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2012.12.17
2012年下半期読書猿ブログ内ベストセラーと記事についての回顧
ブログで2012年下半期(7~12月)に売れた書籍を紹介しながら、その時書かなかった(書き控えた)ことなどまじえて過去記事を回顧/紹介する、恒例の記事である。
今年の後半は、ふたつの対話もの、
・家庭環境と読書の習慣のこと/図書館となら、できること 読書猿Classic: between / beyond readers
・問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため/数学となら、できること/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers
の後始末のような記事で暮れた気がする。
1位 見える学力、見えない学力
この本は、対話のひとつ「家庭環境と読書の習慣のこと」の方の、後始末である次の2つの記事、
・読めないとはこういうこと→勉強できない子をあぶりだす5つの質問 読書猿Classic: between / beyond readers
・では、子どもの〈見えない学力〉地頭、読む力に親は何ができるのか? 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場したもの。
このブログの記事は大体そうだが、勉強だとかトレーニングが必要なことがずっと苦手で、おまけに回避しまくっていた自分に向けて書いているところがある。
勉強の仕方については、今知っているようなことはだいたい当時も知っていたけれど、勉強する理由だとか、人間の知識が互いにどんな風に結びついているかとか、全く身にしみていなかった。
よく「本を読む人間なら誰でも知っているようなことを、何故わざわざ書くのか?」と言われるけれど、「自分は知らなかったから」と答えるしかない。
ただ、この対話だけだと、「勉強推し」にとどまって、無責任な気がしたので、〈やり方〉についても書いておこうと思って、一連の後始末記事となった。
けれど「読むこと」について書くことは、どうしても越えがたい壁に突き当たる。
本当なら届けたい、まだ読み始めていない人は、そもそも読まない(届かない)。
そんな訳で、この本が出てくる記事は、〈学ばせる〉立場にいる人向けになってしまっている。
このブログは、基本的には〈自分でやる〉人向けに書いているつもりだから、記事の方向としては例外的なものだったけれど、むしろそのせいか、このリストで一番上に来ることになった。
2位 私もできる西洋史研究―仮想(バーチャル)大学に学ぶ
今卒論を書いている人には残酷すぎて推奨できない素晴らしい本と自分のために書かれた訳ではないテキストを攻略する読解の3ステップ 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
人文系のトレーニングは歴史研究者に任せればいいんだ、と言い切りたくなるほどの快著。
9位〜12位の本とまとめて、「読書猿が勧める新一年生パック」とかにしたいくらい。
200頁ほどの薄い本だが、ここのブログだと、あと5〜6回は記事が書けそうなほどネタの宝庫。
スルーしてしまったのがとりわけ惜しいネタは、ビザンチン帝国のヘタレな戦争ネタで、これは、今年の秋にネットでも少し話題になっていた井上氏の「西洋史学の現代的課題 : あるビザンツ史研究者の選択」(『歴史科学』 210)でもキモの話になっている。
3位 日本語練習帳
30日で達人級の実力がつく日本語トレーニング〈縮約〉はこうやる 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これも「家庭環境と読書の習慣のこと」の後始末記事で、一連の日本語ネタの一つ。
読むこと、それに考えることの基礎(ベース)を取り上げると、どうしても母語(第一言語)の話に触れることになる。
そして日本語の話を取り上げると、語彙や氏名の分布みたいな話もあるけれど、〈日本語の書き方〉にも話が向く。
文章の書き方となると、いつも「〜すべからずリスト」みたいなのになりがちなので、10年以上前のベストセラーから、トレーニングの話を取り上げてみた。
意味は通るように気をつけながら、他人の文章から言葉をどんどん削っていく、というのは、外国語についても実行できるし、効果が大きいように思える。
新聞の社説を読むなんて我慢ならない、という人がとても多かったが、フランクリンは別の日につくっておいた要約だけをみて社説の文章を丸ごと再生する、というトレーニングを行なっている。時々、元の社説より、良い文章が書けてほくそ笑んだりしたらしい。
4位 ぎりぎり合格への論文マニュアル
こう言い換えろ→論文に死んでも書いてはいけない言葉30 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
