービルド」関連記事紹介(tsujimotter編)

10/6に開催されたMathpower2018というイベントにおいて「インテジャーズ イン 仮面ライダービルド」という対談企画が開催されました。tsujimotterは、数のエンターテイナーの関真一朗さん(id:integers)と共演し、1時間半の講演をしてきました。 写真提供…

超幾何級数と超幾何定理

今日は 超幾何級数 のお話をしたいと思います。複素数 に対して、次の級数を考えます:なお、 はポッホハマー記号といって、 で定義されます。より一般の複素数に対しては、あとで定義するガンマ関数によって としても定義できます。細かいですが、上記の級…

続:7は合同数(計算機編)

ここ最近「合同数」について勉強し、理解度が上がってきました。そこで、今日は合同数の具体的な計算をやってみたいと思います。今回は「7は合同数」の記事に出てきた「あの三角形」を計算で求めてみましょう。 tsujimotter.hatenablog.com SageMathについて…

リーチ格子とキャノンボール問題

24 にまつわる「リーチ格子」と「キャノンボール問題」の興味深い関係について紹介します。

合同数問題と保型形式(タネルの定理の証明の概略)

先週の日曜に梅崎さんが主宰する「数学について話す会」というイベントが開催されてtsujimotterも参加してきました。 数学について話す会 数学について話す会は「参加者全員が自分の好きな話をする」という、他ではあまりないタイプのイベントでした。参加者…

セルマー群と2-descent法

を代数体として 上定義された楕円曲線の -有理点の群をモーデル・ヴェイユ群 といいます。モーデル・ヴェイユの定理によって、 が有限生成であることが示されていますが、その自由部分の生成元の個数、すなわちランクを決定するのは一筋縄ではありません。今…

Knightの問題

2021.04.22 お知らせ:こちらの記事につきまして、本質的な内容の誤りがありましたので修正させていただきました。元の記事の記述を赤字で残しつつ、訂正した個所を青字で記しております。以前のバージョンの記事をご覧になったことにより、誤解を与えてしま…

不思議な法則

ここに二つの2次無理数があります。 は、どちらも判別式が となる2次無理数となっています。 が2次無理数であるとは、 が既約な2次方程式の解であるということです。このとき、 を の判別式と言います。判別式が負であるような2次無理数を虚2次無理数と言い…

モジュラー曲線(2):合同部分群とモジュラー方程式

今日は、モジュラー曲線の話の続きを書きます。前回の記事 では、フルモジュラー群 の定めるモジュラー曲線 を考えましたが、今回は 合同部分群 に対応するものを考えたいと思います。tsujimotterは、この合同部分群の定めるモジュラー曲線の話がしたくてこ…

モジュラー曲線(1):モジュラー曲線の導入

今日から3回にわたって モジュラー曲線 をテーマとしたお話をしたいと思います。「モジュラー曲線?ああ、あれね」といった具合に、頭の中でイメージできるようになることを目標としたいと思います。以前から気になっていたトピックなのですが、先日日曜数…

虚数乗法論 (3):だから「虚数」「乗法」だったのか

虚数乗法シリーズ、第3回目です。今回は「虚数乗法」という呼び名に納得してもらえるような話をしたいと思います。記事を読み終わったみなさんが、タイトルのような感想を持つことを期待しています。シリーズの記事は、こちらのタグから検索ください。 tsuj…

格子 Z[√-1] に対応する楕円曲線

突然ですが、格子 に対応する楕円曲線の定義方程式を計算したくなってきました *1。参考記事はこちら: tsujimotter.hatenablog.com *1:本当は次回紹介予定の「虚数乗法」シリーズの記事に挿入しようと思っていたのですが、あまり本題と関係なかったので別記…

虚数乗法論 (2):楕円曲線の由来

虚数乗法シリーズ、第2回目です。シリーズの記事は、こちらのタグから検索ください。 tsujimotter.hatenablog.com 今日は、楕円曲線の基本的な事項についてお話します。この記事を読んだら、楕円曲線の由来が楕円関数からきていることが納得できるかと思い…

