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2012.07.10
文章の型稽古→穴埋めすれば誰でも書ける魔法の文章テンプレート
ビギナーのための読み方・書き方とそのトレーニングの話を続けよう。
今日は、文章を読むにしろ、書くにしろ、重要になる〈つなぎ〉のコトバをマスターしよう。
〈つなぎ〉のコトバは、文を互いに関連付けて、文章を組み立てる。
しかし〈つなぎ〉のコトバをリストにして並べても、眺めているだけではピンと来ないし、使えるようにもならない。
ことばを知りマスターする近道は、自分で繰り返し使ってみることだ。
しかし「自由に組手しろ」「とにかく実戦だ」「そこら辺のやつを(コトバで)殴ってこい」
というのは、歩き始めたビギナーには少々キツい話である。
多くの伝統的身体技法には、「型稽古」とよばれるパタン・プラクティスがある。
ことばのトレーニングにも同様の型稽古があっていいはずだし、実際アメリカの小学校で用いられるFour Square Writing Methodやフィンランドのカルタ(スパイダーグラフというかマインドマップみたいなの)を使った作文だとか、そうした試みは結構ある(これについては→Miksi(どうして)? ←フィンランドの小学生を国語力世界一にした質問:読書猿Classic: between / beyond readers )。
そこで今日は、
という本から、コトバの型稽古につかえる文章テンプレートを紹介しよう。
大枠の構成は
の3部構成である。
〈根拠・理由〉を分厚くするのがミソだ。
根拠に使えるパターンはいろいろあるが、主だったものは下記の通り織り込んである。
したがってすべてを使う必要はないだろう。
しかし〈根拠・理由〉は薄べったいよりも、厚い方がよい。
イシハラ式ラクラク作文シート
このテンプレートには、普通の文章を組み立てるための、代表的な〈つなぎ〉のコトバ(下線部)が盛り込まれている。
このテンプレートを埋めるだけで、文章が(少なくとも文章の骨子が)できあがるように作ってある。
できる子はできない子の4.6倍のボキャブラリーがあるー日本語の語彙の測る/増やす方法 読書猿Classic: between / beyond readers を例にして、テンプレートを使ってみよう。
以前、論文を書くための穴埋めシート(テンプレート)を取り上げたことがあるが、
論文に何を書くべきか→これだけは埋めろ→論文作成穴埋めシート 読書猿Classic: between / beyond readers
今回のテンプレートは、より一般的で、日常的な文章書きの用途に使えるものである。
したがって、このテンプレートは次のようなことに使うことができるだろう。
文章を書く
・飾りやひねりがない文章を書く
・短いが必要十分な文章をすばやくつくる
・骨子のそれぞれのパートについて、繰り返し(入れ子的に)テンプレートを適用して、長い文章をつくる。
下書きをつくる
・自分が何を書こうとしているか確認する
・書くのに何が足りてないかを知る
他人が書いた文章を読む
・(上のテンプレート使用例のように)読んだ内容をフォーマットに落とし込むことで、文章から骨子を抜き出す
・元の文章を要約する
文章を書く練習に使おう
文章を書く力は、実際に書くことでしか向上しない。
しかし書くことに慣れない人にいきなり書けと言っても、どこから手をつけていいか分からないだろう。
テンプレートは文章を書くのにどんなパーツが必要か、それぞれのパーツをどんな順序で配置し、どんな〈つなぎ〉で結びつければいいか、をサポートする。
もちろん世の中の文章書きは、こうしたテンプレートをいちいち目の前に置いて書いているのではない。
しかし多く読みまた書く経験を重ねて、様々な文章のテンプレートを吸収し、自分なりにアレンジして、無意識にであれ使っている(もちろん話すように行き当たりばったり書いている人も多いが、それは文章とはいわない)。
あるテンプレートを意識することは、自分の中のテンプレートに自覚的になり、それを改変・改善する機会にもなる。
文章を読む練習に使おう
また書くことは、読む力を急速に向上させる。自分が書く立場になることで、ただ受け取るだけでは気付かなかったコトバや文章の働きに敏感になることができる。
フランシス・ベーコンは「書くことは精確な人間をつくる」と書いているけれど、書かない人と比べれば書く人の読みはより精確で深い。
