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2013.09.08
心理学者が教える少しの努力で大作を書く/多作になるためのウサギに勝つカメの方法
うまく書く方法は教えられないが、たくさん書く方法なら教えられる。
そしてこれが、おそらくは、うまく書くためのほとんど唯一の道である。
興味関心や動機付けが創造性に与える影響なんかを研究してる心理学者が書いた"How to write a lot"という本がAmerican Psychological Association(アメリカ心理学会)から発刊されている(APA LifeToolsシリーズ)。
ペーパーバック
Kindle版
(2015.5.5追記)
以下の翻訳が出ました。
基本的に研究者向けの論文をたくさん書く方法(How to write a lot)を扱っているが、メインであるBinge Writing(あるいはBinge Writerになること)を避ける方法は、どの分野の書き手にも役立つだろう。
(関連記事)
・今度こそ、続けよう→3日坊主にさよならする技術 読書猿Classic: between / beyond readers
・3日坊主から離脱する→やめたいことをやめ、やらなくてはならないことを続ける仕組みをつくる行動デザインシート 読書猿Classic: between / beyond readers
・むかし村上春樹が書いてた、英語が読めるようになるほとんど唯一の方法、というか「生き方」 読書猿Classic: between / beyond readers
・牛になる事はどうしても必要です/漱石が若き天才に贈った言葉 読書猿Classic: between / beyond readers
Binge Writingとは何か?
実際に書くことに費やす時間よりも、悩む時間の方が長い書き方。
もう少し詳しくいえば、書くことをぐずぐず先延ばしして、そのせいで書かない罪悪感と自責の念、書けない不安とプレッシャーに苦しめられ、追い込まれて他のことを投げ捨てて書かざるを得なくなるが、何度でも〈先延ばし→苦しみ→追い込まれ書き〉のサイクルを繰り返し、結局のところ余計に時間がかかってしまう書き方(ライティング・スタイル)のことである。
言い訳をつぶす
Binge Writerの書くことを回避するための言い訳は、依存症者のそれに似ていると著者 Silviaは言う。
そしてそれに応ずるための方法は、行動医学の分野で蓄積されている。
1.時間がない
探し求めているかぎり、何かをするための時間は決して見つからない。
時間はあったりなかったりするものではなく、または見つけたりするものでもなく、割り当てるものなのだ。
あらかじめ書くために時間を確保しスケジュール化することで、問題は軽減する。
少なくともBinge Writingの悪循環を押しとどめる防波堤となる。
Binge Writingが引き起こす罪悪感や不安は、書いてない間中続いてあなたを苛む。
〈書く時間〉をスケジュール化すると、こう変わる。
今書いていないのは、怠け心からではなく、未だ〈書く時間〉になっていないからだ。
書くことを中断するのは、怠け心からではなく、〈書く時間〉が終了したからだ。
書くのも、書くこと(そして書かないこと)に悩むのも、〈書く時間〉になってから、そして〈書く時間〉の間だけにするのだ。
詳細は後述する。
2.準備が十分でない
研究論文の場合なら「十分にデータ分析できてない」や「十分に文献が読めてない」になる。
著者曰く、Binge Writerは、Binge ReadersにもBinge Statisticiansにも陥りやすい。読むことを先延ばしにしては自責の念に駆られ、データ分析を先送りしては罪悪感を感じるのだ。
さらに悪いことに、Binge Writingが引き起こす罪悪感や不安は書いてない間中続いてあなたを苛むから、文献を読んでいる間やデータ分析をやっている間も、やはり罪悪感や不安を引き起こす。邪魔をする、ヤル気をそぎ落とし、集中を妨げる。
同じように、書いている間や、いざ書こうとする場合にも、今度は〈文献を読んでいないこと〉や〈データ分析してないこと〉が、やはり罪悪感や不安を引き起こす、邪魔をする、ヤル気をそぎ落とし、集中を妨げる。
Bingeなものは、まとめてスケジュール化することで面倒を見るのがよい。
書くために付随する作業や行為は、すべて〈書く時間〉に組み込むのだ。
詳細は後述する。
3.よい道具、ガジェットが揃ってない
OK。今できるだけの準備をしよう。
