軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

北京の『抗日記念館』の実態

今朝の産経新聞は中国が『愛国宣伝』を激化していると報じた.今日は盧溝橋事件記念日、『北京市郊外の盧溝橋近くにある抗日記念館は,展示を大幅に拡張して再オープン,記念行事を行う』という.1998年7月,私は北京を訪問して,盧溝橋事件の現場やこの記念館を視察した.
当時ここは拡張計画があるといっていたが,完成したのだろう.しかし,その展示品の殆どは『まがい物』であった.中でも最も気が重くなったのは,『正史を直視し,日中友好,永久の平和を祈る.1995年5月3日,日本国内閣総理大臣・村山富市』と書かれた揮毫だった.ケースに入れられ堂々と展示してあるその悪筆は,習字が正課だったであろう年配の者の書とは思えない物だったが,それはさておきこれによって『正史』が捻じ曲げられ,日中友好どころか,反日活動が盛んになったのだから,責任をとってもらいたいものである.
この展示は,中国の小・中学生に必ず見せられていたから,多分,「日中戦争の責任を侵略国日本の首相が認め謝罪した』と教えられているに違いない.更に悲しかったのは,日本から修学旅行に来たと思われる高校生達が,千羽鶴を寄贈していた事である.何ともはや日教組の謀略活動は,尾崎秀実並だと感心した.『抗日記念館があるなら,抗英記念館もあるのだろうな?』と聞くと,案内人は『香港にあります』と言ったが定かではない.
更に噴飯物だったのは,展示してある写真類のお粗末さであった.東中野教授がこれらの殆どが「捏造されたプロパガンダ写真」である事を暴いて出版したが,私が絶句したのは,多分上海事変で,国民党軍の誤爆によって破壊された百貨店入り口?と思われる石段に座り,呆然としている老婦人の写真であった.説明文は日本語・中国語・英語で書かれていたが.それには『日本軍はこの夫人を強姦し,殺して太ももの肉で餃子を作って食べた』とあったのである.
老婆には気の毒だが,怪我した彼女を『強姦』しなければならないほど,我が将兵が飢えていたとは到底考えられない.餃子だって当時の日本の食文化からは程遠い.今でこそ人気商品だが,当時我が将兵達は『うまい食物だ』と珍しがって『金を払って」食べた事は聞いた事があるが,老女の太ももの硬い?肉を『薄皮』に包んで蒸かして食べるなんぞ考えるだけで嘘だと分かる.
これは明らかに『自分達が人肉を食する』から『日本人も同じだろう』という思いこみから来ている.事ほど左様に欺瞞に満ちた『記念館』だが,日本大使館が抗議を申し入れたとは余り聞かない.だから『真実』だと中国人は考える.恐ろしい事に,万一北京オリンピックが開催されたら,世界中から集まる無知なジャーナリストやメディアが,それを信じて『4月の反日デモをやった中国国民の心情が理解できる』と書くに違いない.そうなった場合,世界各地の日本大使館が,いちいち反論するとは考えられないから,世界中に「日本人の『残虐さ』が宣伝される」ことになる.中国政府はその戦略を進行させているのであって、記念館を拡張し展示品を増加させているのはオリンピックで展示する準備に他ならない.日本政府は速やかに手を打つべきだが,郵政法案でそれどころではなかろう.北朝鮮に拉致されて30年間も放置された被害者達,南西方面で台湾までもが加入してきた領土紛争,勿論韓国との竹島,北方領土問題には誰も手をつけようとはしない.
せめて『軍事力』を行使しないで解決できる,このての『まがい物・記念館』を撤去させる外交努力をしてもらいたいものである.