DC-DCコンバータ|基礎編

昇圧電源の負荷短絡によるトラブルと保護回路 昇圧電源の出力短絡保護回路

2023.03.21

この記事のポイント

・タイマーラッチ式保護は電源IC自体を短絡から保護することができるが、インダクタや外付けのハイサイドスイッチには無効となる。

・もっとも簡単な短絡保護は入力側にヒューズを設けることだが、自動復帰は不可能となる。

・半導体スイッチによる過電流遮断は再起動が可能となるが、複雑なスイッチ制御が必要となり外付回路で構成するのは困難である。

・電源回路の外側の入力か出力に過電流制限機能を持ったロードスイッチを接続するのが、もっとも簡単な再起動可能な短絡保護である。

2つ目の「昇圧電源の出力短絡保護回路」についてです。

昇圧電源の出力短絡に対する保護の例として、「タイマーラッチ式短絡保護」、「短絡保護回路の追加」、「半導体スイッチによる過電流保護回路」、「過電流制限機能を持つロードスイッチの接続」の4つの方法を示します。

タイマーラッチ式短絡保護

昇圧型DC-DCコンバータでVOUTがVINより低くなり0Vに近い状態になると、インダクタと整流ダイオードには過大な電流が流れてしまいます。この状態でローサイドスイッチがオンすると、最大定格を超える電流が流れてローサイドスイッチが焼損してしまうことになります。これを防止するためにタイマーラッチ式短絡保護を持つ製品があります。このタイマーラッチ式短絡保護回路は、出力電圧の大幅な低下を検出すると短絡状態の発生と判断して、タイマーを起動させスイッチング動作を一定期間停止させます。スイッチングにインターバルを設けることにより、過電流による発熱に冷却時間をあたえることでダメージの蓄積を防止し、ローサイドスイッチの過熱による焼損から保護します。
*タイマーなしでラッチだけかけてスイッチングを停止、再起動には手動操作が必要な製品もあります。
しかし、インダクタと整流ダイオードに無制限に電流が流れるのは阻止できないので、これらの部品が焼損してしまうのは防止できません。電源IC自身の保護としては機能しますが、電源回路としての保護機能にはなりません。しかしこの機能がない場合、電源の焼損事故が発生した時に、電源ICが原因で焼損したのか、負荷短絡による過電流で焼損したのか、という原因の究明には役立つ機能と言えます。

短絡保護回路の追加

ダイオード整流やバックゲート制御を持たないFETによる同期整流の場合は、短絡による過電流の発生を防止できません。焼損事故の発生を防ぐには何らかの外部回路を追加して電流経路を遮断する必要があります。もっとも簡単な方法はヒューズを追加し過電流発生時に電流経路を溶断により遮断する方法です。ただし、どこにヒューズを付けるかという点に注意が必要です。短絡時に発生する電流の変化量としては入力側の電流よりも出力側の方が大きいので、ヒューズの電流定格と確実な溶断のためには出力側の方が確実とはなります。しかし出力側にヒューズを使用すると短絡による過大な電流が流れた後、出力が無負荷になるため、流れていた電流が出力コンデンサを充電して電圧が急上昇します。どこまで電圧が上昇するかは、インダクタが蓄積していたエネルギーと出力コンデンサの容量に依存しますが、最悪ケースでは昇圧コンバータのローサイドスイッチの耐圧を超過して、ローサイドスイッチが過電圧破壊に至る可能性があります。

ヒューズによる過電流保護

確実に回路保護ができるのは、入力にヒューズをつけて電源供給を遮断する方法です。供給が断たれるので過剰なエネルギーは短絡した負荷で消費されます。ヒューズによる保護回路は確実かつ、もっとも安価な方法で、負荷短絡に対して焼損、発火発煙などの2次災害を防止できます。しかし、短絡が一時的な障害で、短絡状態から復帰しても電源供給は遮断されているので自動復旧することはできず、ヒューズ交換などのメンテナンスが必要となります。

半導体スイッチによる過電流保護回路の考察

短絡保護と自動復帰が必要な場合は、半導体スイッチによる遮断と復帰を行う過電流保護回路が必要となります。この場合も前述のヒューズと同様に、入力側に付けるか出力側に付けるかという検討が必要です。FETによるスイッチの場合、寄生ダイオードが逆向きになるように接続した、Back to Back接続により寄生ダイオードによる電流経路を遮断できます。しかしこの接続ではデッドタイム時の寄生ダイオードによるダイオード整流の機能が失われ、過電流時にオフするとインダクタの出力側が開放となり逆起電力による高電圧が発生して、ローサイドスイッチが過電圧破壊に至る可能性があります。

半導体スイッチによる出力側での過電流保護の注意点

単なるオン/オフ制御ではなく、個別のゲート制御による寄生ダイオードの制御とFETのリニア動作領域を使用した定電流制御などを行うことにより、出力側でも安全に短絡保護回路を構成することができます。ただし、出力電流検出、出力短絡検出、短絡電流制御、短絡からの復帰時の再起動制御などさまざまな制御が必要となりますので、これらの機能を成立させるには非常に複雑な外付け回路が必要となります。電源回路の設計を容易にするために、出力側で制御している昇圧電源の場合、ハイサイドスイッチだけではなく、寄生ダイオードのオンオフ制御と電流制御を行う制御回路をすべて内蔵した高機能な電源IC製品が選択されることが多くなります。