おそらく〈論文の書き方〉本の中でも、実はかなりの辛口な部類に入る本なのだが、前のめりの笑いが読む痛みを和らげる。
できれば論文を書き始める前に読んでおきたい。あちこちに埋められた囲み記事だけでも。
これまたネタの宝庫だけれど、時期が時期だけに、あまりデリケートなのは避けて、ダメな書き出しとそれへのコメントを紹介しよう。
5位 とりあえずの国語力
文章の型稽古→穴埋めすれば誰でも書ける魔法の文章テンプレート 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これも「家庭環境と読書の習慣のこと」の後始末記事で、一連の日本語ネタの一つ。
テンプレートものについては、人間知性への冒涜みたいにいう人もいるけれど、使うのも作るのも好きだ。
自分の経験から得た知恵を検証にかけようとすれば(そして誰かに手渡そうとすれば)、余分な要素を落としていって、どんな形であれフォーマットへ落とし込むことは避けられない。
6位 よくわかる文章表現の技術〈1〉表現・表記編
13位 よくわかる文章表現の技術〈2〉文章構成編
「文は短く」は俗説か?ー〈短文信仰〉を屠り、短文のレトリックと長文のロジックを取り戻すために 読書猿Classic: between / beyond readers
読む者を新しい知識に導きその心を惹きつけてやまない謎解き文のテンプレート 読書猿Classic: between / beyond readers
の記事から。
これも「家庭環境と読書の習慣のこと」の後始末記事で、一連の日本語ネタの一つ。
作家や新聞記者のような〈素人〉ではなく、プロパーの日本語研究者が書いた(従来、日本語研究者は何を禁欲していたのか、あまり書かなかった)文章技術書。
理論的であり、かつ、(個人の経験ではなく)実際に人びとはどのように書いているかというデータの裏付けもある。
7位 科学を志す人のための基礎数学
無料で自宅でやりなおす→小学校の算数から大学数学までweb上教材をリストにした 読書猿Classic: between / beyond readers
の記事から。
このあたりから、もうひとつの対話もの「問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため」の後始末記事。
〈数学推し〉だけだとなんなので、リソース紹介記事を書いたもの。
本の方は、小学校の算数レベルから微積分など高校+αまで、ついている予備テストをやれば、どの章は飛ばしていいか、どこの章のどの問題を勉強すればよいかを教えてくれる往年の名著(の復刻)。
これより前に、同じく対話もので、
凡人が数学を語学として学ぶ具体的な手続きを説明する/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers
というのを書いているのだけれど、そこでは「テキストは〈分かる〉系より〈解ける〉系」ということを言った。理由は、普通の数学書や数学を使った本は〈解ける〉人を前提に書いてあるので、〈解ける〉トレーニングをしておかないと、〈自明〉だから省略されている部分を自分で埋めることができなくて挫折するから。
記事にも書いたけれど、数学は分からない、分かるようになりたいというニーズは高くて、世の中には〈分かる〉系の数学入門書の方が圧倒的に多い。『科学を志す人のための基礎数学』とペアにして使えそうな〈分かる〉系の本としては、各分野ごとバラバラなだったのを一冊にまとめた次の本が小学校〜高校ぐらいまでカバーできる。
8位 算数・数学が得意になる本
誰もがどこかでつまずいた→小学校の算数から大学数学まで126の難所を16種類に分類した 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これも、「問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため」の後始末記事。
これから学ぶ人から、もう一度やりなおしたい人まで、一読の価値あり。
できれば、こちらの記事も合わせて。
小学校から算数を追放すると1/4の授業時間で成績を上がった話 読書猿Classic: between / beyond readers
Mathematics can wait. 数学は待ってくれる。
さて、9位から12位は、このブログのすでに定番書、というか以下の意味で、BIOSにあたるような基本書。
ブログのネタ出しにこっそり使っているトライアドは、レファレンスワーク(誰かが知っていることなら知ることができる)/学習科学(誰かにできることなら学ぶことができる)/問題解決(定義できるなら解くことができる)の3つなので、この4冊はきれいに並ぶ。
レファレンスワーク=『図書館に訊け!』(『本を読む本』は、蛇口から先の話だけど)
学習科学=『人はいかに学ぶか』
問題解決=『いかに問題をとくか』
9位 図書館に訊け!