虚数乗法論 (1):イントロ

今回から数回に分けて 虚数乗法 について解説するシリーズをはじめたいと思います。その初回として「虚数乗法とは何なのか」「虚数乗法の何がおもしろいのか」について、かいつまんで紹介したいと思います。これを機に虚数乗法について興味を持っていただけ…

類体論のステートメント

今日は 類体論 のステートメント(主張)を述べて、その簡単な解説をしたいと思います。類体論のステートメントは、大きく2種類あって、 合同イデアル群を用いたもの イデール群を用いたもの があります。また、今回は単に「類体論」と言っていますが、 大…

補足:微分形式は2回外微分すると0になる

tsujimotter.hatenablog.comの記事の補足として、3次元閉多様体上の微分形式 に対して 回外微分を作用させると 0 になること、すなわちを示したいと思います。記号の使い方は、前の記事に準じます。綺麗に項が消えていく、気持ちの良い計算でした。その微分…

ストークスの定理

電磁気学やベクトル解析の講義で「ガウスの定理」や「ストークスの定理」「グリーンの定理」という法則を習ったと思います。これらの法則は一見別々のものに見えますが、微分形式を用いるとこれらの法則を統一的に扱えるという素敵なお話を紹介したいと思い…

名古屋で見つけた「双曲幾何学」

名古屋に行った際に,たまたま立ち寄った通りで「双曲幾何学」的な図形をいくつか見かけましたので,テンション上がって写真をパシャパシャしてしまいました!せっかくなので,ブログでもご紹介します。

部分分数分解の公式

Twitterを眺めていると、とても楽しいツイートが流れてきました。部分分数分解のこのテクニックなんだ。知らなかった。 pic.twitter.com/DwfFX3JSB4— やまごえ@情数教育 (@awellbottom) 2018年4月23日部分分数分解のテクニックだそうです。私も知りませんで…

積分定数とは何だったのか

数学ガール「ポアンカレ予想」を読んでいて(あまり本題に関係なく)感動したのが、不定積分 についてです。 の不定積分は、原始関数 を用いて以下のように表せます。ここで、 は積分定数です。高校の時からずっと機械的に(もしくはおまじない的に)「 は積…

S^1のド・ラームコホモロジーとフーリエ級数の定数項

数学ガールの第6巻「ポアンカレ予想」がついに発売されましたね。tsujimotterも夢中になって読んでいます*1。今回の数学ガールのテーマは「ポアンカレ予想」です。「位相空間」や「多様体」といった幾何学のトピックがたくさん登場して、普段は数論ばかりで…

ヘンゼルの補題と7進法人間

みなさん、ヘンゼルの補題 という定理をご存知でしょうか。ヘンゼルの補題は、整数論についてのとても重要な定理の一つです。 進数 という、現代の整数論において必須とも言える概念とも深く関連します。でも、ちょっとだけややこしい。今日はこの定理の紹介…

近況報告(2018年4月)

しばらくブログの更新をしていなかったので、久しぶりに私の日曜数学に関する近況報告をしようと思います。

センター試験2018 数学Ⅰ・数学A 第4問

2018年のセンター試験の問題が気になって 数学Ⅰ・A だけ解いてみました。どれもなかなか面白い問題だったのですが、特に 第4問 が個人的に面白かったので、今日はその問題の解説をしたいと思います。諸注意: 本ブログ記事は、日曜数学者 tsujimotter が趣味…

楕円曲線のハッセの定理

今日は、前回紹介した「合同ゼータ関数のリーマン予想(ヴェイユ予想)」の応用を紹介したいと思います。 tsujimotter.hatenablog.com 楕円曲線の 有理点の個数には面白い法則があります。 上定義された楕円曲線 の 有理点全体を としたとき、その位数はの不…

合同ゼータ関数のリーマン予想

2017年の2月ごろに「ゼータ関数 強化月間」と題して、ゼータ関数に関する記事を書いていたのを覚えている方はいますでしょうか。そのとき投稿できたのは結局2件だけでしたが、実はもう一つ温めていたテーマがありました。それは 合同ゼータ関数 についてです…

1009と二次形式

2018の素因数である 1009 について、面白い性質を見つけたので紹介します。1009と二次形式 は,1 から 10 までの に対して は整数の形で表すことのできる最小の素数である.これは、見事に 1009 という素数を特徴付ける性質になっていますね!!