レッド・ツェッペリン オーラル・ヒストリー その3

前回の続き。

衣装

ジョン・ポール・ジョーンズ (略)

実際にステージに上がるまでは、お互いが着ているものについて絶対にコメントしない、というのがツェッペリンの伝統の一部でね。だから時には3人がジーンズなのに、一人だけ白いスーツということもあった。それでキラキラ光る衣装を探してくるようになったんだ。私があのポンポン(飾り玉)が付いている笑えるジャケットを着たのは、ペイジの竜柄のスーツを作った連中がライトバンに服をどっさり積んでやって来たことがあって、その時にあのジャケットを見つけて、「おい、こいつは間違いなく楽しそうだな……」という話になったからだった。

ベンジー・レフェブル (略)

歌がないパートになると、ジミーはジョンジーをボンゾに近寄らせなかった。肝心なのは彼とボンゾだったんだ。ジミーはずっとドラム・セットの前に立っていた。彼はボンゾに指示を出して、どっちに向かうかを彼に伝えていたんだ。ジョンジーはただそこに立っているだけで、彼らの後ろから付いていく感じでね。あれができたのは、彼が本当に素晴らしいミュージシャンで、どんなことにも対応できたからだ。

 あの音楽のエネルギー(の源)はジミーとボンゾだった。あの頃のツェッペリンの何かの映像を見てみると、バスドラの前にいるジミーが身体を使ってボンゾに合図を送っているのが分かるだろう。また、ボンゾのタイムキープはそれこそ非の打ち所がなかったから、お陰でジミーはなにかとんでもない方向に行ったとしても、テンポはしっかり保つことができたんだ。ミュージシャンとしてのジミーとボンゾの間のテレパシーは、ドラッグの摂取レベルにまで及んでいたように私は思う。つまり、「どこまでラリッたら、ちゃんと演奏できなくなるんだろう?」っていうね。

(略)

ジル・コーリガン=デブリン ロバートのあのよく知られている青いブラウスに関するいきさつがちょっと面白いのよ。あれはただその辺に置いてあったブラウスで、ある女の子が私にそれにラインストーンを付けるやり方を見せてくれたのね。そうしたらビープがどこかの工場に行って、ラインストーンを山ほど手に入れてきたの。私たちは飛行機の中で座りながらそれをあらゆるものに縫い付けた。その後、コリイという女の子がシカゴのザ・ドレイクにやって来て、たくさんの惑星が描かれているジミー用のスーツを持ち込んだの。それとポンポンが付いているジョン・ポールのジャケットも一緒にね。

総括:終焉へ

 1973年終盤、1年にわたりグルーピーとドラッグとプライベート・ジェットのもやの中を航行してきたレッド・ツェッペリンは、自分たちの音楽によって解き放たれた狂気の有様を振り返っていた。(略)子どもたちと過ごす充実した時間を切望するジョン・ポール・ジョーンズは、グループ脱退の意志をピーター・グラントに突きつけていた。

 この内省の時期から生まれたのが、『フィジカル・グラフィティ』(略)であり、そしてスワン・ソング・レーベルだった。

(略)

75年アメリカ・ツアーは規模が更に巨大化していたが、一方で、その代償としてペイジの体調維持がますます難しくなり、"獣"ボンゾの酒癖もいっそう悪化してしまう。ツアーのクライマックスとなったロンドンのアールズ・コートにおける1週間におよぶ公演で、ツェッペリンは自分たちが到達できる限界まで自らを高めた。だがそこからすべてがほころび始める。

 まず、ロードス島でロバートとモウリーンが交通事故に遭遇。モウリーンは瀕死の重傷を負い、またロバートは数カ月間、松葉杖生活を余儀なくされる。(略)

[重税を逃れバンドはロスへ逃亡]

LAでうつ状態になったペイジは、常にカーテンを閉じたままヘロインに浸り切る。ようやく4人が再結集し(略)『プレゼンス』を制作した時には、もはや彼らの内面で燃えていた炎は完全に消えてしまったように見えた。(略)

[ピーター・グラントとリチャード・コールがヤクにはまり]

ツェッペリン帝国の監視体制は極度の機能不全に陥る。バッド・カンパニーを除けば、スワン・ソング傘下のアーティストたちは宙ぶらりんのまま放置され、レーベルのロンドン・オフィスはこそ泥かそれ以下の人間の巣窟と化してしまった。

(略)

ペイジは、ドラッグと並行して足を突っ込んだオカルト趣味のせいで苦境に陥っていた。

(略)

 1977年のアメリカ・ツアー(略)被害妄想があらゆる人間にはびこる一方で、グラントの右腕はそれまでのリチャードコールではなく、精神異常者のジョニー・ビンドンに代わっていた。

 こうした問題のすべてが、7月のある週末に悲惨な形で一気に表面化する。コカインでがんじがらめになったグラントとビンドンが、オークランドにてプロモーターであるビル・グレアムの部下を殴り殺す寸前の騒ぎを起こしてしまったのだ。更にはその2日後、プラントの息子のカラックがブラック・カントリーで(略)ウイルス感染により死去する。

 一連の出来事により、「ツェッペリンも、もはやこれまでか」と思われた。しかし、同じミッドランド出身のボンゾがプラントをなだめすかし、なんとか彼をバンドへと連れ戻す。

(略)

 だが、そのアメリカ・ツアーが実現することはなかった。(略)

ボンゾが自分自身の吐瀉物でのどを詰まらせ、死亡。その1週間後、"レッド・ツェッペリンは終わった"ことが発表された。

(略)

