DC-DCコンバータ|評価編
損失の簡易的計算方法
2018.03.13
この記事のポイント
・電源ICのデータシートに効率曲線が提供されている場合、効率から簡易的に損失を計算できる。
前回、各部の損失を求め、それらを合計することで電源ICの全損失を計算する方法を示しました。今回は、簡易的という前提ですが、既存のデータを利用して電源ICの損失を求める方法を示します。
損失の簡易的計算方法
電源ICのデータシートには多くの場合、標準的な応用回路で測定した効率のグラフ(効率 vs 出力電流)が掲載されています。使用する回路条件とその効率曲線の条件が同じ、または近似であれば、自身の設計した回路においても、基本的にほぼ同じ効率曲線が得られると考えることができます。これを利用して、簡易的に損失を計算することができます。前回の計算例と同様に、MOSFET内蔵の同期整流降圧コンバータを例に使います。
最初に、効率と損失の関係を整理する意味も含めて、効率から損失を計算する式を示します。
ここで算出した損失は回路としての損失(効率も同様)なので、前回の計算例と同様に、外付けの出力インダクタのDCRによる導通損失(PCOIL)を差し引く必要があります。インダクタの損失については、こちらを参照してください。
この様に、効率曲線から概算の損失を算出することができます。先に外付けのインダクタの損失を除外することを記しましたが、もう少し厳密に言うと概算値には他の外付け部品やPCBの薄膜配線などの損失が含まれています。ただ、電源IC自体の損失はこの値より小さい(通常わずかですが)ことになるので、概算値と使用する分には特に問題はありません。
パワートランジスタが外付けの場合は、同じ考え方で概算することは可能ですが、いずれにしてもパワートランジスタの損失を別途求める必要がありますので、手間は個別に計算するのとあまり変わらないかもしれません。
最後に、計算値の端数は切り捨てではなく、基本的に切り上げてください。何桁まで利用するかは、全体の電力から有効(影響のある)な桁数を判断してください。これは誤差を安全側に持っていくためで、損失や発熱など負の要因の場合は要注意事項です。もちろん、可否の判断の場合はぎりぎりではなくマージンを考慮します。
【資料ダウンロード】 降圧DC-DCコンバータ 損失の検討
DC-DCコンバータ
基礎編
- 電源回路の代表的な7方式: 低雑音型から昇圧型まで!
- 昇圧型DC-DCコンバータのシャットダウン時の動作
- 昇圧電源の出力でのスイッチングノイズの低減 -はじめに-
- 昇圧型DC-DCコンバータの出力リップル電圧 -はじめに-
- 昇圧電源の負荷短絡によるトラブルと保護回路 -はじめに-
- 昇圧型DC-DCコンバータの最大出力電流 -はじめに-
- リニアレギュレータの基礎
- スイッチングレギュレータの基礎
- DC-DCの基礎 ーまとめー
設計編
評価編
-
損失の検討
- 同期整流降圧コンバータの制御IC消費電力損失
- 同期整流降圧コンバータのデッドタイム損失
- 同期整流降圧コンバータのゲートチャージ損失
- インダクタのDCRによる導通損失
- 電源ICの電力損失計算例
- 定義と発熱
- 同期整流降圧コンバータの損失
- 同期整流降圧コンバータの導通損失
- 同期整流降圧コンバータのスイッチング損失
- 損失の簡易的計算方法
- パッケージ選定時の熱計算例 1
- パッケージ選定時の熱計算例 2
- 損失要因
- スイッチング周波数を高めて小型化を検討するときの注意
- 高入力電圧アプリケーションを検討するときの注意
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その1
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その2
- 損失の検討 ーまとめー
- スイッチングレギュレータの特性と評価方法の概要
- 電源ICのデータシートの読み方:表紙、ブロック図、絶対最大定格と推奨動作条件
- スイッチングレギュレータの評価:出力電圧
応用編
- リニアレギュレータを使った電源設計のポイント
- LDOリニアレギュレータの並列接続とは
- リニアレギュレータの簡易的な安定性最適化方法
- 汎用電源ICで電源シーケンスを実現する回路
- リニアレギュレータを使った電源が起動しないトラブル事例1:手はんだによるICおよび周辺部品の破損
- フローティング動作のリニアレギュレータを使った電源設計のポイント
製品紹介
FAQ