10位 本を読む本
12位 人はいかに学ぶか―日常的認知の世界
20位 外国語上達法
の4冊は、
よく学ぶための7冊/学習技術のシルバーリングス 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
11位 いかにして問題をとくか
ポリアの名著『いかにして問題をとくか』のチートシートをつくってみた 読書猿Classic: between / beyond readers
ポリアだけじゃない問題解決の考え方/勘どころを教える数学の11冊 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
14位 アメリカの小学校に学ぶ英語の書き方
Four Square Writing Methodを紹介した、
物事を論じられるようになるスモール・ステップス→米国の小学生が使う思考ツール 読書猿Classic: between / beyond readers
という記事に登場。
これも実は「家庭環境と読書の習慣のこと」の、こっそり後始末記事。
紙を3回折るだけでできるFour Square Writing Methodは、シンプルで小さな子用だから、日本語にもそのまま持ち込める。成長しても、シームレスにパラグラフ・ライティングに活用できるのでオススメ。
15位 When Are We Ever Gonna Have to Use This?
100の職業でどんな数学を使うのか1枚の表にまとめてみた 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これも、「問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため」の後始末記事。
書籍の表紙は、誰も聞いていない数学の授業風景で、生徒の「こんなもの、何時使うんだよ?」というつぶやきがそのまま書籍タイトルになっている涙目もの。
元々この本は、教科書に頻出するあまりに非現実的な応用問題と、それにしらけている生徒と、それを見ないことにしている教師とに耐えかねた著者が、教室を飛び出し、働いている人が実際に使っている数学は何なのかを聞き出すべくインタビューを繰り返してつくったもので、これを束ねた1枚の表と、職業人のインタビューから抜粋された何百もの使用例(具体的な数値入り)で埋められている。
丸井綜研さんが、この表を対応分析を使って2次元地図にしておられる。こちらも必見。
・100の職業でどんな数学を使うのか1枚の2次元地図にまとめてみた - 丸井綜研
16位 計算がらくになる実用数学
10秒で覚えられて計算がバツグンに速くなる方法 読書猿Classic: between / beyond readers
「足して9になる数字」が四則演算すべての検算を驚くほど加速する理由 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
長年、上位をキープしてきた、このブログ1のロングセラーも、新しい書籍の登場で、この位置まで下がってきた。
17位 創造の方法学
読書猿が中学生に本気で本を薦めてみた 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これもブログ内ロングセラーの1冊。
なお、記事「読書猿が中学生に本気で本を薦めてみた」に登場する、葛野浩昭『サンタクロースの大旅行』というとんでもない怪書については、これだけで1つの記事をがっつり書きたいと、クリスマス前には必ず思うのだが、未だ果たせてない。
18位 10才までに覚えておきたいちょっと難しい1000のことば
できる子はできない子の4.6倍のボキャブラリーがあるー日本語の語彙の測る/増やす方法 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
本の帯には「語彙不足を思考力のブレーキにさせないために」とある。
これまた、「家庭環境と読書の習慣のこと」の方の、後始末記事。
小学1年の時には2000語から7000語であった語彙数の差が、6年時には8000語から37000語と大きく開いている、という岸本裕史の調査の他に、ネットで自分の語彙数が計れる「語彙数推定テスト」( NTTコミュニケーション科学基礎研究所)も人気だった。
なお後で追記した阪本一郎の調査では、20歳の時点で、男子の最小が15,800語、最大が86,600語(5.48倍)、女子の最小が19,700語、最大が71,300語(3.61倍)だった。
19位 たのしく学ぼう漢字―子どもの瞳が輝く授業
子どもがつまずく抽象語のコア60語をその根っこから理解できる表 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これもまた「家庭環境と読書の習慣のこと」の後始末記事。
記事の中心は、抽象碁のコアにあたる部分が話し言葉からどんな風に陸続きかを示した、シンプルな表(この表の出典がこの本)である。