しかし完璧を求めていたら、いつまでも書き始められない。最新鋭のコンピュータでなくても、なんとかなるものだ。
そして「書くのに必要なのは紙と鉛筆だけ」というサローヤンの言葉を思い出そう。
どんなプリンターもコンピューターも、あなたにかわって書いてくれる訳ではない。
4.インスピレーションが湧いてこない
もっとも凡庸だが、手強そうな言い訳だ。
実際、〈書く時間〉をスケジュール化しろ、そして毎日決めた時間中書き続けろ、という提案を拒絶する人の多くが、こう言い訳する。
インスピレーションがわかないうちは、ミューズ(音楽・舞踏・学術・文芸などを司る、ギリシア神話の女神)が降りてこないうちは、書くことは出来ないし、また書くべきでない、と。
しかし、研究助成金の申請書を書くのにミューズを待つ人はいない。
書かなければならないから、書かなければならないことを書く。ただそれだけだ。
詩人ですら毎日仕事する。
何も思いつかなくても、書けるときも書けないときも、いずれにしても書く。
加えて、インスピレーションを待つことよりも、決まった時間に定期的に書くことの方が、より多く書けるばかりか、創造的なアイデアも多く生まれることが、ランダムな割り当てを用いた実験で実証済みである(例えばBoice(1990),Professors As Writers, New Forums Press.)。
それでは以下に、Binge Writingに陥らず、〈書く時間〉のスケジュール化と定期化を行うためのステップを簡単に述べておこう。
書く時間を確保する
人に会う予定のように、あなたが〈書くこと〉に向かいあう時間を予定に入れる。
スケジュール帳を使っている人は、実際に「ここからここまでWritingさんと会う」と書き込む。
一番良いのは、〈書く時間〉の前後に動かせない予定を入れて、挟むこと。
〈書く時間〉がスケジュール化できたら、とにかく徹底してそれに従う。
書く時間になったら、時間が終わるまでとにかく書く。
文献読みやデータ解析や、資料探しなど執筆に付随する作業/準備なども、〈書くこと〉として扱ってスケジュールに組み込む。
それ以外の時間は「書けない」とか(「読まない」とか「データ分析やってねえ」とか)悩まない、心配しない。
最初のうちは、それでも不安や罪悪感が沸き起こるかもしれない。その場合は、「書き捨てノート」に心の苦悶の言葉(「書けない、書けるわけない!」とか)を書き捨て、「続きは〈書く時間〉に」と書き添える。
モニタリングする
人間の感覚はわりと確かだが、頻度についての感覚は当てにならない。
大抵の人は、自分が実際どれだけ書いているか、ちゃんと分かっていない。
自分がやったことをただ記録することは、将来の計画立てに役立つばかりでなく、モチベーションを維持し、行動を改善するのに役立つ(これも実証済み)。セルフ・モニタリングは、セルフコントロールに不可欠の手法である。
書くことについてもこれは当てはまる。
書くことは、その量を把握しやすいから、まさにうってつけである。
とくに大作(たとえば原稿用紙で何百枚になる長い文章)を書いている人、書かなきゃならない人は、自分が抱える大目標を現実的な射程として捉えるために、不可欠だ。
毎回、自分が何文字書いたか、記録すること。いろいろ書いている人は、どのテーマ/トピック/種類の文章を何文字書いたかも、記録する。
コンピュータで書いている人なら、数秒メモするだけで済む。
ちなみにこの書の著者Silvia氏は、統計ソフトをつかってグラフ化したり分析したりしている。
(クリックで拡大)
難しい分析は不要だが、自分が毎日書いた文字数を積み上げた「何年何月何日以来、何文字書いたかの折れ線グラフ」や「1日何文字書けるかの度数分布」(上のグラフではSilvia氏は1日平均789words書くが、平均以下の日も多いことが分かる)は、モチベーション維持や執筆計画に大いに役立つ。
優先順位を決める
次に、その日の〈書く時間〉をどのように使うかについて考えよう。
基本的な考え方は、(考えれば当然だが)完成に近いものから優先して行う。
たとえば
(1)書き終えた原稿の校正
(2)締め切りがある原稿を完成させる
(3)再投稿する原稿の手直し
(4)途中の原稿を書き続ける
(5)新しい原稿のためのアイデア・ブレインストーミング
つまり新規のアイデア出しよりドラフトを、ドラフトよりも校正を、締め切りないものよりあるものを、遠いものより近いものを、それぞれ優先する。
目標管理する
書くべきもの=大目標の他に、毎日の〈書く時間〉ごとの小目標を設定しよう。
書くべきもの=大目標については、これを毎日必ず目にするところ掲示しておく。