たとえば他人の文章を読んで、その要約をつくることは、文章を読み書きするすべてのスキルを鍛える総合トレーニングである。
フリーハンドで要約を作れ、と言われても、中々むずかしいが、このテンプレートは補助具として、このトレーニングをサポートしてくれるだろう。
そして文章の初心者にも
文章を読むのが苦手な初心者にも、テンプレート・ライティングは有効である。
文章を読むためには、当然だが複数の文をつなげて理解しなければならない。
しかし文字が読めても文章が読めない人はつながりに注意を払わず、文や単語という〈点〉だけを見ている。
いま話題にしているものを文章のレベルで、いや文のレベルでは否定しているのか肯定しているのかさえ、ほとんど見ていない。
ある単語が含まれているかどうかだけで反応が決まってしまうことすらある(わりとある)※。
読むことに慣れている人が、この段階での苦しみを思い出すためには、知らない言語を学ぶといい。
一文一文を理解するのに精一杯だったレベルでは、文章全体で何が書かれていたか、ほとんど覚えてすらいなかっただろう。
さらにその手前では、ほとんどすべての単語が分からず、調べるのにへとへとになって、一つの文の構造を考えるのも一杯いっぱいだっただろう。文脈になど、ほとんど意識を割く余裕がなかっただろう。
〈つなぎ〉のコトバを知り、それによる文章の組立てのパターンを知ることは、文章のどこに/どんな順番でどんなことが書いてあるか、について予測するのに役立つ。
〈つなぎ〉のコトバは数多いが、その機能はコトバの数ほどは多くない。
〈つなぎ〉方のパターンは比較的少数であり、代表的なものを知っておけば、アレンジしたものも捕まえられるようになる。
文章にはどんなパーツが必要かをパターンとして知っておけば〈あとどんなパーツを何を探すべきか?〉、〈まだ何を見つけられていないのか?〉についても勘が働くようになる。
下から積み上げるボトムアップな読みに対して、いわば全体から部分を理解するトップ・ダウンの読みである。
〈つなぎ〉のことばを、「ディスコース・マーカー」と呼んで英語を読むに役立てようというのは、元々は書くためのフォーマットを、読むことにも役立てようとするものだった。
※ 書き言葉から一番表面的なレベルの〈情報〉を得るだけなら、この〈点〉の読み方でもなんとかなる。
電話帳や時刻表を想像するといい。
他の例だと、商品カタログは(多くの場合)この読み方で読まれる(また〈点〉の読み方に合わせてつくられている)。
これらの文章素材は、リーディングの最初期の素材にも用いられる。
実のところ、互いに要求を伝え合うだけの、一番表面的な〈日常会話〉は、〈点〉の読み方と同じレベルにある。
いわゆる三語亭主「フロ、メシ、ネル」が典型だが、これまた岸本裕史ネタだけれど、小学生がいる家庭での会話を3日間録音したものを調べると(ほんとこの人いちいち調べているのがおもしろい)、もっとも発せられた言葉のベスト3は3位「あほやね」、2位「勉強しい」(勉強しなさい)、1位「はよしい」(早くしなさい)だった。
しかし物事を論じようとすると〈点〉の言葉では間に合わない。
たとえば〈要求〉ではなく、〈主張〉や〈説得〉をしようとすると、〈理由〉を述べることが必要になる。
〈理由〉を述べるには論じることが必要になる。「ナニがどうだから、こうなんだ」と、口で話す際にも〈点〉ではなく、せめて主語と述語がそろった〈線=文〉の言葉がいる。
〈線=文〉の言葉を使えない人が議論をはじめると(彼らは二語文未満の世界にいる)、強烈な/強烈さだけで選ばれる単語が頻発することになる。
今日は、文章を読むにしろ、書くにしろ、重要になる〈つなぎ〉のコトバをマスターしよう。
〈つなぎ〉のコトバは、文を互いに関連付けて、文章を組み立てる。
しかし〈つなぎ〉のコトバをリストにして並べても、眺めているだけではピンと来ないし、使えるようにもならない。
ことばを知りマスターする近道は、自分で繰り返し使ってみることだ。
しかし「自由に組手しろ」「とにかく実戦だ」「そこら辺のやつを(コトバで)殴ってこい」
というのは、歩き始めたビギナーには少々キツい話である。
多くの伝統的身体技法には、「型稽古」とよばれるパタン・プラクティスがある。
ことばのトレーニングにも同様の型稽古があっていいはずだし、実際アメリカの小学校で用いられるFour Square Writing Methodやフィンランドのカルタ(スパイダーグラフというかマインドマップみたいなの)を使った作文だとか、そうした試みは結構ある(これについては→Miksi(どうして)? ←フィンランドの小学生を国語力世界一にした質問:読書猿Classic: between / beyond readers )。
