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恐るべき人類の環境適応能力。ヒ素に耐性をもつ民族の存在が明らかに(スウェーデン研究)

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photo by Pixabay

 ヒ素と言うと、和歌山毒物カレー事件や森永ヒ素ミルク中毒事件などを引き起こした、「致死リスクが高い、猛毒な化学物質」というイメージがある。

 実際にヒ素は生物に対する毒性が強く、毒物及び劇物取締法により医薬用外毒物に指定されている。

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 間違って飲み込むと、吐き気、嘔吐、下痢、激しい腹痛などがみられ、場合によってショック状態から死に至る。例え少量でも肺に影響を及ぼし、慢性的に服用すると、皮膚の色が変わり、黄疸、腎不全などが発症し、じわじわと死に近づいていく。

 だが、世界にはヒ素を食べても何ともない人たちがいる。その生活習慣によりヒ素に耐性を持ったようだ。

ヒ素に耐性を持つアルゼンチンの部族

 アルゼンチン北東部に位置するアンデスの人里離れた集落にて暮らすアタカメニョ族の子孫たちは、ヒ素を溶かした水を習慣的に飲んでいるが、全く健康に問題はない。

 アンデスと言えば、ポンチョを身に纏い、アルパカを連れて歩く遊牧民たちの牧歌的な光景が真っ先に思い浮かぶが、そんなアンデスのとある集落では、有毒であるはずのヒ素が無毒なものとして浸透しているのだという。

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1万年から7000年前に遺伝子変異、環境に適応した進化

 この驚くべき事実が判明したのは、スウェーデンのルンド大学の研究チームである。

 彼らがアタカメニョ族が暮らす集落で女性124名のゲノムと、尿中のメタリオド元素のレベルを調査し、ヒ素を代謝する能力について調べた。

 その結果、に高レベルのヒ素曝露に耐える能力を彼らに与えたであろう、遺伝子の主要な一連の突然変異を特定したという。

 彼女たちは、コロンビアとペルーに住む集団と比較して、ヒ素代謝で重要な役割を果たすと考えられているAS3MTという特定の遺伝子がはるかに高い頻度で発生していたのだ。

 研究チームは、この地域で発掘されたミイラの毛髪からも高濃度のヒ素が検出されたことから、この遺伝子変異体の増加は1万年から7000年前に起こったと推定している。

 この特定のAS3MT遺伝子変異を持つ集団は世界中に存在し、ペルー人、アメリカ先住民、ベトナム人に最も高い頻度で存在することが知られている。

 研究者によれば、これは環境毒に対する人間の適応の一例であり、ラットなどの動物でよく見られるという。

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via:dailymail / written by:lingafrank

 集落は火山性土壌の上にあり、当時土壌に含まれるヒ素が放出された湧水を日常的に飲んでいたことから、次第にヒ素への耐性が形成されたものと研究者たちは見ている。

 長期にわたり同じ薬を飲んでいると、次第に効きづらくなることはよくあることだ。これは肝臓において薬を分解する酵素が増えるためである。

 このような人体のメカニズムを考えれば、ヒ素を食べても無害な人がいるというのは不思議でないかもしれない。

 海藻をよく食べている日本人にだけ海藻を消化する腸内細菌が存在するというニュースがあったけれど、環境に適応させるために人間も進化していくようだ。ヒ素に耐性のある遺伝子を解明することで、ヒ素中毒の人の治療法に役立つかもしれないね。

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この記事へのコメント、80件

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  1. これはどの程度なのだろう
    常人の致死量をがっつり食べても大丈夫なのだろうか

    1. ペロッ これはヒ素!みたいなこと書こうとしてたけど※2読んだらなんか満足しちゃったありがとう
      しかしヒ素にも耐性とか出来るものなんだねぇ

    2. ※2
      ヒ素ヒ素( ゚д゚)ヤダァ(゚д゚ )ネェ、キイタ?( ゚д゚)オクサン(゚д゚ )アラヤダワァ

  2. 世界中が対応済みならシャーロックホームズなどの探偵が失業し
    犯罪歴史も相当変わったかも

  3. かつてのロシアの怪僧ラスプーチンは
    致死量の3倍のヒ素を盛られたカップケーキを食べても
    何ともなかったそうだし、耐性があったのだろうか ?