毎日の小目標については、先に決めた優先順位に基いて、行うべきことをリストにしておけばいい。
具体的な数値目標がのぞましい
たとえば
(1)書き終えた原稿を校正する、最後まで。
(2)締め切りがある原稿の文献リストの抜けを埋める、最後まで。
(3)再投稿する原稿の手直し
(4a)昨日書いた分を読む
(4b)続きとして最低3パラグラフ書く
(5)アイデア・ブレインストーミングとしてラクガキする
ここでは書かなかったが、データ解析や文献読み、資料探しなど執筆に付随することも〈書くこと〉扱いして、小目標に組み入れる。
行った分は先に述べたように記録しておく。
目標達成したら、小さなご褒美を自分にあげる。
できれば同じく書いてる人と二週間ごとに集まって、進行状況と目標達成を報告しあうとよい。もちろん互いに書いているものを読み合って意見交換できるとなおよいが、読み合いや意見交換を義務にするときつくなる。進行状況の報告を基本に、ときどき「もしよかったら」と頼むくらいが続きやすい。
月に1回は、進行を振り返り(ここで記録やそのグラフが役に立つ)目標を修正すること。
修正することを決めておく方が、融通無碍過ぎて目標管理がうだうだになることを防ぎやすい。
(その他の参考文献)
・How to Write a Lotと、ほぼ同じ方法が書かれている本「1日15分で学位論文を書く方法」。Binge Writingに陥ると、それ以下になるってこと。
・インスピレーションを待つより定期的に書くほうがたくさんかけて、しかも創造的なアイデアが浮かびやすいという研究のサーヴェイを含む。
・Binge Writingの概念を提起した本
・"How to write a lot"の著者Paul J. Silviaの本業の仕事
(関連記事)
・書くことが嫌いにならないための10箇条 読書猿Classic: between / beyond readers
・「自分の書く文章は価値がない」を抜け出すライティング・マラソンという方法←自己検閲を振り切って書きなぐるために 読書猿Classic: between / beyond readers
・これは書くことがとことん苦手な人のために書いた文章です→小学生から大人まで使える素敵な方法 読書猿Classic: between / beyond readers
そしてこれが、おそらくは、うまく書くためのほとんど唯一の道である。
興味関心や動機付けが創造性に与える影響なんかを研究してる心理学者が書いた"How to write a lot"という本がAmerican Psychological Association(アメリカ心理学会)から発刊されている(APA LifeToolsシリーズ)。
ペーパーバック
How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing Paul J. Silvia Amer Psychological Assn 売り上げランキング : 9438 Amazonで詳しく見る |
Kindle版
How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing Paul J. Silvia APA LifeTools Amazonで詳しく見る |
(2015.5.5追記)
以下の翻訳が出ました。
できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書) ポール.J・シルヴィア,高橋 さきの 講談社 売り上げランキング : 111 Amazonで詳しく見る |
基本的に研究者向けの論文をたくさん書く方法(How to write a lot)を扱っているが、メインであるBinge Writing(あるいはBinge Writerになること)を避ける方法は、どの分野の書き手にも役立つだろう。
(関連記事)
・今度こそ、続けよう→3日坊主にさよならする技術 読書猿Classic: between / beyond readers
・3日坊主から離脱する→やめたいことをやめ、やらなくてはならないことを続ける仕組みをつくる行動デザインシート 読書猿Classic: between / beyond readers
・むかし村上春樹が書いてた、英語が読めるようになるほとんど唯一の方法、というか「生き方」 読書猿Classic: between / beyond readers
・牛になる事はどうしても必要です/漱石が若き天才に贈った言葉 読書猿Classic: between / beyond readers
Binge Writingとは何か?