半導体スイッチによる出力側電流制御と入力側での過電流保護

これに対し入力側に遮断回路を設ける場合は、供給電流の定電流制限や遮断により電流増加を止められるので制約が少なく比較的簡単に構成できます。ただし、高速に電流遮断する場合、インダクタの入力側を高速に解放することにより発生する逆起電力が高電圧となるので、インダクタの入力側の電位が負電圧まで低下します。このため、負電圧がVDDへ印加されることによる電源回路の破壊を防止するため、インダクタ電流を還流させる還流ダイオードの追加が必要となります。

昇圧電源の入力か出力に過電流制限機能を持つロードスイッチを接続

昇圧型DC-DCコンバータに短絡保護機能を追加するには複雑な回路を必要としますが、入力か出力に電流制限機能や短絡保護機能を持つロードスイッチを追加することにより、過負荷や出力短絡時に過電流が流れて焼損事故が発生するのを防止することができます。出力側に付ける場合は、ロードスイッチが電流遮断を行った時にインダクタに蓄積された過剰エネルギーを処理する必要があります。ロードスイッチを出力コンデンサの後に付けることにより、出力コンデンサにエネルギーを吸収させて電圧上昇による過電圧破壊を防止できます。ただし、出力コンデンサは過剰エネルギーの充電による電圧上昇を抑えるために充分な容量を確保しておく必要があります。

ロードスイッチによる過電流保護

入力側に付ける場合には電圧上昇は発生しませんが、復帰時には電源回路の入力コンデンサと出力コンデンサが完全放電している状態となります。その場合、再起動に入出力のコンデンサへの充電による突入電流が流れるので、ソフトスタート機能を持ったロードスイッチを使用して突入電流を制限する必要があります。

【資料ダウンロード】 スイッチングレギュレータの基礎

降圧型スイッチングレギュレータを題材とし、その動作や機能などの基礎を解説しています。リニアレギュレータとの比較、同期整流とダイオード整流、制御方式、補助機能なども併せて説明しています。

DC-DCコンバータ

基礎編

設計編

評価編

応用編

製品紹介

FAQ

'; // 「目次」と「閉じる」削除 $('.toc-title').remove(); $('.toc-wrap').append($docHTML); // 前の記事と次の記事を取得(/js/common.js からコピー) if($('.js-pager-scope').length) { var $url = $(location).attr('href'); var $target = $('.c-list-side-link__sub-list-link[href="' + $url + '"], .c-list-side-link__list-item-link[href="' + $url + '"]').parent(); var $prev = $target.prev();//前の子記事 var $next = $target.next();//後の子記事 var $prevLink = $prev.find('.c-list-side-link__sub-list-link').attr('href'); var $nextLink = $next.find('.c-list-side-link__sub-list-link').attr('href'); var $parent = $target.parent().parent();//親記事 var $parentLink = $parent.find('.c-list-side-link__list-item-link').attr('href'); var $parentPrev = $target.prev(); var $parentPrevLink = $parentPrev.find('.c-list-side-link__list-item-link').attr('href'); var $parentNext = $target.parent().parent().next(); var $parentNextLink = $parentNext.find('.c-list-side-link__list-item-link').attr('href'); var $childPrev = $target.children().next().children("li:first-child"); var $childPrevLink = $childPrev.find('.c-list-side-link__sub-list-link').attr('href'); if ($target.length < 1) { return false; } //親子判定 if ($target.hasClass('c-list-side-link__list-item')) { // console.log('親記事'); if ($target.prev().length < 1) { // console.log('前の親記事なし'); $PREV = ''; } else { // console.log('前の親記事あり'); $PREV = $parentPrevLink; $PREVTITLE = $target.prev().find('.c-list-side-link__list-item-link').text(); } if ($target.find('.c-list-side-link__sub-list-item').length < 1) { // console.log('子記事のない親記事'); $NEXT = $target.next().find('.c-list-side-link__list-item-link').attr('href'); $NEXTTITLE = $target.next().find('.c-list-side-link__list-item-link').text(); } else { // console.log('子記事のある親記事'); $NEXT = $childPrevLink; } } else if ($target.hasClass('c-list-side-link__sub-list-item')) { // console.log('子記事'); //先頭.末尾.それ以外 if ($target.prev().length < 1) { // console.log('先頭の記事'); $PREV = $parentLink; $NEXT = $nextLink; // console.log('A'); } else if($target.next().length < 1) { // console.log('末尾の記事'); $PREV = $prevLink; $NEXT = $parentNextLink; // console.log('B'); } else { // console.log('間の記事'); $PREV = $prevLink; $NEXT = $nextLink; // console.log('C'); } } if($PREV !== '' && $PREV !== undefined){ var prevElm = '
【前の記事】' + $PREVTITLE + '
'; } else { var prevElm = ''; } if($NEXT !== '' && $NEXT !== undefined){ var nextElm = '
【次の記事】' + $NEXTTITLE + '
'; } else { var nextElm = ''; } $('.toc-list').after('
' + prevElm + nextElm + '
'); $('.toc-toggle a').on('click', function(){ $('.toc-document').toggleClass('close'); $('.toc-nav').toggleClass('close'); }) } });