このあたりの抽象語は、もっと難しい専門用語や抽象概念の説明に用いられるから、ここが分からないと、当然本を読むのもつらいし、辞書を引くのも億劫になる。
今年の後半は、ふたつの対話もの、
・家庭環境と読書の習慣のこと/図書館となら、できること 読書猿Classic: between / beyond readers
・問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため/数学となら、できること/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers
の後始末のような記事で暮れた気がする。
1位 見える学力、見えない学力
見える学力、見えない学力 (国民文庫―現代の教養) (1996/03) 岸本 裕史 商品詳細を見る |
この本は、対話のひとつ「家庭環境と読書の習慣のこと」の方の、後始末である次の2つの記事、
・読めないとはこういうこと→勉強できない子をあぶりだす5つの質問 読書猿Classic: between / beyond readers
・では、子どもの〈見えない学力〉地頭、読む力に親は何ができるのか? 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場したもの。
このブログの記事は大体そうだが、勉強だとかトレーニングが必要なことがずっと苦手で、おまけに回避しまくっていた自分に向けて書いているところがある。
勉強の仕方については、今知っているようなことはだいたい当時も知っていたけれど、勉強する理由だとか、人間の知識が互いにどんな風に結びついているかとか、全く身にしみていなかった。
よく「本を読む人間なら誰でも知っているようなことを、何故わざわざ書くのか?」と言われるけれど、「自分は知らなかったから」と答えるしかない。
ただ、この対話だけだと、「勉強推し」にとどまって、無責任な気がしたので、〈やり方〉についても書いておこうと思って、一連の後始末記事となった。
けれど「読むこと」について書くことは、どうしても越えがたい壁に突き当たる。
本当なら届けたい、まだ読み始めていない人は、そもそも読まない(届かない)。
そんな訳で、この本が出てくる記事は、〈学ばせる〉立場にいる人向けになってしまっている。
このブログは、基本的には〈自分でやる〉人向けに書いているつもりだから、記事の方向としては例外的なものだったけれど、むしろそのせいか、このリストで一番上に来ることになった。
2位 私もできる西洋史研究―仮想(バーチャル)大学に学ぶ
私もできる西洋史研究―仮想(バーチャル)大学に学ぶ (大阪市立大学人文選書) (2012/05) 井上 浩一 商品詳細を見る |
今卒論を書いている人には残酷すぎて推奨できない素晴らしい本と自分のために書かれた訳ではないテキストを攻略する読解の3ステップ 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
人文系のトレーニングは歴史研究者に任せればいいんだ、と言い切りたくなるほどの快著。
9位〜12位の本とまとめて、「読書猿が勧める新一年生パック」とかにしたいくらい。
200頁ほどの薄い本だが、ここのブログだと、あと5〜6回は記事が書けそうなほどネタの宝庫。
スルーしてしまったのがとりわけ惜しいネタは、ビザンチン帝国のヘタレな戦争ネタで、これは、今年の秋にネットでも少し話題になっていた井上氏の「西洋史学の現代的課題 : あるビザンツ史研究者の選択」(『歴史科学』 210)でもキモの話になっている。
3位 日本語練習帳
日本語練習帳 (岩波新書) (1999/01/20) 大野 晋 商品詳細を見る |
30日で達人級の実力がつく日本語トレーニング〈縮約〉はこうやる 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これも「家庭環境と読書の習慣のこと」の後始末記事で、一連の日本語ネタの一つ。
読むこと、それに考えることの基礎(ベース)を取り上げると、どうしても母語(第一言語)の話に触れることになる。
そして日本語の話を取り上げると、語彙や氏名の分布みたいな話もあるけれど、〈日本語の書き方〉にも話が向く。
文章の書き方となると、いつも「〜すべからずリスト」みたいなのになりがちなので、10年以上前のベストセラーから、トレーニングの話を取り上げてみた。
意味は通るように気をつけながら、他人の文章から言葉をどんどん削っていく、というのは、外国語についても実行できるし、効果が大きいように思える。
新聞の社説を読むなんて我慢ならない、という人がとても多かったが、フランクリンは別の日につくっておいた要約だけをみて社説の文章を丸ごと再生する、というトレーニングを行なっている。時々、元の社説より、良い文章が書けてほくそ笑んだりしたらしい。
4位 ぎりぎり合格への論文マニュアル
ぎりぎり合格への論文マニュアル (平凡社新書) (2001/09) 山内 志朗 商品詳細を見る |
こう言い換えろ→論文に死んでも書いてはいけない言葉30 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
