コント:ポール君とグレッグ君(2010年第6弾)

今回はマンキューがクルーグマンのブログポスト2つに異議を申し立てた(ちなみに、1番目はともかく、2番目のポストについては小生も――このエントリを書いた直後だったこともあり――マンキューとまったく同じ違和感を抱いた)。

グレッグ君

ポール君が次のようなことを書いている。

設備過剰のために企業が投資をせずに現金を溜め込んでいるが、その現金を支出させることができれば雇用を創り出すことができる点については衆目が一致している。ならば、政府がその現金を借りて公共投資をやるならば、やはり雇用を創出できるはずではないか。この理屈に対する筋の通った反論を見たことがない。

筋の通った反論は以下のようなものになろうか。

  • 政府が現金を借りたならば、いずれは返さなければならない。それは将来の増税を意味する。これは以下の2つの効果を通じて今日の需要を萎縮させる。
    1. 消費者が将来の増税を恒常所得の計算に反映させることによるリカーディアン効果
    2. 将来の増税は、一時的なものではなく歪みをもたらすタイプと予想されるが、それによる今日の投資のインセンティブへの逆効果

ポール君が上の2番目の効果に納得することはない、と僕は自信を持って言える。彼の論説を何年も読んできたが、税金の歪み効果が大きなものになるなどとは彼は信じていないので、その効果が彼の政策分析に反映されることもない。しかし、他の多くの経済学者(あと、おそらくは茶会党のような財政刺激策懐疑派の多くも)はそう信じており、税金のインセンティブへの負の効果が完全雇用を妨げ得ると考えている。そうした議論は論理的に筋が通っている。たとえ、そこで使っている経済パラメータがポール君の信じる弾力性と違っているとしても、だ。


追記:別のブログポストでポール君は、投資とGDPギャップを描画し、投資は景気に連動する、という良く知られた事実を指摘した後で、投資が落ち込んでいるのは景気が低迷しているせいだ、と結論付けた。因果関係の特定がそんなに簡単だったらどんなにか良かったことか!
僕が最初にケインズ経済学を学んだ時には、因果関係はポール君の言うのとは逆に取ることが多かった。つまり、アニマル・スピリットが投資を促し、投資が景気循環を生み出す、というわけだ。残念ながら、時系列グラフをじっと眺めて因果関係が分かることは滅多に無い。相関関係と因果関係は違うんだよ、たとえブロゴスフィアにおいても。