ジミー・ペイジ 最後のツアーから戻った時の私は、自分がどこにいるのかすら分からなかった。自分がどこに行くつもりなのかも。(略)とにかくもう……、私は完全に、どうしようもないくらいにからっぽだった。

(略)

ピーター・グラント ある日の午後、(ジョン・ポール・ジョーンズが)私の家を訪ねてきて言ったんだ。「もうたくさんだ」と。そして、「ウィンチェスター聖堂の聖歌隊指揮者になる」とね。

ジョン・ポール・ジョーンズ とにかくもうツアーはうんざりだった。私がピーターの家に行って、「この状況が変わらない限り、もう辞める」と言ったのは確かだ。家族にとても大きなプレッシャーがかかっていたんだ。

『フィジカル・グラフィティ』

ジョン・ポール・ジョーンズ 私がふとクラビネットで〈トランプルド・アンダー・フット〉を演奏し始めたら、(ジョンが)あのドスンという重みのあるドラムでそれに加わってきたんだ。そのフィーリングは最高だった。彼は曲のビートの前でも後ろでも、必要に応じて、演奏することができた。〈トランプルド・アンダー・フット〉には、いばって歩くような雰囲気があった。あれはバンドにとっても、それまでとは違うタイプの曲だったな。

ジョン・ボーナム ジョン・ポールとジミーがリフをやり始めたんだけれど、そのあと自分たちにはちょっとソウルっぽすぎるなということになった。そこで少しばかり変えてみたら、私にとっては最高になったんだ。ドラマーにとってあれは最高のリズムだった。とにかくペースがちょうど良い感じで、こっちはフィルをたくさん入れられたからね。

ジミー・ペイジ 『フィジカル・グラフィティ』には今の人たちにはできないようなあらゆる類のことが詰まっている――私たちにはできたんだけどね。私たちはいつも前向きな姿勢でコンスタントに仕事をしていて、しかも、良い音楽を作ること以外の目的なんて何もなかった。(略)

ロン・ネヴィソン ジミーは本当に仕事熱心だった。彼はよくモバイル・トラックの中に入ってきて、録音済みのすべてを聞いていた。当時の私は、彼は自分のギターが気に入らないんだと思っていた。でもその後、彼は今私がやっていることをやっていたんだな、と気付いた。つまり、ドラムの音をがっしりとさせるため、ギターを控え目にするっていうね。

 私にとってツェッペリン全体の何が肝かというと、実はあのギターについていくジョン・ボーナムなんだ。彼はギターのリフを拝借して、それをドラミングの一部にすることができた。〈シック・アゲイン〉や何かを聞けば、彼がリフに耳を傾け、そしてそれをドラミングに取り込んでいるのが分かるだろう。単に4分の4拍子を続けながらベース奏者と一緒にリズムを刻むんじゃなくて、その代わりに、彼はギター奏者に合わせていたんだ。

フィル・カーロ ジミーがオリンピックのエンジニアのキース・ハーウッドと一緒にフラットに来た時があってね。二人は〈カシミール〉をやり終えたばかりで、ジミーはあの曲のありとあらゆる部分に心底から興奮していた。それまでに手がけたどの曲よりも、あの曲には満足しているように見えたよ。

バッド・カンパニー

 エイブ・ホック スワン・ソングは基本的には、ジミーに(ツェッペリンの)カタログの所有権を与えるためのものだった。スワン・ソングは彼らのマスター・テープの直接かつ第一所有者で、基本的にはそれをアトランティックに貸与する契約になっていた。

(略)

フィル・カーロ ある日、クライヴ・クールソンが私のフラットにやって来て言ったんだ。「今、バンドを作っているところなんだ。バンド名はバッド・カンパニーになる(略)このバンドはとんでもなくでかくなるぜ」とね。クライヴはサイモン・カークと一緒にその計画全体をまとめ上げた。

(略)

サム・アイザー クライヴはそれまでジミーのローディーだったんだ。彼は聡明な男で本当に立派な奴だった。あの時彼は人生を賭けるチャンスを嗅ぎ付けたんだよ。

(略)

ユニティ・マクリーン クライヴはバッド・カンパニーに誰も近づかせなかった。バッド・カンパニーは彼のバンドであり、彼の秘蔵っ子だったのよ。誰かが何かをやろうとすると、彼はすぐに「お前は何をやっているんだ?なぜお前は邪魔をするんだ?」と突っかかっていた。彼は自分のご主人様から学んだのね。

ベンジー・レフェブル (略)ポール・ロジャース(略)はいつもケンカ腰のつまらない奴だったけどね。

デジリー・カーク(サイモン・カークの元妻) ポールはプリマドンナ気取りだった。バンドの他のメンバーの準備ができている時でもポールの気分が不安定な日には、全員が彼を待つことになった。それに彼は気性が本当に荒かった。彼が自分の奥さんの顔を殴って前歯をへし折ったのを見たことがあるわ。そうしたことのすべてはウイスキーが原因だった。

(略)

ベンジー・レフェブル バッド・カンパニーはどうやったってツェッペリンのようにビッグになれるはずがなかったけれど、それでも本人たちは必死でそうなりたがっていたし、その可能性はあると考えていた。(略)

クライヴはピーターになりたがっていたが、しかし、そのチャンスはゼロだった。彼は人々がピーターに対し示している敬意がうらやましかったんだと思う。(略)

グラントの歩んだ道を後追いした彼は、残念ながら、間違ったことばかりを学んでしまっていた。

リチャード・コール

グレン・ヒューズ コールは私の人生で出会った中で誰よりも恐ろしい人間だった。(略)