おそらく〈論文の書き方〉本の中でも、実はかなりの辛口な部類に入る本なのだが、前のめりの笑いが読む痛みを和らげる。
できれば論文を書き始める前に読んでおきたい。あちこちに埋められた囲み記事だけでも。
これまたネタの宝庫だけれど、時期が時期だけに、あまりデリケートなのは避けて、ダメな書き出しとそれへのコメントを紹介しよう。
源信(942-1017)は、永観二年(984年)冬十二月に『往生要集』の執筆を開始し、翌年寛和元年四月に完成させた。この書は一般に、日本で最初の浄土宗の指南書として知られている。内容はその表題の示すとおり、浄土に往生するための教えの要を集めたもので・・・ (コメント)事実を書き並べると論文らしくなると誤解している向きがある。テレビのドキュメンタリーを念頭に置いているのだろうか。後半は当たり前のことで、わざわざ論文の冒頭に持ってくるほどのことではない。 論文として練る段階までいっていないことが予想される。事実を調べてあっぷあっぷしている姿が思い浮かぶ。 私がこの研究を行なっていく中で明らかにしていきたいのは、ブルデューのハビトゥス概念である。私はこの概念を学問に対する認識論的批判という観点から研究し、ハビトゥスがいかなるものであるかを明らかにしていくことになる。ブルデューの研究とその理論は多岐にわたっており・・・ (コメント)冗長な書き出しで、「批判」「認識論的」といった概念の使い方が危うい。問題意識ははっきりしているようであるが、日本語表現の危うさと相まって、読むのがかなりつらい、まとまらない論文になることが予想される。 科学の進歩がめざましく進む中で、現在、今まで哲学者の領域であった人間の心の問題について、科学者が積極的に取り組む傾向が出てきた。これは、人間の体の中で、最も難解とされ、解明ができないとされてきた脳が、科学の進歩により、徐々にではあるが解明されてきたことが考えられる主要な理由であろう。脳研究は、古来より心の働きとして考えられてきた一部のこと(たとえば視覚や触覚、聴覚といった分野)を説明するものとして役立つ。それらは、脳内の物質の働きによりほぼ説明可能なことと考えられている。・・・ (コメント)勉強不足が見える。こんな荒っぽく、しかも歴史的事実に即応しないことを平気で論文の最初に書くのは、きっと本を一冊読んでまとめるつもりだからだろう、とすぐ予測がついてしまう。世間に流布する出版物にはこの程度のものが多いから、人間は基本的にはバカだ、という信念でもあるのだろうか。「科学者」とは何なのか、心理学はどこに行ったのか、などなどあまり概念や問題の所在を理解しないで書いている気配が見られる。日本語も変で、推敲不足である。ちょっとものを考えた人ならば、哲学と科学の対立みたいな枠組みで話を始めるわけはない。 |
5位 とりあえずの国語力
とりあえずの国語力 (2010/12/01) 石原大作 商品詳細を見る |
文章の型稽古→穴埋めすれば誰でも書ける魔法の文章テンプレート 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これも「家庭環境と読書の習慣のこと」の後始末記事で、一連の日本語ネタの一つ。
テンプレートものについては、人間知性への冒涜みたいにいう人もいるけれど、使うのも作るのも好きだ。
自分の経験から得た知恵を検証にかけようとすれば(そして誰かに手渡そうとすれば)、余分な要素を落としていって、どんな形であれフォーマットへ落とし込むことは避けられない。
6位 よくわかる文章表現の技術〈1〉表現・表記編
13位 よくわかる文章表現の技術〈2〉文章構成編
よくわかる文章表現の技術〈1〉表現・表記編 (新版) (2009/11) 石黒 圭 商品詳細を見る |
よくわかる文章表現の技術〈2〉文章構成編 (新版) (2009/11) 石黒 圭 商品詳細を見る |
「文は短く」は俗説か?ー〈短文信仰〉を屠り、短文のレトリックと長文のロジックを取り戻すために 読書猿Classic: between / beyond readers
読む者を新しい知識に導きその心を惹きつけてやまない謎解き文のテンプレート 読書猿Classic: between / beyond readers
の記事から。
これも「家庭環境と読書の習慣のこと」の後始末記事で、一連の日本語ネタの一つ。
作家や新聞記者のような〈素人〉ではなく、プロパーの日本語研究者が書いた(従来、日本語研究者は何を禁欲していたのか、あまり書かなかった)文章技術書。
理論的であり、かつ、(個人の経験ではなく)実際に人びとはどのように書いているかというデータの裏付けもある。
7位 科学を志す人のための基礎数学
科学を志す人のための基礎数学 (2010/01) クルグラーク、ムーア 他 商品詳細を見る |
無料で自宅でやりなおす→小学校の算数から大学数学までweb上教材をリストにした 読書猿Classic: between / beyond readers
の記事から。
このあたりから、もうひとつの対話もの「問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため」の後始末記事。
