ジョージの朝、オサマの夢

テキサス生まれは、なにかかなしい。
空のいろが澄んで、水がつめたく、
ふれるものがなんでも痛くて、よそよそしい。
もう一度、NYが空無になることを考えるのは、
ジョージにはあまりにつらいことだ。
  
ジョージの艦隊は、竜舌蘭のやうに分厚に肥り、白い粉を
いちめんにふいて、じっと開いている。
  
セム人の頭のなかには、陰気で、執拗な多足虫がいる。
目のまわりの痣のような黒さ。
回教徒の傲慢と、しいたげられた民族のくらさとは、
復讐をたくらんでいるものの表情を、彼らに与える。
  
古綿のような女の腹に手をおいたまま、
ジョージは眠りこける。
女のぽかりとあいて、白っぽけた口尻から、
透明な涎が一すじ、頬につたわる。
  
オサマはいま、ふしぎなところにいる。どこかの国境だ。
オサマのいるのは、くらい貨物列車のなかである。
種牛をはこぶ車である。夜は明けていない。
車は、うごいている。
オサマは、夢で、女のうつくしさをみていた。

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