そこで今日は、
とりあえずの国語力 (2010/12/01) 石原大作 商品詳細を見る |
という本から、コトバの型稽古につかえる文章テンプレートを紹介しよう。
大枠の構成は
主 張 |
根拠・理由 (複数) | 再度、主張 |
の3部構成である。
〈根拠・理由〉を分厚くするのがミソだ。
根拠に使えるパターンはいろいろあるが、主だったものは下記の通り織り込んである。
したがってすべてを使う必要はないだろう。
しかし〈根拠・理由〉は薄べったいよりも、厚い方がよい。
イシハラ式ラクラク作文シート
1 | 主張 | 私は(______)の(______)について(______)と考えます。 |
2 | 根拠 | なぜなら(______)だからです。 |
3 | 定説 | 一般に(______)とされています。 |
4 | 権威付け | (______)によれば(______)とされています。 |
5 | 具体例 | たとえば(______)です。 |
6 | 事例 | かつて(______)ということがありました。 |
7 | 比喩 | まるで(______)のようなものです。 |
8 | 疑問 | なるほど(たしかに)(______)という面はあります。 |
9 | 疑問へ の反論 | しかし(______)ではないでしょうか。 |
10 | 主張の 繰り返し | それゆえ(______)すべきなのです。 |
このテンプレートには、普通の文章を組み立てるための、代表的な〈つなぎ〉のコトバ(下線部)が盛り込まれている。
このテンプレートを埋めるだけで、文章が(少なくとも文章の骨子が)できあがるように作ってある。
できる子はできない子の4.6倍のボキャブラリーがあるー日本語の語彙の測る/増やす方法 読書猿Classic: between / beyond readers を例にして、テンプレートを使ってみよう。
1 主張 私は(_語彙_)の(_増強_)について(_本を読むのが一番_)と考えます。 2 根拠 なぜなら(_人が最も新しい語彙に触れるのは読書を通じて_)だからです。 3 定説 一般に(_読書量が多い人は言葉を多く知っている_)とされています。 4 権威付け (_ある研究者_)によれば(_子どもは自発的に本や雑誌など読んで、新たな語彙を獲得している可能性が高い_)とされています。 5 具体例 たとえば(_子どもは年間で約100万語に接し、年間15000〜30000語の新しい語に接しているのなら、最大で年に2250〜4500語を習得するという研究があり_)ます。 8 疑問 なるほど(たしかに)(_日常会話やテレビから受けるコトバは他からよりずっと多い_)という面はあります。 9 疑問への反論 しかし(_日常会話やテレビにはやさしい言葉が多く、新しい語彙に接する機会としてはあまり期待できないの_)ではないでしょうか。 10 主張の繰り返し それゆえ(_語彙を増やすためには読書を_)すべきなのです。 |
以前、論文を書くための穴埋めシート(テンプレート)を取り上げたことがあるが、
論文に何を書くべきか→これだけは埋めろ→論文作成穴埋めシート 読書猿Classic: between / beyond readers
今回のテンプレートは、より一般的で、日常的な文章書きの用途に使えるものである。
したがって、このテンプレートは次のようなことに使うことができるだろう。
文章を書く
・飾りやひねりがない文章を書く
・短いが必要十分な文章をすばやくつくる
・骨子のそれぞれのパートについて、繰り返し(入れ子的に)テンプレートを適用して、長い文章をつくる。
下書きをつくる
・自分が何を書こうとしているか確認する
・書くのに何が足りてないかを知る
他人が書いた文章を読む
・(上のテンプレート使用例のように)読んだ内容をフォーマットに落とし込むことで、文章から骨子を抜き出す
・元の文章を要約する
文章を書く練習に使おう
文章を書く力は、実際に書くことでしか向上しない。
しかし書くことに慣れない人にいきなり書けと言っても、どこから手をつけていいか分からないだろう。
テンプレートは文章を書くのにどんなパーツが必要か、それぞれのパーツをどんな順序で配置し、どんな〈つなぎ〉で結びつければいいか、をサポートする。