「お前をつぶしてやるぞ!」と言っている時の彼はまるで、「オレがお前を殺しても、誰にも気付かれやしないんだからな」と言っているかのようだった。

ジャニーン・セイファー リチャードは育ちが悪かったのかって?(略)

とにかく彼の態度は、「くたばれ、この野郎」という感じだったのよ。(略)

でも彼をクビにしてバンドが知らない別の人間を雇うなんてことは考えられなかったし、そんなことは不可能だった。

マリリン・コール 私たちはプレイボーイ・クラブで結婚して、ピーターがすべての費用を払ったの。(略)

私はリチャードにどのくらい稼いでいるのかを訊いたの。それで彼の答えを聞いた私は、「なんですって?」と言った。「それで私は大丈夫だけれど、リッチ、あなたはどうやって暮らしていくの?」と。彼らは誰よりもケチな人間だった。リチャードはピーターを崇拝していた。ピーターは彼の父親であり神であり指導者だった。そしてそこに足を踏み入れたのが私だった。

ジャック・カームズ ツェッペリンの人間たちは、リチャードが別の人間に雇われることなんてありえないと思っていたはずだ。でも、エリック・クラプトンの461オーシャン・ブールバード・ツアーの際、私は彼をツアー・マネージャーに起用したんだ。

マリリン・コール ロバート・スティグウッドは、エリックを隠居生活から引きずり出すために、リチャードにツェッペリンの1年分の報酬の3倍を提示したのよ。2ヵ月間の仕事に対してね。リッチは私に、「ううん、でもオレは彼らから離れられないから」と言った。それで言ってやったのよ。「あんた、一体どういうつもりなの?これを断ったら、もうお終いよ」と。愛しきリチャードには、自尊心というもののかけらすらなかった。

(略)

リチャード・コール 報酬はツェッペリンが私に支払っていた額より圧倒的に多かった。100倍くらいあったかな。8週間で1万6000ドルとかそのくらいだった。アーメットに相談すると彼は、「やるべきだ」と言ってね。決断の前にピーターに電話をかけて、「オレがやった仕事すべての報酬として、スワン・ソングの一部をオレにくれるつもりはあるか?」と訊いた。彼がノーと答えたので私は言ったんだ。「そうか、じゃあオレは明日の朝から離れるよ」と。

ジャック・カームズ あの頃のリチャードは相変わらずしょっちゅうドラッグをやっていて、一方のクラプトンはそれから抜け出そうとしていた。だからリチャードは微妙なバランスの上を歩かなければならなかった。

(略)

クラプトンのツアーには、本人がカムバックの途中段階にあったために、ある種の弱々しさが伴っていた。でも彼は良い仕事をした。ツアーを成功させるため、プロとして十分な仕事をしたんだ。

リチャード・コール 信じてもらいたいんだけど、アーメットはずる賢い年寄りのクソ野郎だったんだ。(略)彼が、「来年、ツェッペリンがまたツアーをやるのを知っているよな」と言うので私が、「その話は聞いている」と答えると、「お前はやるんだよな」と言うんだ。「いいや、奴らなんかどうでもいいさ」と答えると、「お前はやらなくちゃいけない。お前以外に誰がやるんだ?」と言うんだよ。彼がピーターに話をしたのかどうかは知らないけれど、でもその後ジミーとロバートがパングボウンまで私に会いに来たんだ。

マリリン・コール ジミーとロバートとピーターが私たちのあばら屋に来たのよ。それまで一度もそんなことはなかったのにね。リチャードはもちろん女王を歓待するみたいに彼らを出迎えた。(略)

結局彼らはリチャードの給料を4倍にして、ジャガーを一台彼にあげて、経費用口座の金額も大幅に増やした。

(略)

クリス・チャールズワース あの目に見えない不快感は本当に無用だった。彼らは世界最大のロックバンドだったんだ。彼らはストーンズとフーよりも人気があった。(略)

そういう立場にあったバンドの中で、ああした潜在的な暴力が付いて回ったバンドは他にはなかった。(略)

フーの場合、酷いギグの後に控え室で口論はあったけれど(略)相手を威嚇するようなそういうネガティブな雰囲気とはまったく違っていた。ツェッペリンはまるで自分たちこそ相手を支配する法律のように振る舞っていた。ギャングを周辺に置いて自分たちを守っていたし、望むことならほとんどすべてやることができた――殺人以外はね。

(略)

ダニー・ゴールドバーグ (略)リチャード・コールに逆らわないのは当然のことだったが(略)誰よりも暴力沙汰を起こしやすかったのは酔っぱらった時のボーナムだ。(略)その彼をなだめるのがリチャードの仕事だった。

凶暴ボーナム

ニック・ケント ボーナムはコカインをやることで更に飲めるようになっていた。

(略)

みんな彼がヘロインにハマるのを心配していた。「何があっても、彼にヘロインだけはやらせるな。彼ならいっぺんに全部吸って、オーヴァードーズしてしまうからな」と。

(略)

ジョン・ボーナム(1975年の発言) 以前より悪くなっている――いつも酷い気分なんだ。いったんロックンロールを始めてしまえば問題ないんだけどね。(略)

酷い演奏をしてしまうことが不安なんだ。バンドの全員が同じさ。(略)

デイヴ・ノースオーヴァー リモに乗ってギグの会場から帰ってくる時、誰もが疲れて切っているのにボンゾだけは極度の興奮状態にあった。彼が静かにベッドに向かうなんてありえなかった。彼は明るくなるまで絶対に眠らなかったよ。