実際に書くことに費やす時間よりも、悩む時間の方が長い書き方。
もう少し詳しくいえば、書くことをぐずぐず先延ばしして、そのせいで書かない罪悪感と自責の念、書けない不安とプレッシャーに苦しめられ、追い込まれて他のことを投げ捨てて書かざるを得なくなるが、何度でも〈先延ばし→苦しみ→追い込まれ書き〉のサイクルを繰り返し、結局のところ余計に時間がかかってしまう書き方(ライティング・スタイル)のことである。
言い訳をつぶす
Binge Writerの書くことを回避するための言い訳は、依存症者のそれに似ていると著者 Silviaは言う。
そしてそれに応ずるための方法は、行動医学の分野で蓄積されている。
1.時間がない
探し求めているかぎり、何かをするための時間は決して見つからない。
時間はあったりなかったりするものではなく、または見つけたりするものでもなく、割り当てるものなのだ。
あらかじめ書くために時間を確保しスケジュール化することで、問題は軽減する。
少なくともBinge Writingの悪循環を押しとどめる防波堤となる。
Binge Writingが引き起こす罪悪感や不安は、書いてない間中続いてあなたを苛む。
〈書く時間〉をスケジュール化すると、こう変わる。
今書いていないのは、怠け心からではなく、未だ〈書く時間〉になっていないからだ。
書くことを中断するのは、怠け心からではなく、〈書く時間〉が終了したからだ。
書くのも、書くこと(そして書かないこと)に悩むのも、〈書く時間〉になってから、そして〈書く時間〉の間だけにするのだ。
詳細は後述する。
2.準備が十分でない
研究論文の場合なら「十分にデータ分析できてない」や「十分に文献が読めてない」になる。
著者曰く、Binge Writerは、Binge ReadersにもBinge Statisticiansにも陥りやすい。読むことを先延ばしにしては自責の念に駆られ、データ分析を先送りしては罪悪感を感じるのだ。
さらに悪いことに、Binge Writingが引き起こす罪悪感や不安は書いてない間中続いてあなたを苛むから、文献を読んでいる間やデータ分析をやっている間も、やはり罪悪感や不安を引き起こす。邪魔をする、ヤル気をそぎ落とし、集中を妨げる。
同じように、書いている間や、いざ書こうとする場合にも、今度は〈文献を読んでいないこと〉や〈データ分析してないこと〉が、やはり罪悪感や不安を引き起こす、邪魔をする、ヤル気をそぎ落とし、集中を妨げる。
Bingeなものは、まとめてスケジュール化することで面倒を見るのがよい。
書くために付随する作業や行為は、すべて〈書く時間〉に組み込むのだ。
詳細は後述する。
3.よい道具、ガジェットが揃ってない
OK。今できるだけの準備をしよう。
しかし完璧を求めていたら、いつまでも書き始められない。最新鋭のコンピュータでなくても、なんとかなるものだ。
そして「書くのに必要なのは紙と鉛筆だけ」というサローヤンの言葉を思い出そう。
どんなプリンターもコンピューターも、あなたにかわって書いてくれる訳ではない。
4.インスピレーションが湧いてこない
もっとも凡庸だが、手強そうな言い訳だ。
実際、〈書く時間〉をスケジュール化しろ、そして毎日決めた時間中書き続けろ、という提案を拒絶する人の多くが、こう言い訳する。
インスピレーションがわかないうちは、ミューズ(音楽・舞踏・学術・文芸などを司る、ギリシア神話の女神)が降りてこないうちは、書くことは出来ないし、また書くべきでない、と。
しかし、研究助成金の申請書を書くのにミューズを待つ人はいない。
書かなければならないから、書かなければならないことを書く。ただそれだけだ。
詩人ですら毎日仕事する。
何も思いつかなくても、書けるときも書けないときも、いずれにしても書く。
加えて、インスピレーションを待つことよりも、決まった時間に定期的に書くことの方が、より多く書けるばかりか、創造的なアイデアも多く生まれることが、ランダムな割り当てを用いた実験で実証済みである(例えばBoice(1990),Professors As Writers, New Forums Press.)。
それでは以下に、Binge Writingに陥らず、〈書く時間〉のスケジュール化と定期化を行うためのステップを簡単に述べておこう。
書く時間を確保する
人に会う予定のように、あなたが〈書くこと〉に向かいあう時間を予定に入れる。
スケジュール帳を使っている人は、実際に「ここからここまでWritingさんと会う」と書き込む。
一番良いのは、〈書く時間〉の前後に動かせない予定を入れて、挟むこと。
〈書く時間〉がスケジュール化できたら、とにかく徹底してそれに従う。
書く時間になったら、時間が終わるまでとにかく書く。
文献読みやデータ解析や、資料探しなど執筆に付随する作業/準備なども、〈書くこと〉として扱ってスケジュールに組み込む。
それ以外の時間は「書けない」とか(「読まない」とか「データ分析やってねえ」とか)悩まない、心配しない。
