DC-DCコンバータ|評価編
パッケージ選定時の熱計算例 1
2018.04.10
この記事のポイント
・損失を求めたのは熱設計を行うため。
・Tjが絶対最大定格を超えないように放熱対策をとる。
前回までは損失箇所を理解し、その損失を計算で求める方法を説明してきました。今回から、求めた損失から熱計算を行い、実使用条件で最大定格内にあるか否か、そして対処方法などを解説したいと思います。元々、損失(効率)を求める理由は、最終的にはICチップやトランジスタチップの接合温度Tjが最大定格を超えていないことを確認し、電源回路が要求条件下で確実かつ安全に動作すること確認するためです。
パッケージ選定時の熱計算例 1
「電源ICの電力損失計算例」で計算した結果を使います。確認のため、損失を計算した条件と損失の計算結果を示します。
熱計算は、最終的にICチップの接合温度Tjを求めることになります。ICのデータシートでは、許容損失のグラフが提供されていることが多いですが、許容損失も最終的にはTjに行き着きます。以下にTjの計算式を示します。この式は特別なものではなく、Tjを表す普遍的な式なのは言うまでないかと思います。
Tj=Ta+θja×P
Ta:周囲(雰囲気)温度 ℃、θja:接合部-周囲間熱抵抗 ℃/W、P:消費(損失)電力 W
計算に必要な情報として熱抵抗が必要になります。多くの場合ICのデータシートに条件とともに提示されています。以下は、データシートからの抜粋です。また、これらの条件での許容損失グラフも提供されています。
熱抵抗θjaが実装基板の層数によって異なることがわかります。今回は、1層基板を想定していたことで、「条件①」を使って計算をしてみます。
Tj=Ta+θja×P ⇒ 85℃+189.4℃/W×1.008W=275.9℃
Tjmaxは150℃ですので、結果は完全にアウトです。あえて式に数値を入れて計算しましたが、条件を並べているうちに、その結果は見えていました。許容損失グラフに加えてある損失1.008Wのラインは、すでに①の条件での許容を超えています。また、Ta=85℃のラインと①の交点は、①の条件時の許容電力を示しており、1.008Wはこれを遥に上回っているの一目瞭然です。さらに言えば、θjaが189.4℃/Wであるとわかった時点で、損失が1.008Wではすでに発熱だけでTjmaxの150℃を超えているので、実際のところはこの条件では使えないことが計算前からわかります。
しかしながら、この計算により「何を、どのくらい、どうすれば良いか」がわかりますので、計算は必要です。
さて、要求仕様を満足しつつ設計を完成させるためには、熱対策をしなければならないことが判明しましたので、次回は対策の例を説明します。
【資料ダウンロード】 降圧DC-DCコンバータ 損失の検討
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