スタッフルームから出てきた彼女は僕よりも幾分年下に見えた。
若草色のトップスがよく似合っていた。
新しく入ったばかりだろうか、任されたシャンプーはぎこちない。
でも下手くそで時折顔にあたってしまうその手の感触がいい。
ガーゼで遮られ霞んで見えるはずの若草色がまぶしい。
「お湯加減はいかがですか」
愛想があるほうじゃないし、笑顔もわざとらしいな。
だからこそ受け応えはできるだけ優しく。
彼女に自信をつけてもらいたい。
でも変に優しく扱われるその感じがむかつくだろうか。
マッサージをしてくれるという。
僕の身体は彼女に触られた場所からたちまちほわほわとした若草色のオーラに包まれていく。
全然ほぐれないけど、それでいい。
全身がほわほわで包まれたころ、お役御免となった彼女はスタッフルームへと戻っていった。
いつしか彼女も経験を積み、シャンプーやマッサージもそつなくこなせるようになるだろう。
ハサミを持つそのとき、若草色はどんな色へと変わっているだろう。
その日まで、そっと見守っていよう。
笑顔はずっと下手でいい。