  4. 薬剤耐性というより、普通に淘汰による適応進化だな
    ヒ素に弱い体質の人は死ぬ、強い体質の人だけ子孫を残す、の繰り返しだろう
    ていうかどんな仕組みでヒ素に耐えてるのか、ざっくりでも書いてほしかったわ

  5. ヒ素はゼロでも生体は維持できない。
     
    この地域で生きるには、耐性の無いヤツが死滅してるだけだろ。
     

  6. 日本人も昔からヒ素を含むひじきとか食べてるけど耐性ないのかな?
    ありそうだけどな

  7. 「俺なら平気だよ、訓練してるから。毒じゃ死なない」←これ思い出した

  8. 適応ってすげー。
    まだまだ人間には隠れた可能性があるのかも。

  9. >ヒ素が放出された湧水を日常的に飲んでいたことから、
    >次第にヒ素への耐性が形成されたものと研究者たちは見ている。
    まるで教科書の出てくる進化の過程を見てるようだ。
    きっとこう言う事が何億年も繰り返されて今があるんだろうね・

  10. 逆に言えば地域や生活環境によって大きく体質も変わるということ。
    戦後にアトピー性皮膚炎が増えた原因が食事の西洋化という説もある(実際に和食にすると大きく改善することが多い)。2千年米と大豆食べて暮らしてた日本人、百年程度で体質は変わらないから当然といえば当然だが。
    健康を語る上では世界中でなされているかどうかなど意味がなく、地域や文化を考察すべきってことだな。

  11. 貴族は幼少より微量の毒をという話を思い出した
    一応有効ってことなのか?

  12. まあ、驚きだけど。
    弘法大師が伝える即身成仏になるための方法にも樹木(杉だったかな?)の皮を食べるというのがあるが
    これもヒ素を体内に取り込み内臓を腐らないようにするためのもの。
    少しずつ摂取することにより耐性が出来て死には至らない。
    でも、こんな方法をどこで学んだのかは謎だそうだ!

  13. こうして見ると人類の進化もリアルタイムで起こってるんだなぁ

  14. 昔つきあってた子が、遊びに行っても
    コンビニ弁当ばっかで料理を作ってくれんかったが
    アタカメニョ流の優しさだと今気づいた。
    あと海藻といえば
    電車内で酢昆布を食ってた白人が
    「これなんですかー」
    と尋ねるので「ケルプ」と正直に答えたらアウとか言って吐き出し
    冗談だったらシメるよお前って顔された事が。
    翻訳間違ってないよな。

  15. あ?
    禿げは進化の結果じゃないからな。
    断じて禿げは進化ではないぞ

  16. 「つまり犯人はヒ素に耐性があるアタカメニョ族のあなたです!」
    「いいえ私は水銀耐性があるカメアタマ族です」
    「そして私が煽り耐性があるカラパイア族です」

  17. これは暮らしてるうちに耐性がついたんじゃなくて、耐性があるからここに住めたんじゃないかな?普通の人には呪われた土地と思われていたはず

    1. ※29
      一応あってるよ〜。ケルプ=昆布。seaweedが海藻全般。
      まあ彼らからしたら、なんでそんなもん食うの?って感じだろうねw

  18. コメのヒ素含有量についてもアメリカかどこかで問題に挙げられてなかったか?
    このアタカメニョ族の人たちほどじゃないにしてもコメを日常的に食べてるアジア人も耐性持ってると思うぞ。

  19. 酸素をエネルギーにするくらいだから
    生物の適応力はすごいよ

  20. 忍者物の小説なんかではよくあるよな
    しかし実際に存在するとは

  21. 濃いヒ素化合物水溶液を飲めば体で処理できる量を
    超えるから中毒になるはず。
    結局は量の問題

  22. つまり
    ふぐの毒もじょじょに何世代もかけて耐性をつけていけばいずれは…

  23. この事実は私に希望を与えました。
    ヒ素に体が対応出来るのだから、コンクリートジャングルに適応することなんてなんてことないのです。

  24. ところで、じゃあ彼らにとってヒ素ってなんなのだろう。
    「肝臓で分解」っていうからには体内素通りの無意味な物質か。
    毒性抜きで考えたこの場合のヒ素が、
    ミネラルやビタミンのように肉体維持・形成に関与してるなんて可能性は…?

  25. ヒ素って幼い頃から摂取してたら耐性出来るとか聞いたことあるような・・・

  26. 日本人も砒素耐性は強いよ
    魚介類や海草に砒素が多く含まれてるのと
    それを食べ続けてる民族だから耐性が高くなってる
    アンデスの人も体制が高いといっても死なないわけじゃないだろうしな

  27. なんかむかし読んだ毒関係の本で、ヒ素愛好家が集まるヒ素村みたいなのがあるって記述があってまじかよって思ったけど、これのことだったのかな

  28. >>日本人にだけ海藻を消化する腸内細菌が存在する
    え、マジかw 遠くの民族より近場の自分達のことのほうに驚いたわ。

  29. じゃあ旅行で行って「現地の人も飲んでるし」とゴクゴクしたら 0(:3 )~ _(‘、3」 ∠ )_
    まぁ元々、水はわりと旅行でトラブル多いけどね

  30. ヒ素とかやべえw
    因みに生海藻消化できるのは大和民族だけだぜ!