最初のうちは、それでも不安や罪悪感が沸き起こるかもしれない。その場合は、「書き捨てノート」に心の苦悶の言葉(「書けない、書けるわけない!」とか)を書き捨て、「続きは〈書く時間〉に」と書き添える。
モニタリングする
人間の感覚はわりと確かだが、頻度についての感覚は当てにならない。
大抵の人は、自分が実際どれだけ書いているか、ちゃんと分かっていない。
自分がやったことをただ記録することは、将来の計画立てに役立つばかりでなく、モチベーションを維持し、行動を改善するのに役立つ(これも実証済み)。セルフ・モニタリングは、セルフコントロールに不可欠の手法である。
書くことについてもこれは当てはまる。
書くことは、その量を把握しやすいから、まさにうってつけである。
とくに大作(たとえば原稿用紙で何百枚になる長い文章)を書いている人、書かなきゃならない人は、自分が抱える大目標を現実的な射程として捉えるために、不可欠だ。
毎回、自分が何文字書いたか、記録すること。いろいろ書いている人は、どのテーマ/トピック/種類の文章を何文字書いたかも、記録する。
コンピュータで書いている人なら、数秒メモするだけで済む。
ちなみにこの書の著者Silvia氏は、統計ソフトをつかってグラフ化したり分析したりしている。
(クリックで拡大)
難しい分析は不要だが、自分が毎日書いた文字数を積み上げた「何年何月何日以来、何文字書いたかの折れ線グラフ」や「1日何文字書けるかの度数分布」(上のグラフではSilvia氏は1日平均789words書くが、平均以下の日も多いことが分かる)は、モチベーション維持や執筆計画に大いに役立つ。
優先順位を決める
次に、その日の〈書く時間〉をどのように使うかについて考えよう。
基本的な考え方は、(考えれば当然だが)完成に近いものから優先して行う。
たとえば
(1)書き終えた原稿の校正
(2)締め切りがある原稿を完成させる
(3)再投稿する原稿の手直し
(4)途中の原稿を書き続ける
(5)新しい原稿のためのアイデア・ブレインストーミング
つまり新規のアイデア出しよりドラフトを、ドラフトよりも校正を、締め切りないものよりあるものを、遠いものより近いものを、それぞれ優先する。
目標管理する
書くべきもの=大目標の他に、毎日の〈書く時間〉ごとの小目標を設定しよう。
書くべきもの=大目標については、これを毎日必ず目にするところ掲示しておく。
毎日の小目標については、先に決めた優先順位に基いて、行うべきことをリストにしておけばいい。
具体的な数値目標がのぞましい
たとえば
(1)書き終えた原稿を校正する、最後まで。
(2)締め切りがある原稿の文献リストの抜けを埋める、最後まで。
(3)再投稿する原稿の手直し
(4a)昨日書いた分を読む
(4b)続きとして最低3パラグラフ書く
(5)アイデア・ブレインストーミングとしてラクガキする
ここでは書かなかったが、データ解析や文献読み、資料探しなど執筆に付随することも〈書くこと〉扱いして、小目標に組み入れる。
行った分は先に述べたように記録しておく。
目標達成したら、小さなご褒美を自分にあげる。
できれば同じく書いてる人と二週間ごとに集まって、進行状況と目標達成を報告しあうとよい。もちろん互いに書いているものを読み合って意見交換できるとなおよいが、読み合いや意見交換を義務にするときつくなる。進行状況の報告を基本に、ときどき「もしよかったら」と頼むくらいが続きやすい。
月に1回は、進行を振り返り(ここで記録やそのグラフが役に立つ)目標を修正すること。
修正することを決めておく方が、融通無碍過ぎて目標管理がうだうだになることを防ぎやすい。
(その他の参考文献)
・How to Write a Lotと、ほぼ同じ方法が書かれている本「1日15分で学位論文を書く方法」。Binge Writingに陥ると、それ以下になるってこと。
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・Binge Writingの概念を提起した本
The Psychology of Writing (American Landmarks) Ronald T. Kellogg Oxford University Press, USA Amazonで詳しく見る |
・"How to write a lot"の著者Paul J. Silviaの本業の仕事
Exploring the Psychology of Interest (Psychology of Human Motivation) Paul J. Silvia Oxford University Press, USA 売り上げランキング : 185591 Amazonで詳しく見る |
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・「自分の書く文章は価値がない」を抜け出すライティング・マラソンという方法←自己検閲を振り切って書きなぐるために 読書猿Classic: between / beyond readers
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