DC-DCコンバータ|設計編
昇圧型DC-DCコンバータの電流経路
2020.04.14
この記事のポイント
・基板レイアウト設計において回路の電流経路と流れる電流の性質を理解することは重要(昇圧型DC-DCコンバータに限らない)。
・スイッチングMOSFETのオンとオフ時の電流の差分の系は、基板レイアウトにおいて非常に重要で最大限の注意を払う必要がある。
昇圧型DC-DCコンバータの電流経路
昇圧型DC-DCコンバータに限りませんが、基板レイアウト設計において回路の電流経路と流れる電流の性質を理解することは重要です。具体的なレイアウトに入る前に、昇圧型DC-DCコンバータの電流経路を確認しておきます。
スイッチングトランジスタQ2がオン時の電流経路
以下の回路図は模式的な昇圧型DC-DCコンバータを示しており、赤色の線はスイッチングトランジスタQ2がオン時に流れる主な電流を表しています。CIBYPASSは高周波デカップリング用コンデンサで、多くの場合小容量のセラミックコンデンサが使われます。CINは主に安定化を目的としたコンデンサで、比較的大きな容量になります。スイッチングトランジスタQ2がオンした瞬間に急激に流れる電流の大部分はCIBYPASSから供給され、次にCINから供給されます。入力電流がそれほど大きくない場合には、CINはCIBYPASSにマージし1つのコンデンサで兼用することが可能です。緩やかな変化の電流は、入力電源から供給されます。この期間に、インダクタLに電流エネルギーを蓄えます。
スイッチングトランジスタQ2がオフ時の電流経路
次に、スイッチングトランジスタQ2がオフ時の電流の状態を示します(図中赤線)。インダクタLは、スイッチングトランジスタQ2がオフしても直前の電流値を保持するように働きます。インダクタLの左端はVINの電圧に固定され、VOUTに電圧を継ぎ足すように電流を供給し続けるので、VOUTはVINより高い電圧になります(昇圧動作)。したがって、スイッチングトランジスタQ2のオン時間が長く、インダクタLに蓄積された電流のエネルギーが大きいほど、大電力を取り出せます。しかし、むやみにスイッチングトランジスタQ2のオン時間を長くすると、出力側に電力を供給する時間が少なくなり、効率が悪化します。そのためオン・オフの時間比(デューティサイクル)の最大値に制限を設けています。高周波デカップリング用コンデンサCBYPASSは、出力電流が小さい回路ではCOUTに周波数特性がよいセラミックコンデンサを使うことで兼用することができます。
スイッチングトランジスタQ2のオン時とオフ時の電流の差分
最後に、スイッチングトランジスタQ2のオン時とオフ時の電流の差分を示します(図中赤線)。スイッチングトランジスタQ2がオフからオンへ、オンからオフへ変化する度に、赤線で示した経路の電流は激しく変化します。この系は、変化が急峻なため高調波を多く含んだ波形が現れます。この差分の系のレイアウトは、基板レイアウトのキーポイントであり最大限の注意を払う必要があります。
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