アニメ『君の膵臓をたべたい』舞台探訪 @ 富山県高岡市&射水市

 

 2018年9月1日から劇場公開されているアニメ『君の膵臓をたべたい』では,主人公達が「日常」を過ごす町は富山県高岡市という設定になっています。

 原作小説では,表紙絵を手掛けた loudraw さんが福井出身ということで,福井市内を流れる足羽川にかかる幸橋から見た風景が描かれております(なお,小説の本文には場所を特定できるような記述はほとんどなく,匿名の町が舞台です)。

 

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

 

アニメ版でも,最終版において原作イラスト(↑)がそのまま差し込まれて登場していました。そこから考えるに,本作において《春》を印象づける場面で繰り返し登場する,橋――しかも,“最期”には“サクラの手前でぷっつりと途切れた線路”という意味深なモチーフを伴って描かれる――へと繋がる桜並木については,(高岡ではなく)福井をそのまま残したものと思われます。その証左に,橋のたもとに立つ真ん中に黒っぽい帯を備えた柱は幸橋に実在するそれに依拠しています。

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 そのうえで……ですが,今回のアニメ化にあたっては,原作のイメージを形作っていたキービジュアルに配慮して,まず北陸地方に地方に候補を絞り込まれ,そのうえで牛嶋新一郎監督の母方の実家があって小さい頃に訪れたことのあるという高岡市(富山県)が風景のモデルとして選ばれました。

高岡市/高岡市の各所が劇場アニメに(君の膵臓をたべたい)

 この作品に関連しては,富山県の観光振興室や,路面電車を運行する万葉線株式会社らとのコラボ企画としてデジタルスタンプラリーが開催されており,作中に登場する10か所のうち6か所をまわってスタンプを集めると景品がもらえるイベントが2018年12月30日まで開催されています。 

https://kimisui-anime.com/news/?article_id=48263

劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』 聖地巡礼マップ(WEB版)|最新トピックス|とやま観光ナビ

劇場で作品を観たところ居ても立ってもいられなくなり,この「聖地巡礼マップ」に掲載されている情報に沿って舞台探訪をしてまいりました。

 4. 高岡市民病院

 いきなり[4]から始まっていますが,上述の「聖地巡礼マップ」に付された通し番号に合わせてあります。

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 物語の始まる場所。「僕」が「共病文庫」を拾い,桜良(さくら)の秘密を知ることになる病院の待合室は,高岡市民病院の吹き抜け(アトリウム)が使われています。路面電車(万葉線)の「市民病院前」下車すぐ。

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 アニメの作中では案内板が黒地に白になっていたり,実在の場所では会計窓口は向かって後ろ側だったりと改変が行われています。

 階段とは反対側をみると,壁には山並みと水紋/鳥/花を象ったと思しきモチーフが飾られ,その下には半円形の木製ベンチがしつらえられています。これらも作中でしっかり描き込まれておりました。

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※ 病院という公共施設の内部でありますことから,訪問に際しては迷惑のかからぬようくれぐれもご注意ください。ちなみに,今回の撮影に際しては案内窓口へ許可をいただきに伺いましたが,ロケ地になっていることはご存知でした。

 6. 二上山(守山城跡)

 原作には無く,アニメ版でのオリジナルとなる花火のシーン。高岡市と氷見市の間にそびえる二上山にある守山城跡からの眺めです。

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――が,あいにく訪問したこの日は雨天で,まったく視界が得られませんでした。

 作中では「病院を抜け出して」「夜に」出かけておりましたが,かなり急な坂道ですのでご注意を。自動車がなければ到達困難でしょう。

7. 雨晴海岸

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富山を代表する観光名所,雨晴(あまはらし)にて。湾の向こう側に立山連峰が望めるはずなのですが,曇っていて何も見えません……

8. 松太枝浜海水浴場

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雨晴駅から能登方面へ約1.5kmほどの位置にある松太枝浜(まつだえはま)海水浴場。ちゃんとベンチもありました。

 9. 新湊大橋

 こちらは射水市になります。「聖地巡礼マップ」では,路面電車(万葉線)の終電・越ノ潟(こしのかた)駅から海王丸パークにかけての辺りがチェックインポイントに指定されています。

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 しかしながら,現地に行ってみると橋脚の位置関係が合致しません。作中に登場する,打ち上げ花火を眺める人々のコマは対岸,すなわち,新湊大橋(しんみなとおおはし)の東側にある県営渡船の堀岡発着場近辺から見た風景でした。

10.  内川

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オープニングに差し挟まれたコマ。内容には関与してこない場所です。

5. 能町駅

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JR氷見線の能町駅。無人駅で,駅前には駐車できるだけの余地があります。

桜良との旅行から帰った「僕」が降りる駅。別な場面で「僕」は路面電車を使っていますが,この駅から万葉線の新能町停留所とは500mほどしか離れていませんので,2つの路線を使い分けできるような場所に「僕」は住んでいるのであろうと思われます。

3. 末広町停留所

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万葉線の末広町電停から高岡駅方向を望んだ構図。「僕」が待ち合わせに出かけるシーンとして挟まれます。

オレンジ色に塗装されたレトロ電車(7073号)では,2019年5月31日まで「僕」と「桜良」による車内アナウンスが流されるとのこと。

1. 高岡駅前

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 高岡駅の北側(古城公園側)から出て,バスプールを超えた先。今庄ビル前の横断歩道から高岡駅を眺めた構図。作中では,ここに Cafe Spring があることになっているようです。

2. ウイング・ウイング高岡

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 立ち去った恭子に「僕」が追いついた場所。高岡駅前にそびえる建物(2004年竣工)です。この場面,夕暮れ時のシーンなので画面が薄暗いのですが,逆向きの構図(すなわち,ウイング・ウイング高岡から駅の方を見た場面)では「高岡駅前ビル」が描かれておりました。

 なお,路面電車が停車する場面ですが,駅舎改築前の高岡駅「前」停留場でした(→旧高岡駅南口,旧電停)。現在は,建て替えられた駅ビル(2014年3月29日開業)の中に高岡駅停留場があります。

 それに対し,「僕」が桜良に旅行へと連れ出されたとき,待ち合わせている場所は建て替えられた後の高岡駅(2014年3月開業)の改札口前なので,整合的に説明できません。

 仮説としては,物語時間を遡らせておく必要があったのかな,と。『キミスイ』という物語は,既読であることが相手に伝わる仕組みになっているLINE(ライン)アプリが普及していると不都合があるので,フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)が主役だった時代に留め置いているのかもしれません。

 これが意図的な時間軸の操作なのか,それとも制作側が作画資料の不整合に気付いていなかったせいなのか。わたし,気になります。

 

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※ 追記:
 作中で「僕」が使用している端末は,2012年10月発売の docomo N-01E であろうと教えていただきました。

  

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