ジョン・ポール・ジョーンズ ボンゾが飲むのには理由があった。家から離れていることが大嫌いだったんだ。(略)それに飛行機での移動をかなり怖がっていた。

(略)

ジャニーン・セイファー 個人的にボンゾに恐怖を感じたことは一度もなかったわ。彼はまるでお人形のようで、誰よりも優しい人間の一人だと思っていた。パットが一緒に付いていない時は、可哀想なくらい不幸だった。あまり聡明ではなく、知的な方でもなかった。バンドの4人の中で踏ん張る力が一番弱かったのが彼ね。彼はドラムを叩くのが好きで、奥さんを愛していた。でも彼女がそばにいない時には、完全にたがが外れてしまっていた。

マリリン・コール ボンゾにはグルーピーの存在がうっとうしかったのよ。彼はそういう女の子たちを、「あの腐った売女」と呼んでいた。彼は彼女たちを受け入れることができなくて、その存在自体に怒りを感じていたわ。

クリス・チャールズワース (略)[機内で酩酊から目覚めたボンゾが]キャビンアテンダントを暴行しようとしたんだ。文字通り、後ろから馬乗りになってね。その瞬間まで私たち全員が楽しく過ごしていたのにさ。ジョーンズがオルガンを弾いて、みんながそれに合わせて歌ったりして、楽しく飲んでいたんだ。でもボーナムの登場と(略)行為によって突然雰囲気が変わった。

(略)

ニック・ケント ボーナムとコールよりも振る舞いが酷い人間には人生で一度も会ったことがない。一度、彼らが何の理由もなく男を叩きのめして、その後その男の顔に金を放り投げていったのを見たことがある。プラントがボンゾのことを"最高の変人だ"と言っているのを聞いた時は吐き気がしたね。なぜって、彼はまるで『わらの犬』から抜け出してきたかのような、統合失調症の獣だったんだから。

(略)

デイヴ・ノースオーヴァー ハイアット・ハウスで私のスイートはジョンのスイートの下だったんだ。それでドアをックする音がして、開けてみたらそこにキース・ムーンがいた。(略)

[ボンゾが部屋に入れてくれないから、外からよじ登ると言い]

キースがバルコニーの上に立って、私は彼の足首を握った。彼が、「よし、上げろ!」と言った時私は、「もし私が手を離したら世界中でニュースになるだろうし、オレの命はないな」、などと考えていた。でも彼は上手くバルコニーをよじ上ってジョンのスイートに突入したんだ。ジョンは驚きおののいて、トイレにすべてを流してしまった。そうしたら次に私の部屋に電話がかかってきてね。「もっとブツを手配してくれ」と頼まれた。

 どういう理由か知らないけれど、ジョンはあの部屋に小型のアップライトピアノを用意させていて(略)ドカン、ガラガラ、という音がして(略)ガッシャーンというでっかい音がそれに続いた。彼らはそのピアノをバルコニーから落っことしたんだ。下に停まっていたリモ直撃まで、あと3mくらいだったな。

グレン・ヒューズ (略)ジョンがポケットからコカインのでかい塊を取り出してさ。彼はそれを両手に全部乗っけると、そのままそれを顔面で受け止めたんだ。私たちはぼろぼろ崩れ落ちるそのコカインの粉を受け止めてね。

(略)

ベンジー・レフェブル あれほど大量のコカインなんて見たこともなかった。あの道に踏み出してしまうと、決してこれで十分ということがなくなって、常にもう少しだけ更に多く欲しくなるんだ。

ニック・ケント ハリウッドには数えきれないくらいコカインのディーラーがたくさんいて、バンドにはタダでコークをくれていた。なぜって、彼らは、「先週のフォーラムでのツェッペリンを見たか?実はね、彼らは"オレの"コカインでハイになっていたんだ」って言いたかったんだよ。

(略)

ベンジー・レフェブル (略)1973年は疑いの余地なく最高に素晴らしくて楽しい年だった。1975年のツアーでは、それとは逆に、ジミーがあまりにやり過ぎてしまって、演奏できないほどだった。

(略)

ピーター・クリフトン ピーター(・グラント)はとにかくジミーを愛していて、彼に対しては信じられないくらい優しかった。(略)

ピーターが突然飛び上がって、慌てて部屋から出ていった(略)キャロル・ブラウンに、「どうしたんだ?」と訊くと彼女は、「ジミーがドアに指を挟んだ」と教えてくれた。あれはまるでサッカーチームの監督とそのお気に入りの選手のようだった。ジミーは壊れやすい天才だった。彼には白く光り輝くような美しさと、無力感が同居していた。

対等になったロバート・プラント

ベベ・ビュエル ロバートのことは最後まで良く分からなかったけれど、でも私にとっての彼はいつも優しくて、本当にラヴ&ピースな感じだった。彼はお気に入りの女の子一人と籠っちゃったら、二度と姿を見かけなくなるタイプだった。彼はどこに行っても、自分の"家族"をまた作ろうとしていた。

(略)

マリリン・コール (略)ジミーとピーターとリチャード(略)はいつも"パーシー"の後ろで彼のことをからかっていた。もしかしたら彼らは単に嫉妬していただけかもしれないけれど、でも彼はスケープゴートだったのよ。ブロンドの髪で、ちょっとしたブラウスを着てたフロントマンの彼がね。(略)

彼は他の面々よりも自分に確信があって、そういうことに対処できるだけの寛容さがあったのかもしれない。彼は、あの神秘とか魔法とかの話には巻き込まれなかった。彼がコカインの山の前に座っていることなんてなかったわ。彼は家に帰っていたもの。一方でピーターとジミーはお互いに対してもっと深くかかわっていた。