    1. ※49
      含まれてるっていっても極微量だからなあ
      耐性が付くほど大量に食う人がいたとしても日本人全体の極々一部だろう

  31. ヒソといえば、NASAがヒソを利用する生物を発見とニュースになってたのを思い出したよ。いまみたら、3年前にそれに対して否定的な説が相次いで発表されてたとか。

  32. 自然界にヒ素を含む鉱物なんってゴロゴロしてますから、運が悪いと水源とその鉱物鉱脈が混ざり合って蔓延する可能性もあるわけで、そんな時でもそのDNAを持っている人は無敵ですね。

  33. 知ってた。
    ちなみに人間は徐々に不食にもなることができる。詳しくはググって。

  34. アタカマ砂漠はしってたが、アタカメーニョ(アタカマの人)という人たちがいたのか…
    図で分かる通り、アンデスの山脈(鉱脈)が走ってる=当然ヒ素はあるからね
    そもそも、町の名前に「cobre(銅)」が入ってる

  35. バングラディッシュも地下水がヒ素含有量多くて、飲めない。でも、既にヒ素耐性持っていそう。

  36. ゴキブリとか細菌も耐性持ちができるから、
    弱いのは死に、強い適応持ちのみが生きて子孫を残していったんだろ

  37. 平均寿命や健康寿命の伸び、スポーツ選手の現役年齢の伸びや世界記録の伸び、この記事もだけど人間の肉体はガチで無限の可能性を秘めてるんだと実感できて嬉しい

  38. 逆に水銀耐性欲しくて摂り続けて死んだ人いなかったっけ。中国かどっかで

  39. PM2.5や工業排水の中で生き抜く中国人にはどんな耐性が付いてるの?

  40. うちの地元の外れの方の井戸水はヒ素がアカンレベルで混じってるらしい
    昔から住んでる人は耐性あったりして

  41. コメント見てたらヒ素を沢山摂取してたからヒ素耐性がついたみたいな理解をしている人がいそうだから野暮とはわかってるけど一応言っとく
    これはヒ素に慣れたんじゃなくてヒ素入りの水を飲んでも死なない人だけが生き残ったって話で、1人の人間がどれだけヒ素を摂っても免疫はつかないよ

  42. 海草の件は、海草を分解する細菌は海草についてるんだから、
    食べればどんな人間でも得られる。
    細菌は遺伝しないんだから、違う話

  43. ラスプーチン以外の事件でも実はヒ素耐性があって死ななかったって事件をテレビで見た事がある
    もっとすごい物に耐性がある人はいないんだろうか

  44. 中国は昔からヒ素を使用していた 薬などで飲んでもいたし 遺体処理などに使用もしていたが
    中国の大地はヒ素汚染されていて数百万もの中毒患者いると言われている
    もしかして中国人も調べてみればヒ素に耐性する人々がいるのかもしれない

  45. アジアでも地下水が汚染されている地域があったな
    因みに既にエイズ耐性を持つ人間はアフリカの方で出現しているそうだ
    (産み散らかしている上、エイズが蔓延しているかららしい)

  46. ヒ素に弱い人間だけ淘汰されたって言ってる人いるけど、一万年前に変異したとあるから、この場合は普通にヒ素に適応できうる遺伝子を後天的に獲得したんじゃないの?

    1. >>76
      そうはっきり言い切れるのか?
      ヒ素に対する後天的な耐性を得ることは可能だと聞いたことがあるぞ

  47. トファナ水の話とかアルセニック・イーターの存在とか考えると、
    それほど驚くような話でもないような気がするけどな

  48. 淘汰に耐えるためにビッグダディ並みに子供を作って、どれか生き残ればいいって作戦で来たのかな

  49. 森永ヒ素ミルク事件、
    イタイイタイ病とかもだけど
    こういう被害、今出したら会社はスグに潰れてるよね、、、、

    ヒ素とか毒の耐久性なんは世界的に見ても普通はないんだから
    この民族の人は例外中の例外
    平気な人だけが生き残ってるだけで、過去多くの人が苦しんで亡くなってるはず

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