もちろん世の中の文章書きは、こうしたテンプレートをいちいち目の前に置いて書いているのではない。
しかし多く読みまた書く経験を重ねて、様々な文章のテンプレートを吸収し、自分なりにアレンジして、無意識にであれ使っている(もちろん話すように行き当たりばったり書いている人も多いが、それは文章とはいわない)。
あるテンプレートを意識することは、自分の中のテンプレートに自覚的になり、それを改変・改善する機会にもなる。
文章を読む練習に使おう
また書くことは、読む力を急速に向上させる。自分が書く立場になることで、ただ受け取るだけでは気付かなかったコトバや文章の働きに敏感になることができる。
フランシス・ベーコンは「書くことは精確な人間をつくる」と書いているけれど、書かない人と比べれば書く人の読みはより精確で深い。
たとえば他人の文章を読んで、その要約をつくることは、文章を読み書きするすべてのスキルを鍛える総合トレーニングである。
フリーハンドで要約を作れ、と言われても、中々むずかしいが、このテンプレートは補助具として、このトレーニングをサポートしてくれるだろう。
そして文章の初心者にも
文章を読むのが苦手な初心者にも、テンプレート・ライティングは有効である。
文章を読むためには、当然だが複数の文をつなげて理解しなければならない。
しかし文字が読めても文章が読めない人はつながりに注意を払わず、文や単語という〈点〉だけを見ている。
いま話題にしているものを文章のレベルで、いや文のレベルでは否定しているのか肯定しているのかさえ、ほとんど見ていない。
ある単語が含まれているかどうかだけで反応が決まってしまうことすらある(わりとある)※。
読むことに慣れている人が、この段階での苦しみを思い出すためには、知らない言語を学ぶといい。
一文一文を理解するのに精一杯だったレベルでは、文章全体で何が書かれていたか、ほとんど覚えてすらいなかっただろう。
さらにその手前では、ほとんどすべての単語が分からず、調べるのにへとへとになって、一つの文の構造を考えるのも一杯いっぱいだっただろう。文脈になど、ほとんど意識を割く余裕がなかっただろう。
〈つなぎ〉のコトバを知り、それによる文章の組立てのパターンを知ることは、文章のどこに/どんな順番でどんなことが書いてあるか、について予測するのに役立つ。
〈つなぎ〉のコトバは数多いが、その機能はコトバの数ほどは多くない。
〈つなぎ〉方のパターンは比較的少数であり、代表的なものを知っておけば、アレンジしたものも捕まえられるようになる。
文章にはどんなパーツが必要かをパターンとして知っておけば〈あとどんなパーツを何を探すべきか?〉、〈まだ何を見つけられていないのか?〉についても勘が働くようになる。
下から積み上げるボトムアップな読みに対して、いわば全体から部分を理解するトップ・ダウンの読みである。
〈つなぎ〉のことばを、「ディスコース・マーカー」と呼んで英語を読むに役立てようというのは、元々は書くためのフォーマットを、読むことにも役立てようとするものだった。
※ 書き言葉から一番表面的なレベルの〈情報〉を得るだけなら、この〈点〉の読み方でもなんとかなる。
電話帳や時刻表を想像するといい。
他の例だと、商品カタログは(多くの場合)この読み方で読まれる(また〈点〉の読み方に合わせてつくられている)。
これらの文章素材は、リーディングの最初期の素材にも用いられる。
実のところ、互いに要求を伝え合うだけの、一番表面的な〈日常会話〉は、〈点〉の読み方と同じレベルにある。
いわゆる三語亭主「フロ、メシ、ネル」が典型だが、これまた岸本裕史ネタだけれど、小学生がいる家庭での会話を3日間録音したものを調べると(ほんとこの人いちいち調べているのがおもしろい)、もっとも発せられた言葉のベスト3は3位「あほやね」、2位「勉強しい」(勉強しなさい)、1位「はよしい」(早くしなさい)だった。
しかし物事を論じようとすると〈点〉の言葉では間に合わない。
たとえば〈要求〉ではなく、〈主張〉や〈説得〉をしようとすると、〈理由〉を述べることが必要になる。
〈理由〉を述べるには論じることが必要になる。「ナニがどうだから、こうなんだ」と、口で話す際にも〈点〉ではなく、せめて主語と述語がそろった〈線=文〉の言葉がいる。
〈線=文〉の言葉を使えない人が議論をはじめると(彼らは二語文未満の世界にいる)、強烈な/強烈さだけで選ばれる単語が頻発することになる。
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