マイケル・デ・バレス ロバートには乱闘騒ぎの上空を飛んでいける白い羽根があったんだ。彼はその上を飛んで、それを見て微笑んだり、笑ったりしていた。彼には運転手は必要なかったし、召使いも必要なかった。彼とジミーの違いは、彼の場合、一歩外に出て状況の全体を観察できたという点だね。彼は超越的なものの見方をしていた。

(略)

ダニー・ゴールドバーグ (略)最初の頃、ジミーは実質的に人間関係を完全に支配していた。彼はグループの創設者にして、レコードのプロデューサーであり、また、作曲者でもあり、グループのメンタル面の中心だった。そして基本的にはある程度のところまでロバートのことも支配していた。ただし、ロバートには彼自身の人生と自分がやるべきことがあった。二人の関係でより強かったのはジミーの方だ。なにかについて意見が分かれることがあっても、もしジミーがそれを強く主張すれば、ロバートはそれに同調していた。

 でも時が進むにつれ、ロバートも歳を重ねてどんどん自立していって、そしてついに今ではロバートの方が強くなったんだ。明らかに彼の方が成功しているしね。でも、私としては、ツェッペリンの最後の方では、ロバートは自分はジミーと同格だと断言できるくらいの自信を手にしていたと思う。

ニック・ケント プラントは自分のことは自分で仕切りたいタイプの人間だった。彼に関して重要だったのは、アメリカにおいてほんの短期間のうちに彼がセックス・シンボルになったということだ。(略)

確かにペイジはレッド・ツェッペリンのリーダーだった(略)

でも、プラントがあそこまで人気になると――彼はロックのバイキングの王子だった――突如としてジミーは彼にあれをしろこれをしろと指図できなくなったんだ。例の、「オレがヤードバーズにいた頃、お前はまだウェスト・ブロムウィッチで道路を直していたんだ」というそういう態度ができなくなったんだ。プラントもそのことを認識していたし、突然、周囲の人間も彼をグランそれまでとは別の形で扱うようになった。ピーター・グラントももはや彼に指図はできなくなった。なぜって、もしプラントに何か気に入らないことがあれば、彼はそれについて言葉にするようになっていたからね。しかも、もしも更に状況が悪くなれば、プラントはバンドから抜けることだってできたんだ。

(略)

ジャニーン・セイファー ジョン・ポールは信じられないくい聡明で、いつだって4人の中では一番大人で、他の3人からは切り離された存在だった。

(略)

マリリン・コール ジョンジーは最後まで、レッド・ツェッペリンの一員にはあんまり見えなかったわね。彼はまるでロック・ミュージシャンに囲まれたクラシックのミュージシャンみたいだった。

ジャニーン・セイファー 音楽面でジミーとぶつかるのはジョン・ポールだった。バンド内でそんなことをするのは彼しかいなかった。彼はよく、「いや、それは響きがよくないな」ということを言っていた。その場合、彼ら二人は少なくともそれについて話し合っていた。ジミーは彼に対しては横柄じゃなかった――ほとんどの人間に対してはそうだったけれどね。

ロードス島での事故

ベンジー・レフェブル ロバートが生きている世界は、ロードス島での交通事故の瞬間から、すべてが変わり始めたんだ。ああいった身体的な(ダメージを負う)経験をした時というのは、"自分は何者か?"とか"自分は何をやっているのか"といったことを考えざるをえなくなる。27歳だったらまだどんなケガからだって回復できると思うかもしれないが、でも、彼はそうはならなかった。今でも彼は腕を完全には動かすことができないんだ。

(略)

ガイズ病院に運び込まれた時、モウリーンは臨床的には死んでいた。

(略)

オーブリー・パウエル ロバートと私の友人としての関係は、彼が車椅子や松葉杖の生活を送っていた時に本当に強固なものになったんだ。彼が(それまでの生活から)距離を置きつつあることがはっきり見て取れたね。女装する日々は過去のものになっていた。(略)彼は自分の人生に起こったことに関して、少しばかり恐怖を感じていたと思う。

『狂熱のライヴ』、パンク登場

ミック・ファレン あの映画を見に行ったんだけれど、あらゆるナンセンスが頭に入り込んでくるみたいな感じだったな。ギャングとかクロウリーとかイギリスの精霊とかさ。楽しめるものじゃなかったし、支離滅裂だった。彼らに対して少しばかり残っていた共感がすべて消え去ったのもあの時だった。

(略)

私は本気で彼らがパンクロックを作り出したんだと思っている。なぜならあれこそ正に、「このクソみたいなのをやめろ!」っていう話だったからさ。あの頃の音楽はどんどん簡潔になり始めていた。ピストルズからロックパイルに至るまでのすべてが、一点に向かって引き戻されていたんだ。ロックンロールは突如として再び人間サイズになったんだ。(略)

パンク・バンドはフーに敬意を示す必要があったけれど、それは彼らが必死になってフーから盗んでいたからだった。それと、パティ・スミスはキース・リチャーズのTシャツを着ていたしね。でもパンクはゼップからは何も盗まなかった。

(略)

ラット・スケイビーズ (略)彼らの長ったらしい曲はどれもまったく好きになれなかった。〈幻惑されて〉は私をブルース嫌いにしただけだったしさ。でも彼らにも本当にクールな短いリフを使ったロック・ソングがあって、そういう曲はポジティブなエネルギーを振りまきながら突っ走って行く感じがした。1975年には、私たちも〈コミュニケイション・ブレイクダウン〉にはパンクのエネルギーがある、と認めていたかもしれないな。(略)

