■ 広がる一族
話は唐突に翌日の朝にとぶが、アメリカ在住の遠縁の親戚が飛行機の
乗換えでフランスに立ち寄るので顔見世に行こうということになった。
どのくらいの遠縁なの?と思ってツレアイにこっそり聞いたところ、
「母方のおばあちゃんの、………えーっと…」ということだった。
ま、とにかく遠縁ということね。
しかし、ツレアイの一族はヨーロッパだけでなく、アメリカにまで行ってたのね。
もしかして、一族の中で、一番遠くまで行っちゃった人?
ド・ゴール空港でお会いしたその親戚は、ご夫妻と息子さん2人。
ご主人は航空会社に勤めてて、奥さんはお医者さん。
息子さんは10歳くらいか?サイズがちょっと違うからおそらく年子だな。
何でも、ご主人の仕事上の特典として、年に1回、家族で世界旅行を
しているらしい。こりゃまた何ともウラヤマシイ。
そして、旅行しながら各国に散らばってる一族に会ったりするらしい。
う~ん、ウラヤマシイような、ちょっとタイヘンなような…。
ご主人と、お義兄さんと、ツレアイで何やらウルドゥー(パキスタン語)で
盛り上がっている。息子さんたちはあちこち走り回って遊んでる。
取り残されたカタチの私に、奥さんが話しかけてきた。
「アナタ、ロンドンの大学院に留学しているんでしょ?」
…はい?
私は確かにロンドン“経由”でココまできましたケド、通っている大学院は
極東の大韓民国のソウルですゼ。
……………!?!?!?!?
誰だ!こんなデマを伝えたのは!
ツレアイか!お義兄さんか!それとも二人による共同謀議か!
だいたい、ロンドンに留学中でこんなに英語がヘタなわけないだろう!
学歴詐称(←ネタ古い?)どころのサワギじゃないぞ!
はぁ~、なんちゅーイタズラしてくれんねん。
おカゲでしどろもどろの釈明をするハメになりました。
しかも、ネイティブ・スピーカー相手に………。
■ はじめての“すいーと”?
その親戚のお見送りの後、「少しは新婚旅行らしいコトしろ!」という
お義兄さんの配慮(?)により、2人っきりでパリ見物をすることになった。
そー。そー。
せっかく花の都パリぃに来たんだから、“ずっこけ珍道中”ばかりじゃなくて
ちったぁ気取って“ぼんぼやーじ”せねば。
しかし、フランス語がまったく出来ず、この国ではおサル状態の2人。
お義兄さんとしては、とても不安だったのでしょう。
パリの地図に名所の場所や、そこに行くまでの乗り換えのポイントなどを
コト細か~く書き込み、ツレアイに説明していた。
しかも、ツレアイはお義兄さんから“お小遣い”もらっていた。
おのれは小学生か!
ツレアイは、もらったのは20ユーロだけで、その日に全部使い切ったと
言い張っているが、帰国後、外貨預金の口座に≪10ユーロ≫也が
新設されていたのはナゼ?
お義兄さん、弟を甘やかしちゃイカンですよ。
ところで、お義兄さんがツレアイにお小遣いを渡すとき、
「これでKAORU(←海外デビュー?)に美味いもんでも食わせてやれ」
と、おっしゃったそうな。
………お義兄さん、私って、そんなにヒモジそうなんですか?
■ 人間の成長
ま、ともかく、適当な地下鉄の駅で降ろしてもらい、2人っきりで、
すい~となパリ見物を始めることにした。
しかし、その前にスーパーに入って食料確保(←ヒモジい?)をせねば。
「果物はイースト・ロンドンより高いね」とか
「でも韓国よりは安いよ」とか
「日本だったらもっともっと高いよ」などと、
為替相場を知らんくせに、物価(食べ物)の話でもりあがっておりました。
(生活臭い?)
さて、地下鉄の駅に行って切符を買いましょう。
しかし、切符売り場のねーちゃんはタバコをふかしていた。
この時点ですでに「カチーン」ときたが、ここは耐え難きをを耐えて
ロンドンでのように1日乗り放題のフリーパスを買ったほうが割安なのか
それとも片道切符を買いながら行ったほうがいいのか聞かなければ。
しかし、そのねーちゃんは明らかに「うぜェー」という態度で、切符の値段を
つっけんどんに言ってくるのみだった。
しかも、くわえタバコで。しかも、香水の匂いと混じって臭い。
フリーパスの値段は絶望的に高かったので、ど-するよと相談していると、
こともあろうに、そのタバコ臭いねーちゃんは、神様お客様の私らに対し、
「早くしてよね」という態度に出てきた。
のわにぃ!?客が後ろに並んでいるわけでもなし、他にも窓口があるのに、
なんで神様お客様のワシらがそんなコト言われなアカンねん!
ツレアイはマジ切れで、切符を買った後に英語で捨て台詞を吐いた。
(ツレアイの名誉のために言っておくが、放送禁止用語とかではない)
タバコ臭いねーちゃんもフランス語で何やら言い返してきたが、へへーんだ、
ワシら、フランス語がこれっぽっちもわからんもんね。
それ以降、韓国で少々ムカつく事や、悔しい事や、腹立たしい事があっても
「フランスよりはマシ」を2人の合言葉にするようになった。
旅は人を成長させるのである。
■ ガマンしてたの?
まぁ、とにかく地下鉄に乗り込むと、車内でアコーディオン弾きのおじさんが
『ケセラセラ』なぞを演奏していた。
おぉ~、パリ見物はこうでなくっちゃ。
さっきスーパーで買ったリンゴをかじりながら、しばし聞き入る。
目的の(パリ見物お約束の)エッフェル塔近くの駅に着いた。
あれ、ツレアイはエッフェル塔に近い出口を道行く人に聞いている。
人に聞かなくても、駅の表示や地図を見ればわかるのに。
(だいたい、フランス人に道を聞くぐらいなら、私は迷わず地図を見るよ)
この旅行で初めてわかった事だが、ツレアイは「地図を見ない男」だった。
もしかして、お義兄さんの詳細な説明はまったく無意味?
ところで、地上に出る階段の途中に有料トイレ(ヨーロッパの公衆トイレは
たいがい有料)があった。ツレアイが料金を聞いたところ、41セントだった。
よんじゅういちセント………。
日本円に換算するといくらなのか分からんが、イギリスの一般的なトイレの
値段、20ペンスより高いのは確か。
41セントの“1”セントって、つり銭がないとかナンとか言って、結局50セント
巻き上げようという魂胆がミエミエじゃっちゅーに。
何よりも、人間の生理現象に対してお金を取るという、そのサモシイ根性が
気に入らん。というか、許せん。
ま、イギリスではツレアイが無料のトイレのありかを知り尽くしていたという事も
あって、一度も有料トイレを使いませんでしたからネ。
ここでもどっかにあるだろうという事で、急遽、トイレ探しの旅になった。
しか~し、エッフェル塔のまわりには、タダのトイレがありそうな学校やホテルや
ファーストフードが皆無なのでありました。
カフェで茶でもしばいてトイレを借りようかとも思ったが、メニューの値段を見ると
一番上が5ユーロという観光地値段から始まっていたので即、却下。
しかし、そうこうしているうちに、ツレアイの顔がだんだん蒼白になってきた。
もしかして、かなりガマンしてたの…?
新婚早々(?)41セントくらいで病気になられても困るんで、有料トイレに
行けと言った。
もう、いいよぉ………。
《どこが“すいーと”やねん!ぱーと11へ続く》