米澤穂信 『儚い羊たちの祝宴』

 米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)『儚(はかな)い羊たちの祝宴 The Babel Club Chronicle』(ISBN:4103014725)を読了。
 収められているのは5つの短編だが,それらを大学生が文学に興じる団体「バベルの会」が繋いでいる。とは言っても,桜庭一樹『青年のための読書クラブ』のように確固たる存在としてあるのではなく,最後の一遍を除いては,その存在が仄めかされるだけの微かな影。
 帯には,次のように記されている。

あらゆる予想は,最後の最後で覆される――。
ラスト一行の衝撃にこだわり抜いた,暗黒連作ミステリ。

それならば,と取りかかった。
 第一編「身内に不幸がありまして」は,なるほど,煽り文句に偽りがない。《ラスト一行》の有無によって,事件の構図を捉える視座が大きく異なる。これは秀逸。
 ただ,第二編以降になると,それほどのものではなかったというのが率直な感想。
 第三編「山荘秘聞」と第五編「儚い羊たちの晩餐」では,とある禁忌が題材に据えられている。が,これにしても,であった。その昔,『猟奇の檻』(1995年,日本プランテック)という作品がございまして……