 1976年になると、ツェッペリンのようなバンドが好きだったことがあるなんて、絶対に口にできなかった。

(略)

ポール・シムノン レッド・ツェッペリン?オレに彼らの音楽を聞く必要なんてない。オレがやらなくちゃいけないのは、どれでもいいから彼らのアルバムのジャケットを見て、吐きたい気分になることだけだ。

(略)

アラン・カラン 音楽業界で誰かと話すと、そのほとんどは"くたばれ、レッド・ツェッペリン"という態度だったね。(略)

でも(略)ツェッペリンの面々はよくオフィスに来ては、「セックス・ピストルズのニュー・シングルは本当に最高だ」とか言っていたんだ。

ダン・トレーシー(テレビジョン・パーソナリティーズ) 私たちの最初のシングルは私がスワン・ソングで働いて貯めた金で作ったんだ。867枚刷ったけれど、それが私たちの予算の精一杯だった。ある日私がオフィスで『サウンズ』に載っていた私たちのシングルの記事を読んでいると、そこにジミーが入ってきてね。彼は、「お前、自分のバンドを持っているんだろ?お前はパンクスか?」と言った。私はすべてを――録音もマスタリングもラベルの印刷も――自分たちでやっていることを説明したら、彼はかなり興味深げだった。

(略)

ジョン・ポール・ジョーンズ パンクを初めて聞いた時は好きになれなかったな。(略)自分が初めて組んだバンドのギタリストがソロに挑戦した時のことを思い出したよ。ただし、パンクは確かにもやもやした雰囲気を吹き飛ばしてくれたし、お陰で私たちは自分たちの物事の進め方に目を向けることにもなった。自分たちがなっていた姿がどんなものなのかを確認するためにね。

(略)

BP・ファロン 私はダムドを見に、ロキシーにロバートとジミーとボンゾを連れて行った。彼らはみんなあれを気に入っていた。というのも、ダムドの音楽は彼らがそれまで聞いてきたものを凝縮したようなものだったからね。つまり、アーカンサスから生まれたワイルドで粗野なロカビリーってやつだ。

(略)

ラット・スケイビーズ 私たちがステージに出る直前にジェイクが入って来て言ったんだ。「レッド・ツェッペリンが今入ってきたぞ」とね。それでステージで演奏しながら彼らを探したら、会場の後ろの方にあの長髪のシルエットが見えた。

ジョン・ライドン ロバート・プラントがロキシーに行った時、彼は5人くらいの取り巻きを連れていた。バンドの半分とその他の連中さ。全部で20人くらいいたな。彼らは隅っこに陣取って、それで気取った態度で通り過ぎる人たちに悪態をついていた。まるで"オレたちは特別な存在だ"と言わんばかりにね。

(略)

ラット・スケイビーズ ロバートと話したのを覚えているよ。その後で、年寄りのヒッピーと話したっていうだけでマーク・ペリーから散々なことを言われたけどね。「なんのためにあのマンコ野郎と話してたんだ?本来オレたちは彼を蹴飛ばしてやるべきだろ?」とね。

『プレゼンス』

ジミー・ペイジ 『プレゼンス』はグループに定住する場所がなくて、ジプシーみたいに過ごしていた時に録音したアルバムだ。拠点もなし、帰れる家もなし、だった。自分に関係があることと言えば、新しい地平線とスーツケースだけっていうね。そのせいで、とにかく移動が多くて、とんがった気持ちになっていた。そういう状況に自分が置かれていることに対するネガティヴな感情でいっぱいだったんだ。

ジョン・ポール・ジョーンズ (略)バンドは時間通りに約束の場所に現れる人間と、そうじゃない人間に二分されていた。もちろん、最終的には私たち全員が集まって、あのアルバムを作ったわけだどね。でも初期の頃ほどお互いに対してオープンな感じじゃなかった。

(略)

あの時の私たちは(略)「いや、ちょっと待てよ。オレたちは必要以上にバラバラになってきているな」と思い始めていた。

エイブ・ホック (略)ロバートは杖をつきながらひょこひょこ歩いていたけれど、ベッドに横になっていることが多かった。彼は新作のために歌詞を書いていたんだけれど、その"新作"とやらはいつまでたっても作れそうになかった。なぜって、ジミーが目覚めていなかったんだ。

(略)

ロバート・プラント 〈アキレス最後の戦い〉は、暴走したプログレッシヴ・ロックみたいで素晴らしかった。私たちがあれを書いた時のことを覚えているけれど、あれは本当に美しい曲だった。あの曲はモロッコに戻って、それでまた大切なものを取り戻すことがテーマだった。曲は素晴らしかったし、あれをライヴでやった時は信じられないくらい良かったことが何度かあった

(略)

エイブ・ホック ある日、ジミーの目が覚めて、髪をくしゃくしゃにしながらスタジオに入って、それでギターをいじり始めたんだ。その音が建物全体に響き渡って、みんなに伝わった――"彼がスタジオの中にいる"ということがね。ジョンジーとボンゾは気が狂ったみたいに地下に走って降りて行った。彼らは一緒に演奏して、食べ物を持ってこさせて、そしてその17日後、私たちの手には、でき上がったこのレコードがあったんだ。

(略)