〈数学推し〉だけだとなんなので、リソース紹介記事を書いたもの。
本の方は、小学校の算数レベルから微積分など高校+αまで、ついている予備テストをやれば、どの章は飛ばしていいか、どこの章のどの問題を勉強すればよいかを教えてくれる往年の名著(の復刻)。
これより前に、同じく対話もので、
凡人が数学を語学として学ぶ具体的な手続きを説明する/図書館となら、できること番外編 読書猿Classic: between / beyond readers
というのを書いているのだけれど、そこでは「テキストは〈分かる〉系より〈解ける〉系」ということを言った。理由は、普通の数学書や数学を使った本は〈解ける〉人を前提に書いてあるので、〈解ける〉トレーニングをしておかないと、〈自明〉だから省略されている部分を自分で埋めることができなくて挫折するから。
記事にも書いたけれど、数学は分からない、分かるようになりたいというニーズは高くて、世の中には〈分かる〉系の数学入門書の方が圧倒的に多い。『科学を志す人のための基礎数学』とペアにして使えそうな〈分かる〉系の本としては、各分野ごとバラバラなだったのを一冊にまとめた次の本が小学校〜高校ぐらいまでカバーできる。
意味がわかれば数学の風景が見えてくる (2011/09/15) 野崎 昭弘、伊藤 潤一 他 商品詳細を見る |
8位 算数・数学が得意になる本
算数・数学が得意になる本 (講談社現代新書) (2006/05/19) 芳沢 光雄 商品詳細を見る |
誰もがどこかでつまずいた→小学校の算数から大学数学まで126の難所を16種類に分類した 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これも、「問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため」の後始末記事。
これから学ぶ人から、もう一度やりなおしたい人まで、一読の価値あり。
できれば、こちらの記事も合わせて。
小学校から算数を追放すると1/4の授業時間で成績を上がった話 読書猿Classic: between / beyond readers
Mathematics can wait. 数学は待ってくれる。
さて、9位から12位は、このブログのすでに定番書、というか以下の意味で、BIOSにあたるような基本書。
ブログのネタ出しにこっそり使っているトライアドは、レファレンスワーク(誰かが知っていることなら知ることができる)/学習科学(誰かにできることなら学ぶことができる)/問題解決(定義できるなら解くことができる)の3つなので、この4冊はきれいに並ぶ。
レファレンスワーク=『図書館に訊け!』(『本を読む本』は、蛇口から先の話だけど)
学習科学=『人はいかに学ぶか』
問題解決=『いかに問題をとくか』
9位 図書館に訊け!
図書館に訊け! (ちくま新書) (2004/08/06) 井上 真琴 商品詳細を見る |
10位 本を読む本
本を読む本 (講談社学術文庫) (1997/10/09) J・モーティマー・アドラー、V・チャールズ・ドーレン 他 商品詳細を見る |
12位 人はいかに学ぶか―日常的認知の世界
人はいかに学ぶか―日常的認知の世界 (中公新書) (1989/01) 稲垣 佳世子、波多野 誼余夫 他 商品詳細を見る |
20位 外国語上達法
外国語上達法 (岩波新書 黄版 329) (1986/01/20) 千野 栄一 商品詳細を見る |
の4冊は、
よく学ぶための7冊/学習技術のシルバーリングス 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
11位 いかにして問題をとくか
いかにして問題をとくか (1975/04/01) G. ポリア 商品詳細を見る |
ポリアの名著『いかにして問題をとくか』のチートシートをつくってみた 読書猿Classic: between / beyond readers
ポリアだけじゃない問題解決の考え方/勘どころを教える数学の11冊 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
14位 アメリカの小学校に学ぶ英語の書き方
アメリカの小学校に学ぶ英語の書き方 (2011/09/26) リーパーすみ子 商品詳細を見る |
Four Square Writing Methodを紹介した、
物事を論じられるようになるスモール・ステップス→米国の小学生が使う思考ツール 読書猿Classic: between / beyond readers
という記事に登場。
これも実は「家庭環境と読書の習慣のこと」の、こっそり後始末記事。
紙を3回折るだけでできるFour Square Writing Methodは、シンプルで小さな子用だから、日本語にもそのまま持ち込める。成長しても、シームレスにパラグラフ・ライティングに活用できるのでオススメ。
15位 When Are We Ever Gonna Have to Use This?
