memories of you

先日のエントリーで、 the length of time の界隈を掘り下げました。

2024年11月23日
the distance travelled by light in one year
tmrowing.hatenablog.com

時の長さを時計などの道具を使って数値に置き換えるのではなく、行動や出来事の持続で測っているとも言えます。

今年も訃報に打ちひしがれてきました。
その度に、その人にまつわるこれまでの記憶を思い起こしています。

今日はそんな記憶の話しから。

  • 私の記憶が確かなら…;私が覚えている限りでは

というような意味・文脈で使う英語表現としては、

to the best of my memory
to (the best of) my recollection
if I remember correctly
if I remember right(ly)
if (my) memory serves (me)(correctly[right])
as far as I (can) remember

などを見聞きするかと思いますが、使用頻度はそれぞれそれなりです。

長い語句もあるので、まずはSKELLで検索。
数字は100万語当たりの生起頻度です。

to the best of my memory 0.01

0.01ということであまり使われていない表現ですね。

to the best of my recollection 0.02

0.02は少ない方ですが、先ほどの memoryと比べれば約2倍ですから。

to my recollection 0.03

このシンプルな表現で、少し増えてきた感じ?

if I remember rightly 0.07

倍増以上!

if I remember right 0.08

rightとrightlyでは、rightがやや優勢ですが、それほどの差はない印象。

if I remember correctly 0.29

これはもう段違い、ケタ違いです。

if my memory serves 0.07

後ろに続く語句で下位分類しなければ結構高頻度と言えるでしょう。

as far as I remember 0.06

as far as I can remember 0.06

canの有無で頻度は変わらず。

Ngram Viewerで

全体

ç±³

英

そこからベンチマークを拾って、as far as I (can) rememberと比較

全体

ç±³

英

to the best of my memory や to the best of my recollectionは6語以上となって、Ngram Viewerでは検索できないので、最後にCOCAでヒット数の比較を。

to the best of my memory

to the best of my recollection

to my recollection

if my memory serves

as far as I can remember

as far as I remember

こうして見てくると、if I remember correctlyはケタ違いなので必須表現として使うにしても、as far as I (can) rememberを教えるのであれば、if my memory serves 界隈も教えておくのが良いのではないかと思います。

辞書の用例を見ておきましょう。

私の記憶が正しければその事件は1980年の秋に起こった
The incident happened in the fall of 1980, if my memory serves me well [correctly, right].(!if memory servesともいえる)
If I remember correctly [rightly], the incident happened in the fall of 1980. (W和英)

私の記憶が正しければ, 彼女は3年前に高校を卒業したはずだ
If 「I remember [my memory serves me] correctly, she graduated from high school three years ago. (G和英)

あの事件が起きたのは確か3年前のことと記憶している(→記憶が正しければ)
If 「I remember correctly [OR my memory serves me well], that (incident) happened three years ago. (O-LEX和英)

以上3例はどちらも「和英」。多くの学習用「英和」辞典で、このif (my) memory serves (me) を「成句」として取り上げていますが、文用例はありません。

I first went to Italy in July 1978, if my memory serves me right.
私の記憶が正しかったら初めてイタリアへ行ったのは1978年7月だった (クラウンイディオム)

If memory serves me right, we arrived on June 22, which was a Tuesday.
私の記憶に間違いがなければ私たちは6月22日の火曜日に到着した (Oxfordコロケーション)

一方、as far as I (can) rememberは学習用英和にも文用例があります。

As far as I (can) remember, he was a nice man, really.
私が覚えている限り,彼は本当にいい人でした (O-LEX2nd)

It's true, as far as I can remember.
私が記憶する限りではそれは本当のことだ (コンパスローズ)

He's never visited us as far back as I can remember.
覚えている限り,彼は私たちに会いに来たことはない (O-LEX 2nd)

こちらはfar単独ではなくbackとのセット。rememberにはcanつきですね。

As far as I can remember, this is the third time we've met.
私の記憶ではお会いしたのはこれで3度目ですね (Oxford類語)

To the best of my knowledge [memory], Kazu is not married yet.
私が知っている[覚えている]限りでは, カズはまだ結婚していません
(≒ As far as I know [(can) remember] ...).  (W)

このWisdomのパラフレーズは、使用頻度を考えると要再考かと。

副詞のfarと記憶の結びつきでは基本/根底となる筈の、次のような用例が辞書では少ない印象です。

He could remember events far back in the past.
はるか昔の出来事を思い出すことができた.(ランダムハウス英和)
私はそんな昔のことまで覚えていない
[=そんな昔まで思い出せない] I can't remember that far back. (G和英)
I asked him how far back in his life he could remember. (COBUILD中級)
(私は彼に、人生のどれくらい昔のことまで覚えているかと尋ねた。)

The accident happened farther back than I can remember.
その事故は私が思い出せないほどずっと前に起こった (G6)

G6の記述には、この語義では「furtherの方が普通」とあるのに、用例はfartherのものをデジタルプラスで追加しています。紙の辞書の方にはこの用例自体がありませんけど…。

このように実例に触れ、丁寧に観察し、読み比べ理解を深めていても、このas far as I (can) rememberが記憶にあるが故に、次のような例で苦労したりするのが、学習者の「あるある」ではないでしょうか。

In France, cheese and wine have been considered natural allies for as long as people can remember. This view remains valid today, but we must not forget bread, which cements the union.
フランスでは物心ついたときから、チーズとワインは自然の盟友と考えられてきた。この考え方は今日でも有効だが、この結びつきを強固にするパンの存在も忘れてはならない。

第2文の、動詞としてのcementも要注意ですね。

Most experts agree that the optimum number of hours is eight, and this has been accepted as common sense for as long as I can remember. However, I was young once and I know that most of you get much less sleep than that ― and in some cases it will be affecting your schoolwork.
ほとんどの専門家は、最適な睡眠時間は8時間であると同意しており、これは私が物心ついたときから常識として受け入れられてきた。しかし、私もかつては若かったので、ほとんどの人がそれよりもずっと少ない睡眠時間しかとっていないことを知っている。

ここでの “for as long as …” は、あくまでも「期間」を表すもの。

  • for a long time

とか

  • for so many hours

などと同じ副詞的表現ですね。
流石に今日は長くなったので、この辺にして、続きは、また日を改めてからにしましょう。

本日のBGM: Whatsername - demo (Green Day)

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