単なる見物人の目にとってすら驚くべき光景だった。なぜって、一見するとただのジャム・セッションに見えていたのに、実はそうじゃなかったからさ。あれはすべてがしっかり練り上げられたもので、どの曲も細かな部分に至るまでしっかり考え抜かれていた。しかも、歌詞~ブリッジ~歌詞という構成じゃないのに、あの曲を聞いた後は歩きながらハミングしたり歌詞を口ずさんだりできたんだ。あれはそれまで目にしたことのある何よりも奇妙なものだった。

ジミー・ペイジ みんなが、「ああ、ジミーは調子が良くないんだな」と言う時期があった。(略)でも私が事実として知っているのは、『プレゼンス』の録音と仕上げとミックスが3週間で行われたということだ。しかもそれは意図的だったんだ。あれこれいじり回してしまわないようにね。

スティーヴ・ウェイス

ピーター・グラント スワン・ソングに関して私が後悔しているのは、あれをまともに経営できる人間を連れて来なかったことだ。(略)

エイブ・ホックでは上手くいかなかった(略)

もしも最初からアランを起用していたなら(略)上手くいっていたんじゃないかと私は思う。結局彼もスティーヴ・ウェイスのエゴと衝突してしまったけどね。

アラン・カラン スティーヴはニューヨークでただ一人のイタリアン・マフィアのユダヤのホモだった。それと、あの組織の中で唯一、麻薬常習者じゃなかったのが彼だったと思う。彼はあの集団におけるサリエリだった。とにかく物事を妨害するのが彼だった(略)

ウェイスのエゴはピーターとジミーを悩ませていた――アトランティックに対しツェッペリンを利用してふざけたまねをしたりしてね。

(略)

ユニティ・マクリーン スティーヴはとても賢い人間だった。とても人当たりが良くて、とても格好良かった。謎に満ちた人で、たぶんあのレーベルのすべての活動の陰のブレインだったんだと思う。

(略)

サム・アイザー スティーヴは嫌な奴でね。食事に招待したいな、なんて思える人間じゃなかった。彼はエゴイスティックで、情緒不安定で、他人を何かといじめる男だった。

(略)

ニック・ケント ペイジはウェイスに我慢ならなかった。彼はいつも、「クソッたれのスティーヴ・ウェイスはここで何をやっているんだ?」と言っていた。レッド・ツェッペリンの世界で陰の実力者気取りでいる彼を彼らは好きじゃなかったんだ。

ジェイク・リヴィエラ

ユニティ・マクリーン よくデイヴ・エドモンズのマネージャーのジェイク・リヴィエラに会いに行くことがあったの。彼は誰よりも皮肉屋で付き合い難い男だった。彼はピーターが大嫌いだった。デイヴがあんな風に扱われていたせいで、とにかくピーターを毛嫌いしていた。

(略)

数多くのパンク・バンドがツェッペリンに対し突きつけていたあの敵対心は、ジェイクから派生したものなんじゃないかなって私は思うの。

(略)

アラン・カラン ジェイクに関して不運だったのは、彼自身がピーターと張り合わなければならない、と思っていた点だ。「オレはピーター・グラントと同じくらい重要な人間だ」といった感じでね。ある意味、ピーターはとてもまったりした人間なのに、ジェイクの場合、やって来くるとやたらに偉そうな態度をするんだよ。

サム・アイザー ジェイクは史上最高の怒れる男だった。あれは、彼対スワン・ソング、彼対世界という構図だったんだ。でも時にはそういうのも必要なんだよ。デイヴ・エドモンズにはそれが必要だった。なぜなら、彼は基本的に他人に食い物にされていたからね。

ジェイク・リヴィエラ ユニティをはじめとするあの辺の人たちはみんな良い人だったよ。でも彼らには何もできなかった。彼らは手足を縛られた状態でいつもピーターとジミーを待っているんだ。アラン・カランは良い奴だったけれど、無力だった。私はスティッフ・レコードの出身だったしね。あそこでは、もし気に入ったアーティストがいれば、パスウェイ・スタジオに行って録音して、次の日にはレコードを出すことだってできた。でもスワン・ソングでは、デイヴのアルバムが1ヵ月も発売延期になったりするんだ。それも、ジミーがジャケットのデイヴの髪にエアブラシで悪魔の絵柄を追加するためだけのためにね。

ユニティ・マクリーン デイヴに関してピーターはとにかく投げやりだったし、あれは悲劇だった。だから、ジェイクがあれほど腹を立てていたのも私には理解できたわ。

ジェイク・リヴィエラ (略)

私は28歳で、そして世界の頂点に立ち、"自分はちやほやされている"といううぬぼれがあった。そして[ピーターから]電話がかかってきたんだ。(略)

私は、「ああ、こんにちは。グラントさん」と下手に出た。すると、「やあ、ジェイク。オレたちはちょっと話をしないといけないと思ってね」と言ってきた。私は打ち合わせのためにホースランジズに呼び出された。

(略)

ニックはピーターを死ぬほど恐れていたな。アーメットとジェリー・ウェクスラーは良い人たちだったが、ただし、スティーヴ・ウェイスはとにかく信用ならない生き物だった。

(略)

エドモンズを契約から抜け出させるために(略)何でもやる覚悟だった。

 [迎えの]リチャード・コール[は](略)運転手付きのロールスロイスで登場した。私は、「これは脅しだ。でも、ジェットコースターに乗りたいのなら、料金を払わなければならない」と思った。

(略)

ホースランジズにクルマで入って行った時は、「なんだってオレはデイヴ・エドモンズのクソ野郎のためにこんなことをしているんだ?」と思ったね。

(略)

