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約44.5億年前、火星に温かい液体の水が存在したことが隕石の分析で明らかに

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サハラ砂漠で見つかった火星の隕石、ブラックビューティー(NWA 7034)  image credit:ESO/M. Kornmesser

  2011年、サハラ砂漠で黒色をした美しい隕石が発見された。火星からやってきた重さ320gの隕石は「NWA 7034」だが、その見た目から「ブラック・ビューティー」として知られている。

 ブラック・ビューティーはとても古い隕石で、およそ44億5000万年前後に形成された物質が含まれている。

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 この隕石を使った新たな研究によると、当時の火星に、温かい水が存在していたことが明らかになったという。

よく似ていた火星と地球がなぜ全く違う惑星に?

 地球は約46億年前に形成されたと考えられているが、当時の地球と火星は非常によく似ていたと考えられている。

 約40億年前まで、どちらの惑星にも広大で温かい海が存在していた。しかし、地球がその海を維持し続けた一方で、火星の海の水は蒸発し、あるいはその表面下に凍りついてしまった。

 現在地球上には広大な海が存在するが、火星に過去の面影はない。

 この二つの惑星がこれほどまでに異なる道を歩むことになったのか?その理由はよくわかっていないが、やはり潤沢な水を失ったことが大きいだろう。

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アーティストによる約40億年前の火星のイメージ図。 まだ若い惑星だった火星には、約140mの深さの表面全体を覆うのに十分な水があった。その水は海を形成し、火星の北半球のほぼ半分を占め、一部の地域では 1.6kmの深さに達した可能性もあるという。 image credit: ESO/M. Kornmesser

 地質学的な調査により、地球の水循環は初期の段階で安定したことがわかっている。約45億年前から今日に至るまで、地球の水がなくなったことはない。

 ではなぜ火星の水は失われてしまったのか?実は火星の初期の状況はほとんどわかっていない。

 火星の表面の約45%は粘土鉱物で覆われており、これらはノアキス代(41億~37億年前)に形成されたとされる。

 その後の、ヘスペリア代(37億~30億年前)には水の流れの証拠が見られるが、アマゾニア代(30億年前~現在)に至ると、火星はほとんど乾燥していたと考えられている。

 特にもっとも初期である先ノアキス代(45億年前~41億年前)を示す証拠はほとんどなく、解明が困難な状況だったが、ブラックビューティーと呼ばれる火星の隕石「NWA 7034」が当時の様子を垣間見せてくれた。

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火星から地球に飛来した隕石「ブラック・ビューティー(NWA 7034)」 / image credit:public domain/wikimedia

ブラックビューティ(NWA 7034)に含まれるジルコン結晶に着目

 ブラックビューティ(NWA 7034)は、火星から地球に飛来した約200個の隕石のうちの1つである。

 2011年に西サハラで発見されたこの隕石は、約44億5000万年の物質が含まれており、かなり初期のものだ。また、他の火星隕石と比べても多くの水を含んでいる点が特徴だ。

 しかし、この隕石がもともと湿潤な環境で形成されたのか、ノアキス代やヘスペリア代に水を取り込んだのかどうかはわからなかった。

 そこで、今回の研究では、ブラックビューティ全体ではなく、隕石内に埋め込まれているジルコン結晶に注目した。

 これらの結晶は44.8~44.3億年前、すなわち先ノアキス代に形成されたものであり、鉄、アルミニウム、ナトリウムが層状に分布する「波動累帯構造」を持つ。

 ジルコンは火成岩起源の鉱物であり、このような構造は極めて珍しい。地球では、イエローストーン国立公園のような熱水噴出孔でのみ見られる。

初期の火星は湿潤で、温かい水が存在した可能性

 ブラックビューティに含まれるジルコン結晶は、火星が先ノアキス代において湿潤であり、さらに温かい熱水噴出孔のような地質活動が存在していたことを示している。

 火星も初めは地球のように水をたたえる惑星だったのだ。

 ということは、かつて火星に生命が存在した可能性は大いにありうる。今後の探査次第はで、生命の痕跡が発見できるかもしれない。大いに期待してみちゃおうじゃないか。

 この研究は『Science Advances』(2024年11月22日付)に掲載された。

References: There was Hot Water on Mars 4.45 Billion Years Ago - Universe Today

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この記事へのコメント、15件

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  1. 宇宙探索ってただの好奇心以外で世の中のなにに役に立つの?なんの利益にもならんでしょ。
    宇宙から資源持ってこれるわけでもないのに。

    1. 世の中に無駄な研究なんてないんよ。
      様々な事柄知る事は本当に大事。
      それが理解出来ないなら、もうここに来ない方がいい。

    2. 紀元前に地球が球体だと解明したギリシャの哲学者たちも
      当時の凡人は「そんなこと何の役に立つの?」と思ってたかもしれないね。
      現実にどんだけ役に立ってるのかは今のあなたの生活が証明してる通り。
      科学ってのは100年1000年単位のスパンでものを考えるってことなんだよ。

    3. 好奇心で磨かれた知性が、様々な分野の進歩を促していくんだよ。逆に、空も見上げず眼の前のことだけで生きていて、今みたいな世界になるの想像つく?

    1.  私もその説を支持します。 もっと重力が強ければ大気もそれなりに残っていたのではないかと。 だから金星が水は少なくとも大気があるのはそういう理由だと想像しています。
       隕石も礫岩みたいな水成岩だったら水があったと確実な気がしますけれども、まだ見つかってないですしね。 新発見で不思議と謎が少し減るけど、新たな不思議と謎がもっと増えるという人間という生き物である自分の寿命が恨めしい。

    2. 火星より小さな衛星で水が保持されている小惑星が存在するので、
      重力の過多は理由の一つかもしれないが、それだけでは説明ができない

  2. 火星にも10億年くらい水があった時代があったのに、発見されるのは極小の生物の痕跡「~のようなもの」ばかり。
    半分が水で覆われていたのに、水が無くなってから今日まで、火星の環境下ではこんなに何も無くなってしまうものなのかな。
    火星人まではいかなくても、それだけ水があったならもう少しわかりやすいなにかがありそうだけど…

    1. 地球誕生が約46億年前。海洋出現が約44億年前、原始生命の誕生が約40億年前
      約38億年前ぐらいに真正細菌と古細菌の誕生し、
      32億年前ぐらいにシアノバクテリアによる酸素供給がはじまるという感じらしい
      火星も同じようなタイムテーブルと仮定したら、真正細菌と古細菌の誕生前後で海洋が消失している

      ちなみに35億年前ぐらいの岩石に初めて 生物活動の化石証拠が残っているそうなので
      地球でも生命活動の痕跡が化石として残るかどうかの時期に、火星では海洋が消えた

      1. なるほど。
        生命の誕生は進化や退化には比べ物にならないくらい時間がかかるんだね。
        地球人が夢見た火星人はやっぱり夢か……

  3. 地球を挟んで火星と金星がそれぞれ両極端の環境で、どちらも水を失ってるのが興味深い。

  4. こういう話の時いつも思うけどどうして火星から来たって分かるの、理由を読んでも理解できない

    1. それ思った。
      さらっと「火星の隕石発見したので調べてみますね」みたいに話進めてるけど火星の一部だと断定できた根拠が一番知りたい

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