持続可能な投資

というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版)。原題は「Sustainable Investing」で、著者はLubos Pastor(シカゴ大)、Robert F. Stambaugh(ペンシルベニア大)、Lucian A. Taylor(同)。
以下はその要旨。

We review the literature on sustainable investing, focusing on financial effects. First, we examine the effects of investor tastes on portfolio tilts and asset prices in a simple equilibrium setting. We establish novel connections, including a direct relation between the green portfolio tilt and the greenium. We also relate our framework to prior modeling of divestment. Finally, we review evidence related to the main concepts from our theoretical analysis, including the greenium, green tilts, climate risk, and investor tastes.
(拙訳)
我々は、金融面での効果に焦点を当てつつ、持続可能な投資の研究を概観する。最初に我々は、簡単な均衡の枠組みで、ポートフォリオのティルトと資産価格に投資家の好みが与える効果を調べる。我々は、グリーンポートフォリオのティルトとグリーニアム*1との直接的な関係など、新たなつながりを明らかにする。我々はまた、自分たちの枠組みを、ダイベストメントについての以前のモデルと関連付ける。さらに我々は、グリーニアム、グリーンティルト、気候リスク、および投資家の好みなど、自分たちの理論的分析の主要な概念と関連する実証結果を概観する。

論文の導入部によると、実際の効果が限られているにもかかわらず人気のある持続可能な投資を理解するためには、帰結主義(consequentialist )と非帰結主義(non-consequentialist)を区別することが助けになる、という。例えばダイベストメントは、リスクシェアリングを限定することで資本コストを引き上げ、それによって企業行動に影響することが期待されている。だが実際には、資本コストの変化は小さいことから効果は限られ、従って帰結主義の投資家の選好へのアピールも限られる。しかし、非帰結主義の選好を持つ投資家にはアピールする。というのは、そうした投資家はダイベストメントによって世界を他人にとってより良いものとするのではなく、ダイベストメントを実施した株式保有によって自分自身の不効用を減らし、世界を自分にとってより良いものとするからである。
このような観点から論文では、非帰結主義の選好に焦点を当てつつ、持続可能な投資の実際の効果ではなく金融面の効果に話を絞って研究をレビューしている。ある意味ファイナンス分野の専門家らしい非常に醒めた姿勢と言えるかもしれない。