1時間待った頃、ロンが戻ってきて、「彼はまだ準備中だ」と言った。それからさらに1時間半待った私はなんとか冷静でいようとがんばった。

 そして遂に日本のゆかたみたいなのを着たピーターが現れた。140キロ近い体をした飢えた、そして明らかに不愉快そうな男だった。彼は座るなりコカイン入りの大きな茶色の瓶を取り出した。そして、「どうも、ミスター・パンクロックさんよ。お前さんはちょいとばかり自分が賢いと思っているみたいだな、ん?」と言った。私は、「自分はかなり頭が良い方だと思いますけど、でもせいぜいあなたと同程度ですよ、ピーター」と返した。

 彼は、「フィル・カーソンから聞いているが、お前さんは知らないふりをして他人のものを漁る奴だそうだな」と続けた。(略)

 彼が、「オレたちはロックパイルと契約したい」と言ったので私は、「それは良い話だけれど、でも、残念なことにコロンビアは絶対にニック・ロウを契約から解放しないでしょうね」と答えた。ピーターとのやり取りは2時間続いたんだけれど、話しの基本は、「私は若くて、震えています。私は20年前のあなたです」ということだった。私は、「あなたは私のヒーローです。私はスワン・ソングと同じくらいクールなレーベルを作りたいと思っています。デイヴ・エドモンズはバカ野郎で、あなたは面倒な話はご免ですよね。ですからどうか彼のことは私に預けてもらって、あとはご自分のお仕事をやってください」と話した。

 彼は、「お前はオレたち全員を過去の遺物だと思っているのか?」と言った。私は、「いえ、とんでもない。ジミーとロバートはダムドを2回見に来ましたが、あれには敬意以外の何も感じていません。私はただのイーストコウト出身のモッズです。自分には小さなレコード・レーベルがあり、そしてこれはそんな私にとって大きなチャンスなのです」と答えてこう続けた。「もし私たちがこれをやらなかったら、ロックパイルなんてものは存在しなくなりますし、あなたはデイヴと一緒に袋小路にはまることになります」と。私は淡々とこちらの理由を並べていった。すると驚いたことにピーターがこう言ったんだ。「良いだろう。お前が気に入った。お前にそれをやらせてやるよ」と。私たちは握手して、それで私はその場から離れた。あの時の私は興奮のあまりあそこの堀をジャンプして飛び越えることだってできそうな気持ちだったよ。

ユニティ・マクリーン すべては一番上にいる人間から始まるのよ。人に対し攻撃的な態度を取るのが大好きなのはどれも下っ端の連中で、みんな、「そうだ、やるんだ。オレがお前に金を払ってやる。最悪を尽くせ」と命令されるのが好きなのよね。

エド・ビックネル もしも何かの責任者が完全に脳みそのくさった迷惑な奴だった場合、そいつの下にいる全員も結局くさった奴らになってしまうんだ。

(略)

オーブリー・パウエル 私がスワン・ソングに行くと、出迎えたリチャードがこう言うんだ。「おい、おマンコ野郎、一体お前は何が欲しくて来たんだ?」。それで私が、「ロバートとの打ち合わせに来ただけだよ」と答えると彼は、「お前はあの長髪の間抜けと一体何を話したいっていうんだ?」と言ってね。あれはもう、とにかく狂気のエネルギーで満たされた場所だった。

ジェイク・リヴィエラ 彼らがどこからあの連中を掘り出してきたのか、私には見当もつかない。彼らはまるで未開の原人みたいだった。マグネットと呼ばれていた男がいたんだけれど、彼は一言話すたびに汚い言葉を挟むんだよ。(略)

私がちょっとイライラした態度を見せると、「オレに偉そうな口を利くんじゃねえぞ、このおマンコ野郎!」と言われた。私は、「こんなクソみたいな状況はオレには無用だな」と思った。デイヴも自分がそうした状況に囚われの身だと知っていた。ただし、彼はロバート・プラントからどれほど自分が素晴らしいのかという話を聞くのがとにかく好きだったんだ。

(略)

ユニティ・マクリーン ジョニー・ビンドンはフラムのアイルランド人の大家族の生まれで、私が思うに、子どもの頃、かなり酷い扱いを受けたんでしょうね。(略)

[ピーター達は]自分たちが地獄にいるとんでもない生き物の鎖をほどいて世に放ってしまったことを理解していたとは思えない。

(略)

ベンジー・レフェブル ビフォ(=ビンドン)がオフィスに入ってくる時や、彼と一緒にウォーター・ラットに行く時はいつも本当に怖かった。でも、ある程度までは信じられないくらい面白くもあったんだ。

アラン・カラン 彼らが初めて殺しの脅迫を受け取った時がツェッペリンの大きな転換点だったと私は強く思う。(略)

ビンドンのような人間(略)ならもし何かまずい状況になった時でも、自分たちの代わりに銃弾を身体で受け止めてくれるだろう、という考えがあったんだ。

(略)

マリリン・コール ピーターは絶望的なくらい孤独だったわ。(略)そこにビフォが登場したのよ。(略)とにかく頭が切れたし、人を楽しませるのが上手かったのよ。突然自分のイチモツをさらけ出す彼とはまったく別の面もあった。(略)シェイクスピアを暗唱したりしたのよ。しかもとても流暢にね。ただし彼は非常に不快で危険な人間でもあった――精神異常者なのかと思うくらいにね。

(略)

パメラ・デ・バレス  彼らは間違った人間ばかり採用していた。ストーンズがオルタモントでヘルズ・エンジェルスを雇ったみたいにね。

(略)

BP・ファロン ビンドンは酷かった。私たちが存在していたのはああいうことのためじゃなかった

次回に続く。

 

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