When Are We Ever Gonna Have to Use This? (1996/01) Hal Saunders 商品詳細を見る |
100の職業でどんな数学を使うのか1枚の表にまとめてみた 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これも、「問:数学を何故学ぶか? 答:言葉で伝えきれないものを伝えるため」の後始末記事。
書籍の表紙は、誰も聞いていない数学の授業風景で、生徒の「こんなもの、何時使うんだよ?」というつぶやきがそのまま書籍タイトルになっている涙目もの。
元々この本は、教科書に頻出するあまりに非現実的な応用問題と、それにしらけている生徒と、それを見ないことにしている教師とに耐えかねた著者が、教室を飛び出し、働いている人が実際に使っている数学は何なのかを聞き出すべくインタビューを繰り返してつくったもので、これを束ねた1枚の表と、職業人のインタビューから抜粋された何百もの使用例(具体的な数値入り)で埋められている。
丸井綜研さんが、この表を対応分析を使って2次元地図にしておられる。こちらも必見。
・100の職業でどんな数学を使うのか1枚の2次元地図にまとめてみた - 丸井綜研
16位 計算がらくになる実用数学
計算がらくになる実用数学 (1963/10) 波多 朝 商品詳細を見る |
10秒で覚えられて計算がバツグンに速くなる方法 読書猿Classic: between / beyond readers
「足して9になる数字」が四則演算すべての検算を驚くほど加速する理由 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
長年、上位をキープしてきた、このブログ1のロングセラーも、新しい書籍の登場で、この位置まで下がってきた。
17位 創造の方法学
創造の方法学 (講談社現代新書 553) (1979/09/18) 高根 正昭 商品詳細を見る |
読書猿が中学生に本気で本を薦めてみた 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これもブログ内ロングセラーの1冊。
なお、記事「読書猿が中学生に本気で本を薦めてみた」に登場する、葛野浩昭『サンタクロースの大旅行』というとんでもない怪書については、これだけで1つの記事をがっつり書きたいと、クリスマス前には必ず思うのだが、未だ果たせてない。
サンタクロースの大旅行 (岩波新書) (1998/11/20) 葛野 浩昭 商品詳細を見る |
18位 10才までに覚えておきたいちょっと難しい1000のことば
10才までに覚えておきたいちょっと難しい1000のことば (2006/03/01) 福田尚弘 商品詳細を見る |
できる子はできない子の4.6倍のボキャブラリーがあるー日本語の語彙の測る/増やす方法 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
本の帯には「語彙不足を思考力のブレーキにさせないために」とある。
これまた、「家庭環境と読書の習慣のこと」の方の、後始末記事。
小学1年の時には2000語から7000語であった語彙数の差が、6年時には8000語から37000語と大きく開いている、という岸本裕史の調査の他に、ネットで自分の語彙数が計れる「語彙数推定テスト」( NTTコミュニケーション科学基礎研究所)も人気だった。
なお後で追記した阪本一郎の調査では、20歳の時点で、男子の最小が15,800語、最大が86,600語(5.48倍)、女子の最小が19,700語、最大が71,300語(3.61倍)だった。
19位 たのしく学ぼう漢字―子どもの瞳が輝く授業
たのしく学ぼう漢字―子どもの瞳が輝く授業 (2003/07) 田村 利樹、乗木 養一 他 商品詳細を見る |
子どもがつまずく抽象語のコア60語をその根っこから理解できる表 読書猿Classic: between / beyond readers
に登場。
これもまた「家庭環境と読書の習慣のこと」の後始末記事。
記事の中心は、抽象碁のコアにあたる部分が話し言葉からどんな風に陸続きかを示した、シンプルな表(この表の出典がこの本)である。
このあたりの抽象語は、もっと難しい専門用語や抽象概念の説明に用いられるから、ここが分からないと、当然本を読むのもつらいし、辞書を引くのも億劫になる。
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